いろんなところの整備士さん   作:ターボー001

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お久しぶりです。生きてますよ。

BC自由学園、書いてみましたがまだ設定とか色々わかってないので第2章とかで色々わかったら消すかもしれません。

10月9日追記・ 誤字報告ありがとうございます。修正いたしました。


BC自由学園
パンもケーキもなければ


屋上で弁当を食べる。学生が憧れるシチュエーションだと思うがそれも毎日続くと飽きてしまう。人間って身勝手だな、と他人事のように自分の心をバッサリと斬りながらも歩を進める。もう高揚感があるのは屋上という場所ではなく弁当の中身になっているのが事実だからしかたない。うん、しかたない。さぁ、ご飯ご飯。

 

 

無駄に装飾の多いドアを開け、屋上の中心に座り込み弁当箱を包んでいるバンダナを解く。 そして手を合わせ 

 

「いただきまー・・・」

 

 

「もっと定食を増やせー!!」

 

少し機械張った声がグランドから聞こえてきた。恐らく拡声器を使っているのだろう。

 

「エスカルゴ定食があるだろー!!」

 

 

すぐに反論が聞こえてきた。こちらは地声。声の主はわかるのでわざわざ見ない。この後の展開もわかりきっているので無視します。

 

 

「あんなもんで腹が満たされるか!! 唐揚げ定食とかもっと別のものを用意しろ!!」

 

「「そうだそうだ!!」

 

「ナイフとフォークをきちんと使えない低俗な貴様らの要望に応える義務などない!!」

 

「全くもってその通り。」

 

「これだから外部生は。」

 

「あ? なんだと?」

 

「何だ?やるのか?」

 

 

・・・・・・・・ 

 

「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」 

 

 

「いただきまーす。」

 

 

 

エスカレーター組と外部生組の喧嘩をBGMに飯を喰らう。これもほぼ毎日やっていることなのでもう興味がない。そんなことより弁当食う方が大事だ。うん、今日の玉子焼きの味付けはうまく出来た。いやー、学食のメニューが絶望的だったから自炊してたら料理上手くなったな俺。 食材? 母親からの仕送りという名の密輸さ。え? 自炊してるくらいなのになんで安藤達に加わらないのかって? そりゃあどちらかと言えば俺は安藤一派だけどさ、話すと長いのよ。あっ、ご飯食い終わったから話すのは食後のデザート後でいい? まあデザートって言っても和菓子なんだけど。 

 

弁当箱とは別に用意してある小さな長方形の包み紙、それを破る。中から出てきたのは

 

 

 

「あら~美味しそうな羊羮ね~。」

 

大きな口を開けてかぶりつこうとしたが突如、声が聞こえたので思わず振り返った。振り返ってしまった。ピンクのファーがついてる扇子で口元を隠しながら微笑を向けるロングの縦ロール女子が視界に入る。しかし微笑は俺にではなく羊羮に向けられている。 

 

 

「・・・・やらん。我慢しろ。」

 

「どうして私が我慢をしなきゃいけないの~?」

 

ゆる~い口調で頭のゆる~い答えが返ってきた。

 

「どうして俺の羊羮をあげなきゃいけないの~? マリー?」

 

 

嫌味ったらしく同じ口調で返す。

 

 

「糖分が足りないの~。少しくらいいいじゃないハンス。」

 

「嘘つけ、さっきまでケーキ食ってたろ! 口にクリームついてんぞ!! 足りてないのはオツムの容量だろ!! あと俺の名前は半助だ!!!」

 

 

羊羮を我が校の戦車道隊長にしてゆるふわケーキお嬢様、マリーの口に撃破されぬように立ち回りながら喋る。皆様、安藤一派の件、お話しするのはデザートの後と言いましたが羊羮の危機です。今すぐ急いで説明します!!

