真剣で忍界最強なんだか....   作:柚ちょこ

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今回は少し長くので、ゆっくりとお楽しみください。


第十八話 : 愛してみませんか?

明人は極度に緊張していた。

 

学園で旭と遊園地に行く約束をし、そして今日がその約束の日となった。待ち合わせ場所の川神駅前に予定時間の30分も前に到着した明人は自他共に見てもソワソワしていた。

 

「(まずい....今思えば好きな人とどこかに遊びに行くなんてことをしたことがない。何も考え無しに誘ったが大丈夫なのか?)」

 

家を出た時からそんなことをばかり考えている明人。せっかくのデートだと言うのに当の本人がずっとこの調子では上手くいくものも上手くいかない。

 

「(いや、とりあえずはデートに集中しよう)」

 

と心で呟き、頭をぶんぶんと振り、余計な考えを頭の中から消し去る。そして、腕時計を見て時間を確認する明人。色々と余計な事を考えている間に時間は立っており、約束の10分前になっていた。

 

すると、明人の視界は急にフェードアウトした。

 

「だーれだ?」

 

そして、聞きなれた声が聞こえた。明人は落ち着いて声の主に答えを告げる。

 

「最上旭先輩ですね」

 

明人がそう答えるとフェードアウトしていた視界はいつもの様に明人に光を伝えだした。

 

「正解よ、おはよう明人」

 

明人が振り向くと薄い黒を基調とした大人びた服装の最上旭が立っていた。

 

「おはようございます先輩。その服とても似合ってますよ」

 

「ふふ、ありがとう明人。明人こそ普段のイメージとは違っていい感じよ」

 

明人の服装はジーンズに黒いTシャツ。その上から半袖の白いシャツを着て、前を開けているものだった。明人の身長や顔付きもあいまってそれなりの雰囲気にはなっている。

 

「これでも結構悩んだんですけどね」

 

「そうなの?でも、よくに似合っているわ」

 

「ありがとうございます。じゃあ、早速ですが行きますか」

 

と言って歩き出す明人。その横に旭も付いて行く。その並んで歩く姿はどこから見てもカップルそのものだった。

 

「あ、歩くの早かったら言ってくださいね。先輩に合わせますから」

 

「大丈夫よ、明人は優しいのね」

 

「そうですか?これくらいは女性に対して普通の対応だと思うんですが」

 

「そういうところも明人が女性に好かれるポイントなのかもしれないわね」

 

「そんなもんなんですかね?」

 

と明人は旭に返した。そして、明人と旭は電車に乗り、目的地の七浜の遊園地に向かった。電車の中でも会話が途切れる事はなく、明人自身にも充実した時間だった。

 

 

 

電車を降り、少し歩いた所に目的の遊園地があった。遊園地に近づくと大きな観覧車が明人と旭の視界に入ってきた。その観覧車を見ながら歩いているとようやく目的地に着いたのだった。

 

「俺自身も初めて来たんですけど、かなり広いんですね。さすがは七浜」

 

「そうね、私も初めて来たわ。みんな楽しそうね」

 

休日なためか、人は多かったがどのアトラクションも数分並ぶだけのストレスがない混み具合だった。

 

「さて、先輩は何か乗りたいものありますか?」

 

明人がそう聞くと、

 

「私は明人が乗りたいものに乗りたいわ。私をエスコートしてちょうだい」

 

「エスコートですか?」

 

突然の旭の発言に戸惑う明人。それを目に入れながら旭は意地悪く呟く。

 

「楽しみだわ、明人がどんなチョイスをするのか。言っとくけど私はちょっとやそっとじゃ、満足しないわよ」

 

「はぁ、分かりました。誘ったのは俺ですし先輩を満足させてみますよ!」

 

と明人は強気に旭に言ってみせる。

 

「あら、かっこいいわね。ハリウッド男優ばりに」

 

「じゃあ、軽いジャブから行きますかね」

 

そう言って、明人は周りを見渡し目的のもの見つけると自然に旭の手をとり、エスコートをして行った。

 

 

遊園地を二人で一通り楽しんだ後、明人と旭は近くのベンチに腰掛けていた。最初は二人で楽しんでいたが最後に乗ったジェットコースターで明人が完全に撃沈していた。

 

「まさか、明人がジェットコースターがダメだったとは新しい発見ね」

 

グロッキーになり、天を眺める明人に旭がそう話す。その言葉に明人は上見ながら答える。

 

「生まれてこのかた絶叫マシーンに乗ったことがなかったんですが、自分でもかなりの驚きですよ」

 

「また少し、明人のことを知れて私は嬉しいのだけど、明人はそうでも無いみたいね」

 

「ええ、でも、さっきよりは大分マシになりましたよ」

 

と言うと明人は自身の腕時計を見て時間を確認する。時間は丁度昼時を指していた。

 

「先輩、そろそろお昼ですけど、どうします?」

 

明人がそうゆうと旭は少し、嬉しそうに明人に切り返した。

 

「実はね、お弁当を持ってきているの。良かったら食べてちょうだい」

 

