知識がないので作中のギャラクシーは超適当です。
ロシアの挨拶
プラウダ高校 グラウンド付近
「そろそろ終わる頃かな」
俺は整備に必要な工具を持って戦車道の練習試合をしているグランドへ向かう。
本日のお相手はサンダース大学付属高校だ。
長崎県からわざわざウチに練習試合に来ると聞いたときは驚いたがスーパーギャラクシーが飛んできたのを見てさらに驚愕したのと同時に納得した。あれならロシアへも簡単に行けそうだ。
幾人かの「ありがとうございましたー!!」という大きな声が数十メートル先の方から聞こえた。
どうやら試合は終わっているらしい。
グランドに着くと黒煙を上げる戦車の数々が目に入った。なかなかの激戦だったようだ。
(今日は整備が長くなりそうだな)
やや気が遠くなり遠方を見つめ黄昏ていると
「あー――!!タクマ!!遅いじゃない!」
下の方から響く大きな声で現実に引き戻される。声の主はウチの高校の隊長 カチューシャだ。
「ノンナ!!」
カチューシャが叫ぶとサンダースの副隊長で砲撃手のナオミさんと握手していたノンナはすぐにカチューシャの元へ駆け寄り、肩車をする。もう見慣れすぎてる光景だ。俺よりも目線が高くなったカチューシャは言う。
「このカチューシャの活躍を見逃すってどういう了見よ!!シベリア送り25ルーブルにされたいの?」
どうやら俺が試合を見ていなかったのが気に入らないらしい。口ぶりからすると試合には勝ったらしい。
「無茶言うな。後輩の指導もあるんだ。これでも早い方だと思ってくれ。」
そう。俺は後輩達への整備指導も一任されており、俺が卒業しても強豪校プラウダの名に支障が出ないようにしなくてはいけない義務がある。ちなみに後輩たちは今、整備指導で使っていた工具の後片付けをしている。
「ふん。まあいいわ、今日は試合に勝ったし、許してあげるわ。じゃあさっさと、整備をはじめなさい!!」
「同志タクマ、お願いしますね。」
「はいよ。」
こんなワガママなカチューシャとうまくやれているのはノンナのおかげだろう。俺とカチューシャのやり取りに
いつもフォローの一言をくれる。まあ、あと美人というのが大きいかな。
戦車の整備に取り掛かり始めると後ろでのやり取りが聞こえてきた。
「なかなかエキサイティングした試合ができたわ。今度はうちの高校に来なさいよ。」
「そっちこそ、カチューシャをあそこまで追い詰めるなんてやるじゃない。褒めてあげるわ。」
サンダースの隊長、ケイさんとカチューシャの会話だ。お互いの健闘を讃えている。
カチューシャが他人を褒めるのは珍しい。それほどに実力を認めているのだろう。
「Hey!!みんな、戦車はギャラクシーに運んで帰る準備をするわよ。帰った後は反省会だからね。」
隊員たちに指示を送るとイエス、マム!!と言った声が各方面から返ってくる。
よく統率がとれていると感心しながら自分達の隊長はどうだろう?と思ったところで考えるのをやめた。
よそはよそ、うちはうちだ。まあウチの隊長もいいところはある。たぶん。たとえば・・・なんだろう?
うーん、と声をあげながら色々と思案していると片づけを終えた後輩たちが来たのでくだらない考えはやめて、どの戦車を整備するように指示を出す。
戦車を整備して数十分経過した頃、一旦休憩を入れようかと思っていると整備している戦車に人影が映ったので振り返ってみると金髪碧眼で色白な少女が立っていた。
「同志タクマ。ちょっとイイですか。」
流暢な日本語でクラーラはそう言うと俺の手を取ると走りだした。
急に手を掴まれたので(しかも美少女)混乱状態に陥る俺氏。
(えっ?なになに?急に。・・・・まさか告白的なあれ?いや、でも突然すぎませんか?クラーラさん)
若干、頬を染めていると校舎裏まで連れて行かれそこで手を離された。
あたりを見渡すとカチューシャ、ノンナ、サンダースの生徒たち、そしてどうしたって目立つギャラクシーがあった。
(えっ、こんな大勢の前で公開告白? 俺恥ずかしい!! やっぱり外国人は考えることが違うなぁ。)
一人で勝手な妄想を広げているとクラーラはカチューシャを肩車しているノンナのところへ駆け寄った。
「同志ノンナ、同志タクマを連れてきました。」
「同志クラーラ、ありがとうございます。」
(んっ?)
