シリアス:ギャグ=8:2
くらいで書いてるんですけど…… あれ? どうしてこうなった???
突然だが、スイーツイーターの単純な日本語訳は『お菓子を食べる人』である。改めて考えると、随分と珍妙な二つ名だと思う。
まあ、散々スイーツイーターと呼ばれたせいで気にしなくなったが。
だが、マスターが真名を尋ねてきた時、そんな二つ名を告げたらどう思われるのか?
そう、答えは単純明快。
ふざけていると思われる。こっちはバリバリのシリアスモードなのに。その気持ちを解ってしまうのが、余計に悲しくなる。
何度も何度も「真面目だから! 俺、ふざけていないから!!」と言い続け、マスターも漸く信頼してくれた。
「桐永甘斗…… 聞いたことが無いな」
マスターが首を傾ける。
だが、聞いたことが無いのも仕方がない。
「そりゃそうだ。俺、未来から来たし」
「そうか、未来から……… え? ……み、未来って………え、はぁ!? 」
「英霊がいる『座』には、時間の概念がないからな。呼ばれても不思議じゃない」
「じゃあ! 夢で見たあの景色は……!!」
あの夢……? ああ、成る程な。俺の記憶を夢で覗いたのか。
これじゃあ、隠しようがない。いや、本来は隠す必要もないんだけどな。
ただ、そう簡単に話せる内容でもない。IFの世界とはいえ、未来の人類が滅びる寸前まで追い詰められるのだから。
「………未来の地球、だな」
「…………そんな、馬鹿な………!!」
動揺するマスター。だが、そんな未来は永久にやって来ない。
「心配しなくていい。俺が生きていた頃、魔術師が現れたなんて話はまったくなかった。つまり―――」
「平行世界、か……?」
「その通り」
察しが良くて助かる。
それにしても、すんなりと平行世界の存在を信じてくれたな。漫画みたいな話だから、信じれもらうのに結構な時間が要ると思ったが。魔術なんて非常識な世界に身を置いているからか?
つーか、俺の言葉は疑いまくってたな。あれか、平行世界よりも信憑性が低いのか。
「でも、何が原因でそんな……」
「最初はな、ほんの小さな細胞だったんだ」
「………?」
「その細胞はあらゆる物質を喰らい、成長する特徴を持っている。俺たちはそれを『オラクル細胞』って呼んでいる」
「オラクル細胞……」
「その細胞群体を『アラガミ』といい、爆発的な速度で世界中に増殖した。そして、人類の殆どが奴等に喰い殺された」
「なっ……!? 有り得ないだろ! 世界の、ましてや未来の軍隊が負ける訳ない!」
「ありるんだよ。オラクル細胞に普通の兵器の攻撃は効かないんだ」
「なら、人類は滅びるしかないじゃないか!?」
「毒を以て毒を制す。アラガミを殺せるのは同じオラクル細胞を埋め込んだ俺たちゴッドイーターの持つ神機…… じゃなくて、あの宝具だ。それで、食べ残された人類を俺達は守り続けた。 あ、お菓子の神機を使うのは俺だけな」
「……待てよ? お前も『オラクル細胞』を埋め込んでいるなら、この世界は……!!」
確かにな。
神機を使用しないでアラガミに対抗する手段はゼロだ。魔術が有効かは解らないが、少なくとも現代の軍隊では為す術がない。
オウガテイル一匹でも、この世界の軍隊は滅びてしまうだろう。
だが、心配は要らない。
「大丈夫。俺の体を構築してるのはエーテル体だ。だから、俺に埋め込まれているのは限りなくオラクル細胞に近い物で、それほどの脅威はない」
「そうか……」
「さて。こんな話は終わりにして、お菓子でも食うとするか」
俺印のお菓子を桜と一緒に堪能した後、桜を部屋で寝かしつけた。因みに、マスターはお菓子を一口も食べていない。当分、甘い物は見たくないそうだ。
さて、お菓子ばかり食べてる場合じゃない。この先の事も考えないとな。
前に言った通り、相手は格上の化物揃い。
真正面から挑んだとしたら、瞬殺はないだろうが苦戦は必至。俺たちが聖杯を勝ち取るには、幾多もの策を弄するしかない。
そんな訳で、雁夜とテーブル越しに向かい合いながら座っているのだが……
「まずこの先の方針を―――」
「時臣を殺す」
この通りだ。憎々しげな表情を浮かべられても困るのだが。
「この先の方s――」
「時臣を殺す」
使えねえ……! 俺のマスター、使えねえ!! 方針が時臣殺すってなに考えてんだ!?
いや、落ち着け俺。まず時臣って誰だ。普通に考えたら魔術師関係だよな。この戦争に参加しているマスターなのか?
