更新できました。頑張ったよ俺。
これからも頑更新し続けます。ゆくゆくは、ゲージに色をつけれるように頑張ります。
コンテナターミナルに怒鳴り声が響いた。
声を潜めるのも忘れ、雁夜が声を張り上げているのだ。他のマスターに気づかれる危険があるが、雁夜にとっては知ったこっちゃない。
「このクソ兄貴! 何の為の見張りなんだよ!!」
『仕方ないだろ!? まさか、こんな真夜中に桜が脱走するなんて!!』
「~~~ッ!!」
臓硯が死んだ今、間桐に縛られる理由は確かに無くなった。それでも、こんな真夜中に脱走するような娘じゃない筈だ。
いや、今は理由を考えている場合じゃない。かぶりを振るい思考を切り替える。
聖杯戦争が開幕し、唯でさえ冬木市は不安定な状況なのだ。一刻も早く見つけ出さないと、桜に危険が及んでしまう。
(蟲の大量使役は堪えるが桜ちゃんの為だ……! 耐えきってみせる……!!)
背に腹は変えられない。体内の魔術回路を総動員させ、限界ギリギリの量の蟲を使役する。
冬木市の至る場所を探索させたが、桜が見つかる気配は一向にない。時間だけが過ぎていき、どんどんと焦心に駆られていく。
それだけではない。魔術を行使する間も、刻印蟲は雁夜の肉体を容赦なく喰らう。
「ぐっ……! がっ!?」
『おい!? 雁――』
鶴野との通信が途絶える。
強張った左顔からは血管が浮かび上がる。左腕に至っては膨張しすぎた血管がそのまま破れ、血がポタポタと滴っている。
倒れるように膝を着く。いよいよ、体力的にも限界が近い。視界がブラックアウトする寸前―――
「いた!!!」
先程まで衰弱などまるで嘘のように、雁夜は勢いよく立ち上がる。
一匹の蟲が冬木市の下水道の入り口に連れていかれる桜を捉えた。しかも、赤髪の青年に手を引かれ。
雁夜の右脳が嘗て無いほどフル回転する。雁夜の目には、その赤髪の青年の顔が酷く上ずっているように映った(当人比)。
もしかして…… いや、もしかしなくても。あの青年は間違いなくロリコンだ。下水道に連れ込んだ次の行動を、光の速さで考え至る。
そこからの雁夜の対応は迅速だった。
「………令呪をもって命ずる。桜ちゃんのいる場所まで俺を連れていけ! バーサーカー!!」
一ミリの躊躇もなく令呪を使用する。掲げた右手の令呪の一画が淡い光と共に消えていく。
喩え聖杯戦争に関係なかろうと知ったこry)。
限界したバーサーカーが雁夜を担ぐ。ランサーの宝具を捕食した恩恵か、ほんの僅かな魔力しか消費しないので大した影響はないが……
「く、苦しッ!?」
運び方が悪かった。フードを掴み、引き摺る形で雁夜を連れて行くバーサーカー。だんだんと脚を回転させるスピードは増していく。地面を蹴り、宙を舞い、夜の冬木を颯爽と駆け抜ける。
バーサーカーの右手で掴まれている雁夜は、泡を吹きながら気絶していた。
雁夜が気絶している間に、バーサーカーは野を越え、山を越え、街を抜け、橋を越え、いよいよ下水道への入り口に辿り着いた。
右肩に乗せていた雁夜を、荷物の如く地面へと落とす。それでも、ギリギリのラインを理解しているのか、いないのか。荒い呼吸をしながらも、雁夜は一応生きていた。
「葵さん、俺も今そっちへ…… いや、葵さんは死んでないだろ!」
自分で自分にツッコミを入れながら、雁夜はガバリッ! と起き上がる。周りを見渡せば、いつの間にら下水道への入り口にいた。
「ここは……?」
そして、気づいた。下水道の奥からは唯ならなぬ邪悪な気配が漂っている。
何処かの魔術師の工房なのだろうか? もしそうだとしたら、この先は危険極まりない。魔術師工房は、幾多ものトラップが張り巡らされた要塞のようなものだ。そんな場所に踏み込んだら、いかにサーヴァントを連れていようと、命の保証はできない。
だが、喩えそうだとしても、雁夜は立ち止まる訳にはいかない。此の先に桜が居るというなら、敵魔術師の工房だからといって逃げ出すなど、断じてない。
「行くぞ、バーサーカー」
覚悟を決めて足を進める雁夜。
その先に立ち塞がる困難を喰い破ろう。そう言わんばかりに、お菓子の宝具を肩に担いだバーサーカーが雁夜と並んで足を進める。
