異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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4柱目の神様登場です、
70話あとがきに神々のフルコースを追加しました、各神様が来店する毎にそのキャラに反映させた(つもり)品がでます。(こちらもアイディア募集中)


第72話虎と豚汁

 冒険者ギルドから連絡を受けて肉屋のヨセフが訪れると衝撃の光景を目にする。なんと身の丈10メートルはありそうな獣人イヤ、人獣といった方が分かりやすいか、体の要所だけを守る鎧をつけ肩にはその巨躯に合わせた大斧を担いだ2足歩行の虎が床に鎮座していた。本来3メートル近くあるギルド長のゴドノフも今日は随分小さく見える、ヨセフはガタガタ震えながらゴドノフに近づいていく。

 

 「ギ、ギルド長どうもっす、肉の買い取りっすか?」冒険者ギルドでは冒険者達に魔物退治の依頼、または依頼の仲介をして報酬を払うがその他に彼らが狩った魔物から取れる素材や肉も買い取ったりする。それらを然るべき商人に卸す事で主な収入を得ているのである、それ以外にヨセフがこのギルドに呼ばれる理由はない。

 「お、おうヨセフ。こちらがジャイアントホッグを捕らえたので買い取りを希望されているんだが」ゴドノフも青褪めた顔で返す。山イノシシを始め猪系の魔物はこの世界ではメジャーな食材であり豚肉と同じように料理される事が多い。だがジャイアントホッグは全長50メートルを越えAランクの冒険者が数十人がかりでやっと仕留められる討伐レベルの高い高級食材だ、買い取るだけの金はすぐには用意できない。すると虎は

 「金が足りねぇか、じゃあこうしようか」と言ってずっしりと重い袋を無造作に置いた、中にはラム硬貨が一万枚も入っていた。

 「俺は金はいらねえ、代わりにこいつで旨いモノを作って食わせてくれ。これは必要経費だ、差し引きで余った分だけ返してくれりゃいい」

 「わ、分かりました。今料理人を呼んできます、ヨセフは解体を頼む」

 「りょ、了解っす」ゴドノフは越後屋に使いをやり大輔を連れて来させた。

 「これはまた大量の肉ですね、腕が鳴りますよ」虎を目の当たりにしてもナゼか平気そうな大輔はヨセフやギルド職員に手伝ってもらい解体された肉を店まで運ぶ、その後を虎もついてきた。

 

 越後屋に戻ると早速店にある一番大きな鍋で調理を始める。先程のジャイアントホッグの肉の他、人参、ジャガイモ、長ネギ、牛蒡に豆腐。味付けには最近こちらでも受け入れられつつある味噌を使う。煮込んでる間にもう一方のコンロでフライパンを振り醤油ベースのタレを染み込ませた肉とピーマン、玉ねぎを炒め合わせ炊きあげたご飯と軽く湯通ししたキャベツを重ねたこれまた一番大きなどんぶりに乗せる。

 「上がったよ。誰かお出しして…ってムリっぽいな、僕が行くよ」恐怖におののく店員達に代わり店主自ら給する。

 

 「お待たせしました、しょうが焼き丼と豚汁です。熱いのでお気をつけ下さい、ごゆっくりどうぞ」

 (なんだ、随分野菜が多いな。量の水増しか?)まずは肉を乗せたショーガヤキドンとやらを掻き込む

 「おっ、こりゃ甘くてしょっぱい。このネギのとろけそうなのがいいな、緑の野菜が肉の脂のしつこさを引き締めてくれてる。敷いてある白い粒は薄味だが肉の濃い味に合うな」次に茶色いスープに手を伸ばす。

 「旨ぇ!ただ味がついてるだけじゃねえな。ん?こっちのネギも甘い、それに芋が崩れるかどうかの瀬戸際まで煮られてて最高の柔らかさに仕上げてある、そっかこいつは水増しなんかじゃねえ、肉と野菜を一緒に食うモンなんだ!」これら料理の主役は確かに肉であろう、しかし野菜という仲間がいないとここまで旨くはならない。特にスープは絶品この上ない。

 

 「オイ、スープのお代わりだ。あと持って帰りたいから鍋ごとくれ!」虎の要求に対して大輔は

 「すいません、調理器具は先代、育ての親の形見なのでお渡しできません。豚汁は作りますから鍋は他でお求め下さい」咆哮を上げて脅かしても金を積むと言っても頑として聞かない、すると虎は

 「ガッーハッハッ!いやそれでいい、料理人ってのはそのくらいの矜持がなきゃいけねえ。そこの鬼!俺の金でこの街一番のデカい鍋買ってこい」指名されたゴドノフは金物屋に飛び込みその場で自身が2、3人入れそうな鍋を特注で造ってもらい虎に差し出す。

 「ごっそさん」

 「あの、今ゴドノフさんやヨセフとお金を数えましてこちらが差し引き分になります」

 「そいつはとっておけ」

 「いいえ、お返しします」

 「それじゃ前払いだ、また来るからよ。次の支払いに回してくれ」

 「そういう事なら、お預かりします。またのお越しを」大輔は頭を下げるが彼以外は虎が何一つ悪事を働いてないにも関わらず2度ときてほしくないと思った。

 

 天界に帰った虎はホクホク気分で鍋の蓋を開けると垂れそうな涎を押さえる。

 「うん、旨そうだ。ヨシっ、近い内俺の世界の奴らに神の啓示を示して同じモノを作らせて供えさせよう」そう呟くとこの虎の神は満足気にひとりごちた後、豚汁を一口啜った。

 

 

 




※神々のフルコース
・前 菜→未定
・スープ→豚汁
・魚料理→未定
・肉料理→未定
・ソルベ→未定
・メイン→未定
・サラダ→未定
・デザート→大学芋
・ドリンク →未定
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