4月×日
本日、俺はプラウダ高校の整備科に入学した。親元を離れ、妹や弟の騒がしい声が聞こえない寮での生活の寂しさを紛らわす為にこの日記を書くことにする。日記と言っても毎日書くわけじゃない。気が向いた時だけ。
それでも三日坊主(と言っていいのか)になりそうな気がするが、気楽に書いてみようと思う。
4月○日
今日は自分達が整備する戦車に乗っている戦車道履修者との顔合わせがあった。
そこで出会った印象深い2人に出会った。
俺と同じく1年生らしいのだが1人は金髪で身長があまりにも低すぎるし「あんたが私の戦車整備担当? なんか冴えない男ね。整備の腕も冴えなかったらすぐに代えてもらうから!!」と高飛車な態度。
もう1人は黒髪ロングの俺より背の高い美少女で、よし!俺ツイてる!と思ったが「あなたが担当整備士ですか。殿方には特に興味ありませんので整備以外では特に話しかけないでください。・・・あと、カチューシャには手を出さないように。」とのこと。
とりあえず苦笑いしながら自分の名を告げるとそれぞれ、カチューシャ、ノンナと名乗ってくれた。入学そうそう、この2人の整備士としてやっていけるのか不安になった。とりあえず今日は寝ることにする。
△月×日
あの2人と特に必要以上なことを喋ることもなく数ヶ月が過ぎようとしていた今日の夜、整備を終えて寮に戻る途中の道に分厚い本らしき物が落ちているのを俺は見つけてしまった。
しゃがみ込んでそれを手に取り、光量の少ない学校設備のライトを頼りに表紙を見てみると「カチューシャ日記」という文字が。数ページめくってみるとどうやらあの小さい金髪少女の1日の行動について書いてあるようだった。
更にページをめくろうとすると「ガチャ」という音と共に頭部に冷たく重たい感触、そして同等の声が耳元で伝う。「今見た内容を忘れてすぐその本を渡しなさい。」そんなことを言われた気がする。
両手をハンズアップして本を後ろにやると勢いよく奪われ、急いでページをめくる音が聞こえる。ゆっくりと振り返るとノンナがいた。日記を凝視していた彼女だが俺と目が合うと片手に持っていたマカロフを向けられた。
どうやら先程は頭にあんな恐ろしいものを突き付けられていたらしい。必死にカチューシャ日記を抱えながら彼女は言う。「このことは他言無用です。もし破ったら・・・。」トリガーに力がこめられる。
必死でコクコクと頷いたがその後、彼女に何度も念を押され、寮に戻ったのは深夜過ぎだった。
×月□日
本日は戦車道をやっている彼女たちを見ていた。練習が終わり各々が戦車倉庫に戦車を戻しているなか、俺の隣からカシャカシャという音が聞こえてくる。見るとノンナがキューポラから顔を出しているカチューシャをカメラで撮っていた。
その眼差しには愛情と殺気が入り混じってる気がした。時折微笑む彼女の姿を見て、思わず声をかけてしまった。一緒にいるところを撮ってやろうか、と。
しばらく俺とカメラを交互に見た後、「お願いします。」と無表情、いや少し照れた様子・・・だったと思う。ゆっくりとカメラを差し出された。
カメラを受け取り、カチューシャとノンナが2人で談笑しているところをいくつか写真を撮っていると途中でカチューシャに気づかれ「何撮ってるのよ!」と言われたが、偉大なるカチューシャの日々を記録している
そう言ったら「そ、そう。じゃ、じゃあ仕方ないわね。特別に許してあげる」とのこと。何となくこの二人の扱い方がわかってきた。
何枚か彼女たちを撮り、カメラをノンナに返そうとしたら「貸しますので明日以降も撮ってください。」と耳元で囁かれ、少し笑ったの彼女の顔を見た。その笑顔にやられ、おう と答えてしまった。単純だな俺。
4月×日
カチューシャとノンナを撮る日々が当たり前になり、彼女たちとの雑談も増えた今日この頃、いつの間にか2年生に進級し本日は身体測定だった。俺はここ1年でかなり背が伸び、俺よりも背が高かったノンナも少し見下ろすくらいになった。
