異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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 このところスランプ気味で中々筆が進まずやっと更新できました


第53話リヴァイアサンと蟹の甲羅酒

 今シーズンも時化がやってきた、それに合わせて海中では人魚達による資源採取が行われる。今回は古い難破船が見つかり、地上の連中が使う'カネ'とやらも手に入ったので人魚達はかなりいいモノと交換できると期待している。

 

 難破船を見つけたのは海底の中でも特に深いところだったのだが近くにリヴァイアサンという魔物が棲みついていた。狂暴で悪食なこの怪物は人魚達ではとても歯が立たない。かといって放っておけば地上の連中も漁ができないし、まず自分達の生活も脅かされる、そんな時港に現れたのがトロワ、ゴノー、ディーネの3人だ。腕のたつ冒険者と名高い彼らならリヴァイアサンを退治できるかもしれない、人魚達は頼んでみるが、

 「すみません、私達だけではどうにもなりません」

 「ルカが出かけとるからなぁ、アイツなら屁でもないんじゃが」

 「様子見くらいなら、私が行ってこようか?」水陸両方に強いディーネが人魚の案内で海に潜りリヴァイアサンを観察しようとしたが次の瞬間、その赤黒く光る目がこちらを向く。

 

 「キャーッ!」

 「ウワァッ!」太い尾を振り回し、更に鋭い牙で危うく噛み砕かれそうになり急いで逃げるが魔物も後を追ってくる。そして水面まで顔を上げて更に噛みついてこようとしたが間一髪ディーネ達は難を逃れた。リヴァイアサンは再び海中へ潜る。

 「ハァ、ハァ(>。<;)ホントに死ぬかと思った」なんとか岸に上がったものの今にも倒れそうなディーネの体をトロワが支える。

 「ワシらじゃ手も足もでん!」

 「ルカさんが戻るのを待ちましょう」

 ほどなくルカが仲間達の元へ戻ってきて話を聞くと海へ飛び込む、そして3分後、リヴァイアサンが死体となって浮かび上がってきた。腹が中から切り裂かれてルカが出てくる。

 「なあルカよ、何をやったんじゃ?」開いた口が塞がらない人魚達の代わりにゴノーが尋ねる。

 「小魚に化けてこいつの腹に入ってから元の姿に戻って暴れたのさ、最後は如意棒を剣に変えて切り裂いたんだ。案外軟弱な奴だったな」人魚達は一転してルカに拍手を送る、この港も再び穏やかとなった。

 

 「一応報酬は貰ってくぜ。船にあった金貨を少しに、そうだなバーグルを1人2杯じゃない…2匹ずつでどうだ?」人魚達は二つ返事で応じた、人魚達にとってあんな化け物退治の報酬にしては安いものだしルカにとっては丸儲け。互いにwinwinな取り引きだった。

 その足で越後屋に向かった一行は持ち込んだ食材の調理をお任せで頼んだ。大輔は綺麗に外した甲羅を火で炙りそこに日本酒を注いでトロワ以外の3人に出す。

 「料理ができるまでこいつで一杯()っていて下さい」甲羅酒の旨さを知っているルカは何も言わずグイッと呑む、ゴノーは最初の一口を啜って見事にハマったらしい。

 「酒精(アルコール)は弱いがバーグルの味が滲みでておって中々の旨さじゃ、2つの組み合わせがいいわい。それにこのスタイルは面白いのう」

 「温まる~、今日は寒い目にあったから尚更体にしみるヨォ」

 「イヤ、お前元々水中暮らしだったろ?」ルカが突っ込む。

 「ぶ~っ!みんなズルいですぅ」未成年者のトロワだけはココアを飲みながら膨れっ面である。酒を呑みたいというより子供扱いされるのが気に入らないのだろう。

 「お待たせしました、カニナベに炊き込みご飯、カニタマです」4人とも一心不乱に食べまくる、持ち込まれた蟹はかなりの大ぶりだったので料理も10人前くらい作ったのだが瞬く間になくなった。

 「こんばんは~、おやいい香りだねぇ」セシールと2人の仲間が来店した。

 「ゴノーさんよ、そりゃなんだい?」常連のドワーフ3人組が入ってくるなり酒の匂いを嗅ぎ付けたようだ。同族の気安さでヘッポールがゴノーに尋ねる。

 「おう、バーグルの甲羅を炙ってカップ代わりにして呑んでるんじゃ。残念ながらワシらのしかないがの」

 「殺生なぁ、匂いだけじゃ余計呑みたくなっちまう」ズドンが落ち込んでると

 「マスター、こいつらにも甲羅酒を一杯ずつだしてやってくれ。オッサンもディーネもいいよな?」

 「まあ、ルカがそういうなら」

 「リーダーはお前さんじゃしの」

 「イヤァー気前のいいお兄さん。ゴチになります」

 

 ところで最後に2つ残った甲羅だが内1つはマティスが持ち帰り両親と一緒に、もう1つは閉店後大輔とロティスがいずれも甲羅酒にして呑み切ってしまった。

 「「大人ってどうしてお酒が好きなのかしら?」」トロワとラティファには全く理解できなかった。

 

 




ドン亀更新、超スローペースで続きます
52話からサブタイトルにお客がはいってないですが狙った訳じゃありません(笑)

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