Fate/Sweet Zero   作:フロンサワー

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 早めに投稿できた、だと……!?
 


英雄としての矜持、英雄としての最期

 

「遅かったではないか金ぴか。まあ、余と違って徒歩(かち)なのだから仕方ないか」

((き、金ぴか……!!))

 

 ライダーの的を射ている表現に噴き出しそうになるセイバーとバーサーカー。笑ったら確実に面倒な事になるので、固く口を閉ざしたが。

 

「ライダー……… このような喧しい場所に我を招くなど、その非礼をどう詫びる?」

「そう言うでない。ほれ、駆け付け一杯」

 

 酒を掬った柄杓をアーチャーへと手向ける。

 柄杓を受け取って口に運んだ瞬間、アーチャーの表情が歪んだ。明らかな怒りを顕にしてライダーへと柄杓を突き返す。

 

「なんだこの安酒は……? こんな物で王たる我を満足させる思っているのか」

「そうか? この辺りの市場で仕入れた上等な一品なのだがのう……」

「雑種めが。それは、お前が真の酒を知らんからだ。見るがいい。そして、思い知れ。これが王の酒だ」

 

 アーチャーは右の掌を上に向ける。

 水面のように空間が揺れ、金色に輝く空間へと”繋がった“。きっちり人数分の輝く盃がアーチャーの掌に落ちる。アーチャーはそのまま盃を放り投げ、ライダーが大きな掌でしっかりと受け止めた。

 再び、水面のように空間が歪む。次は黄金の酒瓶がゆっくりと地面に落ちた。明らかに普通の酒とは明らかに一線を画す物だ。

 

(武器だけじゃなく酒も出るのか。という事は、あの酒も宝具ってことか?)

 

 バーサーカーはアレもアーチャーの宝具なのだろうかと思案を巡らせていた。

 なにも、宝具は武器だけと限らない。時には、その英霊の体質が宝具として昇華されることもある。だからと言って、酒が宝具なんて聞いたこともないが。

 

「これは重畳!」

《頂上?》

《はぁ…… 満足って意味だ》

 

 念話で雁夜へと問い掛ける。恐らく、聖杯戦争史上最もな念話の無駄遣いだろう。

 念話をしている間に、バーサーカーの前にも酒が注がれている盃が置かれていた。

 バーサーカーは酒を呑めない。しかし、ライダーの行動を止めようとはしなかった。酒を呑まないようならば、アーチャーの不興を買うと簡単に予想がついたからだ。

 渋々ながらバーサーカーは盃を口に運んだ。酒を口に含んだ瞬間、大きく目が見開く。

 

「旨いっ!!」

「……まさか、酒が旨いと思える日が来るとは」

 

 その酒は天にも昇るような味だった。

 バーサーカーはその味に衝撃を受ける。この衝撃は、初めて極甘ジュースを飲んだ若かりし頃以来かもしれない。

 酒好きの上司にも飲ませてやりたかったと思いながら、バーサーカーは二口目を啜った。

 

「当たり前だ。それは神代に作られた酒であるからな。我が財には至高の酒と剣しかない」

 

 アーチャーはさも当たり前のように言葉を紡ぐ。その台詞に戦慄しつつも、バーサーカーは再び盃に酒を注ぐ。透明に澄んだ液体が、黄金に彩られた盃の中で渦巻いている。

 酒を注ぎながら、バーサーカーは微妙な違和感に気付いた。そう、先程からセイバーが一言も話していない。

 ふと、セイバーが居る場所に目を向けた。

 

「」ハムハムハムハム!!!

 

 一心不乱にお菓子を食べるセイバーがいた。時折、酒を胃に流し込んでいる。見た目の少女らしからぬ豪快な食いっぷりだった。

 バーサーカーだけでなく、その場にいる全員はセイバーの意外過ぎる一面に唖然としていた。

 ただ一人、道理で何も喋らない筈だと、アイリスフィールは一人納得していた。

 

「「「…………」」」

「」ハムハムハムハムハム!!!!

