Fate/Sweet Zero   作:フロンサワー

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 fateって難しいですね。執筆時間がもの凄くかかりました。こんな感じの更新速度になr……
 すんません、受験生になったので更に遅れると思います。


お菓子の宝具などではなく

 ランサーこと、『ディルムッド・オディナ』はフィアナ騎士団の一員として幾多の兵(つわもの)と刃を交えてきた。

 だからこそ理解できる。若干大振りながらも、その太刀筋は見事なまでに洗練されていると。何年、何十年もの月日を懸けて宝具(板チョコ)を振り続けてきたのだろう。狂戦士のクラスに堕ちながらも、セイバーに引けを取らない斬撃には感服するばかりだ。

 しかし、それと同時に困惑もしていた。バーサーカーは板チョコで自慢の長槍と鍔迫り合っているのだ。

 ランサーの宝具は『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』と言い、魔術的防御を無効化させるため の能力がある。つまり、板チョコは物理的な防御力のみで破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)と拮抗しているのだ。これはもう、お菓子を模した武器でないと説明がつかない。

 ―――太刀まで菓子の必要性はあるのか?

 本能の赴くままに行動しているバーサーカーに問い掛けた所で、素直に返答してくれる筈もない。どうでもいい疑問は頭の片隅に追いやり、目の前にいる狂戦士に集中する。

 

「くっ………!!」

 

 右腕が悲鳴をあげていた。バーサーカーの筋力はランクBとはいえ、腕一本でバーサーカーの斬撃を受け止めるには無理がある。

 状況を変えるべく、ランサーが勝負をしかける。

 半円を描くように左足を動かす。必然的に、身体は半身に構えられた。右手首を下に向け、『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』の穂先を左下へ反らす。それに従い、板チョコも左下へ反らされた。

 バーサーカーの体勢が崩れる。そこを狙い、交差させるように左腕を突きだす。

 心臓目掛けて一糸乱れぬ軌跡を描く『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』を、バーサーカーは倒れ込むように右へと躱す。標的を失った黄槍は、心臓を捉えることなく空を切った。

 

「ガアアアァアア!!!」

 

 この隙をバーサーカーは逃さない。倒れる体を独楽のように回転させて、板チョコの太刀をランサーの胴に目掛けて走らせる。不安定な姿勢にも関わらず、一切の淀みがない太刀筋だ。

 躱すのは確かに困難だ。しかし、ここで躱せないようならば、フィアナ騎士団の一番槍など名乗れない。渾身の力で地面を蹴る。そのまま、弾けるように後ろへと跳んだ。

 軽やかに地面へと着地し、深紅の槍をバーサーカーへと向ける。

 

「此程まで血肉沸き上がる決闘をできるとは思わなかったぞ、バーサーカー」

「ア"ァアア"アァア"……!!!」

「……語る術を持たないか」

 

 一抹の虚しさが胸を過った。

 何を考え、何を思って、何を守る為に板チョコの太刀を振るい続けていたのか? ケーキの銃を撃ち続けたのか……?

 それを理解できる日はきっと来ないだろう。相手は理性を無くしたバーサーカー。言葉を交わすなど、夢のまた夢の話だ。叶うものなら、もっと別の形で一騎打ちを果たしたかった。

 二振りの槍を構え、バーサーカーに突貫する。

 

「セイバー、貴女はバーサーカーをどう思う?」

 

 セイバーの後ろにいる銀髪の女性、アイリスフィールが戦況を訪ねる。

 

「………そうですね。バーサーカーの太刀筋は確かに感嘆の域に達します。しかし、あまり槍での闘いに慣れてないようにも見えますね」

 

 達人の目から見れば、バーサーカーの動きには僅かなぎこちなさを感じた。

 ランサーの槍に辛うじて対応しているが、二槍流という唯でさえ変則的な戦法なのだ。このまま押しきられるのも時間の問題だろう。

 

(ここだッ!!)