と言って旭はバックの中から少し大きめな弁当箱を取り出す。中を開けると卵焼きや唐揚げなど多種様々なオカズと一口サイズの可愛らしいおにぎりが入っていた。

 

「え、わざわざ作って来てくれたんですか?」

 

「ええ、腕によりをかけて頑張ってみたの」

 

明人の質問に旭は笑顔で返す。

 

「迷惑だったかしら?」

 

明人の様子を伺いながら旭がそんなことを言う。

 

「そんなことないです!すごい嬉しいです。今度お礼させてください」

 

旭の言葉をすぐさま否定し、笑顔を見せる明人。その笑顔も見て、旭も嬉しそうにする。

 

「そう、良かったわ。いっぱい作ってきたからたくさん食べてちょうだい」

 

「はい、いただきます!」

 

そう言って、明人は旭が作ったお弁当を食べ始める。そのあまりの美味しさに食べることに集中しすぎた明人のだった。

 

 

「本当に美味しかったです。ありがとうございました」

 

「ふふ、お粗末様」

旭の作ってきたお弁当を二人で完食し、明人が旭に感謝を伝える。

 

「それにしても、作り過ぎたと思っていたのだけれど、やっぱり男の子ね。あっという間に無くなちゃったわ」

 

旭が嬉しそうに明人に言う。

 

「相変わらず先輩の料理は美味し過ぎてついつい食べるのに夢中になってしまいます」

 

旭が入れた食後のお茶を飲みながら明人は旭に言う。その言葉を聞いて旭も明人にありがとうと返す。

 

「さて、次はどこに行くの?紳士さん」

お弁当をバックにしまい、明人の顔を覗き込みながら旭がそう言った。

 

「そうですね、七浜の魅力は遊園地だけじゃありませんから色々回ってみますか」

 

「いいわね、実は七浜に来ることはそうないから色々見ておきたいと思っていたの」

明人の提案を聞き、旭は嬉しそうに目を細めた。

 

「じゃあ、行きますか」

 

「ええ♪」

 

明人が立ち上がり、歩き出すと旭はその腕に組み付いた。いわゆる、カップルの腕組みをしながら、明人と旭は七浜の街を歩き始めた。その様子は仲睦まじいカップルの様に見え、周りの通行人から嫉妬の視線が明人に向けられたのは言うまでないことだった。

 

 

明人と旭が七浜の街を二人で歩き始めてから既に数時間が経ち、それは茜色に染まっていた。最初に七浜の野球チームの七浜ベイの試合を観戦し、七浜の伝統の赤レンガを見て周ったところでこの時間になっていた。

 

「今日は本当に楽しかったわ。誘ってくれてありがとう明人」

 

夕暮れになり、明人と旭は七浜の海を見に公園に来ていた。旭はそこから七浜の海岸を見渡していた。

 

「お礼を言うのはこっちの方ですよ。楽しい休日をありがとうございました先輩」

 

「あら、それはこっちだってそうよ。こんなに楽しかった休日は久しぶりだわ」

 

そう言って、また旭は茜色に染まった海を見据える。その表情はとても美しくもので明人の心をあっという間に奪っていた。

 

「ねえ、明人」

 

旭の言葉にどこかに行っていた意識をすぐさま呼び戻す明人。

 

「あ、はい。なんですか?」

 

旭は明人の方へと振り返り、満面の笑顔で

 

「また誘ってね」

 

そう言った、その瞬間に夕日が旭に輝き、今まで明人が見てきた旭の姿で最も心を奪われた。

 

「....」

 

「明人?」

明人が放心状態だったのが旭の声で呼び戻される。そして、明人はその場をてきとうな返しで乗り切る。自分が旭の姿に見とれていたとは言い出せるわけもなく。

 

「じゃあ、そろそろ帰りましょうか」

 

そう言って、旭は明人の先を歩き出す。その後姿が自分から立ち去るようにその時の明人には見えたのだった。

 

「先輩!」

 

その言葉は明人の本心から出たものか、またこの瞬間をまだ終わらせたくないという思いから出たものか明人自身にも分からなかったが、この場で言わなければ一生言えないと明人自身が直感していたのだった。

 

「なに?」

 

旭が明人の方へと振り向くと明人は旭にゆっくりと歩き出す。そして、この場で紡いだ脆い言葉を発していく。

 

「先輩は前に言いましたよね。もし、自分が自分じゃなかったらって」

 

旭が明人に言って言葉、普通ならまず分からない。だが、明人にはその言葉の本意が伝わっていた。だからこそ明人はあの時、その言葉に返答ができた。

 

「その時に俺は言いましたよね、変わらないって。今までもこれからもずっと変わりません。先輩は俺の憧れだって」

 

「ええ」

 

明人の言葉をしっかりと聞き、返事をする旭。その表情はどこか刹那げだった。

 

「あの言葉は嘘じゃないです。これからも先輩の近くにいたいです。それで少しでも先輩の力になりたいんです」

 

「ええ、嬉しわ。そう言ってもらえて」

 

「でも....今のままじゃ、ダメなんです」

 

「え?それってどういう....」

 

