真剣で忍界最強なんだか....   作:柚ちょこ

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第三章 : 立花恋物語
第十二話 : デアイと出会い


おぞましい視線を感じ、明人の意識は覚醒した。

 

しかし、明人が目覚めた場所は家の自室ではなく薄暗い空間だった。

足元は水に覆われ近くでは水が落ちる音が際限なく聞こえてくる。

 

『ようやっと目が覚めたか....』

 

今までに聞いたこと無い声に明人は振り返る。そこには明人の何十....いや何千何万倍の巨大な体があった。体は白く、人間のものではなかった。そして、何よりも明人のことをジッと見つめる巨大な目が明人の目の前にあったのだ。明人はこの生物を知っていた。この生物は明人の中にずっといることを知っていたのだ。

 

「お前は....十尾なのか?」

 

明人の心には初めての感情....『恐怖』があった。自然と声にも恐怖の色がついている。

 

『こうして会うのは初めてだな....立花明人』

 

その声は明人が今まで聞いてきた声よりも遥かにおぞましく重圧がある声だった。その声を聞く度に明人は押し潰されそうな感じになる。

 

「あぁ、俺に何の用だ?」

 

恐る恐る明人が聞き返すと十尾と呼ばれる生物は大きな目をさらに見開いて明人に言う。

 

『貴様はいつまで我の力を使わないでいるのだ?』

「なに?」

 

それは意外な質問だった。明人の中には十尾がいることは前々から知っていた。そう明人自身が望んだことなのだから。しかし、十尾はその力をなかなか振るう片鱗も見せない明人に嫌気がさし、こうして明人を呼んだのだ。

 

『我が力は破壊と創世の力なり、その力を欲したから貴様は我をその身に宿しておるのだろうが。何故我を使わん?』

 

十尾は明人に巨大な目を近づける。その距離はほとんどなくなり両者どちらかが動けば触れてしまうぐらいの距離を保っていた。

 

「俺はお前の力を破壊の力として使わない。俺は仲間を守るためにこの力を使うだけだ」

 

その言葉を聞いて十尾はますますその目を見開き明人を見つめる。明人は一時もその目から視線をそらしはしなかった。それが明人の決意だから。やがて十尾は明人から体を離した。

 

『グフフ....我を前にそのような事を申すとは肝が座っているのか馬鹿なのかどちらにせよ大したものだ。さすがは我が主といったところだろ』

「悪いね。こんな主で」

 

明人はそう言って肩をすくめる。十尾はその巨大な体を横に振る。

 

『いや、我は我で楽しませてもらっているから結構だが....気をつけた方がいいぞ我が主よ』

「何がだ?」

『いずれ何か大きなものがお前を襲うだろう。我の力を使う時は近いかもしれん。その気を持っておけ....ではな。また会おう』

「おい!何なんだ?その大きなものって?」

『時がくればおのずと知ることになる....』

 

その言葉は言い放って十尾は明人の静止を聞かずに暗闇に消えていき、明人の意識もだんだんと遠ざかっていった。

 

 

 

 

明人が十尾と会ったその日の放課後に明人とは商店街にある牛丼屋に来ていた。

 

「いったいなんだったんだ?」

 

牛丼屋の椅子に座り、他の人に聞こえない程度の声で自分に問いかける。

 

明人がここに来たのは食事をしに来たのともう一つ。

 

「なんだ明人。悩み事か?」

 

明人が頼んだ牛丼を手に近寄って来る人物がいた。その人物は明人もよく知る、人物だった。

 

「いや、なんでもないですよ釈迦堂さん」

 

黒いワイシャツにズボン、その上から牛丼屋梅屋のエプロンと帽子をつけている。釈迦堂が明人に近づいてきた。

 

「そうか、何かあったら言えよ。ほれ、牛丼大盛りお待ち」

「ありがとうございます」

 

釈迦堂が牛丼を明人の前に置き、明人は箸を持ち食べ始める。

 

釈迦堂がこの場所で働き始めたのはほんの数週前の話だ。九鬼による監視が続いた釈迦堂は板垣一家が自分に操られていたことにし、自分だけが罪を被ったのだ。板垣一家は川神院で正式な修業をし、釈迦堂は九鬼の息がかかった店で働くということになったのだ。一連の事件に関わっていた明人に監視役が命じられたということだ。