 

 ここで戦況が動いた。ランサーの『必滅の黄薔薇』がバーサーカーの腹部に迫る。

 それに対し、バーサーカーはグルリッ! と体を捻る。しかし、この軌道から考えて、どう足掻いても『必滅の黄薔薇』は躱せない。

 風切り音が響いた。バーサーカーのコートはパックリと裂け、黒い布地に鮮血が滲んでいる。

 更に、『破魔の紅薔薇』が止めと言わんばかりに放たれる。それを、バーサーカーは―――

 

「「「!!??」」」

「今度はキャンディーか……!」

 

 その姿が隠れる程の、巨大なキャンディーの装甲で受け止めた。端から見れば、突然ピンクのキャンディーが出現したように見えただろう。

 誰もが目を見開く中、ディルムッドの心境には僅かな焦りが生じていた。

 『破魔の紅薔薇』にどれだけ力を込めようと、キャンディーの装甲はピクリともしない。つまり、このキャンディーの物理的防御は『破魔の紅薔薇』を上回っているのだ。これだけの威力をもってしてもキャンディーには傷一つ無い。

 

「ガアアァァア!!!」

 

 そして、キャンディーの展開が一瞬なら、その逆も然り。一瞬でキャンディーが格納され、板チョコの刀身が『破魔の紅薔薇』の下を滑るように襲い掛かる。

 咄嗟に『必滅の黄薔薇』の柄で板チョコを受け止める。しかし、中途半端な防御で止めきれる筈もなく、板チョコの切っ先が右脇腹を抉る。

 段々と、焼けるような痛みが走った。裂傷からは赤い血が点々としたっている。押しきられる前に、持ち前の瞬発力でバーサーカーとの距離を取る。

 

「やるな、狂戦士……!!」

 

 遠距離と近距離を併せ持ち、挙げ句の果てには盾の機能まで付いている。しかも、殆どノータイムで変型させるときた。これ程厄介な宝具も無いだろう。

 しかし、バーサーカーは『必滅の黄薔薇』で傷を付けられた。この槍で付けられた傷は槍を破壊するか、ランサーが死なない限り癒えることはない。

 どちらも傷を負い、一見痛み分けのようにも見える。しかし、癒えない傷をつけられたバーサーカーにとっては大きなハンデとなる。

 

「………?」

 

 バーサーカーが宝具の構えを解き、ダラリと地面に刃先を向ける。

 しかし、獰猛なその瞳は、変わることなくランサーを睨み付けていた。

 

「………どうした、狂戦士。来ないのなら此方から行くぞ!!」

 

 二度目の突貫。

 無防備とも取れるバーサーカーに向かい、『必滅の黄薔薇』を走らせる。

 バーサーカーの宝具には板チョコ、ケーキ、キャンディーが装備されている。それぞれのお菓子が近距離、遠距離、防御の役割を担っている厄介な宝具だ。逆に言えば、それ以外の形態には変化しない筈だ。

 あの宝具が発する『喰らう』という威圧が少し気になるが、構えを解いた絶好の機会を逃す訳にはいかない。

 

「――――ッ!!?」

 

 しかし、それは早計だった。

 普段のランサーからすれば考えられない行動だろう。心の何処かで、宝具がお菓子という事で油断していたのかもしれない。だから、『必滅の黄薔薇』に喰らい付こうとする黒い顎への反応が遅れたのだろう。

 反射的に腕だけを引っ込める。次の瞬間、ガリゴリと音をたてながら『必滅の黄薔薇』は捕食されてしまった。

 ランサーは悲痛な表情で『破魔の紅薔薇』を構える。彼にとって、自分の武器は誇りそのものだ。自分のミスでその武器が捕食されたとなれば、精神的にも戦略的にも大きな痛手だ。

 

「な、何だよ。アレは………!!?」

 

 ウェイバーの視線の先に映るのはバーサーカーの宝具だ。しかし、これまでのメルヘンな外見とはうって変わって、禍々しい黒い顎を上下に動かしながら『必滅の黄薔薇』を捕食する異形へと成り果ててしまった。

 凄惨な光景に思わず息を呑む。次にああなるのは、自分かもしれない。

 気づけば、必死に奮い立たせた足が、カタカタと小刻みに震えていた。

 

「まさか、菓子の中にあんな怪物を飼っているとは思いも寄らなんだ。だが、口辺だけの怪物など恐れるに足らん。そうだろ、坊主?」

 