ノンナもそれに気づいたらしく「ずいぶんと背が伸びましたね。」と微笑みんで俺の隣に立ち、頭をコツンと俺の肩に預けてきた。こういったスキンシップも最近多くなった気がする。
ノンナは身長は昨年と変わっていないが、その・・・もともと大きかった女性らしい部分がさらに大きくなった気がする。見下ろすことが出来るようになった分、どうしてもそちらに目がいってしまう。情けない。
ちなみにカチューシャは去年と全く変わってなかった。
4月△日
本日から通常授業だが前日が整備で徹夜だったので午前中は学校をサボり、昼から登校していると金髪長身の外国人がキョロキョロとあたりを見回していた。
ウチの制服を着ている・・・ということはウチの生徒なんだろう。そういえば留学生が来るって噂になっていたかと思いながら何か困っていそうだったのでとりあえず近づいていった、が外国語わからんよ俺。
あ~、あれかな?ちょうどお昼だから食堂行きたいのかな?と思いながら彼女の前でご飯を食べるジェスチャーをしてみた。すると彼女の表情が明るくなり、コクコクと頷いた。
安堵しながら彼女を食堂まで案内するとえらく懐かれ、俺の隣に引っ付きながらご飯を食べ始めた。俺も悪い気はしないなと思いながらご飯を食べているとガシャンとおぼんを置く音が・・・目の前にはノンナ。
いつの間にかつけられた2つ名『ブリザードのノンナ』まさにその表情でこちらを見ていた。さらに恐らくロシア語で何やら話し始めた。すると隣にいた彼女もロシア語で応戦。
聞きなれない言語のやり取りはヒートアップして食堂の注目を集める。そろそろ止めた方がいいかと思った頃、外国人の彼女が懐からある1枚の写真を出した。するとノンナの表情が固まった。
数秒後、熱い握手を交わす2人の姿が見えた。何の写真だろうと思って覗こうとしたら外国人の彼女に人差し指で俺の唇を抑えられ「見ちゃダメです♪」と日本語で言われた。
その後、「クラーラです♪」と流暢な日本語で自己紹介をされた。日本語喋れたのかよ。
○月□日
やった。ついにやった!! あの黒森峰を破って全国制覇を成し遂げた!! 整備士としてこれほど嬉しいことはない。 学校側も大盛り上がりで、祝賀会は朝まで続いた。
興奮気味だったカチューシャも明け方にはノンアルコールウォッカの瓶を抱きながら寝てしまった。しかたないので抱きかかえてノンナと一緒に女子寮の近くまで運ぶ流れとなった。
そこでノンナが「フフッ、こうやって3人でいるとまるで親子みたいですね。」と軽快に言ってきたのでアルコールウォッカがどっかに交じっていたんじゃないかと疑った。
4月□日
早いもので3年生に進級し、カチューシャは隊長、ノンナは副隊長、俺は整備班の班長となった。全国制覇2連覇を目指すべく毎日練習に余念がない。
ということは毎日戦車がボロボロになって帰ってくるというわけで整備士の俺の苦労も絶えない。今はノンナの特製ボルシチの差し入れでどうにか体を動かしている。
この日記も続けるのも難しくなってくるかもしれない。
○月×日
3年生最後の大会が終わった。無名校大洗女子にフラッグ車を撃破され敗退。敗因は・・・厳しく、端的に言ってしまえばカチューシャの慢心だ。
だがそれを責めるチームメイトは誰もいなかった。普段から高飛車な彼女だが影で努力をしていることを皆知っていたからだろう。
俺もここまでの付き合いでよくわかった。・・・うん、すごくいいチームだ。このチームの整備士をやれてよかったと思う。
試合後、ゆっくりと降り積もる雪を見ながら少し感傷に浸っていると申し訳なさそうな顔をしたカチューシャがやってきた。後ろには当然ノンナもいる。
何か言いたげだが言葉がなかなか出てこないらしい。何となく言いたいことはわかるが俺は別にそれを聞きたくなかったのでカチューシャの頭をわしゃわしゃと撫でまわし一言、お疲れ様と言った。