 

 ハイスピードでお菓子がセイバーの胃袋へと消えていく。なんとか再起動したバーサーカーは、ゆっくりとお菓子へと手を伸ばし―――

 

「没収!!」

「!!!???」

 

 バーサーカーがお菓子を自分の方に寄せた。セイバーにこれ以上お菓子を食べさせないように座る位置を調節する。最終的にはセイバー以外がお菓子を囲むような配置となってしまった。

 セイバーが烈火の如き視線をジンジンと背中に感じながらも、バーサーカーは何とかスルーした。断じて、騎士王改め大食い王の為だけにお菓子を作ったわけでない。

 必死にセイバーの殺気に堪えるバーサーカーの傍ら、アーチャーがお菓子を手に取る。一枚のクッキーを興味あり気に見詰めていた。

 

「時にライダー、これは誰が作った?」

「ああ、これか? 聞いて驚くな。バーサーカーが作ったそうだ」

「ほう。狂犬が、か……」

 

 意外そうに呟くアーチャー。

 目を瞑りながらクッキーを咀嚼する。バーサーカーにとっては待ちに待った瞬間でもあった。ようやくマトモ(?)なサーヴァントがお菓子の評価をしてくれるのだから。

 待つこと数秒。アーチャーがゆっくりと目を開く。満足そうな表情でも、怒りに歪んだ表情でもなく、何故か物惜しそうな表情だった。

 

「………フム、惜しむべきは材料か。だが、凡百な素材の味を技術と工夫で補っている。末代まで誇るがよい。貴様は、この甘味で我が舌を唸らせたのだ」

「大丈夫だ。もう誇っている」

 

 あの傲慢不遜なアーチャーに誉められた。ライダーも菓子を口にし、甘味も存外旨いものだと笑っていた。

 まさしく、バーサーカーが並みならぬ情熱を注ぎ込んだ人生の半分が認められた瞬間だった。人知れず、バーサーカーはガッツポーズをとる。

 しかし、一人だけ不満に思っている者が……

 

「貴様…… 騎士である私を愚弄するのか!?」

「騎士関係あんの?」

 

 怨恨の籠った声に振り向くバーサーカーたち。そこには、静かに怒りを燃やしているしているセイバーがいた。溜め息を吐きセイバーへと話しかける。

 

「あのなぁ…… 一人でバクバク食うなっての。俺の食べるお菓子が無くなる」

「なっ!? 貴方は遠慮するなと言った筈だ!!」

 

 ―――食べ物絡むとホント駄目だな。でも、これって弱点じゃね?

 日本人の謙虚な心を見倣えよ、と内心でセイバーを毒づきながらタメ息をつく。

 

「限度ってものがあるだろ?」

「分け与える心を忘れたか……! 大方、貴様のような卑しき者は、菓子の食べ過ぎで死んだのだろう!!」

「………!!!!」ガタタッ

 

 明らかな動揺にセイバーが目を丸くする。

 バーサーカーはより一層鋭い目付きとなり、セイバーへと真っ直ぐに瞳を向けた。地雷を踏み抜いてしまったと、人の心に疎いセイバーでも直ぐに分かった。

 セイバーの口撃に立ち直ったバーサーカーは、やがてゆっくりと口を開く。

 

「……そうさ。俺は、お菓子を食い過ぎて死んだ!!!!」

「「「!!!!!!??????」」」

 

 バーサーカー、二度目のカミングアウト。心なしか、その声にも悲愴感が漂っている。

 戦死、病死、暗殺、毒殺等々、英霊となる者は非業の死を迎える場合が殆どだ。寿命を全うできる者は非常に珍しい。

 しかし、これはこれであんまりな最期である。お菓子を使い、お菓子を司り、そしてお菓子に殺された英雄……

 ある意味、悲劇的と言えば悲劇的だが。

 

「いくら甘党でも、後悔しか残らない死に方だったわ!!」

 

 そりゃそうだ…… と、全員が心の中でツッコミをいれた。

 ある程度叫んで落ち着いたのか、バーサーカーは濁りきった目で虚空を見詰めていた。何と言うか、見るに堪えない惨めな姿である。

 

《お前、そんなアホなことで死んだのか……》

《うるさいッ!!》

 

 もしかしたら、万が一にも、バーサーカーはそういう原因で死んだんじゃないかと予想していた雁夜は呆れ返っていた。

 

「くく…… ふふふっ、はっはっはっはっ!!!」

 

 いたたまれない空気の中、ひどく愉快そうな笑い声が響いた。それでも、僅かに称賛の意思が感じられるのは何故だろうか。

 勿論、その笑いの主はアーチャーだった。

 バーサーカーの雰囲気が変わる。その目には怒りと狂気の色が見え隠れしていた。

 