 ライダーの大きな手の平が、ワシャワシャと小さな頭をかき撫でた。

 いつもなら「子供扱いをするな!!」と言って、その手を払い除けようとしただろう。

 今は、振り払う気にはなれない。その手が戦う勇気を与えてくれる気がしたからだ。

 ―――ライダーが隣に居てくれるなら、僕はまだ戦える。

 震えていた筈の足は、地面をしっかりと踏みしていた。

 ただの一度も目を逸らさず、バーサーカーとランサーの行く末を見守る。

 

「………このまま引き下がるようでは、我が愛槍に面目が立たぬ。その御首、討ち取らせて貰うぞ!!」

 

 流れるような槍捌きを披露し、ランサーは『破魔の紅薔薇』の穂先をバーサーカーに向ける。それに応えるかのように、バーサーカーは板チョコの先端をランサーに向ける。

 ほぼ同時に地面が砕けた。

 紅の槍とチョコレートがぶつかり合う―――

 

「!?」

 

 ―――事はなく、『破魔の紅薔薇』だけが虚しく空を切った。

 バーサーカーのマスターが魔力供給を絶ったのか、あるいは絶たれたのか。散々と戦場を引っ掻き回したバーサーカーは忽然と霊体化し、静かに戦場を去っていった。

 

「フーム、バーサーカーのマスターが魔力供給を絶ったのか、あるいは途絶えたのか……」

 

 残ったのは、僅かに漂う甘い匂いのみだった。

 

「すまぬな、セイバー。我が主から撤退せよとの御命令だ」

 

 マスターの撤退命令を潔く受け入れた。と言うより、従う他ない。

 自分の未熟さのせいで切り札である宝具がバーサーカーに喰われてしまい、聖杯への道が一歩遠退いたのだから。

 

「次の勝負、手加減は無用だぞ」

「………ああ、勿論だ」

 

 そう言い残すと、続くようにランサーも霊体化して消えていった。

 そして、いよいよ残るはセイバーとライダーのみとなった。

 不可視の剣をライダーへと構えるセイバー。しかし、それに対してライダーは首を振るう。

 

「左腕を全快してから余の前に立ち塞がるがよい。その時は、全力を持ってそなたの相手をしようぞ。では、帰るとするか、坊主」

「待て待て待て!! 僕たちは何しに出てきたんだよ! セイバーを倒すなら今がチャンスじゃないか!!」

「坊主…… 戦場の華は愛でるべきものだぞ!」

「あだっ!!??」

 

 まさかの凸ピン炸裂。ウェイバーの額からは煙が出ているが、当の本人は馬車でゴロゴロとのたうち回るのみである。

 

「ではなあ!! 騎士王!!」

 

 蒼白い雷を発しながら、空を駆ける馬車の手綱を引くライダー。ウェイバーは真っ青な顔をしてライダーの背中にしがみつく。

 こうして、一方的にランサー陣営への被害が出たまま、聖杯戦争の初日が幕を閉じた。

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 とあるコンテナの頂き。そこには、スコープを覗きながら戦場を見下ろす一人の男がいた。

 彼の名は『衛宮切嗣 』。

 魔術師が忌み嫌う現代兵器を駆使しながら、幾重にも張り巡らしい罠や謀略で魔術師を抹殺してきた殺人機械だ。

 いつの日にか、彼は「魔術師殺し」と呼ばれるまでに名が広まっていた。その業績をアインツベルンに買われて、セイバーのマスターと成り今に至る。

 

(バーサーカー…… どの時代の英雄なんだ? しかも、宝具がお菓子って……)

 

 セイバーの左腕にかけられた呪いは解除されたが、とって変わるように新たな問題が浮上した。

 謎、謎、謎。バーサーカーの宝具が謎だらけなのだ。

 お菓子の外見ながらもランサーと拮抗し、挙げ句の果てには現代兵器まで内蔵されている。しかし、お菓子すらも仮初めの姿。その正体は、ランサーの宝具『必滅の黄薔薇』すらも喰らう禍々しい黒い化物の顎だ。

 バーサーカーの能力が判別できない以上、迂闊に攻めいる事はできない。

 それならば、逆にマスターを狙えばいい。

 消去法から考えれば、バーサーカーのマスターは間桐雁夜だろう。間桐の家を十一年間も出奔していたのだ。狂化によるパラメーターの底上げに頼るのは目に見えている。

 魔術の鍛練をろくに積んでいないマスターなど恐れるに足りない。バーサーカーを相手取るよりも遥かに効率的だ。

 