俺の姿を確認するとノンナ+カチューシャ、そしてケイさんが近づいてきた。
「Sorry、ちょっと助けてくれない?生憎今日は戦車の整備士しかいなくてさ。」
「同志タクマ、ギャラクシーがエンジン不良で飛べないようみたいなのでメンテナンスをお願いできますか?」
「タクマ、あんただったらなんでも直せるでしょ?」
なるほど俺が呼ばれた理由がわかった。さっきまでの一人妄想のせいで違った意味で、俺恥ずかしい!!超恥ずかしい!!
っていうか「なんでも直せるでしょ」って言ってハードルを上げるなカチューシャよ。
俺はハードルを低くして飛ぶタイプなんだ、こんな時ばっかり持ち上げやがって。
まぁ確かに昔から機械をイジるのが好きでそれが功を奏して戦車以外に学校のストーブや自販機とか直したことは何度かある。
でもだからといってすべての修理にそれらを応用できるとは限らない。直らなかったらどうするんだよ、まったく。
そんなことを思いながらギャラクシーに近づいていく。
サンダースの生徒たちの心配そうな目線が痛い。責任重大だなコレ。
数十分かけて翼下のエンジン部分をハシゴを使って確認していく。
・・・なるほど、わかった。
簡単にいうと、急に寒い気候のウチの高校にきたからエンジンちゃんがちょっと不機嫌になっていただけだった。
俺はエンジンちゃんのご機嫌取りの処置を施し、カチューシャたちのいるところまで戻り、操縦席にいるナオミさんに叫ぶ。
「これでエンジンかけてもらえますか?」
「わかった。」
ナオミさんがエンジンをかける。緊張する一瞬だ。
かからなかったらどうしよう、ということはどうしても頭をよぎってしまう。
だがそんな心配はエンジン部分から聞こえる轟音でかき消された。
同時に無事にエンジンがまわったと確信できた。
歓喜に沸くサンダースの生徒たちを見て俺は安堵のため息を吐いていた。
すると急に目の前にケイさんが現れて抱きしめられた。
「thank you!!やるじゃないタクマ。最高にcoolだよ!!」
そう言って左頬にキスをされる。
(!?)
予想外の行動に目を見開いて驚いていると操縦席から降りてきたナオミさんがきた。
「あんた、やるじゃない」
「あ、ああ。ありがとう。一応、応急処置だから帰ったらそっちのちゃんとした整備士に見てもらってくれ。」
「ん。わかった。」
そう言って間髪入れずに今度は右頬にキスをされた。
(!!??)
サンダースの生徒たちはヒューヒューといったヤジをとばしてくる。
生徒たち全員、こんなノリなのだろうか。
事態についていけずにフリーズして固まっている俺に対してナオミさんは続ける。
「というかアンタもうウチの整備士にならない?」
「ナイス アイディーア。ナオミ!! どう?ウチこない?」
マジで言ってるのかジョークなのかわからないテンションに対して未だに固まっていると
ガシッっと右腕を掴まれた。見るといつの間にかカチューシャを降ろしたノンナだった。
「残念ながら同志タクマはまだ整備が残っていますのでこれで失礼します。」
(えっ?)
どことなく不機嫌な声を出すノンナ。いつもの鋭い目つきがさらに鋭い気がする。気のせいか。
ノンナの発言後、左腕もガシッと掴まれたので確認するとクラーラが掴んでいた
「そうです。オシゴト残ってます。」
(えっ?えっ?)