「ククッ…… 下らぬ理想に殉じるか。なんとも滑稽だな。貴様には、狂犬よりも道化の名が相応しい」

「………まあ、確かに滑稽な最期だ。道化って言われても反論できない。だがな、その道化に倒されるお前は、一体何なんだろうな?」

「なんだと?」

 

 アーチャーの声色が冷徹なものとなる。

 二人がゆっくりとその場から立ち上がる。バーサーカーは右手を掲げてGEスイーツを具現化しようとし、アーチャーは背後の空間を金色に歪ませていた。

 一触即発の空気に各々が反応する。

 セイバーはアイリスフィールの前に庇うように佇み、ウェイバーは腰を抜かしてる。

 そんな中、雁夜はマスターだからこそバーサーカーの感情が伝わってきた。英雄としての矜持を踏みにじられ猛り立っている 。

 今、アーチャーと闘っても勝ち目はない。それはバーサーカー自身が語った事でもある。

 いざとなったら令呪を使って逃げるしかないと、雁夜は右手の甲に浮かび上がっている一画欠けた令呪に魔力を籠めたが―――

 

「そう荒れるでない。折角の美酒も不味くなるではないか」

 

 戦いの火蓋が切って落とされる瞬間、ライダーが二人の間に割り込んだ。

 

「ふん…… 興が削がれた。だが、二度目はないと思え」

「………」

 

 不承不承といった感じで二人が座り込む。

 バーサーカーは右手でありったけのお菓子を掴み、乱暴に口の中へと放り込んだ。

 ライダーの仲介がなければ、今頃はアーチャーに消し飛ばされていただろう。頭の血がスッと引けて冷静さを取り戻したバーサーカーは、申し訳なさそうな目で雁夜を一瞥した。

 あれほど、雁夜には暴走するなと釘を刺していたのに。まさか、自分が暴走するとは思いもよらなかった。

 

《………すまん、冷静じゃなかった。人の事言えないな》

《まったくだ。あと少しで令呪を使うとこだったぞ……》

 

 あれだけ騒がしかった酒宴が嘘のように静まり返る。暫くして、ライダーの咳払いが庭園に響いた。

 

「頃合いだな。聖杯問答、始めるか」

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 決して忘れない、43回目の夏。

 その年は嫌に蒸し暑いのが印象的だった。あの世界にしては長生きした方なのだが、あんなに暑かったのは初めてだった。

 アラガミとの激闘を終えてアナグラに帰還した俺は、それはもうバテバテだったと思う。暑いのもあったが、年を重ねる毎に体を動かすのが怠くなってきたからだ。

 その姿を見かねてか、周りは退役しろと散々勧めてき。

 だが、俺は退役する気など更々なかった。たが、戦闘狂という訳ではない。まだまだ闘えるのに、ゴッドイーターとしての責任を放棄するなんて事はしたくなかったからだ。

 フラフラのまま自室へと戻り、冷蔵庫の扉に手をかける。極甘ジュースと白飯を取り出して、お茶漬けの要領でスイーツ(?)を作る。

 名付けて、極甘漬け。夏にはいつもお世話になっていた。

 極甘漬けを食べ終わり、ピンク色の液体がこびりついた食器をキッチンに持っていく。折角だし、コウタにも御馳走しようと思った時……

 

 ―――世界が、反転した。

 

 食器が割れた甲高い音が響いた。しかし、それも気にならないほどの頭痛が襲っていた。

 意識が遠退く。次の瞬間、目の前には落とした食器とその欠片が散乱していた。いつの間にか倒れていたらしい。

 頭の痛みは酷くなるばかり。しまいには、視界さえもぼやけてきた。

 立ち上がろうとするも力が入らない。アラガミとの闘いでは何度でも立ち上がれたが、この時ばかりは無理だった。

 叫ぼうとするも、声すらでない。呼吸をするだげもやっとだった。

 それでも、俺はその痛みに抗い続けた。

 死ぬ訳にはいかない。這ってでも部屋の外を目指した。諦めたくなかった。こんなしょうもない理由で死にたくなかった。どうせ死ぬなら、アラガミと闘って死ぬ方がまだマシだ。

 しかし、その意思とは裏腹に、体の感覚が段々となくなっていく。

 まだ守りたい人がいる。

 まだ守りたい場所がある。

 まだ守りたい世界がある。

 手を伸ばしても何も掴めず、ただ虚しく空を切る。そして、世界が暗闇に包まれた。

 そう。俺の人生は、ここで幕を閉じた。

 

「…………ホント、馬鹿だよな」

 