 

 

 

まあまずは自己紹介からだな。俺の名前は半助。BC自由学園で戦車道の整備班として活動している。結構古風な名前と言われるがその理由は俺の実家にある。ウチの実家は岡山にある老舗の和菓子屋なのだ。和菓子職人の親父と戦車道をしていた母親がお見合いの末、結婚。そこの次男坊として生まれたのが俺。THE職人気質な親父は兄貴の名前を「人の芯の部分を助けてやれる奴になってほしい。」という願いから『芯助』とし、「人の全部を手助けするんじゃなくて半分くらい手助けしてやる人物になってほしい。」という思いから俺が『半助』になった。結構な名前を子供につけるなぁと思ったこともあったが家族関係にはかなり恵まれたと思う。俺が整備士を目指した理由は母親が戦車道の試合に連れていってくれた時に戦車というものにハマったからなのだが、子供ながらに実家の都合を考えるとなかなか「整備士になりたい!!」とは言えなかった。だがそれを察してくれた兄貴が「家は俺が継ぐからお前は好きな道に進め。」と後押ししてくれたので両親に思いきって言ってみると母親は大喜びしてくれた。親父は特に何も言わなかった。じゃあ学校どうしようかな~と悩んでいたところにBC高校と自由学園の統合、さらに共学化のニュースが来た。母港が岡山なのでこれほどいい物件ないぜ!!と思って入学。・・・入学したんですが、冒頭の通り中等部からそのまま来た「エスカレーター組」と高校から入った「受験組」の女子達の喧嘩が絶えない毎日。統合後の共学化だから男子の入学者も少なく、数少ない男達はビクつきながら喧嘩を見ていたが受験組筆頭、安藤が

 

「お前らも受験組だろ? 参加してくれよ。」

 

と誘ってきた。確かに定食が増えてほしい等々は思っているがそれよりも我々男子の総意は

 

(女子同士の喧嘩に首なんて突っ込みたくない)

 

だった。なので参加せず。

 

 

 

そんなわけで男子は受験組女子から「ヘタレ」、今まで女子校で同世代の男子は未知の生き物なエスカレーター組からは「野蛮」「獣」の烙印を押されて学校での男子の地位は無いに等しくなった。肩身が狭い校内

、せめて食事くらいは癒しの時間を・・・ということで屋上でこっそりご飯を食べるようになった俺であるが

 

 

「甘い匂いがするわね~。」

 

と本日と同様に和菓子を食ってるところをマリーに見つかり、

 

「・・・・・食う?」

 

 

とその時食っていたおはぎを与えてしまった。洋菓子しか食べていなかった彼女にとって和菓子の味はとても新鮮だったようで、昼時とおやつ時になると毎日俺のところに来るようになったのだ。 ああ、今思えば選択を間違えたと思うよ。

 

 

 

 

とまあ安藤一派以外の件も入ってしまったが以上で説明は終わりだ。・・・ん?今は何してるかって? 羊羮を天高く掲げてマリーに取られないようにしています。わはは、背が低いから取ることが出来まい。俺の前で「ん~!」と唸りながら手を伸ばしてピョンピョン跳ねておるわ。 おっ? なんだ? しゃがんだぞ。

 

 

 

「えいっ!」

 

「えっ?」

 

 

思いっきりしゃがんだと思ったらそのベクトルを反対方向へすべて捧げるような大ジャンプ。そしてそのまま両腕を俺の首の後ろに回して抱きつき、落ちる重力は全部俺へ押しつけられた。突然のことで反応も重力に抗うことも出来ず、後ろへ倒れこむ。

 

 

ズザァ、とアスファルトと服が擦れる音がしたが意外と痛みはない。それよりも

 

 

「・・・普通ここまでするかぁ?」

 

 

「あま~い。」

 

 

 

馬乗りになって俺の手にあった羊羮を半分ほどかじったマリーは両頬をおさえながら恍惚の表情。対して俺は放心状態。遠く一面に広がる青を眺めている。お母さん、空ってこんなに青かったんだね。

 

 

 

 

