5年前ニドの両親、ボブとマルティナは奴隷から解放された。これを機に離ればなれになっていた娘を探したがどうしてもみつからず、未練を残したまま仕方なくゾーン大陸にある祖国に帰る事になった。
国に戻った2人は生まれ育った村に帰ると元々従事していたサトウキビの栽培を始めた。5年経って生活も安定した頃、港町からの郵便が届いた。それは夫婦に宛てられた手紙である、生憎ボブもマルティナも字が読めないので村長に頼んで代わりに読んでもらう事にした。
『お父さん、お母さんへ
『その後お元気にお過ごしですか?私はエクレア大陸のラターナ王国はエドウィンの街の料理店で給仕の仕事を得て毎日楽しく働いています。今の雇い主はお給料もお休みの日も沢山下さいます、だからこうして文字を教わる事もできました。機会があればこちらにもお越しいただけたら幸いに思います、それではますますのご健勝を願っております。
ニド』
「こいつはホントにニドが寄越した手紙なのか?[ご健勝]なんて難しい言葉どこで教わったんだ?」
「ボブ、ニドは誰かに騙されているじゃないかしら?ウチの娘がこんな知的な文章書ける訳ないよ」我が子相手とはいえ失礼な夫婦ではあったがとにかくエクレア大陸に向かう旅費を作ろうと金をかき集めだした。
一方エドウィンの領主コルトン公爵は新たなビジネスを始めるにあたってラターナ近郊の各地の領主達や商業ギルド長ヴァルガス、大輔を自宅に呼んでいた。
「果物以外でも酒が作れるのは領主様も先刻ご承知と思います」
「うむ、具体的には何が良いかね」
「オリゼ、麦、バルタ、黒砂糖が最も適しているかと」コルトンとヴァルガスを除くそれぞれの街の領主達がどよめく。
「他はともかく黒砂糖は船便で輸入せねばなるまい、買い付けは行商人を雇うとして護衛が必要だな」
「冒険者ギルドのゴドノフに手配させましょう」
「あの~僕、喜んで引き受けそうな酒好きの冒険者に心当たりがあります」
エクレア大陸からきた行商人がボブとマルティナの農家を訪れた、港で噂を聞いたここの村長がエドウィンに行きたいが未だ旅費の集めらない2人の為に話をつけてくれたのだ。行商人に是非ラターナに連れていって欲しいと頼むが行商人は難色を示す、護衛の冒険者が口を挟んできた。
「品物は俺達がエドウィンまで届ける、そうすりゃ運搬費が浮くだろ?その金でこの人らを船に乗せてやってくれ」ご存じルカ一行である。
ようやく念願叶ってエドウィンに来る事ができた2人は愛娘に再会した、ニドは雇い主と一緒に働いてる従業員を紹介する。
「それじゃ手紙に書いてあったのはホントだったんだな」現状を目の当たりにしてやっと安心するボブ。
「旦那さん、ありがとうございます、これからも娘をよろしくお願いします」大輔の手をとり何度も頭を下げるマルティナ。
「マスター、黒砂糖ショーチューの作り方を各ご領主方に披露しよう。皆様痺れを切らしておいでだ」ヴァルガスに呼ばれ大輔は酒蔵へ向かう、これからギルド職員の手を借りて焼酎作りを指導しなければならない。
「さて、完成まで14日ほどかかるがその間この街に逗留するか。アンタらもウチの馬車で寝泊まりしないか?宿代はいらねーよ」夫婦はルカの誘いに応じる事にした、馬車の中はまるで一流ホテル並に居心地がいい。
「お風呂用意するね」ディーネがバスタブに水を貯めている、薪はゴノーが用意してトロワがベッドを整えルカが買ってきた食べ物で快適に過ごした。
いよいよ帰りの船に乗る前日の晩、大輔に呼ばれ越後屋にきた夫婦は今まで見た事ない店内の様子にクラクラしながらも席につく。テーブルには街の領主様を始め随分大勢の客が入っている。
「皆さん常連の呑兵衛さんよ、新しいお酒を只で呑めると知って集まったみたい」娘から説明された。
「お待たせしました、黒糖焼酎です」
「これが黒砂糖で作った酒かい?香りもいいねぇ」薬師のガーリンはグラスをジッと見つめている。
「ゆくゆくはラターナ全土の名物になりそうじゃな」どこぞのご隠居も期待を隠しきれない、コルトンとルカ以外は誰も知らないが実はこのご隠居こそラターナの先代国王である。
「「「「乾杯‼」」」」互いにグラスを打ち合い一斉に呑み始める常連達。
「こいつは旨い!」
「普段のショーチューよりかなり強いな」
「果汁とかを混ぜても良さそうだね」こうしてラターナに新たな特産品が誕生した。
「ニド、達者で暮らすんだぞ」
「エチゴヤの皆さんによろしくね」
「うん。お父さんもお母さんも元気でね」ニドはゾーン大陸に帰っていく両親を船が見えなくなるまで見送った。その姿にルカは
「
感想返信と内容が違ったのをお詫びします