バシャ…… バシャ…… と水の上を進む足音が響く。暫くしてバーサーカーの足が止まった。それにつられ、雁夜の足も止まる。
バーサーカーを一瞥する。眼前の暗闇を睨み付けるその目は、幾度と無く浮かべた『獲物を探し当てた』歓喜の目に変わっていた。
「ギイイィィィィィ!!!!」
「!!??」
次の瞬間、触手なのか蛸なのかよく解らない生物が二人に襲いかかる。
しかし、たった一閃が。横一閃に振るわれたバーサーカーの板チョコが、その生物を真っ二つに引き裂いてしまった。
夥しい量の血飛沫が弾け跳ぶ。同時に、どす黒い血液がバーサーカーを紅く染め上げた。しかし、さして気にした様子もない。化物の顎を作り出し、ピチピチと跳ねる残骸に喰らいつかせる。肉と骨を噛み砕く生々しい音が響いた。
未だに獰猛な目を浮かべたバーサーカーは、下水道のその先へと視線を移す。
「「「「ギギギギイイィィィ!!!!」」」」
バーサーカーの捕食が口火を切ったのか、次々と蛸が飛び掛かってくる。バーサーカーは満面の笑みを浮かべながら、優に音速の域に達した剣撃が魔物達を斬り捨てた。
「クソッ……! 数が多すぎる……!!」
歯痒い表情を浮かべる雁夜。
魔術師にマトモな奴などいない。こうしている間にも、間桐臓硯のように桜を苦しめているかもしれない。
―――今、桜ちゃんを救えるのは時臣じゃない。他でもない俺なんだ………!!
誓ったのだ。約束したのだ。あの娘は、桜だけは幸せにしてみせると。
気づけば、声の限りにバーサーカーに指示を飛ばしていた。
「殲滅しろぉぉぉ!!!!! バーサーカァァァァアアアアァァァァ!!!!!」
その想いに応えたのかは解らない。だが、バーサーカーは宝具をケーキへと変型させてくれた。
雁夜は頬を吊り上げる。きっと、バーサーカーは命令を聞いた訳ではないのだろう。それでも、この魔物達を一掃することができる。
銃口が標的に向けられる。アーチャーの宝具群すら防ぎきった銃弾が―――
『キュゥゥン!!!』
一閃の光が暗闇を駆け抜ける。
輻射の誘導放出による光増幅。俗に言う、レーザーが放たれた。
蒼白い光に接触した魔物達は、否応なしに次々と焼け爛れていく。その光景自体は悲惨なものなのだが、全く頭に入らなかった。
(ケーキから…… REーZAー……? れーざー……?? レーザー……??? )
ケーキからレーザー。それだけが頭の中を埋め尽くしていたのだ。
「………………………………まあ、いっか」
とりあえず足を進める雁夜。しかし、バーサーカーが残骸を捕食しようとするので、結局足止めをくらった。
★☆★☆★☆
「うーん…… 迷うなあ。まさかこんな一級品の素材が手に入るなんて! どんな芸術(アート)にしようか? ねえ、旦那ぁ」
キャスターのマスター『雨生龍之介』が、心底幸せそうな表情を浮かべる。
龍之介は魔術師ではない。先祖の代に魔術師がいただけでマスターに選ばれた。しかし、生粋の連続殺人犯(シリアルキラー)という面を持つ異常者でもある。
壁際に視線を移す。その先には、瞳に怯えの色を見せる子供たちが何十人といた。その中で唯一、他人事のように無表情な間桐桜も。
「それはいけませんよ龍之介! 彼女は聖少女降臨の生け贄となるのです!! きっとジャンヌもお気に召すでしょう!」
「えええぇぇ!? そんな~~~!?」
キャスターのクラスで現界したサーヴァント『ジル・ド・レェ』は、カエルのように飛び出た双眸を桜に向ける。ソレは、およそ人間に向けるものでない。
「「「ひっ……!!??」」」
「…………」
邪悪な視線を悟ってか、多くの子供たちが恐怖で竦む。しかし、桜だけは違った。表情どころか眉ひとつ動かさない。
キャスターはその様子を見て顔をしかめる。
静的な状態ではなく、変化の動体こそが彼の求める恐怖なのだ。そんな彼からしてみれば、なんの反応もない桜が不快でしかたがない。右腕の一本でも握り潰そうとした瞬間――― 桜の右腕へと伸ばした手が止まる。
「 龍之介…… どうやら、狂犬の御出座しのようですよ」
「うん?」
龍之介が首を傾げた。