すると案の定「子ども扱いしないでよ!!ノンナ!!」そう言ってノンナに肩車してもらい「まっ、あんたもよく頑張ったわね。褒めてあげるわ。」とのこと。そりゃどうも。とだけ返して一緒に学園艦に向かって歩き出した。
やはりカチューシャはこうじゃなくっちゃっな。そんな思いを込めてノンナにアイコンタクトを送ったら軽く微笑んで頷いてくれた。
8月○日
大学選抜チームに勝ち、大洗女子の廃校を阻止することが出来た。つい最近だが大洗女子に旧友がいることがわかったので俺も他人事ではなかった。
ホバークラフトを運転し、帰路につきながらこの後のことを考える。おそらくこれが高校生活で整備士としての最後の仕事になるだろう。
3月×日
入学した日の日記を読み返してみると少し弱気になっている自分に思わず微笑んでしまう。そして思わずエールを送ってしまう。大丈夫、君はとても素晴らしいチームで働けるよと。
本日、俺はプラウダ高校を卒業した。カチューシャとノンナは同じ大学へ進学、俺は家庭の事情で進学できないので整備士として就職という道を選んだ。
卒業式後、俺は自分の胸の内をノンナに伝えようとしたがやめておいた。カチューシャを支える彼女の邪魔をしたくないと思ってしまったからだ。
「また会いましょう。」
彼女はそう言ってくれた。俺は笑いながら(上手く笑えていたかわからないが)頷いた。
・・・
・・
・
△月○日
久しぶりにこの日記を開き、そして今書いている。社会人になってから仕事に追われ書く暇なんてなかったからな。
さて明日は高校の同窓会だ。卒業以来会っていないからみんなどうなっているか楽しみだなー。
△月×日
どうしてこうなった。い、いま落ち着くために日記を書いている。現状を整理しよう。
見覚えのない部屋。俺、裸。そして隣で寝ていたのは・・・ノンナ。
待て待て、思い出せ思い出せ。同窓会に行った。周りの男子の注目を集めているノンナを発見。向こうもこちらに気づき駆け寄ってきてくれた。
昔話に花が咲く。お酒もすすむ。・・・・GO? いや嘘でしょ俺~。だが部屋に数々の証拠が散乱している。・・・腹を決めよう。
・・・
・・
・
○月○日
今日は忘れられない1日になった。気分は今、最高だ。隣には純白に身を包んだ愛しい人がいた。
2人で並んでゆっくりと階段を降りる。すると聞き覚えのある声が、
「ちょっと2人とも、こっち向きなさいよ!」
声のする方を向くとクラーラに肩車されたカチューシャがカメラをこちらに向けていた。
その姿を見て思わずお互い顔を見合わせて笑ってしまった。そう、すべては高校時代のカチューシャを撮ることがきっかけだったから。
妻もそれを思い出してしまったのだろう。
まさかカチューシャを撮っていた2人が今度はカチューシャに撮られる側になろうとは予想だにしていなかったからだ。
俺と妻はカチューシャの方を向き、最高の笑顔でカメラを出迎えた。教会の前で。
おまけ
◎月◎日
今日も妻と娘は可愛い。娘に関しては容姿も妻に似ていて本当に俺に似なくて良かったと思っ・・・・
「パパ―!! ママがご飯出来たって!!」
「そうか。今行くよ。」
「何書いてたのー?」
「んー? 内緒。」
「えー!!おーしーえてーおーしーえーて。」
「しょうがないなぁ。じゃあママには内緒だよ。約束できる?」
「できる!!!」
「よし、いい子だ。これはね、ママが可愛いなぁってことを書いた日記なんだ。」
「ずるーい!! 私のも書いてー!!」
「大丈夫、ちゃんと書いてるよ。」
「2人ともー、ご飯ですよ。」
「「は~い。」」
「じゃあ行こっか。」
「だっこ~。」
「はいはい。」
(今日の日記はご飯を食べた後だな。)
これでノンナ編ENDってわけではないです。
誰かノンナと純愛イチャラブックスする同人誌描いてください。(エネルギー枯渇)