「舞弥、バーサーカーのマスターは確認できたか?」

『あのケーキ、美味しそうだった……』

 

 普段のクールな舞弥からは想像もできない返答に、切嗣の脳はフリーズした。

 しかし、一瞬にして脳を再起動させ、冷静な判断力をもって対処法を弾き出した。

 

「いいかい? 僕の言うことを今すぐ実行するんだ。深呼吸をして、あれはバーサーカーの宝具だって十回唱えてくれ」

『あれはバーサーカーの宝具…… あれはバーサーカーの宝具……』

 

 うわ言のように何度も呟くこと数十秒。ようやく、いつもの彼女が帰ってきてくれた。

 

『すみません、取り乱しました』ジュルリ

「………………まあいいや。それで、バーサーカーのマスターを確認できたか?」

「いえ、それらしき人影は」

「そうか……」

 

 舞弥との通信を終え、ポケットの内側に常備している煙草に手を掛ける。

 ゆらゆらと儚く揺れるライターの炎が、口にくわえられた煙草の先端を灯した。

 フゥ…… と白い煙を吐き、満天の星が広がる夜空を見上げた。

 

「間桐雁夜か。どうやら、再調査する必要がありそうだな……」

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 アサシンのマスター『言峰綺礼』。

 第4次聖杯戦争の監督役『言峰璃正』の息子でもあり、聖遺物の管理・回収を任務とする第八秘蹟会に席を置いていた人物だ。

 しかし、彼の心には大きな欠陥があった。

 生まれてこのかた、何一つ愉しいと感じたことがない。情熱を持ったことがない。

 悩みに悩んでいた最中、突如舞い込んできた話が聖杯戦争だ。この戦争で、その答えが見つかると思っていたのだが……

 

『やれやれ、間桐家の次男は厄介なサーヴァントを呼び出したものだな』

「………時臣………師……ッ!! アサシンの監視を数体………ブフッ! 改めて間桐雁夜に差し向けるべきか……ガフッ!?」

 

 彼は今、必死に笑いを堪えていた。否、堪え切れていなかった。

 口をへの字に固く結び笑いを堪えていたのだが、思い出す度に噴き出してしまう。

 師の前では平静を装おうとする理性は残っているが、如何せん、綺礼にとって人生初の体験だったので隠しきる事ができなかった。

 当たり前だ。愉しいと感じたことが無かった(・・・・)のだから。笑い声を押し殺す経験なんてある訳がない。

 

『そうだな。あのバーサーカーに関する情報は少しでも多い方がいい。あと、笑いを堪えきれていないぞ、綺礼』

「し、しつれ…… グッ!?」

 

 顔が真っ赤になりながらプルプルと震えている。彼を知っている者が見たら、誰しもが我が目を疑うだろう。残念ながら、その様子を伺える者は一人もいないが。

 鍛え上げた頬筋をもってしても笑い声が漏れてしまったが、それを気にする余裕など今の綺礼にはなかった。

 アサシンの集めた情報を一頻り報告し終え、時臣との通信を急いで切る。正直、もう限界だった。

 

「アハハハハハッ!! フフフ…… ハーッハッハハハハハハハハハ!!!! ハハハ…… ゲホッ、ゲホッ!?」

 

 狂ったように笑い、噎せた。

 

「ハァ…… ハァ…… バーサーカー、貴様が私に愉悦を教えてくれるのか……?」

 

 お菓子の宝具を片手に、戦場に出現したバーサーカー。

 板チョコの剣やら、ケーキの現代兵器やら、キャンディーの装甲やら、黒い怪物の顎やら。多能なお菓子の宝具は警戒に値するだろう。

 しかし、綺礼にとってはその姿を思い出す度に笑いが込み上げてくる。愉悦がなんたるかを識れるような気がする。

 バーサーカーの闘いっぷりを思いだし、また、一人で爆笑していた。

 こうして、言峰綺礼は間違った方向に覚醒しようとしていく……

 因みに、教会を監視してたと思わしき使い魔を持ってきたポニーテールのアサシンは、仮面の奥に微妙な表情を浮かべて見ていたという。

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

「ふざけるな!! ふざけるな!!! ふざけるな!!!!」

 