どんな奴なのかは解らない。だが、マスターが並大抵でない憎しみだけは伝わってきた。それこそ、何時ものように茶化すことなんてできない程の。
温厚とまでは言わないが、子供たちを助ける為なら自分の命を懸けるマスターだ。そんな男がここまで明確な殺意を抱くなんて……
「……時臣って誰だ?」
とりあえず誰なのか聞いてみる。
もしも聖杯戦争に参加しているマスターなら相当マズイ。その時臣ってのに個人的な私怨を抱えて闘いに臨んだら、冷静な判断も下せなくなる。
唯でさえマスターが死にかけなのに、タイマンなんて張られたら堪ったもんじゃない。
キャスターのマスターを除けば、戦闘力で一番劣るのは俺のマスターだろう。そんな男が、正攻法で他の魔術師に勝てる筈がない。
この会話でどうにか怒りを宥めて、冷静になってもらわ―――
「アーチャーのマスターだ」
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………うん?」
俺の耳がおかしいのかな?
「もう一回言ってくれないか?」
「ちゃんと聞いとけよ。アーチャーのマスターだ」
そうか、そうか。
成る程、アーチャーのマスターだったのか。宝具を使い捨てるような超規格外のサーヴァントの魔力供給を十分にできる魔術師だったのか。
きっと超一流の魔術師だぞ~。
「止めとけマジで。瞬殺されるのが目に見えている。つーか、あのアーチャーのマスターなんだから勝てる訳ないだろ」
「……いや、絶対に時臣は倒す。刺し違えても奴を殺さないと桜ちゃんは、葵さんは……」
「いや、聖杯はどうすんだよ!!?」
「えっ? 聖杯??」
思い出したかのようにマスターが呟く。
「…………まさか、聖杯いらないのか?」
「………そ、そんなことないぞ!! この体を治すには聖杯に頼るしかないからな!」
必死に否定するがバレバレだ。この男、聖杯に興味がないと見た。
俺たちサーヴァントは聖杯に懸ける願いがあるからこそ戦っている。それに、召喚するマスターには令呪というアドバンテージがあるし。
そうでなければ、ただ召喚されて普通に従う奴なんて数えるくらいじゃないか?
かくいう俺も、聖杯を勝ち取る気がないマスターに従う義理はない。今すぐ殺して、何処ぞの魔術師にでも再契約させるくらいの覚悟はある。
まあ…… 令呪で自害を命じられたら、その時はその時だ。
しかし、そう判断するにはまだ早い。
マスターは悪人ではないと思ったからだ。桜を守る為に令呪を躊躇なく使用したりと、その行動には確かな正義がある。
問題は、何故この聖杯戦争に参加したのかだ。
「マスター、見え透いた嘘はいい。あんたがこの聖杯戦争に参加した理由はなんなんだ? そんなボロボロな体になってまで戦い続けるなんて、普通じゃない」
自然と口調が固くなる。だが、仕方がない。それだけ俺のマスターは異常なのだから。
マスターは確実に死へと近づいている。それは比喩でも何でもない。
魔術関係でこうなったのだろう。頭髪は白く染まり上がり、左目が壊死している。普通に生きてこうなるなんて、まず有り得ない。
聖杯で願いを叶える為に、そのボロボロな体で戦うのならまだ理解できる。だが、聖杯に興味がない上でなんて明らかに常軌を逸している。
俺の問い掛けに、マスターは心底悔しそうな、悲しそうな表情で口を開いた。
「……俺がこの戦争に参加した理由は、桜ちゃんを助ける為だった」
「……それに桜と何の関係が? 」
「それは―――」
人の生命を弄ぶ妖怪『間桐臓硯』に、『遠坂時臣』は実の娘を引き渡した。当然、桜に待っていたのは、魔術の修行とは名ばかりの拷問の日々。
そんな地獄から救い上げる為に、マスターは再び魔道へと身を墜としたのだ。聖杯さえ勝ち取れば、桜は自由になると信じて。
―――狂ってやがる。
バーサーカーの俺が言うのもなんだが、それが率直な感想だった。
天井を見上げて一つ息を吐く。此処まで気分の悪い話があってたまるか。
「間桐臓硯…… ほんと、良い趣味してるぜ」
俺が召喚されて初っぱなに喰らったらしい妖怪『間桐臓硯』に有りったけの怒気を込めて静かに言い放つ。
「…………OKだ、マスター。アーチャーの方は俺に任せろ。だが、俺が聖杯を勝ち取るまでは協力してもらう」
アーチャー陣営を打ち倒すには、必然的に遠坂時臣を殺さないといけない。ぶっちゃけ、全快のアーチャーに勝利できるとは微塵も思えない。消耗した時期を狙うか、マスターを直接叩かないと話にならん。
