異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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久し振りに料理がでない話になります。
影山明様からヒントをもらいました


第64話義理の従姉と新装開店

 「そろそろいい時期よね」先代越後屋店主の姪、伊達冴子は夫の淳次と共にかつての越後屋を訪れた、父親の越後屋寅治の公金横領発覚、逮捕を始めに越後屋一族には次々不幸が相次ぎ、それが世間に波紋を呼び夫も仕事先を追い出され生活に困るようになり恥を忍んで少しでもお金を貸して貰おうとほとぼりが冷めた今、こうして訪ねてきたのだ。

 「ホントは父さん達に散々嫌がらせを受けた大輔君に借金なんて頼める義理じゃないけど私達には他に当てがないもの」入口に近づくとナゼか見つからない、冴子は一族の中で唯一先代とは仲が良かったので場所を忘れる訳がない、裏口へ廻るとすぐ見つかった。

 「勝手に入っていいのか?」淳次が不安げに問うが

 「大丈夫よ、空き家じゃないハズだし、普通に挨拶すれば問題ないわよ」この店は冴子の義理の従弟が継いだ、現在店は閉めていても住んでいるのは確実。裏口の戸に手をかけるが開かない。

 「引き込もっているのかしら?」戸の向こうから返事がする、間違いなく大輔の声だ。奥は随分賑やかそう、店は繁盛しているらしい。

 「じゃルカさん、すみませんが今回もお世話になります」大輔は小声で誰かと話している、ようやく裏口が開いて冴子達を出迎えてくれた。

 

 店内に入った冴子は驚いた、まず店が以前の数倍は広くなっている、それにお客の服装が何とも奇妙である、中には着ぐるみ姿の人までいる。

 「ナニ、ここ?コスプレイヤー御用達なの?」元々現実主義者(リアリスト)の冴子に[異世界]という概念はない、一方淳次は卒倒寸前だ。

 「冴子さん、ご無沙汰してます」こんな状況で平然と挨拶する大輔、冴子はどういう事か説明を求める。彼女の性格をよく知っている大輔はその目でみて貰う方がてっとり早いだろうと

 「外にでてもらえば分かります」大輔は厨房をマティスに任せて冴子を入口から連れ出す、越後屋の周りにはどこかの外国の街みたいな景色が広がっている。

 「ここって何かの撮影所?」まだ異世界転移したのに気づいていない、次は裏口へ移動する。冴子も通る事ができた、行き来は可能なのだろう、店舗周りを一周して入口にくると何気ない日本のアーケード街である。そこから中に入ると中はガランとして誰もいない、裏口に廻るとさっきの奇妙なお客達がいる、再び中から入口を出るとまた外国か撮影所らしき場所。冴子が状況を理解するまでこの行動は10回くらい続いた。その頃淳次は完全に気絶していて従業員らしき人達の手で座敷で介抱されていた。

 

 「まだ信じられないけどこの店が異世界に移転したのはホントみたいね」

 「まあ、そういう事です。僕はいつも裏口から日本に行くので入口からだと店が空っぽになるのは知りませんでしたが。ところで冴子さん、今日はどんなご用件でこちらにいらっしゃったんですか?」あまりの出来事にお金を借りにきたのをスッカリ忘れていた。

 「アンタ、料理の心得はあるかい?なら向こう側で商売すればいいだろ。あっちの土地を遊ばせとくのも勿体ないしな」冴子にそう話しかけてきたのはサルだ、他には人間のお客もいるが人魚や河童、ろくろ首に吸血鬼と怪物も沢山いる。冴子はまだ慣れないのか頭を抱えたがこれも生活の為と割り切る事にした。

 その後伊達夫婦は大輔と日本の事情に一番詳しいというさっきのサルと細かい打ち合わせをする。

 こうしてかつての越後屋は元あった場所に復活、イヤ伊達夫婦が運営する『越後屋2号店』として新装開店する事になった。

 

 




2号店のエピソードは今後外伝に投稿します。

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