ノンナからチョコ貰えないから書いたよ!!!(泣)
2月13日バレンタインデー前日、俺は学校の調理室で湯煎で溶けたチョコをヘラで混ぜていた。理由はノンナが「緊急事態です。同志タクマ、手伝ってください。詳細は調理室で話します!」と電話をかけてきたからだ。何事かと思い、整備の仕事を投げ出して調理室に来たら渡されたエプロンと三角巾。数秒固まった後、ゆっくりノンナと目線を合わせると「やれ。」と言いたそうなブリザードの瞳が調理台の上にあるボウルと業務用チョコの袋を指す。断れるわけもなく俺はチョコをかき混ぜるマシーンとなった。
「同志タクマ、進み具合はどうですか?」
「・・・まあ、ボチボチって感じ?ほら。」
彼女が見やすいように少しボウルを傾ける。
数時間前から続けている単調作業と溶けたチョコの香りが俺の胃に対してボディーブローを打ってくるおかげで死んだ目をしたままノンナの問いかけに答えるが彼女はそんなことは気にとめない。最優先事項はカチューシャへのチョコレート作りが順調に行われているか、ということなのだ。
「わかりました。では引き続きお願いしますね。」
そしてノンナは俺の少し後に入室してきた同志クラーラと設計図のようなものを広げてロシア語で話しはじめた。恐らく準備に抜かりはないか熟考しているのだろう。カチューシャへの愛が凄い。そして重い。しかし2人にかかれば目の前で溶かしているチョコは間違いなくカチューシャの姿になるのだろう。・・・・プラウダバンザーイ。
チョコを混ぜ続け、業務用のチョコの残量もようやく終わりが見え始めた。時刻はいつもならもう夕食を済ませた後くらいだ。しかしチョコの香りで胃は完全にノックアウトされ食欲は湧かない。
「同志タクマ、お腹空きませんか。」
クラーラが下から覗き込んで問いかけてきたので別世界に飛ばしていた魂を急いで現世に戻し焦点を合わせる。心配そうな表情で美しい碧眼にやつれた少し俺が映る。
「あの・・・そんなに見つめられると照れてしまいますわ。」
「あっ、ごめん。・・・・お腹か、正直今はあんまり食欲は・・・」
「はい、あ~ん。」
「・・・・・。」
俺の返答を聞かずに少し頬を染めた彼女の手からロシア風のクレープ、ブリヌイが差し出された。恐らくチョコづくりの合間に作ったのだろう。こうなったら食欲があろうがなかろうが食うしかない。さらに言うと湯煎の作業中なので両手は空いていない。
「・・・あー、んっ。」
ゆっくりと口を開け、ブリヌイに齧り付く。咀嚼して味を確かめると酸味の後に柔らかい甘さが押し寄せてくる。ふむ、中身はイチゴジャムかな? あと生クリーム。口をモゴモゴと動かしながらブリヌイを満喫する。
「うん。おいしいよ。ありがとう。」
「それはよかったです。 あっ!同志タクマ、クリームが口の周りに。」
「えっ、本当? じゃあ拭かない・・・っ!!!!」
湯煎の作業を止めて、右手を口の近くに動かそうとしたところ彼女の細い手に阻まれ代わりに彼女の顔が近づいてきた。一瞬の出来事だったので反応できずに固まっていると生暖かい感触が口に伝わってきた。
「フフッ、舐めてしまいました。」
口を開けたまま静止していた俺だが数秒後、ウィンクして微笑む彼女が俺にしたことを理解でき、一気に体温が上昇した。しかし
ザシュ、ザシュ
後ろから不快な音がするので恐る恐る首だけ動かして見る。そこには明日のカチューシャのお昼用のボルシチを作っているノンナがいた。・・・うん、それだけならよかったんだけど、これ見よがしにトマトを持って斬首するかのように切っているのは何故なんですかああぁぁぁぁ!!! 目のハイライト消えてるのも何故なんですかああぁぁぁ!?
