宿屋でまったりと休憩中
アイ「ん? ザビーダはどこにいった?」
ス「雨が降ってきたら急にどこかに行っちゃったよ」
ミ「その内帰ってくるさ。それよりも買い物に行ったアリーシャたちが心配だ」
デ「もうすぐ戻ってくるだろう」
アイ「男しかいないならいい機会だ。お前達に聞いておきたい事がある」
ス「聞いておきたい事?」
デ「なんだそれは」
アイ「お前ら……妹に手を出してないだろうな?」
ギロッと天族を殺せそうな目で睨まれる
ス「だ、出してないよ!」
ミ「濡れ衣だ」
ザ「何かと思えば……下らん」
アイ「てめぇデゼル! 妹をくだらねぇだと? ちょっと表に出ろ」
ス「お、落ち着いてよアイゼン。外は雨降ってるんだよ?」
ミ「エドナの事が心配なのはわかるけど、僕達は誰もエドナをそんな風には―‐」
アイ「ああ? エドナに不満があるってのか?」
ス「う……い、いやそれは」
ミ(性格なら直してほしいところは沢山あるね。あの毒舌は特に)
アイ「おいミクリオ。今エドナの性格がめんどくさいと思っただろう?」
ミ「え? い、いや……」
デ「ふん。それは事実なんじゃないか? あいつの性格は少々ひねくれているどころじゃないぞ」
ス「それは……その……」
アイ「確かにそれは否定できん。妹は昔から気難しいところがあるからな。しかしだからこそ。たまに見せてくれる笑顔の破壊力は凄まじい。初めてそれを見たとき、俺は兄としてエドナを一生守っていこうと思った」
アイ「実際は死神の呪いでそうはいかなかったのだがな。兄として失格といわれても仕方がない……」
ミ「アイゼン……」
ス「……正しかったのか間違っていたのか俺には判断できない。だけど離れたのはエドナを想っての事だったんだよね。だったらアイゼンはやっぱりエドナのお兄さんだよ」
ミ「うん。お土産や手紙もエドナを想っての事だろう?」
ラ「はい。アイゼンさんは立派なお兄さんですわ」
ス「うんうん。その通り――ってライラ?」
ロ「ただいまー。いやーまいったまいった。急に雨降ってきちゃった」
ミ「お帰り二人とも買い物は済んだのかい?」
ラ「はい。必要なものは全てそろいましたわ」
ラ「あとはアリーシャさんとエドナさんはまだみたいですわね」
ス「うん。買い物なら俺たちも手伝ったのに」
アイ「荷物もちは男の方が良かっただろう」
ロ「いいのいいの。女には女の買い物があるんだから」
デ「おいロゼ。早く体を拭け。あと風呂にでも入って来い」
ロ「はいはい。覗くなよ?」
デ「いいから入って来い!」
ロ「怒んなってもう。いこ、ライラ」
ラ「はい。では皆さん。失礼しますね」
ロゼとライラが去る
アイ「……もう一つ聞くが、エドナは上手くやれているのか?」
ス「どういうこと?」
アイ「さっきも言ったが少し気難しい性格で、加えて人間嫌いだった。誰かと一緒に旅など……こう言ってはなんだが考えられん」
デ「それは否定できないが、大きな問題はないぞ」
デ「あの口の悪さにもだいぶ慣れてきたからな」
ミ(ミボ呼びはやめてほしいんだけどね……ん?)