「皆さんのお見送りはカチューシャ一人で出来ますね?」
「えっ?う、うん。」
ノンナの強い口調にたじろぐカチューシャ。
俺はそのまま両腕をホールドされたまま、警察に連行される犯人のように人気のないところまで移動させられた。
先ほどから起こる予想外に頭から煙が出そうになっているのだがそんなことはお構いなしにクラーラが俺に質問をしてくる。
「同志タクマ、サンダースへ転校しちゃうんですか?」
心配そうな顔で上目遣いで聞いてくる。先ほどのナオミさんの発言を本気に捉えているようだ。
(そんな上目遣いで見てこないで!!反則だよ!!あと俺の腕を谷間に挟まないで!!何も考えられなくなるから!!)
「い、いや。転校しないよ!!向こうも冗談で言ったんでしょ?アメリカンジョークだよ!!」
必死に説明する俺。
「・・・でもタクマ、キスされてました。」
(キスは関係なくない!? というか腕がもう幸せすぎてヤバい!!)
腕に抱きつく力が強くなり、やわらかな感覚も同時に強くなる。
「ほ、ほら。アメリカの挨拶的な感じでやっただけで特に深い意味はないんじゃない?ねっ?ねっ?」
必死に説得する俺。
「そうですよ。同志クラーラ、同志タクマが私たちを裏切ることはありません。」
(さすがノンナ。頼りになるぜぇ。・・・うん、でも君も谷間に腕を挟んでくるのね。)
「ですが、万が一という可能性も確かにあります。」
(何言ってんのぉぉぉぉ?万が一も億が一もないから!!信用して!!)
「なので今、この場で上書きをしましょう。」
ノンナがそう言うと目を輝かせるクラーラ。
(上書き?なんのことだ?)「二人とも、上書きってなn」
両頬に伝う柔らかな感触。右頬にノンナ、左頬にクラーラの唇が触れていた。
いよいよ俺の脳みそはキャパオーバーになり、そのまま俺は天を仰いで動かなく、いや動けなくなった。
遠くでカチューシャがノンナとクラーラを呼ぶ声が聞こえた気がした。
「では同志タクマ カチューシャが呼んでいるので私たちは戻ります」
「整備ガンバってください。」
そう言って走り去っていく二人。
その日、俺は後輩たちに発見されるまでずっと空を眺めたままだった。
翌日
昨日の出来事を頭の中でぐるぐると繰り返しては悶々とする、そんな状態で登校していると
「オハヨウゴザイマス、同志タクマ」
左手からクラーラが姿を見せた。
「お、おはよう。」
昨日の今日なのでぎこちなくなる俺。
「今日も整備、オネガイしますね!!」
(ふむ。いつも通りのクラーラだな。変に俺が自意識過剰だっただけか?なんにせよいつも通りに接してくれているのだから俺もいつも通りにならなくてはな!!)
「おう!任せとけ!!」
といつも通り元気よく答えてみせる。
「同志タクマ」
「んー? なんだク・・・!!」
目の前を支配するクラーラの顔、昨日と同じく伝わる柔らかな感触。ただし昨日と違ってそれは俺の唇に伝わっている。
「・・・フフッ。ロシアの挨拶です。」
ウインクを決めながらそう言うとそそくさと校舎に入ってしまったクラーラ。
俺はまた飽きもせずに空を見上げていた。すると後ろから声をかけられた。
「どうしましたか?同志タクマ」
(ノンナ!! 今の見られたか? ヤバい!! いや別に見られてもまずくないのか? いやまずいだろ色々と)
「え~、うん。いや別になんでもな・・・・・・!!!」
なんとなく気まずくなり、うつむいていると細く白い両手が頬に当てられて唇を重ねられた。
「・・・・ロシアの挨拶です。」
(やっぱり見られてた!!)
そのまま校舎へ歩き出したノンナだったが、急に振り返りまた俺の元へ来る。
(なんだ、今度は何をされるんだ俺!!)
俺の肩に手を置き、身を乗り出し、俺の耳元でささやく。
「明日からは学校に来たら一番最初に私に会ってくださいね。」
それだけ言うと校舎へ駆けていくノンナ。
俺はもう空を見上げることもできず、ただただ耳まで赤くなった自分の顔を両手で隠すしかなかった。
もっとボキャブラリーが欲しいです。
ノンナかわいい。