上昇した体温も一気にブリザードの中だ。
「も、もう十分チョコは溶かしたよな? じゃ、俺は整備の仕事があるからこれで!!!」
彼女の無言の圧力に耐え切れず俺は調理室から逃げた。
翌日、バレンタインデー当日。
調理室から逃げた俺だが、整備の仕事が残っていたのも事実。それを片付けていたら徹夜してしまったのでこのまま学校へ登校することにした。寝不足なので若干フラフラと歩いていると後ろから聞きなれた声がした。
「ちょっと、タクマ!!」
「ん? 声がするのに姿が見えない?」
気づいているが少し遊ぶことにする。辺りをわざとらしくキョロキョロと見渡す。すると「キーッ!!!」と言った声が響き、背中に負荷がかかる。どうやら無理やり俺によじ登っているらしい。そしてどうにか肩車の状態になるとペシペシと俺の頭を叩く。
「どう? 少しは目が覚めたかしら。次やったらシベリア送り10万ルーブルよ!!」
「はいはい、悪かったよ。で、何か用かカチューシャ?」
「ふん!本当ならあんなことしたアンタにはやるつもりは無いんだけどね。カチューシャの心は広いから許してあげる!!シベリア平原のようにね。 ほらチョコよ! 受け取りなさい!!」
手を開いたまま上に持っていくと非常に軽いものが置かれた。手を戻して確認すると茶色い5円玉だった。チ○ルチョコ数個を予想していたがそれよりひどいなおい。
「1ヵ月後のお返しは3倍返しで許してあげるわ!!」
姿は見えないがおそらく俺の頭の上でふんぞり返っているのだろう。しかたない望み通り返してやるか。
「1ヵ月後と言わずに今返してやるよ。」
「えっ?」
カチューシャを頭から降ろし、バッグの中からあるものを取り出し渡してやる。
「ほれ。」
「ほれって・・・・う○い棒2本じゃない!!ふざけてるの!!!」
「ふざけてねぇよ、5円が20円相当になったんだから3倍返しどころか4倍返しだぞ!! じゃ、これでホワイトデーは無しな。」
そう言い残して俺は走って逃げる。後ろからカチューシャの「待ちなさいよー。」って声が聞こえたが無視。あ~カチューシャをからかうの楽しいな~。 心の中でそう歌いながらご機嫌なまま教室ヘ向かうため廊下の角を曲がろうとした刹那、何者かに口を塞がれ、背後を取られた。
「ん!? んーー!!んーー!!!」
「あまり騒がないでください。気絶させなきゃいけなくなります。」
(この声、ノンナ!?)
声の主がわかり、両手をあげると柔らかい指が口元から離れてゆく。そして今気づいたけど背中にも相当柔らかいものが当たってきた。堪能してる暇なんてなかったからな。っといかんいかん。 今考えるべきことはそれじゃない。
彼女がなぜこんなことをしたのか。それはもう俺には分かっている。カチューシャをからかったからだ。そしてその現場を目撃された。そんな愚か者の末路は「粛清」
だ!!
「同志タクマ、目を瞑ってください。」
来た。コレはビンタかな?しかたない、甘んじて受け入れよう。
言われた通り目を瞑り、手を後ろで組む。
「それでは・・・」
ノンナが声を発したのと同時に歯を食いしばる。
「むっ?」
しかし頬に衝撃は無く、代わりに歯に固いものが当たる。
「あの・・・もう少し口を開けて貰えますか。」
「・・・ふぁい。」
状況を説明しよう!ノンナが俺の口にチョコを突っ込んでいた。説明終わり!!
「味はどうですか?」
もじもじしながらノンナが聞いてくる。
「スゴイ美味しいです。」
「それはよかったです。」
「っていうか俺の分もちゃんとあったんだ。カチューシャのだけかと思った。」
「むっ。ちゃんとアナタの事だって考えてます。」
プイッとそっぽ向くノンナ。彼女がこんな態度をとるとは珍しい。
「ゴメン、ゴメン!」
急いで謝るとすぐにいつものクールな表情に戻る。そして
「同志タクマ、口のまわりにチョコレートが。」
「えっ?」
この流れって・・・・
そう思った時にはもう彼女と唇が重なっていた。そして彼女の舌が俺の唇を伝う。
「ハァハァ、同志タクマ。」
息が荒くなった彼女が言葉を続ける。
「先程、カチューシャには4倍返ししてましたよね?」
俺の首に手をかけるノンナ。
「あ~、じゃあ来月4倍返しで・・・」
「今すぐ返しなさい!!!」
「・・・じゃあ」
そう言って俺は彼女に顔を近づけて早速、お返しをした。もちろん4倍返しで。
どこに行ったらノンナからチョコ貰えますか?