「いてて…」
何やら身体中が痛い。
何か強い衝撃やらがあったみたいにだ。
だか、自分の身体を見てもどこか怪我しているかんじはない。
どういうことだ?
直前の記憶を探ろうとするが、なぜか思い出せない。
「って、ここ…どこ?」
不思議なことに、さきほどより痛みがなくなったので、冷静になって周りを見渡すと何やらおかしいことに気がついた。
見たことがない建物か聳え立っており、そこへ多くの人が何やら列に並んでいた。どうやらあの建物へ向かっているらしい。
「裁判所みたいに見えるが…」
「あれ?お兄さんどうしたの?」
そう俺が呟いたら、急に隣から声がした。
「っ!」
「おっと、そう警戒しなくていいよ。あたしは小野塚小町、ただの船頭さ」
「は、はぁ…」
どうやら、話しかけきた人は小野塚小町さん?というらしい。小町(妹)と同じ名前で驚いた。でも、船頭って鎌なんかもってたっけ?
「で、お兄さん名前は?」
「ひ、比企谷八幡です」
「そうか、八幡ね!よろしく!で、どうしたんだい?ここでぼっーとして」
「実は…「小町どうしたのですか?」」
「あ、四季様!」
俺が、話そうとすると誰かが小野塚さんに話しかけてきた。何やら奇妙な帽子を被り、笏みたいな物を持っているが…誰だ…?
「また、サボリですか。まったくあなたという人はいつもいつも…」
「いやいや今回はサボリじゃないですよ!?ちょっとここで、ぼっーとしてる人見かけたから気になっちゃって!」
「人…?」
小野塚さんに四季様と呼ばれていた人は、そう聞くや否や俺の方に視線を向けた。すると、目を見開いて驚いていた。俺まだ何もしてないと思うけど…
「どうして彼がここに…?」
「まさか…、いやだとしてもありえない…」
あれ?今、何か言ったような…?
「四季様?」
「小町」
「え、はい!?」
「彼はあなたが連れてきたのですか?」
「いや、あたいではないですよ?ただ、ここを通りすがったらこのお兄さんがぼっーとしてて気になったから話しかけただけですよ」
「そうですか…、すみません八幡さん。あなたについて少しお話をさせてほしいのですが…」
「あ、はい。俺も何がなんだかさっぱりなもので…」
ここにずっといてもしょうがないし、とりあえずいいか。
「ありがとうございます。あ、自己紹介が遅れました。私は四季映姫、閻魔です」
「あ、比企谷八幡です…ん?閻魔?」
「はい、それについても説明をするのでご安心を…。ただここだと目立ってしまう為、場所を変えてもよろしいでしょうか?」
「はい、いいですけど…」
「ありがとうございます…では、私の後についてきてください。…小町、あなたも来なさい」
そうして、俺たちは四季さんの後を追うように移動した。
あれ?俺って四季さんに名前教えたっけ?
