秋も近づいてきた頃、越後屋の定休日。今日はエドウィンの街の子供達が公園に集まってきた。我らがメンバーはラティファにリベリ、チル、ユティスとマウリ、アウラとマーシャ2組の兄妹とコルトン公爵の令嬢セリクス。越後屋だと最年少のラティファもこの中では1番お姉さんである。
この日は子供達にとって月に1度の紙芝居の日である。テレビもネットもないこの世界に娯楽は少ない、それでも大人には払う金さえあれば賭博や観劇等、男性なら色を買う事もできるが子供にとっては皆無と言っていいだろう。そんな中この紙芝居だけは今も昔も子供達の楽しみである、かつてはヴァルガスやガーリンもこの子達のように夢中になっていたらしい。
ここで話は20日程ほど遡る。
その紙芝居だがまず誰かが生業としている訳ではない。世界には冒険者、商業以外に児童教育ギルドなるモノが各国、各地域ごとに存在していてそのギルドメンバーと職員が持ち回りで各自が絵を描き無料で読み聞かせするのが習わしとなっている。このギルドには教師をはじめ、未成年を雇う商店主等は所属する義務がある、現在12才のラティファを雇っている大輔もそこに名を連ねている。
今回は大輔にお鉢が回ってきた。異世界で紙芝居の読み聞かせなぞ当然未経験の為ヴァルガスに相談しにいく。
「う~ん、普通はこの辺の伝承とか教訓話とかを読み聞かせするんだがお前さんが知ってる訳ないしな。待てよ、異世界にもその手のモノは存在するよな」
「ええ、ありますが」
「じゃあそいつを披露すればいい、ついでに幾つかこっちに仕入れてくれんか?」
「わかりました」商業ギルドを出て冒険者ギルドに立ち寄る、受付で仕事をしているゴドノフに会ったので頼み事をする。
「こんにちは、ゴドノフさん」
「ようマスター、
「ルカさん達に連絡を取りたいんです、急ぎではないのでお願いします」
「ああ、あの雲使いのサル君のパーティーか。任せときな」自宅兼店舗に戻るとネットで紙芝居の販売サイトをチェックする、
「日本の昔話は分かりにくいか、遠い世界の話としておく手もあるけど。西洋の童話とかもあった方がいいかな」色々調べて『シンデレラ』と『桃太郎』を取り寄せる事に決めた、肩の荷が1つ下りたところでスマホが鳴る。電話の相手はルカだった、冒険者ギルドからの連絡を受けて明日にはエドウィンに来られるとの返事だった。
そして当日。ルカ達と一緒にこの世界風にアレンジした『シンデレラ』と『桃太郎』の紙芝居を子供達に読み聞かせた大輔、評判は中々良かった。
その日の夜、地球の童話十数点を紙芝居に作り直す作業が越後屋で行われた、文章の翻訳は勿論ルカが、絵を描くのはゴノーとディーネが担当する事になった。手先が器用なゴノーは分かるがディーネも意外に絵が上手かった、どちらもあまり得意じゃないトロワは休日でいない従業員の代わりに大輔が依頼料として彼らに振る舞う料理の手伝いをかって出た。
「さて、今日は何が食えるかのう?」
「トロワちゃん、一緒に厨房いたじゃない、聞いてないの?」
「それが見た事ない食材で。お肉かお魚だとは思うんですけど」
「お待たせしました、マレータのステーキです」
「えぇーっ?!」ルカ以外が椅子ごとひっくり返る。
「何やってんだよ」ルカは心中でコントかよ!と突っ込みを入れて3人を起こす。
「嘘でしょ?食べられるの?」
「あんなデカいモンを?信じられん!」
「どうやって捕まえたんですか?」
「僕が捕った訳じゃないので分かりません、まあお召し上がり下さい」リアクションも三者三様だなと思いながら完成した紙芝居を束ねる大輔、後で児童教育ギルド長を兼任するラターナ学園エドウィン校学長に届けなければならない。
「懐かしいな、今じゃ向こうでも手に入れるのは難しいハズだ」
「美味しい!前に食べたスレイプヌーのお肉に似てるけどアレより柔らかい」
「こいつはニホンシュが合いそうじゃ、ルカよ一杯呑らんか?」
「私も呑みたーい、あとビールも!」
「また始まった…」トロワは今回も3人をジト目で見つめる
領主の公爵家の庭に停めてある馬車に帰ってきた4人は今日の戦利品を分け合う。
「ワシはこいつを全部貰う」
「私はこれが欲しいです」
「ちょっと、私に半分よこしなさい」
「そんじゃ俺はこれだ」
「まて、一人占めはいかんぞ」彼らが取り合いをしていたのはある意味金銀宝石よりも価値のあるモノだ。大輔から進呈された
『1枚でビール1杯無料』
『お好きなケーキ1個サービス』
『オリゼ食べ放題』
『一組様1回1枚限り有効、お会計半額』と記されたクーポン券、大輔からは
「
・マレータ→鯨
流石に異世界で食べた事あるのは彼らだけでしょう