イマイチ状況を掴めていないマスターの為、千里眼の水晶を覗かせる。
『ァァァァア"アア"ァアァア"ア"ア"!!』
人が発したとは思えない咆哮。水晶に映ったのはケーキの宝具を構えたバーサーカーだ。
一本、二本、三本。眩い閃光が次々と海魔を焼き殺していく。龍之介の目には、ケーキからレーザーが発射されたように見えた。というより、事実その通りなのだろう。
「……これは少しマズいんじゃない?」
さすがの龍之介も口許が引き吊く。彼のような異常者でも、この光景は相当ブッ飛んでると感じたらしい。
心配した目をキャスターに向ける。確かに今なら逃げることも可能だが、折角集めた素晴らしい素材たちを失うことにもなる。それに、久し振りに一級品の素材を手にいれたのだ。逃走だけは何としても避けたい。
「問題ありません。私たちの冒涜の儀式を妨げようとする狂犬など、私の『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』で事足ります」
「さっすが旦那!! 期待してるよ!」
キャスターの手ひは一冊の魔導書が開かれていた。キャスターが持つ唯一にて、凶悪な性能を誇る宝具『螺湮城教本』。魔力炉を持ち、魔術師でない者にも深海系の海魔を召喚できる宝具だ。
一匹だけなら英霊に敵わないだろう。だが、それが数十、数百匹と数を成したら? 一匹一匹が脆弱だとしても、数を成せば十分な脅威だ。
次々と現れる無数の海魔を従え、バーサーカーを迎え撃つ体勢を整える。そして、とうとう―――
「桜ちゃん!!!」
狂戦士を引き連れたマスター、間桐雁夜が現れた。
「…………雁夜おじさん?」
僅かに、ほんの僅かに表情が綻ぶ桜。
その姿を見た瞬間、雁夜は体から力が抜けるような感覚を覚えた。
桜が臓硯の手によって穢された時、どれだけ自分に絶望し、どれだけ後悔したことか。だが、間に合ったのだ。今回は桜を守ることができるのだ。
安堵感で崩れ落ちそうになる雁夜を支えたのは、憎悪と責任だった。ありったけの憎悪を籠めた形相で二人の男を睨み付ける。
一目見て理解できた。痩せ細った長身の男は確実にサーヴァントだ。ステータスを透視すれば、案の定、キャスターだという結果も出てる。
雁夜の口許が歪に吊り上がる。聖杯戦争に参加したマスターなら好都合だ。殺してしまっても、なんの問題もない。
「うわっ、すっげえ!! この人今にも死にそうじゃん!」
それに対し、龍之介は呑気な声を上げていた。雁夜も表情を強張らせ、何が目的で桜を拐ったのか探りを掛ける。
「…………お前、キャスターのマスターか。桜ちゃんをどうする気だったんだ?」
「んー、もしかしてこの娘のこと? そうだなー…… 人間パイプオルガンの鍵盤かな! この娘の腸なら綺麗な音色を響かせると思うんだよ! どう? 素敵でしょ?」
そのたった一言が、雁夜の逆鱗に触れた。
「………………殺せ!! バーサーカー!!!」
雁夜の叫び声と共に、バーサーカーが板チョコを構えながらキャスター達に突貫する。
しかし、無数の海魔の壁にバーサーカーは遮られてしまう。斬りつけようが、喰らい付こうが、僅かな突破口も開けない。寧ろ、バーサーカーの周囲が海魔に埋め尽くされていく。
「わーお。超FOOL」
「これはこれは。そのように巫山戯た宝具で私達に歯向かおうなど、愚行の極みですぞぉ!!」
二人の注意がバーサーカーに向いてる間に、闇に紛れて雁夜は行動をおこす。
ランサーの宝具に加え、キャスターの召喚した海魔を喰らった恩恵なのだろう。バーサーカーがどれだけ暴れようと、刻印蟲が過度に肉体を貪ることはなかった。
桜を助け出すには今しかない。海魔に気づかれぬよう、息を殺して慎重に近づこうとするが―――
「しまっ―――!?」
複数の海魔が雁夜に襲いかかった。
ゆっくり、ゆっくりと海魔が迫ってくる。しかし、意識に反して体は動かない。
絞め殺される。喰い殺される。圧し殺される。頭の中では様々な死に様が反芻された。
ここまでなのか。大切な人を守れずに、ここで終わるのか。いよいよ、海魔の牙が雁夜に喰らい付こうとした―――その時!