・・・
「着きました、ここです」
「あれ四季様、ここ四季様のお家ですけど…」
「ええ、落ち着いて話をするなら自宅のほうがよいでしょう。それに、浄玻璃の鏡もこちらに置いてあったので…」
「え、いいんですか?自分で言うのもあれですけど、見知らぬ異性を自宅に招くなんて…」
「構いません。八幡さんがそんなことするはずがないのはわかっていますので」
「は、はぁ…」
なんで、俺こんなに四季さんに信用されてるんだ?初対面なのに…。まあ、本人がいいと言ってるならいいか…
そうして、俺たちは四季さんの家に入った。
「さて、まずは八幡さんがおられるこの場所についてです。ここは…地獄です」
「あ、そうなんですねー…って地獄!?」
「はい」
「えっと、もしや天国とか地獄とかいうやつの…地獄?」
「はい…」
「まじか…、じゃあ俺もう死んでるのか…」
さすがに今いる場所が地獄とは思いもしなかった。
ハチマンオドロキ。
「本来なら、ここには亡くなった者たちしか来れないはずなのですが…八幡さんの場合は違うようですね」
「?」
「亡くなったものは、小町たち…死神が連れてきます。その後、先ほどの列に並び生前の行いによって一人一人判決が下されるのですが…八幡さんの場合、誰にも連れてこられたわけでもなく、ここにきた。こんなことはまず起こり得ないことなのです」
「へぇ…そうなんですね。あれ?小野塚さんって死神?さっき船頭って言ってたような…」
「ああ、死神の役職の中に船頭があるのさ。あたいは船頭だけど、他にもここの雑務とか、死者の魂を刈り取る役職とかあるよ」
「死神も色々あるのな…」
なんだか俺たちの世界でいう公務員みたいだなぁ…
「さて、本題に戻りましょう。まずは八幡さんが地獄へどうやって来たのかを調べましょう。少しお待ちを…」
そういうと、四季さんが席を外した。
少しすると、四季さんが部屋から何やら手鏡を持ってきた。
「それは…?」
「これは、浄玻璃の鏡。これで、あなたがどうやって地獄に来たのか調べます」
「え?そんなことができるんですか?」
「はい、これは死者の生前の行いを見れる鏡で、判決のときに善悪の見極めをするときに使用するものです。今回はこれで、ここに来るまでの出来事を見れます」
「なるほど」
「では、顔をこちらに…」
そう言われ、俺が鏡の方へ顔を傾けると一瞬光った。
「眩しっ!」
そして、光が収まったのを確認して目をあけると何やら鏡の中で映像が映っていた。
それは…
『あ、サブレ!』
『くそっ!』
『間に合え!』
ドンッ!
俺が、飛び出した犬を助けて車に轢かれた映像だった。
すると、今まで思い出せなかったそのときの記憶が蘇っていった。
「思い出した…そうだ、俺は…」
「そう、八幡さん。あなたは高校の入学式へ行く途中に車に轢かれそうになった犬を助けて…轢かれたのです」
「あちゃ…こりゃ痛そうだだね」
「小町…」
「あ、すみません!つい…」
そう、高校への入学式へ向かう途中に犬を助けて…車に轢かれて…気がついたらここにいたんだった…。
でも、これって…あれ?どうなってるんだ?
「安心してください、あなたは生きています。この映像を見てください」
四季さんに言われ、見てみるとそこにはどこかの病室で寝ている俺の姿が…無事でよかった。
え?じゃあここにいる俺は…?どういうこと?
「はい、今ここにいる八幡さんは魂です。このぶつかった衝撃で魂と身体が分離したのでしょう。その魂が、ここへ迷い込んだということです」
「……まじか」
「はい」
えっと、つまり?こういうこと?
車とぶつかった衝撃で俺の魂と身体が別れて、魂がここへ迷い込んだってこと?
何それ、ハチマンイミワカンナイ。
「えっと…つまり俺はどうすれば?」
「八幡さんはしばらく、ここで過ごしてください。身体のほうが重症ですが、魂も多少傷ついていますので」
「あ、はい」
四季さんによると、身体と魂がある程度回復すれば自然と戻れるようにしたとのこと。
そういう境界を操れる知り合いがいるらしい。
妖怪らしいが…
まあ、閻魔様や死神と知り合いになった時点であれか。
「では、不束者ですがしばらくの間よろしくお願いします、八幡さん」
こうして、俺の地獄での生活が始まったのだった。
「しかし、一体誰が…」
「八雲紫ではないとすれば、誰がここへ彼の魂を連れてきたのか…」
「八雲紫と同様の能力を持つもの…あるいはそれ以上の…?それとも本当に迷い込んだだけでしょうか?」
「いいえ、どちらにせよ…これも何かの縁…」
「今度は私が助ける番ですね」
そう言った彼女は、自然と笑みを浮かべていた。