ラ「はぁ……」
ロ「ん? ため息なんかついてどうしたライフィセット?」
ロ「何か悩んでる事があるなら聞くぞ」
ラ「ロクロウ……」
ラ「あのさ、どうすれば大人の男になれるのかなって」
ロ「大人の男?」
ラ「うん。ロクロウやアイゼンみたいな大人の男になりたいんだ」
ロ「俺やアイゼンのようにはならないほうが良いと思うがな」
ロ「俺は斬る事しか考えていない業魔。アイゼンは海賊の副船長で死神」
ロ「自分で言うのもなんだが、ろくな大人じゃないぞ?」
ラ「そうじゃなくて」
ラ「二人を見てるとやっぱり大人って感じがするんだ」
ラ「自分に正直な生き方とか。あとは単純に見た目とか」
ロ「ふむ……じゃあまずはたくさん食って体を大きくしないとな!」
ラ「そこは触れないでよ! 僕の見た目が子供なのは十分わかってるんだから!」
ラ「そもそも聖隷って食べたら大きくなるのかな?」
ロ「人間だったら歳を重ねれば自然とでかくなるだろうが聖隷は知らん。アイゼンに聞いてみたらどうだ?」
ラ「そうだね。ねぇ、アイゼーン!」
アイゼンが近づいてくる
ア「どうした?」
ラ「聖隷ってたくさん食べたら体が大きくなるの?」
ロ「大人の男になりたいんだとさ」
ア「……」
ア(見た目が成長する聖隷も存在するが、必ず大きくなれるかといわれればエドナのことを考えると……)
ア(いや、しばらく会わないうちにエドナも見た目が成長しているのかもしれない)
ア(それでいつかどこぞの男に惚れられて――)
ア「殺す!」
ラ「ひゃあっ!」
ロ「おいおいいきなりどうした? すごい殺気だな?」
ロ「なんならやるか?」
ロクロウが短刀を抜く
ア「い、いや……なんでもない」
ア「まぁ人それぞれといったところだ。効果がまったくないとは限らんな」
ラ「そっか……はぁ」
ア「だがなライフィセット。お前は大人とはいえないかも知れないが立派な男だとは思っているぞ」
ロ「そうだな。カノヌシ相手にあれだけ言えたのはたいしたもんだ。出会ったころに比べればでかくなったと思うぞ」
ラ「ほんとに?」
マ「身長以外はの~♪」
ラ「うわっ!」
いきなりマギルゥが出現
ラ「マギルゥ! 驚かさないでよ」
マ「話は聞かせてもらったぞ坊。大人になりたい理由はおおかたベルベットに子ども扱いされたくないからじゃろう?」
ラ「な、なんでわかったの!」
ア「前にも言っていただろう」
ロ「それに男が背伸びしたがる理由なんてほとんど女がらみだろうからな」
マ「わし以外にもばればれじゃったみたいじゃのう」
ラ「うう……でもそうなんだ」
ラ「なんだかベルベットには子ども扱いされてる気がするんだ」
ラ「僕はそれが嫌なんだ……だから大人になりたい」
ロ「……よし、わかった。俺にいい考えがある!」
マ「お主のいい考えなど悪い考えにしか思えんがのぅ」
ロ「まぁ聞け。大人の男のたしなみといえば心水だ。ためしにライフィセットも飲んでみたらどうだ?」
ロ「新しい世界が開けるかもしれんぞ」
ア「なるほど……一理あるな」
ラ「確かにあれを飲んでる時の二人は大人って感じがする」
ロ「試してみるか?」
ロクロウが心水を取り出す
ロ「俺のとっておきだ。アイゼンもどうだ?」
ア「悪くないな。俺も自分のを持ってこよう。つまみも必要だ」
ラ「心水……それで大人に近づけるなら!」
エ「いいはずありません!」
エレノア参上
ラ「あ、エレノア」
エ「ライフィセットはまだ十歳のはずです。心水を飲んでいい年齢に達していません」
ロ「聖隷にその決まりは当てはまるのか?」
エ「当てはまります」
ロ「いや、ここはアイゼンに聞いたほうが――」
エ「当てはまるんです!」
ロ「お、おう。そうなのか」
ロ(アイゼン。実際のところはどうなんだ?)