 とある倉庫の一角で、『ケイネス・エルメロイ・アーチボルト』が誰に言うでもなく叫んでいた。その表情は鬼気迫るもので、まるで此までの鬱憤が爆発したかのようだ。

 普段の彼ならば、魔術師としての誇りを胸に冷徹かつ気品に溢れた態度を心掛けている。そんな男がこのような蛮行に及ぶのは稀有なことだ。

 

「たかが田舎の三流魔術師ごときが、選ばれし一流魔術師の私に歯向かうなどと!!」

 

 今思えば、教え子の『ウェイバー・ベルベット』に用意していた召還媒体を強奪され、変わりに呼び出したランサーに許嫁が惚れてしまう始末。

 まるで漫画のように積み重なる不幸。ケイネスの精神が追い詰められるには十分だった。

 追い打ちを掛けるように、三流魔術師のサーヴァントがランサーの宝具を喰らってしまった。折角、セイバーの左腕に不治の呪いを負わせたというのに。

 

「しかも!! あのようなふざけた宝具で!!!」

 

 普通の宝具ならまだ赦せた。しかし、ランサーの宝具を打ち破ったのは、あろうことかお菓子の宝具である。何の挫折もない人生を送ってきたケイネスにとって、これは堪え難い屈辱だった。

 ある程度不満をぶちまけ、頭の血も段々と引いていく。しかし、射殺すような眼光だけは変わらなかった。

 

「宜しい。ならば望み通り、アーチボルト家9代目当主、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが直々に相手をしてやろう……!」

 

 バーサーカー陣営の行動は、明らかにランサー陣営のみを狙ったものなのだ。

 直接的な被害が出たのもランサー陣営。宝具を喰らったかと思うと、直ぐ様に消えてしまったのが何よりもの証拠だろう。

 叩き付けられた挑戦状を受けとるがべく、ケイネスは間桐雁夜を打ち倒す決意を固める。

 この時、近くにいたという理由でランサーの宝具が喰われた事実を知らないのは、雁夜にとって不幸中の幸いだったかもしれない。この事実を知れば、問答無用に時計台きっての天才の手腕が振るわれたであろうから。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 ―――時は僅かに遡る。

 

「ハハハ…… 俺のバーサーカーが時臣のサーヴァントを退けたぞ!!」

 

 間桐雁夜の気分は高揚していた。

 憎き時臣のサーヴァントを退けたのだ。自分のような急造の魔術師が、娘すらも犠牲にして魔術の鍛練に励む男と互角に張り合ったのだ。

 きっと、自分の事を間桐の落伍者とたかを括っていたのだろう。そんな相手に撤退を余儀なくされた時臣の心情を考えると、卑屈な笑みが溢れてしまう。

 

「ガハッ!! ………ゴホッ!?」

 

 しかし、刻印蟲が雁夜の肉体を容赦なく貪る。

 バーサーカーの銃撃が、これまで温存していた魔力を全て持っていってしまった。アーチャーの宝具群を防ぐためなので、仕方の無いことなのだが。

 赤色の何かが口から溢れだす。鉄の味がするそれは、幾度となく味わった血の味だ。

 それでも、バーサーカーを実体化させるのに支障はない。こんなもの、間桐の修行に比べれば苦痛などと言えない。

 それに、ランサーの宝具を喰らったのだ。宝具の魔力を丸々奪い取ったバーサーカーの魔力は、雁夜の僅かな魔力だけだ実体化できるくらいに補充された。

 辛うじて動く右腕で口許の血を拭う。バーサーカーへの魔力供給を絶ち、霊体化させる。

 ランサーの宝具を喰らい、初戦の成果としては上々だろう。それに、時臣のサーヴァントが消え、バーサーカーの魔力も補充できた今、戦場に留まる理由もない。

 重い体を引き摺りながら、桜の待つ間桐邸に向かおうとするが……

 

「………どうしたんだ、兄さん?」

 

 突然、鶴野から通信が入る。多少訝しみながらも、鶴野の連絡に耳を傾ける。

 しかし、その報告はあまりにも衝撃的なものだった。

 

「そんな…… 桜ちゃんが、消えた!!??」

 

 




 綺礼が違う意味で覚醒しそうです。
 そして、何の因果か、最強に厄介な者どもに一方的にターゲットにされる雁夜おじさん。まさかのケイネス先生にも狙われるって、どんな無理ゲー?
 感想、お待ちしております。
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