没タイトル
・アンツィオの中心でパスタを叫ぶ。
・このアンツィオの片隅に
・ドゥ・ドゥ・ドゥーチェ
・グレイテスト・ドゥーチェ
・総統の名は
・パンツァー・イズ・ビューティフル
・き~み~を作るよ、ドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥ、ドゥ、ドゥ~、ドゥチェ~
「お前のことが好きだ!」
辺りが薄暗い中、学校のグラウンドで学生服を着た男の声が響く。男の真剣な眼差しに映るのは同年齢くらいの女性。同じ色の学生服を着ている彼女は突然の青春の1ページ来襲にアワアワと周りを見渡す。周囲に人がいなかったことを確認すると安堵、そして自分を落ち着かせる為、2つの意味を込めた息を吐く。ゆっくりと赤くなった顔をあげて唇を震わせながら男の告白に応える。
「わ、私も好きだー!!」
ヤケクソ!という感じで少し前のめりになり、目を瞑って両手で握り拳を作り、言葉で、表情で、体で、好意を伝える。
「・・・・・。」
数秒の静寂、それを破ったのは2人の間を泳ぐ風の音。その音が合図だったように砂を踏みつける音も聞こえてきた。男が近づいて来たのだ。
「あっ、あっ、あっ。」
男が近づいてくるのに比例して声をあげるアンチョビ。やがて男女の距離がなくなり、影が重なる。 ディアブロがアンチョビの口を塞いだ・・・・手で。
「安斎、うるさいぞ。映画館では静かにしろ。」
ったく、せっかくの告白シーンが集中して見れないじゃないか! と周りの迷惑にならぬよう極力小声でアンチョビに注意を促し、視線をスクリーンに戻すディアブロ。対してアンチョビはいつもの「アンチョビだ!」と言った返しをしたかったが自分が無自覚で声を出していたこと、それにより周りの人に迷惑をかけたかもしれないことを考えると映画のヒロインとは違った感情での赤面をしながら黙るしかなかった。
・・・
・・
・
本日は休日。俺たちは久しぶりの休みを映画館で過ごしていた。実は安斎と映画を見るのはこれがはじめてではない。
ある日、俺が図書室で戦車関連の本を読んでいると何故かいつものツインテールを解き、メガネをかけてコソコソとする安斎を見つけた。数冊本を手にとっては裏表紙のあらすじを確認しているので声を掛けると急に固まって手に持っていた本が落ちた。相変わらず固まったままだったので代わりに本を取ってやる。中身は別になんてことない普通の恋愛小説だった。本を拾い上げて安斎の手に渡してやると「ハッ!」となり、ようやく彼女の時が動き出した・・・が、瞬間に腕を掴まれ図書室から人気のない場所まで高速移動。お互いに息をあげながら「どうした?」と聞いてみると「今日見たことは黙っとけ!!」と涙目で睨まれた。理由を聞くと“恋愛小説が好きなんてドゥーチェとして威厳が保てない”とのこと。気にすることか? と思ったが口に出すのはやめておいた。コンプレックスだとかそういう類は他人には理解出来ないところで本人が気にしていることが多いし、他人が気にしていないならいいか・・・とはならないだろう。例えば仲のいい女の子に隠していたAVを発見されて「私は別に気にしないから。」と言われて「じゃあいいか!」と隠さず他のパッケージと同じ棚に陳列する、なんてことしないだろ?