「君達のくだらない主張のせいでマリー様を見失ったではないか!」

 

「マリー様のお世話は貴様らの仕事だろ‼何でも人のせいにするとはエスカレーター組は仕事が出来ないうえに責任転嫁するのか。」

 

 

「何だと?」

 

「なんだよ、やるか?」

 

 

屋上に声が近づいてくる。恐らくマリーの不在に気づいた押田と安藤が喧嘩を中断してマリーを探しに来たのだろう。いや、口喧嘩はしてるか。喧騒が聞こえながら屋上のドアが開き、すぐに静寂が訪れた。

 

 

「「「・・・・・・・」」」

 

 

 

押田と安藤と軽く目があった。ここで状況を整理しよう。放心顔の俺、俺の腹の上に馬乗りになって恍惚表情のマリー。色々とヤバイだろ?

 

 

 

「ハ、ハ、ハ、ハンス貴様ーーー!! マリー様に何をしている!! 今すぐ離れろ!! まったくこれだから男は・・・」

 

 

「どう見ても何かされてるのは俺だろ。早くマリーを引き剥がしてくれ。」

 

 

「マリー様は甘党だと思っていたがまさか肉食だったとはな。」

 

 

「からかうな安藤。」

 

 

 

キーキーうるさい押田とニヤニヤする安藤。溜め息を吐きながら色々と疲れてしまった俺は糖分摂取のためにマリーのかじった羊羮の残り半分を口に放り込む。やっと甘いもんが食えたがどうにも幸福感が薄い。

 

 

「あー!!ハンス全部食いやがったな。私の分も残しとけよ!」

 

 

恐らくこのうるささのせいだろう。安藤までうるさくなった。

 

 

「文句ならマリーに言え。コイツが半分食った。」

 

 

いまだに俺の腹の上にいる涼しい顔をして扇子を軽くあおぐ奴を指差す。

 

 

 

「マリー様、さっきもケーキ食べていなかったですか? 太りますよ。」

 

「おい!マリー様にむかってなんてこと言うんだ!!」

 

「別に太っても構わないわ。甘いものが食べられるのなら。」

 

「確かにお前ちょっと太った?」

 

 

一瞬にして空気が凍りついたのを感じた。だが原因がいまいちわからない。

 

 

「・・・帰るわ。」

 

「あっ!マリー様、待ってください!ハンス、貴様覚えておけよ!」

 

 

悪役みたいな台詞を吐いて去る押田とようやく俺の腹の上から退いたと思ったら早足で屋上から出ていった

マリー。表情は見えなかったがあれは・・・・完全に怒ってる。というか拗ねてる。

 

「おい!なんてこと言うんだハンス!早く謝ってこい!」

 

「は? 安藤が同じこと言った時はマリーは平気そうな顔してたじゃん。」

 

「馬鹿! 同性が言うのと異性が言うのじゃ、言葉の重みが違ってくるだろ!!」

 

「えー?なにそれー。」

 

「いいから早く行くぞ!!」

 

寝転んでいた体を無理矢理起こされ安藤に引っ張られながらマリーのもとへ向かう。押田と安藤にギャーギャー言われながら謝ることに。お前らこういう時だけ意見が合うのな。

 

 

結局、大量の和菓子を渡すことを条件に許して貰えたが

 

 

 

「今日のおやつは何かしら?」 

 

「お前さっきまたケーキ食ってなかった? 和菓子食わなくてもよくない?」

 

 

そう問うとウチの隊長、マリー様は

 

「パンもケーキも和菓子もあるんだから全部食べればいいじゃない!!」

 

 

こう答えるのだった。

 

 

 







筆者はエスカレーター組と受験組の仲の悪さは素なんじゃないかなぁと思っています。本当に演技の可能性も捨てきれませんが・・・2019年6月を待ちましょう!! 
あとチラシの裏にもガルパン小説(?)書きましたのでそちらもどうぞよろしくお願いします。

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