いろんなところの整備士さん   作:ターボー001

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最初の出会いなんで軽い感じです。


大学選抜
色々と貸出し中


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・んお?」

 

 

 

 

 

もうすぐ昼ごろかという時刻。戦車道の大学選抜チームが練習試合でよく使う会場で俺は最近自分の整備担当となったセンチュリオンの整備を終え、その車体の影を利用して惰眠を貪っていた。しかしそこに突如、腹部に謎の重みが加わった。それを確かめるべく目を開けるが眼前には漆黒の闇。一瞬おかしいなと思ったが自分がアイマスクをしたまま寝てたのを思い出し、右手を使ってずらすとぼやける視界に少しずつ光が広がっていく。

 

 

 

「あっ。」

 

 

 

はっきりとした視界で俺の腹に馬乗りになっている1人の少女と目が合う。何故こんな小さな子がここに?と言う疑問はだんだん覚醒してきた頭が解決してくれた。そういえば飛び級で入った有名な流派の女の子がいるって噂になっていたなと。だがもう一つの疑問、何故俺の腹の上にいる?これは脳細胞をフルに活用しても解決してくれなかった。

 

 

 

 

「「・・・・・・・」」

 

 

 

お互い見つめあったまま沈黙が続く。やがて少女は意を決したように頬を染めて口を開けた。

 

 

 

「そ、そのアイマスク!!ど、どこで手に入れたの?」

 

 

俺がつけていたのはボコられグマのボコのアイマスクだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

センチュリオンの上に並んで座り会話をする。やはりこの少女、島田愛里寿は推測通りの飛び級で入った噂の子で、なんと大学選抜の隊長でさらにセンチュリオンの車長でもあるというから驚きだ。あとボコられグマのボコが相当好きらしく、俺の使用するボコのアイマスク見て気がついたら俺に馬乗りになり、アイマスクをじっと見ていたとのこと。このグッズは彼女が持っていないらしく、ボコ好きとしてはどうしても手に入れてたいとのこと。

 

 

「でも意外だった。ボコのこと知ってる人、少ないから。それも男の人で。」

 

 

当然の疑問だと思ったのでそもそもなんで俺がこのアイマスクを持っているのか彼女に説明した。10歳以上離れたボコ好きの妹がいること、その妹のくれた誕生日プレゼントであること。なので先ほどの彼女の質問『どこで手に入れたか。』が俺自身わからないこと。そして現在、妹にメールして確認中。その返信がくるまで雑談することにした・・・・主にボコ関係の話で。

 

 

「あのお話のボコはね・・・」

 

 

「ああ、確か右頬殴られて・・・」

 

 

「そうなの!!でね・・・」

 

 

目を輝かせながら話してくる愛里寿。

 

 

一応、妹と一緒にボコシリーズは全話見ていたので割と話は出来る。10歳以上離れているともう妹という感じではなく、親戚の小さい子の扱いに近い。つまり妹めっちゃかわいい。だから妹が『一緒に見よう。』と言ってくれたボコシリーズは必死に見た。もう飽きるほどに。そして何か勘違いした妹から誕生日プレゼントにボコグッズをもらう羽目になった。うん、でもお兄ちゃん超うれしい!! 最近では俺が一人暮らしはじめたせいで会っていないがよくメールをくれる。ああマジ天使。

 

 

 

ブーブー

 

 

 

センチュリオンの上に置いた携帯が振動する。天使の妹からの受信だ!! すぐさま画面を開く。すると愛里寿が首を傾け、俺と画面の間に入ってくる。とにかく早く情報を知りたい、そんな様子だ。愛里寿の頭しか見えてない俺も首を傾け画面に並ぶ文字を見る。

 

 

 

妹のメール内容はこんな感じだ。あのアイマスクは昔、家族で旅行に行ったときに、こっそり買ったもので地方限定のしかも期間限定商品らしくもう今は手に入らないとのこと。・・・結構レア商品だったらしい。そんなものを誕生日にくれるなんてやっぱり妹(以下略)

 

 

 

 

「・・・そっか。」

 

 

 

どこか達観したように言う愛里寿。だが表情は寂しさを感じ取れた。その姿にどこか妹を重ねてしまった。

 

 

 

 

「じゃあ貸そうか?」

 

 

「えっ?」

 

 

「あげることはできないけどしばらく貸してあげるよ。」

 

 

「本当に?いいの!?」

 

 

ボコの話をしていた時と同じくらいいきいきとした表情になり思わず立ち上がる愛里寿。そんな彼女をみて微笑ましくなり、つい頭を撫でてしまった。すると急に顔を赤らめ黙って座ってしまった。

 

 

 

 

(しまった!!つい妹にやる感じでやってしまった!!)