 

「それにしても似合ってますね。エプロン」

 

牛丼を食べならが明人は釈迦堂にいう。釈迦堂の外見もあいまってベテランの社員の雰囲気を出していた。

 

「だろ?ここは俺の天職だわ」

「その調子で頑張ってくださいね」

「あいよ。お前がくれたチャンスだからな。無駄にはしねぇよ」

 

そんな会話をしていると他にいたお客から呼び出しが来て、釈迦堂はそっちの対応に行った。その後、明人は牛丼を食べ終わりその店をあとにした。

 

 

『大きなものが近づいている』

 

その言葉が明人の頭から離れずにいた。十尾に言われたことは不吉で不気味で明人の心に楔を打ち付けたのだ。明人はそのことを考えながらぼんやりと商店街を歩いていた。

 

そんなことを考えていた明人が曲がり角を曲がった時にそれはおこった。ドンッと音と共に一人の女性に明人はぶつかったのだ。

 

「あっ!」

 

明人が我にかえると女性が手にしていた買い物袋に入っていた物が地面に散らばっていた。

 

「すいません!ぼんやりしていて....」

 

明人はその場にしゃがみ込み、落ちた食材を拾いはじめる。女性の方もすぐに落ちた物を拾い始めた。

 

「いえ、こちらもごめんなさい」

 

その言葉を聞いた瞬間に明人の心にすこしの電撃が走った。明人は顔をゆっくりと女性の方へと上げた。そこにいたのは明人がよく知っている人物だった。

 

腰まで伸びた綺麗な黒髪に黒い瞳。川神学園の夏服のワイシャツを着て、その上からは黒いベストを着ていた。そこには川神学園の評議会議長の最上旭がいた。

 

「あら、その制服川神学園の生徒ね」

 

その言葉に明人は放心していた心を元に戻す。

 

「あ、はい。そういうあなたも川神学園の生徒ですよね?」

「ええ、私は最上旭。三年生で川神学園の議長をしているわ。見ない顔だけど学年は?」

 

旭は落ちた物を拾いながら明人に尋ねる。明人も物を拾いながらその質問に答える。

 

「二年の立花明人です。どうぞ先輩」

 

落ちたトマトを拾い、旭に渡す明人。そして、落ちた物を拾い終わり。お互いが立ち上がる。

 

「二年....そう、よろしくね明人」

「っ!」

 

下の名前で呼ばれドキッとする明人。

 

─そうだ、この人は人を下の名前で呼ぶんだったけな。

 

「どうかしたの?」

 

少し明人の顔を覗くかのように首を傾げる旭。それと同時に黒い髪がサラッと傾げた方向になびいてとても魅力的だった。一つ一つの行動に明人は目を奪われる。

 

「いえ!なんでもないです。先輩はここに買い物に?」

 

心の高鳴りを誤魔化すために別の話題へと話を持っていく明人。それに答えるように旭の方も話を合わせる。

 

「ええ、家では私が料理をしているのよ。今日は買い出しにね」

「そうですか。俺と同じですね。俺も両親が共働きで基本家のことは俺がやってるんですよ」

「そうなの、偉いのね明人は」

「いえ、大した事はしてないですけどね。持ちますよ」

 

旭が持っている買い物袋の一つを手に取り、一緒に歩く。旭はありがとうと言って明人の横に行く、商店街の出口を二人で目指した。

 

「ここでいいわ。ごめんなさいね持ってもらって」

「いえ、これくらいは」

 

明人は持っていた買い物袋を旭に手渡す。そして、明人と旭の前に黒い車が走ってきた。旭はそれに乗り込みドアの窓を開け

 

「ばいばい明人。また学園でね」

 

と言って車は前に進み明人との距離を離して行った。明人はその車を見つめながら頭をかいていた。

 

「まいったな。まさかもう会うとは....」

 

明人の儚い声は夏の始まりを知らせるような真っ赤な夕陽の空に溶けていった....

 

 




最近になって読んでない本が多すぎて困っています....

どうも主です。

さて、如何だったでしょうか?今回から新しい章です。明人の恋沙汰や新しい敵の匂いをすこしでも皆様に伝わればと思い書きました。まだまだ未熟ですが暖かい目で見守ってやってくださいm(*_ _)m

では、このあたりでさよなら。
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