桜には申し訳無く思う。俺たちは今、桜の父親を殺そうとしてるのだから。
だが、俺はもう割り切っている。一般人まで巻き込む気は流石にないが、魔術師(人間)を殺すくらいの覚悟は決めてある。
俺が手を汚すだけで、全人類の悲願が達成されるなら安いものだ。
「………ああ、勿論だ!」
ヤル気に溢れた返事を返すマスター。
―――桜の父親を殺す。
マスターはその事実に気付いていないっぽいが、指摘しない方が良いだろう。マスターの精神状態は、まさに綱渡りのように不安定だ。些細な事で瓦解しかねない。
やれやれ、何故こんなマスターを引き当てたんだか。運が悪いってレベルじゃねーぞ。まあ、下種な魔術師よりは何万倍もマシだが。
「んで、早速なんだが……」
砕けた口調で話し掛ける。
マスターは『またか……』みたいな感じで頭を抱えていた。
そうです。お菓子関係です。しかも、結構由々しき問題です。なんだかんだで、俺の事も解ってきたじゃないか。
「お菓子が切れた。買いに行かないと」
「…………はっ!? あんなにあったろ!!」
「桜もいるから消費量が半端ないんだって。俺は大丈夫だが、桜の体重が心配だな」
最近の桜はお菓子ばっかり食ってる。ふと目を移すと、その手にはクッキーかチョコレートが握られている。
勿論、マスターの魔力の節約という理由もある。だが、一番の理由は桜への償いだ。せめて、好物のお菓子を沢山食わせてやろう。
「………あ~、くそ! 魔力の節約もできるし、仕方ないか……」
「流石マスター、話が解る男はモテるぞ」
「黙れ」
こうして、マスターと俺は聖地(スーパー)へと赴く準備を始めた。
★☆★☆★☆
「いい加減にしませんかこの馬鹿はぁぁぁぁぁ!!!」
「ケチケチするでない、坊主! そんなことでは、いつまでに経っても大きくなれんぞ!!」
冬木市のとあるスーパーマーケット。そこでは、聖杯戦争に参戦しているマスターこと『ウェイバー・ベルベット』が人目を気にせず叫んでいた。
そんな彼が叫んでいるのは、サーヴァントである筈のライダーが原因である。『大戦略』というロゴが書かれたTシャツを着ているが、筋骨隆々のこの男が着ればパッツンパッツンである。
この男、興味が湧いた商品を全て買い物カゴに入れている。あまりの量に、買い物カゴには既に商品の山ができていた。ウェイバーの財布事情なんぞ露程も気に留めていないようだ。
盛大な溜め息を吐くウェイバー。
頭の中では、類い稀なる才能をもってサーヴァントを従わせ、この聖杯戦争を勝ち抜いていた。しかし、現実はそう甘くない。この通り、サーヴァントすら御しきれていないのが現状である。
「ムッ!! 次は其処を征服するか!」
「はぁぁぁぁぁ………」
買い物カゴを押して移動するライダー。その行き先は、そう…… お菓子売り場だった。
仕方なくウェイバーは付いていく。このサーヴァントを放置したら、何を仕出かすか解ったもんじゃない。
自分を情けなく思いながらトボトボ歩く。すると、誰かの話し声が聞こえてきた。
「お前、この状況で他のサーヴァントに見つかったらどうするんだ……?」
「大丈夫だろ。大体、聖杯戦争の真っ最中にスーパーに来る英霊が何処にいるかっての」
薄紫のフードを被った男と、真っ黒なコートを着こなした男が、一心不乱にお菓子をカゴに詰め込んでいた。負けず劣らず、買い物カゴにはお菓子の山ができている。
パーカーの方は兎も角、黒いコートの方には見覚えがあった。つい昨日、コンテナターミナルに現れて戦場を引っ掻き回した狂戦士の背中に酷似している。
しかし、サーヴァント…… ましてや、バーサーカーがこんな場所にいるなんて有り得ない。お菓子を大人買いしてるなんて、もっと有り得ない。
そんな事を考えてる内に黒いコートの男が振り返る。そして、楽しそうな顔とバッチリと目が合って―――
「え?」
「は?」
「む?」
「ん?」
お互い、間抜けな声が漏れだした。数秒間、四人の間の空気が固まった。
「………ガッハッハッ!! なんとも奇妙な巡り合わせだのう!! 此度は余の前に姿を現したか!」
ライダーの豪快な笑い声が響く。この男にとっては、バーサーカーとスーパーで遭遇しても笑い飛ばす程度の事らしい。流石と言うか、何と言うか。
しかし、マスターであるウェイバーは未だに固まっていた。