 

 

 

 

 

「「・・・・・・」」

 

 

 

 

 

またもや沈黙が続き、

 

 

 

「わ、私、お昼に行ってくる!!」

 

 

 

そう言って走り去ってしまった。まだアイマスクを渡していないのに。

 

 

 

 

「・・・俺も昼飯食おう。」

 

 

 

罪悪感を残しつつ俺もセンチュリオンから降り、食堂へ向かう。

 

 

 

 

 

食堂に着き、日替わり定食を頼んでテーブルへ運ぶ途中、愛里寿の姿が目に入る。何やら他の3人の学生と仲良く食べているようだ。あれは確か・・・なんだっけ、メ○ース三姉妹みたいな異名を持つ3人だったような。とにかく歳が離れていても孤立してないのにはちょっと安心した。・・・あれ、完全にお兄ちゃん目線になってるな。一人暮らしのせいで妹ロスになってるのかもな。

 

 

 

 

 

おしゃべりの邪魔をしないように俺は愛里寿に声をかけることもなく違う席について飯を食いはじめた。

 

 

 

 

 

「隊長~。今日はなんだか機嫌が良いみたいですけど何かありました?」

 

 

 

「あっ、アズミ。私もそれ聞こうと思ってた!!」

 

 

「ルミ!!食べながらしゃべらないで!!こっちにご飯が飛ぶ。」

 

 

 

「ああ、ごめんメグミ。で、隊長なにかいいことでもあったんですか?」

 

 

 

「・・・うん。あのね、はじめてお友達ができたの・・・男の人の。」

 

 

 

そう言って頬を赤らめる愛里寿。

 

 

 

「「「・・・・・」」」

 

 

 

笑顔のまま固まる3人。

 

 

 

「ど、どうしたの?みんな?」

 

 

 

「「「ウフフ、何でもないですよ隊長。」」」

 

 

 

遠くでご飯を食べていた俺はこの会話を知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

 

 

 

朝、センチュリオンの前に行くとボコの人形を抱いた愛里寿が待っていた。

 

 

「あっ、おはよう。昨日はごめんなさい。連絡先知らなかったからここなら来るかなって。」

 

 

そう言われて連絡先を交換していなかったことに気づき、交換する。

 

 

 

「じゃあ改めて、はいどうぞ。」

 

 

 

昨日、家に帰って洗濯しファブったアイマスクを渡す。昨日渡さないで結果的に正解だった。俺の汗やら色んなものがついたものを渡すところだったからな。

 

 

 

「わぁ~。」

 

 

 

小さな両手で受け取り、目を大きく開く。今、瞳にはボコのアイマスクしか映っていないだろう。ルンルンといった擬音が聞こえてきそうなくらい喜んでいるようだ。

 

 

 

「じゃあ、俺は整備があるからこれでな。」

 

 

 

「あっ、・・・うん。」

 

 

 

急に寂しそうな顔をする。アイマスクは渡したはずなのだが・・・。

 

 

 

「・・・整備見てくか?つまんないかもしれないけど。」

 

 

 

「うん!!」

 

 

 

隊長様に整備を見てもらうことにした。実際のところ乗っている人の意見を聞けるのはありがたかったので万々歳だ。ただ後半は一緒にボコのテーマを歌いながら整備していた。これはこれで楽しいからアリにしよう。しかし、いくら楽しいといっても疲れてくるものである。

 

 

 

「おっしゃ、整備終わり~。」

 

 

そう言ってセンチュリオンの影に寝転ぶ俺。

 

 

「ふふっ、お疲れ様。」

 

 

 

笑いながら俺の顔を覗き込む愛里寿。顔が少し近い。しかし本当に疲れた。俺は今日も惰眠を貪ろうと決めた。

 

 

「あ~愛里寿。おれはこのまま寝るから・・・少し早いけど先に昼飯にでも行け・・」

 

 

トン

 

 

 

昨日と同じく腹から重みを感じる。だが昨日よりは軽い。見ると愛里寿が俺の腹を枕代わりにしてボコの人形を抱きながら寝ている。

 

 

「じゃあ私も寝る。」

 

 

「・・・うん。それはいいんだけど俺のお腹の上な「じゃあアイマスクとお腹貸して!!」

 

 

 

それだけ言うと俺の返答を聞かずにボコのアイマスクを装着し寝はじめた。疲れていて眠かった俺はもうめんどくさいからこのまま寝ることにした。今日はアイマスクが無く普段よりは眠りにくかったが、代わりに腹から感じるちょうどよい重みと温かさですぐに夢の世界へと旅立つことができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、この姿を見た3姉妹から今度はツラを貸せと言われる俺であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 













ぼのぼののアイマスクを持っていて、思いついた話でした。

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