咲-Saki- episode of side S 作:Sirone
一応、咲-Saki-のオリ主ですが、説明しておかなければならない事があります。
原作との乖離点です。
この話では、大星淡が清澄高校に入学しています。
私はアニメも見終わっていないにわかなので、設定におかしな点があっても気にしないでください。どうしても気になる方は、コメ欄にでも書いてください。
こんな感じですが、疑問点や誤字脱字がありましたら報告や質問お願いします。
長くなりましたが、では、どうぞ。
『…………ロン。32300』
『知生は相変わらず強いなぁ……何度やっても勝てねぇやな』
『知生! お前は俺のアシストをしていればいいと言っただろうが!』
『知生、本当にいいのかよ? お前は全く悪くねぇんだぞ?』
『…………麻雀なんて、大っ嫌いだ』
息を切らしながら、悪夢から目を覚ました。
手が痛い。いきなり立ち上がった為、手を思いっきり机に叩きつけていたようだ。
「おい朔上、いきなり立ち上がってどうした?」
先生が怪訝そうな視線をこちらへ向ける中、クラスメイトがざわめき始める。
俺は椅子を直して腰を下ろして先生に何でもない事を説明すると、再び机に顔を伏せた。
そして一言。
「…………なんだ、夢か」
最後の授業を寝過ごしていたらしい。
日は既に沈みかけ、教室には俺を含めても二人の生徒した残っていなかった。
今日はバイトが休みとはいえ、特に学校に長居する理由もない。横に掛けてある鞄を手に取り、教室を後にする。
「あ、やっと起きた!」
しようとしたが、後ろから声が掛かる。
その声の発信源は確認するまでもない。俺と同じく教室に残っていた生徒、須賀京太郎だ。
これが赤の他人なら無視して帰るが、クラスメイトとなると流石にそれは出来ない。
「……何か用か?」
可能な限り早く会話を終わらせるべく、仏頂面で振り向きながら返す。
「えっと……朔上知生、だったよな? さっき寝言で麻雀がどうのって言ってたけど、お前麻雀打てるのか?」
さっきの悪夢で寝言を言っていたらしい。
俺としてはあまり踏み込んで欲しくない部分なのだが、それを須賀京太郎が知らない以上仕方ない。
「まぁ……一応、昔にな」
「本当か!? なら、少し頼みがあるんだけどさ」
話の内容からして嫌な予感しかしない。
そして須賀京太郎は、俺の予想通りの言葉を口にした。
「一度麻雀部に来てくれないか? 面子が足りなくってさ!」
「……断る。俺はもう麻雀は止めたんだ」
「頼む! 何でも一つ奢るからさ!」
それはかなり魅力的な提案だ。
俺の財政力では買える物も限られている。生活費にすら困る程なのだから。
須賀京太郎には、『何でも』という言葉の重みを一度思い知ってもらおう。
「…………卵」
「ん? 何か言ったか?」
「卵のパック三個買ってくれるなら、行ってもいいぞ」
「……え? そんなのでいいのか?」
「あぁ、全然OKだ」
任せろ! と須賀京太郎は元気よく返事をすると、教室を出て外から手招きをする。
多分、付いて来いと言いたいのだろう。
面倒な事に巻き込まれたと確信した俺は深いため息を漏らし、教室を出た。
……麻雀、か。
旧校舎の屋上。
一度も踏み入った事のないそこが、麻雀部室の場所らしい。
スマホゲームをしながら須賀京太郎の後ろを付いて行くと、一つの扉の前で立ち止まった。
「部長ー! 新たな人材連れてきましたー」
「あら、あまり宜しくないタイミングね。ついさっき、咲たちが出ていったのよ」
人……材……?
俺は麻雀部に入るなんて言った覚えはないんだが、須賀京太郎の中では勝手にそうなっているのだろうか。
その須賀京太郎と話している人は、確かこの高校の生徒会長。確か……竹井、だったか。
「京太郎遅いよ! でも、これでやっとはじめられるね……って誰?」
金髪ロングの少女がこちらを見る。
俺と同じクラスではない時点で、俺が彼女の名前を知っている事はありえない。
クラスメイトでさえうろ覚えなんだし。
「……なぁ須賀、やっぱり卵はいらないから帰ってもいいか? 面子足りてるじゃねぇか」
「いや実はさ、大会に出場する為のメンバーを集めてるんだ。卵四パック買うから半荘だけ打ってくれないか?」
「四パック…………分かった」
卵が四パックもあれば、かなり金銭に余裕が生まれる。今月はかなり危うかった以上、この機会を逃すわけには行かない。
嫌な過去も、今の物欲には勝てないようだ。
「君が打つの? まぁ、麻雀出来るなら誰でもいいけどねー」
「……先に言っとくけど、俺はそんなに強くないからな? 期待するなよ」
予め予防線を張っておく。
こうでもしないと、あの打ち方は嫌われるからな……俺自身も嫌いだし。
今回の勝負は半荘戦。
手持ちは25000点の30000点返し。
ダブル役満あり。
起家は須賀京太郎。俺は北家。対面は生徒会長。下家は金髪ロング。
終了時は得点を1000点未満を五捨六入する。
割とよくあるルールだろう。
「私は大星淡。よろしくー」
「……俺は朔上知生(さくえ ともき)。よろしく」
準備が整い、牌が上がってくる。
一年ぶりの牌を握る感覚と共に嫌な記憶も蘇ってくるが、一つ深呼吸をして頭から外す。
――対局開始――
ドラ表示牌は⑧。
俺の配牌は、
{一四五八③⑥⑨258東北發} だ。
なんだこれ。いくらあれを使っていないとはいえ酷すぎる。
まぁ、あれをやるならこれでもいいか。
