以前感想返信でオークは人類の一種であると書いたのと伊勢エビの話について聞かれた事があったのでその辺りを掘り下げてみました
「ンじゃ、これ頼まれた品だべ」大輔の依頼で普段は売り物にしない海産物を持ってきた卸売りのディーン、日本と違い相場がないので双方の妥協点で値を決めて取り引きを済ませた。
「そんなの仕入れてどうするの?」ロティスが眼鏡の奥の目を丸くして尋ねる。
「アンタ知らないのね、あれスッゴく美味しいのよ。私もこの店で仕事して初めて知ったけど」
「前、マスター、
「一度だしたらやたらハマったお客さんがいてね、今日も予約が入ってるんだ」そう言って手早く捌くと
「そんなの食べられるんですか?」唖然とするニドに
「これ自体は食べないよ、こっから旨味を引き出すのさ」ゾーン大陸はどの国も食文化が低いせいかニドはウマミとかいうのがどんなモノか知らない、しかし自分を拾ってくれたマスターのする事に間違いはないだろうという確信はあった。
ラターナ王国の片隅にはオークの集落がある、
ルーファス商会で樵と木材の運搬をする人足として雇われている若いオークのフレディは集落から毎日エドウィンの街に通い仕事をしている、適齢期を迎えた彼はこの街でクリスというラミアと知り合いになり少しずつ親しくなりやがて恋人同士となった、今日は休日だがここに暮らす彼女に結婚を申し込もうと意気揚々とやってきた。
「クリス、俺と結婚してくれないか?」この日の為に購入した宝石をあしらったネックレスを彼女に差し出しプロポーズする、クリスは承諾した。
フレディは父を、クリスは母を連れ結婚の挨拶と互いの親の顔合わせの目的で越後屋に訪れていた。
「それはおめでとうございます」店主の大輔始め従業員達も祝いの言葉を送る。
「ありがとう。2人が結婚すれば孫に男の子も期待できるわ」
「ワスも孫娘さほしかったけんど諦めてただよ、だどもこの娘さんなら希望はあるでな」若い2人は顔を赤くして俯くも気を取り直しフレディがこの店で食べてからスッカリ気に入って今回もマスターに頼んで予約していたという料理を4人分頼む。
「イセービのパスタをお願いします」
「はい、しばらくお待ち下さい」料理が来るまでの間にフレディの父は息子にこんな質問をする。
「ほんでフレディ、集落にはこの娘さん連れていつ帰って来るんかいの?」
「いんや、結婚したらおで達はここさで暮らすつもりだけぇ」父につられてついついオーク独自の訛り言葉で話してしまったフレディは婚約者母子の存在を思いだしハッとした。
(おっ父のアホォ、これじゃ田舎者丸出しでねぇか)恥ずかしさで縮み込むフレディだったが
「そんな事気になさる必要ないわ。交易で身を立ててる私はとうに慣れてるし」母のベポラは落ち着いている。
「私達これから家族になるんだから遠慮しないで、それにお
パスタに絡まっているのは茹でたとみえる大振りなペナの切り身、その上にルシコンを煮込んで作ったソースがタップリかけられている。
「このソースは、ルシコンにラクを混ぜてあるみたいね」
「ソースにもペナの味が染みだしているわ、むしろ身以上に濃厚」これが料理人だったら地団駄踏んで悔しがるだろうと邪推しつつ彼らは食事を楽しんだ、まさかホントに料理人がその場にいたとも知らないで。
「ではそちら様もご亭主さ既に天へ召されただか?」越後屋を引き払って互いの子供達と別れて2人で酒場に繰り出したフレディの父は息子の婚約者の母親が今は独り身と聞いた、そしてベポラも
「奥様を亡くされてますのね、片親で子供を育てるのは大変だったでしょう?同じ経験をしている私には解りますわ」何だか怪しい雰囲気のこの2人、後にフレディとクリスは夫婦にして義兄妹という戸籍上ややこしい関係になる。
今日も今日とて越後屋の味を盗もうと企んでいたジョルジオは何とかしてこのパスタの秘密を掴むいい案はないかと考えていた、とはいえ無理に厨房へ押し入り衛兵など呼ばれでもしたら宮廷料理長の立場まで失う。どうしたものか悩んでいると
「すいません、今日は閉店します」ウェートレスに声をかけられやむなく店を出ていった。
「あの男はこの街の領主にも気に入られているようだし…そうだ!スパイを潜入させよう、そうと決まれば早速人選せねば」我ながらいい手を思い付いたと不敵な笑みを浮かべるジョルジオであった。
オークには男の子、ラミアには女の子しか産まれませんがこの組み合わせのみ男女両方が産まれる可能性があります
ジョルジオはどんなスパイを送り込むつもりでしょうね?