 誰にも聞かれないであろう俺の呟きが、胸の奥深くを抉った気がした。

 久々になって最期の瞬間を思い出した。今思うに、高血圧で脳血管が切れたのだろう。ゴッドイーターと謂えど、人間ってのは死ぬ時には簡単に死ぬものだ。

 手に持っていたクッキーを暫く見詰めて、やっぱり口の中へと放り込む。あんな最期を味わっても、まだお菓子を食べていられる自分には呆れてしまう。

 

「ライダー、聖杯問答とは何のつもりだ?」

「なに、剣を交えて競い合うのも一興。だが、聖杯戦争とは何もそれだけでなかろう。聖杯に懸ける己の大望を明かせば、英雄としての格が自ずと解るもの。そして、聖杯を持つに相応しい者もな。ここは一つ、盃を交えて聖杯の行方を決めようではないか」

「仕切るな雑種。そもそもにおいて、アレは我の所有物だ。奪い合うという認識自体、理を犯しているのだぞ」

「ちょい待て。 我の所有物…… って、聖杯はアーチャーの物なのか? 実物を見たことがあるのか?」

 

 普通なら与太話と思って聞き流しただろうが、アーチャーとなると話は別だ。未来の猫型ロボットの如く色々な宝具を取り出すのだから、あながち嘘だとも言い切れない。

 聖杯戦争に参加した俺たちサーヴァントは、ある程度の知識は聖杯に与えられている。この時代の日本における基礎知識や、多くの英霊達の断片的な知識も与えられた。世界史のテストをやれば満点は間違いない。

 しかし、聖杯の正体だけは分からない。聖杯に関する知識を全くと言っていいほど与えられていないのだ。聖杯を求める身としては、その実態だけは把握しておきたい所なのだが………

 

「知らん。そのような杯など見たこともない」

「うん?」

 

 セイバーとライダーの頭にも疑問符が浮かぶ。かく言う俺も、よく分からない。

 

「雑誌の尺度で測るでない。我が財の総量はとうに我の認識を越えている。だが、宝物と言う時点で我の財に間違いない。全ての宝物は我が蔵の財に遡る」

 

 な、何というジャイアニズム…… いや、そんなのはどうでもいい。

 アーチャーは「我が財の総量はとうに我の認識を越えている」と言った。つまり、ミサイルのように撃ち出されるあの宝具は実質無制限ってことだ。洒落にならない事をサラッと言いやがった。

 くそ……! なんか、勝つ以前に足止めできるかさえ怪しくなってきたぞ……

 

「貴様の言は単なる世迷い言だ。まさか、錯乱したサーヴァントがこの戦争に紛れ込んでるとはな」

 

 セイバーが盃を傾けながら、アーチャーの言葉は世迷い言だとキッパリ言い切った。セイバーの挑発に、アーチャーは露骨に不快そうな表情で睨み付ける。

 うわっ…… あの話を聞いた上で喧嘩を売りやがった。裏を返せば、それだけの実力と自信を兼ね備えてるって事か。

 流石は最優を誇るサーヴァント、セイバーってところか。なんともまあ、今回の聖杯戦争に相応しいレベルで………

 

「いやいや、存外本当かもしれんぞ。それになあ…… この際、聖杯が誰の所有物なのかなどどうでもいいではないか。ただ、侵略して奪うのみであろう」

 

 さも当然のように述べるライダー。

 だが、その意見に関しては同感だ。聖杯が誰かの所有物ってだけで諦めきれる程、安っぽい願いは持ち合わせていない。

 そもそも、その程度の願いを抱いている人間など、まずいないだろう。誰にだって、罪を犯してでも叶えたい望みはある。

 

「………貴様は、聖杯を他人の所有物と認めた上で奪うというのか。そこまでして、聖杯に何を願うのだ」

「………そうだのぉ」

 

 ライダーは盃に酒を注ぎ、一気に飲み干す。仄かにだが、頬が赤みがかっていた。

 正直、興味があった。歴史に名を刻む英雄が、聖杯にどんな願いを託すのかを。

 

「受肉だ」

「「はぁ?」」

 

 …………受肉、ねぇ。

 聖杯は全ての願いを叶えてくれる万能の願望器んだよな。受肉を願うなんて勿体なくね?

