「……おい、スバル。どうする?この状況」
何なら俺が倒してもいいぞ?と、言おうとしたところで足音が聞こえてきた。
そちらを見ると、金髪の少女がこちらに走ってきていた。
「お?もしかして君が俺たちを召喚した美少――」
「悪いな、兄ちゃんたち。アタシ忙しいんだ!二対三だし何とかなるよな!強く生きろよ!」
「って、ええ!?マジで!?」
「……まあ、そうだろうな」
「って、つっくんかなり冷静じゃね!?」
「あ?そんなの当たり前だろ?あいつら、そこまで強そうじゃねえし。武器も持ってなさそうだし」
まあ、武器持ってても意味ねえけどな。
石でも投げたら逃げるか?なんてことを考えていると、
「悪いな――異世界召喚ものでは、主人公最強ってのが定石なんだよ!」
そんなことを言いながら、スバルが無防備な男に殴りかかる。
「ぐっ――」
「なっ!ってめぇ」
「やっぱこの世界だと俺は強い設定か!これはもらっ――」
そう言いながら二人目の男を殴り、最後の一人を殴ろうとしたところで、刃物を取り出す男。
そのままの勢いで、スバルは男に向かって土下座した。
「すみません俺が全面的に悪かったです許してください命だけは平にご容赦を――!」
おいおい、さっきまでの威勢はどうしたんだよ。
「スバル、すげえ情けないな」
「うっせー!素手で刃物なんかに勝てるか!」
ま、普通の人間はこんなもんか。
「ってめぇ、さっきはよくもやりやがったな!」
そう言いながらスバルに近づく男たち。
ホントにしょうがねえな。
近くの石を拾い、三人の男に投げようとしたところで、
「――そこまでよ、悪党」
路地の入り口に、一人の少女が立っていた。
◆◆◆
「それ以上の狼藉は見過ごせないわ。――そこまでよ」
あのとんがった耳、もしかしてエルフか?
「あ……てめえは、いったい……」
「今なら許してあげる。私の不注意もあったもの。だから、潔く盗った物を返して」
「おい、着てるもんが高そうだ。貴族とかじゃ……へ?盗った物?」
「お願い。あれは大切な物なの。あれ以外なら諦めもつくけど、あれだけは絶対にダメ。お願い。いい子だから大人しく渡して」
「ふむ。……なあ、そこの銀髪エルフ」
「ぎ、銀髪エルフ?もしかして私のこと?」
「ああ。盗んだやつならあっちの方に走ってったぞ」
「えっ、嘘。それじゃあ、盗った子は路地の向こう?急がないと」
そう言いながら、銀髪エルフはその場に背を向けて路地の外へ向く。
さて、さっさと助けるか。
「それはそれとして、見過ごせる状況じゃないの」
そう言いながら振り向き様に、こちらに掌を向けると氷の塊が飛んできた。
「ぐあっ!」
「おいおい、こっちもかよ」
何故かこちらに飛んできた氷の塊を跳んで避ける。
「嘘……避けるなんて」
「君、なかなか良い反射神経してるね」
そう言うのは手のひらサイズの猫。
「俺の知り合いはもっと速いからな。お前らも、さっさと引き下がった方がいいと思うぞ?」
「くそっ!覚えてろよ!」
そんな捨て台詞を吐いて逃げていく男たち。
「えっと……あなたもあの三人組の仲間じゃないの?」
「いや、あいつらとはさっき会ったばかりだぞ」
「え!?さっきはごめんなさい。攻撃しちゃって。てっきり仲間なのかと」
「気にすんな。それよりも追いかけなくて良いのか?」
「あ!そうだった。それじゃあありがと」
「――おい、ちょっと待ってくれ」
ん?スバル、どうかしたのか?
「追いかけるっつっても、もう姿も見えない、探すのは骨がおれるってもんだよな?」
「え?まあそうだけど」
「それなら俺らにも犯人探すの手伝わせてくれ」
「えっ、でもそんなの悪いし……」
「いいからいいから。それに俺はやりたいからやってるだけだし。つっくんも問題ないか?」
「別に良いぜ。面白そうだしな」
俺がそう言うと、銀髪エルフの肩に乗っていた猫が口を挟む。
「悪意は感じないし、素直に受け入れてもいいと思うよ?それに、もう日も傾き始める頃だからね。夜になったらボクは手を貸せなくなっちゃう。暴漢ぐらいなら心配ないけど……弾除けは多い方がいいよ」
「物騒な役割が割り振られた感あるな!けど、なに?今の話だと、お前って夜だと出られない感じの雇用条件なの?」
「出てこれないっていうか、ボクはこんな可愛い見た目だけど精霊だからね。表に出てるだけでけっこうマナを使っちゃうんだよ。だから夜は依り代の結晶石に戻って、お天道様が出てる間に備えてるんだよ。まぁ、平均的には九時から五時が理想かな」
「九時五時とか公務員みてぇだな……精霊の雇用形態も案外シビア……!」
銀髪エルフは猫の言葉を聞いて顎に手を当て考えた後、
「そうね。パックが言うのならお願いしようかしら。あくまで、パックが言うから、だからね」
「よっしゃぁーー!!パックさんマジグッジョブ!」
「スバル、うるせえ」
まったく、集中できねえだろ。
「ん?そういえばつっくんはさっきから何やってんだ?」
何って……
「似顔絵。これがあれば少しは探すのが楽になるだろ?」
「おお、確かにそうだな。……って上手っ!!」
「絵、上手いわね。えーっと」
「そういえば名前言ってなかったな。俺は九十九神無だ。ついでにスバルも自己紹介したらどうだ?」
「そういやあ、まだ自己紹介してなかったな。俺の名前はナツキ・スバル!無知蒙昧にして天下不滅の無一文!ヨロシク!」
「それだけ聞くともう絶体絶命だよね。うん、そしてボクはパック。よろしくー」
そう言ってスバルの手に飛び付くパック。
「精霊とこんなに気軽に接する人なんてホントに珍しい。……珍しいって言ったら名前もだけど。黒い髪と瞳の色も、どこから来たの?」
「ふっ、いずれ聞かれると思ってたぜ。まぁ、パターンからすると東のちっさい国だな!」
「ルグニカは大陸図で見て一番東の国だから……この国より東なんてないけど」
「嘘、マジで!?東の果て!?」
「あー……俺たちちょっと訳ありでな。それよりあんたの名前をまだ聞いてないんだが、何て言うんだ?」
「――サテラ。……家名はないの。サテラと、そう呼ぶといいわ」
「ふーん」
喋った感じからして偽名っぽいな。パックから後で本名聞くか?
「それじゃあさっさと行こうぜ」
「そうね。でも、何処に捜しにいけばいいのかしら」
俺の予想だが……
「そうだな。十中八九、治安の悪い場所か、もしくはスラム街なんかだろうな」
「? どうして?」
「さっきの男たちもそうだがあんまり身形がよくなかった。それが普通って訳でもないだろ?盗んだものなんか表で売るのは厳しいだろうから、必然的にそういったものを取り扱うような場所になる。そういった理由でスラム街や治安の悪い場所だと予想したんだが」
俺が言い切ると、サテラがこちらを驚いたように見ていた。
「……カンナってすごく頭が回るのね」
「まあ可能性が高いってだけだけどな」
「それじゃあ、その線で考えてみましょう。それなら通りに出て、詳しそうな人に話を聞かないと」
「ただでさえ寄り道してっからな。巻き進行で行こう」