ア(当てはまる……ということにしておこう)
エ「飲むなら年齢的に問題ない三人だけでどうぞ」
マ「これこれ~。わしの心はいつまでも十四歳じゃぞ」
ロ「そういえばエレノアもライフィセットを子ども扱いしている気がするな」
エ「え?」
ア「子ども扱いというよりも保護者目線なんだろう」
エ「子ども扱いをしているつもりはありません。ライフィセットはもう立派な男の子だと思っていますよ」
マ(男の子って言ってる時点でのぉ)
マ(そして誰もわしの十四歳に触れてくれんかったのぉ……)
エ「ですが私はライフィセットを守るという使命があります。なのでいけないと思った時はしっかりと止めるべきだと思ってます」
ラ「そう言ってもらえるのは嬉しいし、エレノアには感謝してるけど……」
ロ「そうだ、じゃあ逆に逆らってみたらどうだ?」
ラ「逆らう?」
ロ「ああ、ためしにベルベットの言う事に逆らってみるんだ」
ア「子供の反抗期と思われないか?」
ロ「反抗期は成長の過程にあるものだろう。俺もよく意味もなく親に逆らったりしてみたもんさ」
ロ「すくなくとも子供から成長しようとしてるんだと思ってもらえるかも知れんぞ」
ラ「成長……うん、やってみようかな」
エ「ですが下手をすれば溝ができてしまうのではないですか?」
ア「そのときは俺たちでフォローしてやればいい」
ア「ライフィセットが自分の意思でやろうと決めたなら、そのくらいの手助けはしてやるさ」
ロ「心水よりは健全だろう」
エ「それは……そうですね」
エ「わかりました。私も全力でフォローします」
マ「その生真面目さが仇にならんといいがのう。お、ちょうどベルベットがきおったわ」
エ「ライフィセット。頑張ってください」
ラ「うん。僕ベルベットに逆らってみるよ」
ベルベットがやってくる
ベ「あんた達、なにしてんの?」
ア「いや、少し雑談していただけだ」
ベ「ふぅん。あ、そうだわフィー」
ラ「な、なに?」
ベ「おやつにキッシュ焼いたから冷めないうちに食べちゃいなさい」
マ(また逆らいづらい事をいいおってからに……)
ラ「ほんとに? 食べる食べる!」
ロ(おい、逆らうのはどうした?)
エ(ライフィセット。作戦を覚えていますか?)
ベ「ん? ロクロウ。それって心水よね。フィーに飲ませようとしたの?」
ロ「い、いや。これは自分用だ。アイゼンと飲もうと思ってな」
ベ「ならいいわ。フィーにそんなの進めないでよね」
ラ「はっ! で、でも少しくらいなら――」
ベ「あたしだってまだ飲めないんだからあんたにはまだまだ早いわよ。かわりにりんごジュース作ってあげるわ」
ラ「わぁい! ありがとうベルベット!」
マ(完全に姉と弟じゃのう)
ベ「そういえばあんたさっき虫取りに行ってたわよね。ちゃんと手は洗った?」
ラ「あ、忘れてた」
ベ「やっぱり。手を洗わないとおやつは抜きよ。ちゃんと洗ってきなさい」
ラ「うん。りんごジュースも忘れないでね!」
ライフィセットが手を洗いに行く
ベ「たくさん焼いたからあんた達も食べるなら来なさいね」
エ「は、はい。後で伺います」
ベルベットが去る
ロ「……なんだ。あの圧倒的な姉のオーラは?
ア「相手は百戦錬磨の姉だったな」
エ「作戦は失敗です。フォローする暇もありませんでした。では私もキッシュを食べに行きます」
マ「やれやれ……先は長そうじゃのう」