 

「はぁぁぁぁぁ!? お前、世界征服が望みじゃなかったのかよ!!」

 

 全員の総意を叫びながらライダーの肩を叩くそのマスター。しかし、軽く払った豪腕にそのまま吹き飛ばされてしまった。

 うわっ…… 顔面からスライディングかよ。メッチャ痛いだろうな、アレ。

 ………おいマスター、なんで「やっぱお前も苦労してるんだな」みたいな目で見てんだ。

 

「杯なんぞに世界を盗らせてどうする? そんなもの、何一つとして面白くなかろうて。征服とはな、己の身一つで我を張り、空と大地に向かい合うからこそ心が踊り、血がたぎるのだ! それこそが侵略の全て。それこそが―――」

 

「―――我が覇道だからな」

 

 自信満々に言い切ったライダー。

 ある意味、ライダーらしいと言えばライダーらしい。聖杯は願いを叶える手段じゃなくて、願いを叶える過程ってことか。

 何と言うか、征服王の征服王たる所以を垣間見た気がする。

 

「セイバーよ。そう言う貴様はどうなのだ?」

 

 っと、いよいよセイバーの番か。かの有名なブリテンの王様『アーサー・ペンドラゴン』が聖杯にどんな願いを託すのだろうか?

 ライダーの問い掛けに意を決したのか、遂にセイバーが口を開いた。

 

「私の願いは…… 我が故郷、ブリテンの滅びの運命を変えることだ」

 

 セイバーの答えを聞いたライダーは意外そうに目を見開いた。その姿は、どこか物悲しそうな表情に見えた。

 

「あー…… セイバー。確認するが、ブリテンが滅びたのは貴様の代なのだろう?」

「その通りだ。だからこそ、王としての責務を果たすため、滅びの運命を変えねばならないのだ。他でもない、己の手で……!」

 

 ライダーは静かに首を横に振る。

 

「違う。違うぞ、セイバー。そんなものは王ではない。王という者は、決して国の為に尽くすのではない。国が王の為に尽くすのだ。断じて、その逆ではない」

「何を言っている!? それは、唯の暴君の治世だ!」

「認めよう。確かに余は暴君だ。だがな、欲望のままに疾走した王だからこそ、民草の心には憧憬の火が灯るのだ。だからこそ、臣下を導く事ができるのだ」

「だが、その暴政に付いていけない弱者は切り捨てられたのだぞ! 貴様は自らの行いに悔いを感じないのか!!」

「志半ばで倒れた盟友の死を悼みもしよう。哀しみもしよう。だがな、余は決して悔やみはしない。ましてや、その運命を変えるなどもっての他だ。それは、余を信じて従った盟友への侮辱となってしまう。自らが歴史に刻んだ行いを否定するとはそういう事だ。分かるか、セイバー?」

「それでも! 非業の最期を遂げると知って尚、その惨状に目を瞑るというのは、臣下達を裏切るのと同じではないのか!?」

 

 これ以上はきっと平行線だろう。どちらも正しいが故に、彼らの主張は決して交わらない。

 世界屈指の強国で王となった征服王イスカンダル。片や、ギリギリの淵に立たされていた弱小国で王となった騎士王アーサー。

 生まれ育った環境が違い過ぎる。お互いの思想が受け入れられないのは当たり前だ。

 だからだろうか。セイバーの願いに肩入れをしたくなるのは。

 思えば、当時のブリテンとあの世界は、少し似たような境遇だったのかもしれない。外敵の脅威に晒されようとも、僅かな力に希望を託して抗い続けたその姿が。

 

「……王でもない俺が口を挟むのはお門違いかもしれないが、少しいいか?」

「なんだ、バーサーカー?」

「ライダーの言ってる事も正しいと思うけど、セイバーの願いは間違いだと思えないんだ。時代も違えば、環境も違う。それこそ、ライダーは国の最盛期で王になり、セイバーは…… まあ、言っちゃ悪いが、崖っぷちの状況で王になった。それなら、王の形だって自ずと変わってくるだろ?」

「………ほう、言うではないか。ならば、バーサーカーよ。貴様の願いは如何なるものだ?」

 

 ライダーが興味深そうに尋ねた。

 盃を傾け、アーチャーの酒を胃に流し込む。うん、相変わらず、酒と思えない旨さだ。

 嘆息と共に満天に輝く星を見上げる。

 今から話す事は、この世界の向こう側で、地球を我が物顔でのさばる偽りの神に対する宣戦布告だ。そして、理不尽が横行する世界に残してしまった人達への誓いだ。

 俺は、英霊である前にゴッドイーターだ。神を喰らう者として、人類を護る者として、聖杯だけは何としても勝ち取らないといけない。そう、誓いを果たすために。

 