「ダブルリーチ」
「…………え?」
大星淡の③切りダブルリーチ。
よほど運がよかったのか、それとも、あの人のような化け物か。
それは分からないが、どうやら大星淡が対象で大丈夫そうだ。
生徒会長が西を手出しして、俺のツモは⑥。
少し悩んだ後、ツモ切り。
その後しばらくツモ切りを連続していると、山牌最後の角で大星淡から声が掛かる。
「カン…………ツモ!」
次順、大星淡がツモ。
{三三五六七①②③8} ツモ{8}
カン {裏44裏}
カン裏ドラ表示牌{3}
ダブリー・ツモ・ドラ4
3000・6000点
「初っ端から痛いなぁ……ちょっとは手加減してくれよ、淡」
「スーパーノヴァあわいちゃんに手加減の三文字はない! それより、えっと……名前、何だっけ?」
「……朔上の事か?」
「そう、それ! さっくー、この一局だけでいいから本気出してよ! 全然本気じゃないじゃん!」
「……何で分かるよ?」
「うーん……なんとなく、かな」
「…………まぁ、一局だけなら」
どうせ一局しか使えないし。
それにしても、いつもなら絶対断っていた申し出を、何故か今回に限って受けてしまった。
もう二度と、本気を出さないって決めたのにな。
俺と大星淡の点差は21000点。
跳満直撃か、三倍満ツモで逆転。
この程度なら、あの時と比べれば随分と楽なもんだ。
「……まぁ、余裕か」
俺の配牌
{一一一九九九①①①111南}
須賀京太郎の配牌
{一⑤⑧39東南南西北白發中}
生徒会長の配牌
{六九①②⑦9東東西北白發中}
大星淡の配牌
{五八⑨199東南西西北白中}
俺の前の二人は{三}と{⑤}をツモ切り。
そして、俺のツモは{⑨}。
「リーチ」
自分のツモ牌に手を伸ばしながら確信した。いや、分かっていた。
この牌で、俺は上がる。
「…………ツモ」
{一一一九九九①①①111⑨} ツモ{⑨}
清老頭・四暗刻単騎
16000・32000
久しぶりに打った麻雀で、久しぶりに出した本気。ここまで本気を出して勝てなかったのは今までに一人だけだ。
今はプロの世界にいて、日本最強と名高い彼女。あの人は強かったなぁ……いや、今でも結構頻繁に家に来るけどさ。
彼女以外とは麻雀を打つ気にならない。
俺の強さを目の当たりにして、再び俺と麻雀を打とうとおもう奴は彼女しかいなかった。
俺が麻雀を嫌った理由はそれじゃないけど。
「……終了、だな」
口に出してみるが、誰からも反応はない。
場を静寂が支配する中、たった一人言葉を発する者がいた。
――――大星淡、だ
「…………何、それ」
「ダブル役満とかチョーイケてんじゃん!」
「…………はぁ?」
耳を疑った。
今までは散々イカサマだと罵られた挙句、道具として使われ続けたこの能力を見て、チョーイケてんじゃん! なんて言われたのだ。
当たり前だが、俺にとっては理解不能な出来事だった。
ふと他の二人を見てみると、その二人も俺に畏怖の念を向けている様子はない。
もしかしたら、こいつらとなら……。
そんな希望を頭の隅に思い描いた時、昔の記憶がよぎる。
激昂する男と、静かに涙を流す子供。
無数の雀卓の横で男に牌をぶつけられ、痛みで目を抑える子供。
「…………上? 朔上? どうした?」
「あ……いや、何でもない」
どうやら一瞬意識が飛んでいたらしい。
わずかに乱れた呼吸を整えていると。
「朔上君、実はね。今年から麻雀大会に男女混合の部が新たに設立されたのよ。で、どうせだしその部にも出ようと思ったんだけど、男子の部員が足りなくって」
いきなり部の事情について話し始めた生徒会長。
部長の説明を聞くに、その男女混合の部に出場するには男子があと一人足りないらしい。
「それで、偶然俺に白羽の矢が立ったのか」
「そういう事。で、どうかしら? 麻雀部に入ってみる気はない?」
「…………お断りします。興味ないんで」
そう言い捨て、部室を去ろうとする。
この言葉に嘘偽りはないが、かと言って全て本当の事を言っているかと聞かれれば、その答えは俺自身も出せなかった。
……あ、そういえば。
今回、あの打ち方はしなかったな。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 卵はいいのか?」
「あぁ、そうだった。合計で四百五十二円だ、明日くれ。そんじゃあ、俺はこれで」
今度こそ、これで終わり。
久しぶりに不快じゃない麻雀を打てたのは悪くなかったが、だからと言って麻雀部に入る気は毛頭ない。
それに、俺以外でも何とかなるだろう。
「――――ちょっと待って!」
「……どうした? 大星」
「せめて後半荘だけ打って! 今度は絶対さっくー倒すから!」
「さっくーって呼び方はもう確定なのか……まぁいいや。後、半荘って話なら断る」
「何で!?」
俺は後ろを振り向く事もせず、後ろで荒ぶっていそうな大星淡にこう返した。
「……俺、あんまり麻雀好きじゃねぇから」
――朔上が帰った後の麻雀部――
「部長、どうしますか? 朔上の事は諦めた方がいいと思うんですけど」
「ちょっと前の咲みたいな事言ってたわね。でもまぁ、咲の時だった何とかなったんだし、勧誘し続ければどうにかなるんじゃない? 淡、どうする?」
「……そんなん決まってんじゃん」
「絶対に麻雀部に入れて、今度は百回倒す!」
閲覧ありがとうございます。
先に言っておきますが、私は麻雀ど素人です。
少牌もバンバンすると思うので、指摘お願いします。