『ドォン! ドォン! ドォン!!』
三発の銃声が響く。次の瞬間、雁夜の目の前に迫っていた海魔が断末魔をあげる。銃弾に貫かれた3匹の海魔は血飛沫をあげながら、力なく地べたをのたうち回る。
更に一匹が雁夜へと襲いかかるが、醜い奇声をあげて地面へと縫い付けられる。バーサーカーが板チョコで海魔を突き刺したのだ。
マスターの無事を確認するかのように、バーサーカーはそっと視線を移す。そのまま、海魔だったモノから板チョコを引き抜いた。
「バーサーカー…… お前……」
クルリと雁夜に背を向け、次々と飛び掛かってくる海魔を斬り伏せる。その姿は、決して狂戦士などではない。大切な人を護るために闘い続けた男の姿に見えた。
「サ…… クラ…… ヲ、コドモ…… タチヲ……… タノ…… メルカ?」
海魔の下卑た断末魔の中、辿々しい発音だが妙に威厳のある声が響いた。最初こそ耳を疑ったが、今はもう確信している。この声はバーサーカーのものだ。
桜達がいた場所に目を向ける。
キャスターのマスターが桜たち全員を引き連れて撤退しようとしていた。暗示の魔術が掛かっているのか、子供たちは覚束ない足取りで進んでいく。
「……勿論だ!」
無論、桜達を渡すつもりは微塵もない。外へと脱出すべく、侵入した経路を逆走する。
ふと、海魔を屠り続けるバーサーカーへと視線を移す。「任せたぞ」と、バーサーカーの背中が語っていた気がした。
それが、何よりもの後押しになった。バーサーカーの言葉を胸に留め、左半身を引き摺りながら再び走り出す。
「甘く見られたものです。まさか、たったの一人で私の海魔を相手取るつもりですか? まあ、あの死に損ないが加勢した程度で、この状況を覆せるとは思えませんが」
「………」
『螺湮城教本』により、新たな海魔が召喚される。バーサーカーは獰猛な笑みではなく、決意を秘めた鋭い眼孔を向けた。
「さあぁぁああ! そこな狂犬を喰い尽くしなさいぃぃい!!」
キャスターの号令を合図に、無数の海魔がバーサーカーへと飛び掛かった。
★☆★☆★☆
冬木市地下の下水道は赤一色で染め上げられていた。キャスターの召喚した海魔達も、同族の血で赤く染めらている。
目眩がする程の赤一色の中、魔の群れを縦横無尽に駆ける黒い影が一つ。この光景とはあまりに不釣り合いな宝具…… 板チョコを振り回しているバーサーカーである。
飛び掛かってきた海魔の一匹が、大きく開かれた禍々しい黒の顎へ吸い込まれていく。力強く顎が閉じられ、骨と肉が噛み砕かれる音が響く。
それでも恐れることはなく、いや…… 恐れる知能すらないのか、次々と海魔が襲いかかる。
「この『数の差』を覆すことなど不可能! フフフ…… いつまで抗えるのか見物ですねえ!!」
拮抗こそしていれど、かれこれ数十分はこの状況である。
バーサーカーの魔力消費は唯でさえ激しい。加えて、それに相応しい魔術師としての素養がマスターにあると思えない。
このまま闘い続けさえすれば、バーサーカーの自滅は目に見えている。キャスターは勝利を確信していたのだが……
「………… 馬鹿な!? 海魔が召喚されない!!!??」
『螺湮城教本』に幾ら念じようと、海魔の一匹すら召喚できない。
両手で髪を掻きむしり酷く狼狽するキャスター。まさか、自らの宝具が封じられようなど、夢にも思わなかったのだろう。
滑稽とも取れるキャスターの姿を見たバーサーカーは、不敵な笑みでこう告げた。
「ゴチソウ……サマ……」
倒れた海魔の魔力が『螺湮城教本』還元され、半永久的に海魔の召喚が可能な筈なのだ。
しかし、知る由もないだろう。バーサーカーの宝具とキャスターの宝具は最悪な相性だと。
バーサーカーの宝具は『喰らった物の魔力を自身に還元する』のだ。今頃、倒された海魔の魔力は、バーサーカーの宝具の中だろう。
沸々と、キャスターの内から激情が沸き上がってきた。
「思い上がるなよ匹夫めがぁぁぁぁあああぁ!!!」
キャスターの呪詛の如き金切り声が木霊する。
しかし、バーサーカーは一瞥もせず、血濡れた赤い板チョコから純白のショートケーキへと変型させる。