「どうしても…… どうしても殺してほしいカミがいるんだよ」

 

 そう。これが、俺の願い。何に代えても叶えなければいけない、唯一の願い。

 

「………カミを殺す? カミというのは、あの”神“を言っておるのか?」

「さあな」

 

 適当に言葉を濁す。

 詳しく話す義理はない。

 

「…………フム。何ともまた、奇抜な願いよのお」

 

 釈然としない、と言いたげのライダー。そりゃあ、存在すら有耶無耶な神を殺すなんて、万能の願望器に願うような望みじゃないからな。

 だが、俺たちに限っては違う。ゴッドイーターとしての職務を全うした奴なら、自分の内に抱えるどんな願いよりも優先させる筈だ。

 

「神を殺す…… か。ここまで人の身の丈を越えた願いを抱く者は、この我でも目にした試しがない。馬鹿は馬鹿でも、救いようのないとんだ大馬鹿者だな。だが、ここまで突き抜ければ、それもまた面白味もある」

 

 沈黙を守っていたアーチャーが口を開いた。それはもう、心の底から呆れ果てたかのような口振りで話していた。

 しかし、不思議と怒りは感じなかった。

 実際に神と対峙したからこそ抱く感情…… というのか? まあ、そんな思いを感じたからだ。

 もしかすると、この世界には神がいるのかもしれない。 だとしたら、ぶっ殺す範疇はアラガミだけにしないとな。

 

「いいだろう。貴様らが法を犯し、我が裁く。最早、問答の余地など何処にも無い。いつでも聖杯を奪いに来るがよい。精々、越えれぬ壁に挑め。ただし、セイバー。貴様は駄目だ」

「なっ!?」

 

 嬉々として語るアーチャー。その表情は、発売当日にゲームを買う為、長蛇の列に並んでいる幼い子供のようだった。まるで、俺たちを殺すのが待ち遠しいと言わんばかりに……

 ついでに、俺とライダーの闘う動機(願い)は認められたっぽいが、セイバーだけは駄目みたいだ。どうやら、アーチャーが抱く王の考え方は、ライダーのそれと近いらしい。

 

「是非もない。アーチャーよ、余も貴様の宝物庫も奪い尽くす気でいるから、覚悟しておけ」

「越えれない壁なら、穴を掘ってでも突破してやるさ。甘党の意地を見せてやるよ」

「そうだ、それでいい。貴様らはこの我が手ずから殺す。光栄に思うがよい」

 

 聖杯戦争を勝ち続け、最後に立ちはだかるのは、十中八九アーチャーだ。最後の最難関として俺とマスターの前に立ちはだかるのだろう。所謂、ラスボスというやつだ。

 上等だ。聖杯は俺らが勝ち取ってやる。あの手この手でぶっ倒してやるよ。

 

「だが、アーチャーよ。先ずはこの酒を呑みきってはしまわないか?」

「当然だ。それとも何か。貴様、我が振る舞った酒を蔑ろにする気か?」

「んな訳なかろう! これだけの美酒を捨て置けるものか!」

 

 まあ、確かに。今日くらいはこの酒の味に溺れていたい。早速、ライダーが酒瓶に手を伸ばした瞬間……

 

―――並みならぬ殺意が降りかかった―――

 

 鋭く、冷たく、重い殺意が纏わり付く。この殺気は明らかにサーヴァントだ。それも、一人や二人じゃない。

 その殺気に対して、王たる三人は各々の反応を見せた。アーチャーは不愉快そうに表情を歪ませ、ライダーは僅かに目を細め、セイバーは素早く銀髪のマスターの傍に駆け付ける。

 一人、また一人と。黒い装束を纏った老若男女が何処からともなく現れた。その風貌から、アサシンなのだと用意に推測できた。

 つーか、多いな。軽く見積もっても、90人弱は居るんじゃないか?

 右手を前に突きだし、具現化したGEスイーツを握る。たとえ多勢に無勢といえど、俺たち四人の英雄に勝負を仕掛けるなんて、甘く見るのも大概にして欲しいものだ。

 





 セイバーが活躍(?)したよ!!
 そして、明かされた甘斗の壮絶な最期…… これが書きたかった。
 ライダーとセイバーの舌戦は、自分なりの言葉で纏めてみました。明らかに劣化してますが、お許しください。
 感想、待ってます。
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