「どういう訳かここの人等は死神化した状態でも俺の事が見えてるみてぇだな…」
一護は子供を助けたあとに肉体に戻りそそくさとその場を後にしていた。本来死神は、触ることはおろか視認する事すら出来ないはずだ。だが、触る事ができ、見る事が出来た。謎に謎を重ね頭が痛くなる。
(このままじゃラチがあかねぇ。誰かに話しかけてみるか…)
「おっさん、ちょっといいか?」
一護は目に留まった店の筋骨隆々で少しコワモテな雰囲気の店主に話しかける。
「おっ!なんだ兄ちゃん変わった格好してんな?旅の途中か?」
「いや、まぁちょっとn「買い物していきな兄ちゃん!」っお、おう」
どうやらここは青果店のようだ。リンゴやメロン、オレンジのような色とりどりの果物たちが店先に並んでおり鼻腔をくすぐる。
(確かに商売やってる人に何も買わずに何か聞くってのもな…)
(でもな…)
「…これって使えるか?」
そう言って財布から日本の通貨、1円、10円、100円を取出し控えめに店主に差し出す。店主はいぶかしげな顔をして硬貨を見つめる。
「あ?どこの国の金だ?こんなもんルグニカじゃ使えねぇ。」
そうだろなぁと言わんばかりの顔で一護の顔がゆがむ。それと同時に店主の顔も見る見るうちに歪んでいくではないか。
「さてはてめぇ一文無しだな?あっち行け!商売の邪魔ァすんじゃねぇぇッッ!!」
★
「あんのクソジジイ…二度といかねぇ…」
「……こりゃぁ八方塞がりだな。」
結果だけ言うと何も聞く事が出来なかった。すごい剣幕で怒鳴りつけた店主は一護の事を突き飛ばした。一護も負けじと食い入ろうとしたが周りの視線が痛くそこでは静かに退場、現在は裏路地の階段で座り込んでいる。
民家の間から日差しが差し込んでいる。空座町の路地裏、いや、現在の日本の建物のほとんどがコンクリートで冷たさが感じられる。しかしこの国はどうだろうか。レンガで出来た家の壁、石畳の道、暖かみがあり国特有の趣を感じる。
「おい、てめぇこんなとこで何座ってんだ?」
「痛ぇ思いしたくなきゃ出すもんだしなぁ!」
しかしどうだろう、ここまで雰囲気の違うこの二つの路地裏だが「不良のたまり場」という点では共通しているみたいだ。前を見るとキノコ頭の小柄な男、白髪の細い男、最後に大柄でプロレスラーを連想させる男の三人が立っていた。
「こんなとこに来てまで俺は絡まれるかよ……」
「何ブツブツ言ってんだ?オラァッ!」
「おいてめぇら…今謝ったら許してやる…」
彼、黒崎一護は今非常に気が立っている。
突然訳の分からない場所までつれてこられ、店の店主には怒鳴られて、挙句の果てにこの街の不良に胸ぐらをつかまれているときた。一護の額には青筋がヒクヒクとしており眉間の皺が今までにないくらい深くなっている。どうやら限界のようだ。
「何で謝んなきゃなんねぇんだ!さっさと金出しやがれッ!」
「あぁ…そうかよ…」
プツリ。
何かが切れた音がした。一護は自らの胸ぐらをつかみかかっている白髪の男を殴ろうとしたその時
「ちょっとどけどけどけ! そこの奴ら、ホントに邪魔!」
金髪の小柄な女の子が走ってきた。いったい何事だと、だれもが思っただろう。
「い〝だっ!」
一護にぶつかりながらも、そのまま壁を伝い屋根を伝いどこかへ行ってしまった。一瞬のことだった。台風のようだとはまさにこのことであろう。
「なんだぁいまのは…」
あっけにとられポカンとしている不良三人。一護はここぞとばかりに白髪の男の腹部に右フック。
「うぐぁっ!」
倒れこむ白髪
「この野郎っ!オラァっ!」
それに気づいた大柄の男が顔面めがけて殴りかかってきたが
「おっせぇんだよォッ!!」
「なにぃッ!うわあぁぁぁ!」
そのまま腕をつかみ肩に乗せ、背負い投げの要領で投げ飛ばした。
「待て!下に俺がぁぁっぁあ!!」
運がいいことにキノコ頭の小柄な男もそれに巻き込まれ二人同時に戦闘不能。なんというか、すっきりした。まだここに来て少ししか経っていないはずが、うっ憤がたまりにたまっていた一護とてもすっきりした気持ちだ。すがすがしい表情で
「よぉし終わったぁ」
手の汚れを落とすようにパンパンと払っていた。すると後ろから声が聞こえた。
「そこまでよ!」
「今度はなんだ?」
後ろを振り向く。するとそこには真っ白な髪、そして雪のように白い肌の美しい女性が立っていた。彼女はつづけて言った。
「今なら許してあげる。だから、潔く盗んだものを返して。」
「盗んだ?俺が、か?」
「お願い、あれは大切なものなの。他のものなら諦めもつくけど、あれだけは絶対にダメ」
彼女の口ぶりから少し焦りが感じられた。しかし一護はさっきここに来たばかりで盗んでなんかいない。
絡まれている最中に走り去っていった金髪の少女の事が頭に浮かぶ。
「俺は盗んでねぇ。だがさっきここを急いで走ってった金髪の女は見た。そいつかもしれねぇな。」
「嘘じゃないみたいね…」
「早く追いかけないと…!」
走って隣を過ぎて行く。階段を昇りきったところで彼女が止まる。
「でも、それはそれとして…」
「見過ごせる状況じゃないわね!」
確かに。無傷の一護の周りにはボロボロの倒れた男が三人。事情を知らない他人から見れば一護が一方的にぼっこぼこにしたように見える。
「ま、待て!これは誤解d…!?」
ビュンッ!
一護の顔の真横に何かすごい勢いで過ぎて行く。見ると少女の突き出した右手から次々と氷のようなものが飛んできている。
「クソッ!敵かッ!」
すぐさま右ポケットの代行証を手に……取れない。おかしい、いくら突っ込んでも……ない。
他のポケットも……ない。
そしてまたあの金髪の少女が頭に浮かぶ。
「やられた……あいつか…!」
(まずいな…どうする…?)
「待て!話せば!わかる!」
苦肉の策。止めてくれるとは思わないがよけながら彼女に向かって必死に訴えかける。生身の身体では限界がある。するとあれだけ激しく撃ち込まれていた氷の礫がピタリと止む。
「何よ!まだ何かあるの?」
「や、止めてくれた……?」
さっきの不良三人以上のポカン顔である。
一護は死なない方向で。
みんなも死なないように一護に頑張ってもらいたいです。