目の前にいるのは、聖杯戦争の初っ端からキャスターを脱落させたサーヴァント。その陣営が、自分達と同じ様にスーパーで買い物をしてるのは衝撃的過ぎた。
「バーサーカー!! 構えろ!!」
フードの男が指示を飛ばす。ほぼ同時に、板チョコの剣を構えたバーサーカーがウェイバー達の前に立ち塞がった。
お菓子選びを楽しんでいた表情は見る影もなく、完全に臨戦態勢に入っている。
それとは対照的に、ライダーは剣すらも構えはしない。と言うより、買い物カゴから手を離していない。
「剣を納めよ、バーサーカー! このような場で戦を望む程、不粋な男ではなかろう?」
バーサーカーは黙って宝具を構える。
市街地の真っ只中でサーヴァント同士の戦闘を始めれば、それ相応の犠牲は免れないだろう。そんな惨劇など、この場にいる誰一人も望んでいない。
暫くして、バーサーカーは構えを解いた。板チョコの宝具が霧のように消えていく。
「……ああ、そうだな」
ポツリと呟きながら、お菓子の山ができた買い物カゴを持ち上げる。
一方、フードの男は警戒を緩めることなく、不安そうな様子でバーサーカーを一瞥する。
「大丈夫なのか……?」
「大丈夫だろ。なんたって、征服王イスカンダルなんだぜ」
「うんうん、解っておるではないか」
ニヤリ…… と、バーサーカーは口許を吊り上げていた。
ばれてる。ライダーの真名が、イスカンダルだと完璧にばれている。
心当たりはある。ありまくりだ。きっと、セイバーとランサーの前で名乗った時に知ったのだろう。
何とか体裁は繕っているものの、ウェイバーは心の中で思いっきり叫んでいた。ライダーのバカヤローと。
「俺だってここにいる人達は傷つけたくない。それに、お菓子達も……な」
「「「……………………」」」
優しい声色で呟くバーサーカー。ウェイバーが知る限り、一番の決め顔をしていた。
緊張が一気に吹き飛んだ。お菓子の宝具を持っているだけあり、バーサーカーは根っからの甘党であると理解した。したくもなかったが。
残りの二人の様子を伺ってみる。
あのライダーでさえも、呆気に取られた表情を浮かべていた。フードの男は表情が伺えないが、呆れているに違いない。
溜め息をつく。二度目だなーと思いつつ、ウェイバーは思考を放棄した。
☆★☆★☆★
多少のトラブルはあったが、なんとかお菓子をゲットできたのでスーパーを後にする。
人類が繁栄していた時期だけあって、信じられない程の品揃えだった。聖地ではない。最早、パラダイスだ。
それにしても、お菓子の詰め合わせを四袋も買えるなんて夢のようだ。
マスター曰く、金なら有るから遠慮しないで買ってもいいだそうだ。そのお陰で、欲しい分だけお菓子をゲットできる。
この人がマスターで良かったと初めて思った。
「いける…… いけるよな、うん。巧く遣り繰りすれば、まだ金は大丈夫だ……」
それに較べて、ライダーのマスターは金銭面で苦労してるみたいだ。財布の中身をチェックしてブツブツと呟いている。
うん、御愁傷様としか言えない。
「それにしても、バーサーカー。坊主も相当だが、貴様のマスターも随分と貧弱そうよのう」
買い物袋を持ったライダーが話し掛けてきた。
「まあ、貧弱なのは否定しない。それでも、根性なら誰にも負けないと思うぜ」
「確かに、胆の座った目をしておるが……」
そういや、マスターの素顔を見ているのか。
ライダーが「男足るもの、堂々と素顔を晒さんかっ!」とか言って、マスターのフードを下ろしたんだよな。
それにしても、マスターの内に渦巻く負の感情を一目で見抜くなんて。流石は征服王の慧眼と言うべきか。
「ああ、分かってるよ。マスターの決意は強靭な故に脆い。俺が何とかするさ」
「お互い、苦労するのぉ」
お互い?
むしろ、苦労してるのは逆な気がするんだが。
「おお、そうだ! 妙案を思い付いたぞ!!」
「…………おぃい?」
どや顔で手を打つライダー。そして、胃が痛そうな顔をして声をあげるライダーのマスター。
やっぱ、ライダーのマスターの方が苦労してるな。
今更だが、セイバーが二言しか喋っていない……!?
でも、次の回ではきっちり登場します。
―――随分と豪勢よのう! バーサーカー!!
―――大丈夫だ。もう、誇っている
―――貴様はその杯に何を願う?
―――今も昔も変わらない。俺の願いは……
―――離してください! 今なら、今なら生涯最高のエクスカリバーを………!!
次回『英霊の酒宴』
お楽しみに!