ミ(あれは……)
ミ「アイゼン。ほら、あれを見てみなよ」
ミクリオが窓の外を指差す
アイ「ん?」
ス「あれって――」
エ「アリーシャ。いい加減にしなさい」
ア「も、申し訳ありませんエドナ様」
エ「……ほらまた。何回言わせるの? 反省なさい」
ア「い、いえ。ですが……」
エ「口答えするの? 反省なさい」
ア「も、申し訳ありません……ですがやはり」
エ「いいからちゃんと傘に入りなさい。せっかく買ったものが濡れるでしょ。そんなこともわからないの?」
ア「わかっていますが、それではエドナ様が濡れてしまいます。ああ、左肩が……」
アリーシャが傘からはなれる。アリーシャの右肩辺りが濡れる
エ「だから買ったものが濡れるって言ってるのよ」
エドナが傘をアリーシャ側に戻す
ア「私は濡れても平気ですから」
エ「ワタシは荷物の心配をしてるのよ」
ア「で、でしたらこう荷物だけを守るようにすれば――」
エ「口答えするの? 反省なさい」
ア「も、申し訳ありません」
エ「まったく。そもそも晴れてたのになんでいきなり雨なんて降るの? これもきっとお兄ちゃんの死神の力ね」
ア「そうなのですか?」
エ「ええ。これからもっとひどい目に会うかもしれないわ」
エ「……いつか助けた事を後悔するかもね」
ア「そんなことはありえません!」
ア「エドナ様の大切なご家族の命を奪ったほうが後悔していたと思います」
ア「アイゼン様を助けて後悔する事など絶対にありえないと言い切れます」
エ「……そう」
エ「馬鹿ね。本当に」
エ「ボソッ(でも、ありがとう)」
ア「え、なんですか?」
エ「雨がうっとうしいって言ったのよ」
ア「やはり傘を――」
エ「また口答え? 反省なさい」
ア「申し訳ありません」
エ「……お詫びに帰ったら背中を流しなさい」
ア「え?」
エ「濡れたからお風呂に入らなくちゃいけないでしょ。だから背中を流しなさい」
エ「上手くできたらご褒美に背中を流してあげるわ」
ア「は、はい。ありがとうございますエドナ様」
エ「ぼそっ(そろそろ敬語もやめてほしいんだけど)」
ア「エドナ様、またなにか?」
エ「……別に」
エ「やっぱり雨も悪くないかなって想っただけよ」
ス「はは、二人仲良く歩いてるね」
ミ「だね、ほらアイゼン。心配しなくても……わあっ!」
デ「なんだ! いきなりどうした!?」
アイ「うっ……」
デ「もしや……泣いてるのか?」
ス「いきなりどうしたの?」
アイ「あのエドナが……自分の傘に他の誰かを入れている」
アイ「人間のアリーシャと楽しそうに話している……」
アイ「ぐっ……」
デ「泣くほどの事なのか?」
ミ「安心していい。エドナは出会ったころに比べてだいぶ変わったよ」
ス「だよな。きっともう人間の事もそんなに嫌いじゃないんじゃないかな」
アイ「お前達のおかげか……本当に感謝する」
ス「そんなのいいって」
アイ「だが……妹に手を出したら殺す」
ミ「兄バカだね……」
エ「ただ今帰ったわよ」
ア「今戻りました」
ス「お帰り、アリーシャ。エドナ」
エ「……お兄ちゃん。なんで泣いてるの?」
アイ「気のせいだ。泣いてなどいない」
デ「ロゼとライラが風呂に入っている。お前達も行って来い」
エ「そうね。行くわよアリーシャ」
エ「罰の裸でノルミンダンスもしっかりやるのよ」
ア「はい、エドナさ――ええっ!?」
ア「背中を流すのでは!?」
エ「はいって言ったわね? ちゃんとやるのよ」
ア「エ、エドナ様! 待ってください!」
エドナとアリーシャが去る
ス「は、はだかで……」
ミ「ノルミンダンス……」
アイ「おい、お前ら今何を想像した……」
ス「な、何も想像してないよ」
エ「ああ、そうそうお兄ちゃん」
エドナが戻ってくる
アイ「どうしたエドナ?」
エ「わざわざ雨降ってるのに上半身裸で外にいる男が、お風呂場に向かって風を飛ばしてたからぶん殴っといてね」
エドナが去る
アイ「上半身裸……風を飛ばす……」
アイ「ザビーダっ!」
アイゼンが外に飛び出していく。とたんに雨が豪雨に変化
デ「ほう、これも死神の呪いか?」
ス「デゼルは行かなくていいの? ロゼも入ってるよ?」
デ「ライラが燃やしているから問題ないだろう」
ミ(なんでわかるんだ? まさか自分もやってたとか……)
ス「それにしても……兄バカだなぁ」
ミ「うん。兄バカだね」
デ「バカ兄だろう」