ロクロウ「ううむ……」
エレノア「ロクロウ。難しい顔をしてどうしたのですか?」
ロクロウ「どうしたらもっと強くなれるのかと思ってなぁ」
ライフィセット「ロクロウはもう十分すぎるほど強いと思うよ」
ライフィセット「シグレにも勝ったじゃない」
ベルベット「シグレは剣技だけなら間違いなくアルトリウスよりも上よ」
ライフィセット「うん。僕はもうロクロウ以上の剣士はいないと思う」
ベルベット「……剣士以外ならまだわからないわよ」
マギルゥ「お主も負けず嫌いじゃのう」
ベルベット「うるさい」
アイゼン「それで、これ以上強くなるあてはあるのか?」
アイゼン「実際日々の鍛錬を積み重ねるしかないと思うがな」
ロクロウ「それはもちろん。とりあえず日課の素振りの回数を一万まで増やした」
ベルベット「あれ本気だったのね……」
エレノア「確か木刀でやっているのですよね?」
エレノア「ですが貴方の場合は小太刀の二刀流なので、あまり効果が無いのでは?」
マギルゥ「というか背中の大太刀を使えばよかろうて」
ライフィセット「そういえばシグレには勝ったのに使わないの?」
ロクロウ「シグレには一対一で勝ったとは言えんからな」
ロクロウ「ここぞと言う時には使っているんだが、一番体に馴染んでいるのは小太刀だからな」
ロクロウ「だが……理由はまったくわからないが、このままだとこれ以上強くなれ無い気がするんだ」
ロクロウ「シグレ以上の相手と向かい合った時、俺は勝てないかも知れん」
ベルベット「あれ以上の使い手がそうそういるとは思えないけど」
ロクロウ「多分いるさ。世界は広いからな」
アイゼン「逆に言えばその理由がわかればお前はさらに先にいけるということか」
マギルゥ「ふむ……体に馴染んでいるのならその戦い方のままでいいと思うがの」
ベルベット「意外と真面目に答えるのね」
マギルゥ「ただの気まぐれじゃよ」
ライフィセット「うーん……あれ、エレノアどうしたの?」
エレノア「いえ、少し……」
ロクロウ「お、なんだエレノア?」
エレノア「その……ロクロウは今までシグレ様を斬るために強さを求めていたのですよね?」
ロクロウ「ああ、業魔にまで身を堕としてな。裏のランゲツ流に切り替えたのもそのためだ」
エレノア「ならばもうシグレ様に勝つためのランゲツ流である必要はないと思うんです」
ロクロウ「ん?」
ライフィセット「どういうこと?」
エレノア「上手く言えないのですが……」
エレノア「これからはシグレ様に勝つための裏のランゲツ流ではなく、未知の相手と戦うためのランゲツ流を極めてみてはいかがでしょう?」
ロクロウ「……ほう、なるほど」
マギルゥ「いやさぱらんわい」
アイゼン「つまり今のロクロウの戦い方はシグレと戦うために特化したランゲツ流ということだ」
アイゼン「だから今のままではシグレ以外の相手では本当の意味でロクロウは全力を出せると言えない」
ライフィセット「そんな……」
ロクロウ「太刀のかわし方、いなし方、受け止め方。足運び、間合いの詰め方」
ロクロウ「確かに俺は常にシグレの動きをイメージして鍛錬を積んできたな」
ロクロウ「限界を感じていた理由……確かにそれかも知れん」
エレノア「これから先貴方が戦う相手はシグレさまではありません」
エレノア「戦い方も、使う獲物もまったく違うかもしれない未知の強者です」
エレノア「だからシグレ様に勝つための剣ではなく、どんな強者にも負けないための剣を目指してみれば――」
ロクロウ「…………」
エレノア「す、すいません! なんだか偉そうでしたね!」
ロクロウ「エレノア」
エレノア「は、はい!」
ロクロウ「ありがとな。おかげでなんとなく道が見えた気がするぜ」
エレノア「あ、いえ。お役に立てたのでしたら幸いです」
マギルゥ「わしにはさっぱりわからん」
アイゼン「きっかけくらいはつかめそうか?」
ロクロウ「なんとかな。これから必要なのはシグレに勝つためだけの裏のランゲツ流じゃない」
ロクロウ「どんな相手にも負けない俺だけのランゲツ流を見つける必要があるってことだな」
ロクロウ「俺が弱かったらクロガネの顔にも……兄貴の顔にも泥を塗っちまう」
マギルゥ「具体的にはどーするんじゃ?」
ロクロウ「実は思いついた事がもうひとつある。表でも裏でもない俺だけのランゲツ流」
ロクロウ「クロガネ征嵐と號嵐の二刀流だ!」
エレノア「大太刀の二刀流?」
ベルベット「あのサイズを片手で扱ってしかも二本……あんたの体格でも厳しいんじゃないかしら?」
ベルベット「下手すれば今よりも弱くなるわよ」
ロクロウ「人間の理屈ではそうなるかもしれんが、俺は業魔だからなんとかなるだろ」
ライフィセット「うん。ロクロウならできるよ。それにカッコイイと思う」
アイゼン「あの二本を自在に操れるようになればかなりの脅威だろうな」
マギルゥ「道のりは長そうじゃがの」
エレノア「でも、どんなに難しくても、強くなるためならロクロウはやるんですよね」
ロクロウ「おう。俺は『こう』だからな!」
エレノア「ふふ、できますよ。ロクロウならきっと」