そんな思いから深くツッコまずに黙っていると約束した数ヶ月後、「相談がある。」と呼び出された。整備の事か?と思っていると「一緒に映画に行ってほしい」と。「・・・は?」と聞き返すと
「だ、だって恋愛小説をレジに持っていくだけでも結構勇気がいるんだぞ! それなのに実写化した恋愛映画を一人で見に行くなんて色々とハードルが高すぎる! でも映画は見たい! 後生だディアブロ! 一緒に来てくれー!」
というわけで不定期ながら俺と安斎の休日の映画鑑賞がはじまって今に至る。
「結構ベタな展開だったな。」
「いやいや、確かにベタかもしれないがちゃんと原作を殺さず、気になってたサブキャラにもスポットを当てたオリジナルストーリーを入れた脚本。そして役者の演技、セリフのトーン、頭の中で描いていた通りで私は・・・・」
場所を広場のカフェに移し、少し遅めの昼食を取りつつお互いに映画の感想を述べる。と言ってもほとんど俺が聞き役に徹するのがお決まりである。余程興奮してるようでいつものツインテール、ではなく変装の為に後ろで1つに纏めたポニーテールが左右に揺れる揺れる。
プラスチック製のカップが大量の汗をかくくらいに駄弁っていると次に見る映画の時間が迫ってきた。次の作品は先ほどの劇場では公開していないので別の映画館まで歩かないといけない。
「おい、そろそろ。」
「んっ。」
俺が腕時計を指差すと短く返事をし、すぐに荷物をまとめはじめた。全てを言わずとも理解してくれるのはありがたいものだ。席を離れ、歩き出すと安斎は何故か並んで歩こうとはせずに俺の後ろに並んで周りをキョロキョロと見渡しながら隠れるように歩みを進める。
「・・・何してんだ。安斎?」
「アンチョビだ!! 知り合いに会ったらどうする、ディアブロ!! そのためにもこうやって隠れて・・・・」
「アンチョビとディアブロ呼びの方がバレる確率は高いし、コソコソしてる方が怪しいだろ。」
「・・・・ふぐぐぅ~~。・・・千代美で頼む、マコト。」
「そんなに安斎呼びは嫌いか!!!・・・ はぁ、わかった。そっちで呼ぶよ。」
だからそんな涙目で見るなよ。
「きょ、今日だけだからな!!」
「じゃあ次回の映画鑑賞の時はいいのか?」
「ううう~~。」
俺の正論と少しの意地悪に観念したのか、顔を赤くして自信がなさそうに隣に並んで歩く安斎・・・じゃなかった、千代美。仮に今知り合いに見つかったとしても「服を買いに来た。」とか適当に誤魔化せばいいのだがそれが出来ないのが我が校の隊長である。まあ代わりに良いところはいっぱいあるのさ。試合後に相手を讃えたり、後輩の面倒見が良いところとか、・・・勝てること少ないけど。おっと、もう映画館に着いたか。
「この作品の学生2枚お願いします。」
「かしこまりました。あっ、お客様!!」
黒いスーツに身を包んだ受付スタッフのお姉さんにチケットを頼むと何か思い出したように机の下から1枚の紙を取り出してこちらに見せる。簡単なイラストと彩り溢れる文字が見えるが・・・
「ただいま対象の映画作品でカップル限定のキャンペーンをしていまして、なんと!今ココでハグをして頂くとチケット料金が半額になりま〜す‼」
「なっ!?」
「へえ〜〜。」
面白いキャンペーンをやっているもんだな。いかにもアンツィオらしい、お姉さんもノリノリで説明してくれている。ふむ、半額か。非常に魅力的な響きだ。
「いやいや!!私たちはその・・・カ、カップルではないので普通の料金で・・・」
「これでいいんですか?」
「へっ!?」
千代美の背中に手を回し少し力を入れ、俺の方へ寄せる。身長と体格差があるせいで俺の腕にすっぽりと納まり、彼女の頭は俺の胸板とくっつく。・・・ん?腕の中の 千代美が震えだしたぞ? はっ!まさか!俺が臭うのか⁉ 普段から整備しているから錆やオイルの臭いが体に染みついているのか!?