銃弾、果てにはレーザーまで撃ち出される現代(?)兵器。多対一の状況なら、此程有利な宝具もない。
轟音と共に、雨のような銃弾が海魔目掛けて空を切る。着弾した瞬間、圧倒的熱量の爆風が海魔のいた空間に吹き荒れる。
「ひぃぃいぃ!!??」
まさにそれは絨毯爆撃。残ったのは、黒く焼け焦げた無機質な床のみである。これで、バーサーカーを遮る壁はなくなった。
これぞ、バーサーカーが狙っていた千載一遇のチャンス。『螺湮城教本』に魔力が還元されたが、海魔を召喚する隙など与えない。瞬時にキャスターへと肉薄し、板チョコの先端をキャスターへと向ける。
「ぐぅがああぁぁあああぁ!!!??」
黒い顎がキャスターの左腕を噛み千切った。
肩口から血が溢れる。しかし、キャスターは心の底から安堵していた。倒れ込むように躱していなければ、今頃宝具の口の中だ。
今や隻腕となったキャスターは、荒い息遣いをしながら立ち上がり、狂気を孕ませた双眸をバーサーカーへと向ける。
「己…… 己…… オノレ、オノレ、オノレ、オノレオノレオノレオノレオノレオノレェェェェェェ!!!」
バーサーカーは板チョコを構える。このままで終わる筈がない。仮にも、百年戦争でフランス軍元帥を務め、救国の英雄とまでいわれた騎士なのだから。
キャスターの憎悪に呼応するかのように、足元から巨大な魔法陣が展開される。
反射的に魔法陣から飛び退くバーサーカー。次の瞬間、無数の触手がキャスター(・・・・・)を呑み込んでしまった。
『クックック……!!! クハハハハハハ!!!』
少しずつ、少しずつ魔法陣からナニカが這い出してくる。最終的に、下水道の空間を埋め尽くす超弩級の海魔が召喚された。
本来の全長ならば100メートルを優に越えるのだが、バーサーカーに喰われた魔力が多大な為、随分とスケールダウンしてしまった。それでも、巨大なことには変わりない。
『―――ッシ!!!!』
巨大な触手の横薙ぎが、柱ごと砕きながらバーサーカーへと迫る。にも関わらず、その勢いは衰えることを知らない。
咄嗟キャンディーの装甲を展開する。しかし、人一人覆う程の巨大なキャンディーも、超弩級の海魔の触手の前では微々たるものだ。
「グガァ……!!??」
宝具諸とも一直線に弾き飛ばされた。あまりの衝撃に、口から鮮血が飛び散る。ボールのように地面を何度もバウンドし、柱に激突して漸く止まる。
立ち上がろうとするも、それを許す相手ではなかった。幾多もの触手がバーサーカーへと叩き込まれる。土煙があがり、バーサーカーの姿が完全に呑み込まれる。
『潰れろ! 潰れろォ!! ぶっ潰れろォォォォ!!! 慟哭と絶望の果てに、己の愚かさを呪うがいいィィィ!!!』
何度も、何度も、何度も、何度も。執拗な程に触手を叩き込む。
確信した。今度こそ、今度こそバーサーカーを仕留めたと。
触手の動きを止める。煙が晴れた先の光景は、血溜まりと陥没した地面だけだった。
『ふはははは!! やはり神は、私を罰しなどしなかった!!! ははははは―――』
「そこまでだ。キャスター」
祝勝の雄叫びを遮るように、鋭い剣のような張りのある声が響いた。
「この俺を差し置いて、我が愛槍の仇を討ち果すことだけは断じて許さぬ。ここより先は、フィオナの一番槍『ディルムッド・オディナ』が相手になろう!!」
血まみれのバーサーカーを肩に担ぎ、深紅の『破魔の紅薔薇』を巨大な海魔へと向けたランサーが佇んでいた。
アマトさんのステータスがアップしました。まあ、狂化してるとはいえマスターの雁夜がしょっぼ…… 急造の魔術師なので、魔力供給が十分じゃないんですね。ところがどっこい、色々食べてパワーアップです。
ステータス:筋力B、耐久B、敏捷B、魔力D、幸運E、宝具A+
それでもキャスター in 海魔に勝てるビジョンが浮かばない……… という訳で、ランサーの参戦です。
次回予告
「いまだ! 殺れ、バーサーカー!! ………ちょっと待て、何故ケーキ先端を此方に向ける? そんなことしたら、俺まで巻き込まれて…… アアーーーー!!?」
「ランサーが死んだ!?」
「この死でなし!」
嘘です。多分、次で決着です。