旭の言葉を遮るように、明人が距離を詰める。その目はまっすぐ旭の目を見つめていた。

 

「先輩、俺はあなたが好きなんです」

 

明人の口から出た言葉は旭の思考を一時停止させた。

 

「人としてではなく、一人の女性として愛してるんです。」

 

そんな旭のことなどお構い無しに明人の言葉は続いていく。

 

「俺はあなたを支えたいです。後輩として恋人として!ずっとあなたのそばにいたいんです。」

「....」

 

明人の言葉に旭は言葉を失っていた。そんな旭の様子を見た明人は急に我にかえる。

 

「でも、これは俺のわがままなんです。すいません。いきなりこんなこと」

 

「嬉しいわ」

 

「え?」

 

旭の口からは出た言葉は歓喜の言葉だった。明人の告白を旭は正面から受け止め、旭はそれに真剣に返していく。

 

「私もあなたのことを愛しているわ、明人。人としてではなく一人の男性として。だから、本当に嬉しわ」

 

「先....輩?」

 

「旭さんって呼んで、好きな人には名前で呼んで欲しいわ」

旭は笑顔でそう言った。そして、明人はその愛しい人の名前を呼ぶ。

 

「旭さん....」

 

「はい」

 

そして、明人はもう一度自分の気持ちを目の前の人に伝える。心を一つ一つ乗せて。

 

「旭さん、俺と付き合ってくれませんか?」

 

そう言って、明人は手を差し出す。弱々しく普段の明人なら予想もつかないくらい震えて。旭はその手をすぐ握りしめ、満開の花が咲いたような笑顔で

 

「はい、喜んで」

 

その言葉に明人の気持ちのリミットは外れ、握られた手を引っ張り、抱き締める。華奢(きゃしゃ)で力を入れたら折れてしまうんじゃないかと思うほど細いからだを明人は優しく抱き締めていた。旭もその体にそっと手を置き、抱き締め返していた。

 

「好きよ、明人。これからよろしくね」

 

「はい、こちらこそ」

 

その言葉を口にして、二人は少しだけ回した手の力を抜き、互いの顔を見つめる。そして、そのまま吸い合うように軽いキスをした。

 

「ファーストキスを貰われちゃったわね」

 

「はは、貰ってしまいました」

 

旭の言葉に明人が笑いを漏らし、そう返すと旭は少し頬赤らめ明人に伝える。

 

「ねぇ、今度はもっと長く....して」

 

「はい」

 

そう言われて、二人はまた見つめ合い、互いに顔を近づけまたキスをする。

 

「ん....」

 

旭の声が明人の耳に入ってくる。心臓が張り裂けそうなくらい鼓動が上がるのを明人自身が感じていた。

 

そして、徐々に互いの顔が離れていく。

 

「明人は意外に強引なのね」

 

「そういう旭さんだって、お願いしてきたじゃないですか」

 

「そうだったわね」

 

そう言って、二人の体は徐々に離れて言った。

 

「えっと....これからよろしくお願いします。旭さん」

 

明人が改めて、旭にそう言う。

 

「ええ、こちらこよろしくね。明人」

 

そして、二人はしっかりと互いの手を握りながら長くて、甘い一日の帰路に着いていった。

 

 

夜・最上邸

 

この日の夜、旭は一つの決断をしていた。最愛の者との相思相愛を成した旭にはやらなければいけないことがあった。これからのことを決めると言う事を

 

「お父様」

 

旭はそう言って、自分の家にいた一人の男に話しかける。

 

旭の父、最上幽斎。九鬼で働いているこの男に旭は一つの決意を伝えればならなかったのだ。

 

「どうしたんだい?旭。今日はお友達と遊びに行っていたんだろう。楽しかったかい?」

 

「ええ、とても。それとお父様に伝えたいことができました」

 

「伝えたいこと?なんだい?なんでも言ってごらん」

 

幽斎は笑顔のまま、旭に語りかける。

 

「お父様....『暁光計画』を中止したいんです」

 

「それはまたどうしてなんだい?」

幽斎は笑顔のまま、旭に言う。

 

「彼氏が出来んたです、今日に。私はその人とずっと一緒にいたいんです。お別れなんてしたくないんです」

 

「そうかい....分かったよ旭。大事なのは君の気持ちだ。君がそう決めたのなら私は何も言わないよ。よく話してくれたね」

 

幽斎は怒りなど全く、感じさせなかった。むしろ娘の成長を多いに喜んでいた。

 

「ありがとうございます。お父様」

 

「ううん、お礼を言われることなんてないんだよ旭。今度、旭の彼氏を連れてきておくれ。この目でしっかりと見ておきたいからね」

 

「はい、是非。じゃあ、ご飯にしましょうか」

 

そう言って、旭は夕飯の準備に取り掛かった。

 

また一人の運命が大きく動き、後の出来事にも影響することがこの日に起きたことを明人が知るのはもう少し先になっからのことだった。

 




ようやっと二人をくっつけることができました。

次からは違う章に入りますのでお楽しみに!

では、また次回。さようなら〜
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