「すまん!!あんざ・・・千代美!! クサかったか?」
急いで両腕を離しハンズアップ。刹那、
「idiota!! sciocco!! stupido!!」
「ふぐっ!!!!」
千代美お手製、鉄拳ナポリタン(ナポリタン抜き)をダイレクトに腹に食らわされた。うずくまる俺を余所に涙目赤面の彼女は半額になった2人分の料金をさっさと支払い、先に劇場内へと消えてしまった。しかしいくらクサかったとはいえひどい仕打だ。普段から学校のおやつの時間をなくす等の節制をしているんだ。ならチケットが半額になるんだったら多少の臭いは勘弁してほしい。しばらく膝をついて腹を抑えていたが受付のお姉さんがやたらとニヤニヤと俺を見てくるので痛みは治まっていないが俺も劇場へ歩を進めることにする。 ちなみに千代美が先に払ったチケット代はちゃんと後で返した。
・・・
・・
・
映画を観終わり、夕日の赤い絨毯の上の帰り道を歩く。
「・・・・。」
「・・・・。」
お互いに無言。先ほどの事でギクシャクしているわけではない。理由は・・・映画の内容だった。どこにでもいる普通の女性が恋をし、結婚をし、戦時中を生きたお話。当然、戦時中の描写として戦車も出てきた。多分、ここに千代美が引っかかっているのだろう。映画に出てきたものとは違うとはいえ、普段から戦車に乗っている千代美。頭の中でサンダースのケイさんがいつか戦車道について言ってた「これは戦争じゃない」という言葉が流れてくるものの、どうしても意識してしまうものはあるのだろう。無表情を装いながら時折ため息を吐いている。うまく表現できない感情がぐるぐると胸の中を回っては答えが出ない。たぶんこの先も100%正解の答えは無いんだろう。
だから自分の中で決着をつけるしかない。だが助け舟ぐらいは出してもいいだろう?
「あのさ、料理をするのに包丁を使うだろ?」
「・・・・へ?」
沈黙破った俺の突拍子もない言葉に素っ頓狂な声をあげる千代美。気にせず俺は続ける。
「だけど使い方を誤れば凶器にもなる。簡単に人を傷つけることだって出来る。でも・・・戦車はさ、戦争の道具でしかなかったんだよ、戦車道が始まるまでは。」
「・・・・。」
「だからさ、その・・・戦車道って・・・」
少し口を開けてこちらを見つめる千代美。普段あまり見ないような憂いを帯びたような表情。そんな顔から見られている緊張からなのかうまく言葉が繋げない。頭を掻きながら「あー。」と次の言葉を探していると
「はーはっはっはっ!!」
先程の表情とは一変して千代美が空を見上げるほど笑い出した。
「私がさっきの映画を見て落ち込んでいると思ったか? 私はそこまで弱くない! じゃなかった私は強い!! なんたってドゥーチェだからな!!」
両手を腰に当て、フフンと鼻を鳴らす。嘘つけ、普段見せない顔してたじゃないか という言葉を言うのはやめておいた。また鉄拳ナポリタンは食らいたくないからな。もうお腹はいっぱいだ。
「それよりもディアブ・・・マコト!! 料理ができないくせによくもまぁ包丁を引き合いに出してきたなぁ。アンツィオの生徒が料理が出来ないとは前々から由々しき問題だとは思っていた。よ、よって今からお前の家でこのドゥーチェが直々に料理をお、教えてやる!! 感謝しろ!!」
「え? 今から家来るの? まぁいいけど。」
「よ、よし!! じゃあまずはスーパーに行くぞ。」
数分前のションボリ感はどこへやら。嬉々と歩き出す千代美。それを見て思わず俺は
「戦車道って最高だな。」
と呟いた。すると
「ああ。まったくだ!!」
最高の笑顔が返ってきた。
~おまけ~
「お邪魔しまー・・・・おい!部屋が汚いぞディアブロ!! 全く、これは料理の前に掃除だな。」
床に落ちている物をいくつか拾い上げる安斎。しかしその中には
「あっ!! ちょっと待て安斎!!」
アダルティーなビデオがあった。
「「・・・・。」」
数秒の沈黙
「わ、私は別に気にしないぞぉ。」
声が裏返っている安斎。
(じゃあいいか!・・・とはならねぇよ!!!)
気づいたら春。お花見したかったなぁ~。
アプリの戦車道大作戦の連合。自分と友人 2人だけでツラす。(ToT)