マオテラスってどんな人?
ス「ねぇアイゼン。エドナに聞いたんだけど昔マオテラスと一緒に旅してたって本当なの?」
アイ「ん? ああ、そうだな。今から千年ほど昔になるが、共に行動していた事がある」
ア「五大神筆頭の天族様と……すごいですね」
ミ「それ本当なら……」
ス「うん。マオテラスってどんな人だったのか聞いてもいい?」
ス「ライラは誓約で話せないみたいで、ちょっとズルだけどアイゼンになら聞いても良いかなって」
アイ「ああ、あの強引なごまかし方をしていたやつか」
ミ「なんだか悪い事してる気持ちになってしまうんだ」
ア「はい……」
アイ「俺はそんな誓約はないから別にかまわんぞ」
ス「やった!」
ミ「五大神筆頭でグリンウッドで最も名の知れた天族の話か」
ア「はい。興味が尽きません」
アイ「今では名が知られているようだが、出会ったころのあいつは感情のない人形のようなやつだった。まだマオテラスという名前すらついていなかったな」
ア「人形……ですか?」
アイ「ああ。命令されればなんでもする。黙っていろと言われれば一言も言葉を話さず、自爆して死ねと言われれば迷わず自爆するような奴だった」
ス「そんな……」
アイ「だがそいつは一人の女から名前を貰った。そこからだんだんと自分の意思というものがでてきて心を持つようになっていった。あいつが成長していくのを見ているのは楽しかったし、成長を実感できた時は嬉しかった」
アイ「つまりマオテラスも始めからすごい奴では無かったということだ。」
ア「そうだったのですね……その名前をつけた女性というのは?」
アイ「後に災禍の顕主と呼ばれることになった女だ。そいつは聖隷……っと、今は天族か。天族を喰らう左腕を持っていてな。マオテラスを喰っちまうんじゃないかと内心ひやひやしていたもんだ」
ミ「さ、災禍の顕主!?」
ス「アイゼンって災禍の顕主とも一緒だったの!?」
ア「く、詳しく教えてください!」
アイ「今はマオテラスの話をしている。また今度にしろ」
ス(気になる……)
アイ「あとは……マオテラスは虫が好きでよく捕まえていた」
ア「虫……ですか?」
アイ「ああ。いろんな虫を捕まえるのが趣味だったと言ってもいい。こんな事もあった。ある日あいつはバッタとカマキリを二匹同時に捕まえたんだ。よほど嬉しかったのか大はしゃぎしていた」
ミ「……なんだか子供っぽいな」
アイ「そしてあまりに嬉しかったのか、あいつはその二匹を同じバックの中に入れてしまった」
ス「そ、そんなことしたら……」
アイ「次の日……バッタは消えていた」
ア「し、自然の摂理ですね」
アイ「また捕まえようとして今度はカブトを見つけたんだが木の上にいてな。上ろうとして頭から落ちてこぶを作っていたりもした。懐かしい想い出だ」
ス「なんかマオテラスのイメージが……」
ミ「近所の子供みたいになってきたね」
ア「でもこぶは痛いですよね……私も経験があるのでわかります」
アイ「心配ない。災禍の顕主が砂糖水を塗ってやったのではれはすぐにひいた」
ス「また災禍の顕主!?」
ミ「さっきから何者なんだ!?」
ア「や、優しいのですね」
アイ「他には……指名手配された際の似顔絵が見たいといって、自分も早く指名手配されたがっていた」
ミ「それ本当にマオテラスなのかい?」
ア「五大神様を指名手配だなんて恐れ多いです……」
アイ「当時はまだそうじゃなかったんだ。災禍の顕主とケンカした際には角や付け髭をつけて拗ねていた」
ス「またまた災禍の顕主!?」
ミ「だから何者なんだ!?」
ア「いえ、それもですがどうしてそんな行動を?」
アイ「あとこれは聞いた話だが、魔女のスカートをよく見たいからめくってほしいと頼んだとか――」
ミ「ス、ストップだ! もういい!」
アイ「なんだ。もういいのか。まだまだあるぞ」
ミ「いや、本当にいい。なんだかマオテラスのイメージが崩れすぎてこれ以上聞くのが怖い気がする」
ス「確かに……これ以上は直接会って話を聞こう」
ア「だがマオテラス様以外にもかなり気になる言葉があったが……」
ス「……聞くのが怖いからまた今度にしようよ」
ミ「だね」
ア「うん。ではありがとうございましたアイゼン様」
ス「また今度話を聞かせてね」
アイ「ああ」
スレイ、アリーシャ、ミクリオが去る
ライラが近づいてくる
ラ「アイゼンさん……その……」
アイ「お前は誓約で話せないのだから仕方がないだろう」
アイ「なぜそんな誓約をしているのかはわからないが、誓約は命をかけて行うものだということは知っている」
アイ「端から見ればふざけているようにしか見えなくても、お前にとっては命をかけるほど大切なんだろう?」
ラ「……はい」
ラ「なるべくスレイさんたちにはマオテラス様のことを聞いてほしくはありません」
ラ「識るとすれば自分自身の手で識ってほしいのです」
アイ「そうか……」
アイ「なんとなくだが、あいつがその誓約を課した理由がわかった気がするな」
ラ「もっとも、先ほどのような冗談であればいくら話していただいてもかまいませんわ」
アイ「……なに?」
ラ「……え?」
二人の間に沈黙が起こる
アイ「ライラ。一つ言っておく」
ラ「なんでしょう?」
アイ「さっきの話は全て真実だ」
アイゼンが去る
ラ「…………」
ラ「…………」
ラ「…………」
ラ「……え?」