人気のない路地を抜け、表通りに着く。
さて、まず誰に聞くか。
「ねえ、スバルとカンナ」
「あ?」
サテラの方を向くと、彼女は通りの向こうに視線を送っていた。
「――あの子、迷子になってる気がしない?」
「……あー」
サテラってかなりお人好しだよな。
「落ち着こう」
「そんなこと言ってる間に、あの子がどこかいっちゃったらどうするの。早く声をかけてあげないと……」
「その優しさは超美徳だし、それに助けられた俺が言うのもあんまり過ぎて言いたくないんだけど、今の置かれた状況とかわかってるの?」
「それは、そうだけど……」
「だったら――」
「……別に助けても良いんじゃねえか?」
「え?」
俺にそう言われるとは思ってなかったのか、驚いた声を上げるサテラ。
「サテラがあの迷子を放置して、探し物を探すのに集中出来なくても困るからな」
「……ありがと、カンナ」
そう言って迷子に近づくサテラ。
「それでスバルはどうすんだ?俺はスバルがどうしようが止めないが」
「…………あー。しょうがねえ、俺も手伝おうじゃねえか」
スバルはそう言って迷子とサテラに近づいていった。
さて、俺も手伝うか。
◆◆◆
スバルと俺の格好が目立っていたこともあってか、迷子の保護者は程なく見つかった。
「本当にありがとうございました」
我が子と無事に合流した母親は、何度も俺たちにお礼を言って帰っていった。
「しっかし、さっきの迷子事件で痛感したけど、この町って捜し物するには広すぎね?」
「ルグニカ王国の王都だもん。一番大きくて、一番人が住んでる場所よ。えっと、住んでる人は確か……三十万人くらいいて、人の出入りも激しい場所なんだから」
三十万人くらいの人がいるってことは、かなりの広さがあるみたいだな。
「つまり、今の俺たちにはもう失敗は許されない。すでにだいぶアドバンテージ許してるし、次に迷ったらアウトと思っていい。慎重な選択をしよう」
「慎重な選択……っていうと?」
「ノープランで動き回っても良い結果はついてこないってこと。たとえば、盗まれたときの場所に戻ってみたら、もっと詳しい情報が手に入るかも。見てた人とか、いたりしなかったの?」
「あ……いたりしたり、したかも」
思い当たる節があるのか、サテラが口に手を当てて心当たりを口にする。
サテラによると、スリにあったのは白昼堂々の大通りのど真ん中だったらしい。
「サテラ、どこら辺で盗まれたか覚えてるか?」
「ん、と。たぶん、こっちの方……だったと思う」
サテラの案内に従い、通りを抜ける。
……ここって確かスバルが突っ立ってた場所だよな。
スバルも気づいたのか、頬を掻いている。
「まあ、ここなら声をかける相手の心当たりもあるし、俺に任せてくれ」
そう言ってある店まで歩いていくスバル。
「……なんだ、客かと思ったらまたお前かよ、一文無し」
「そう冷たくすんなよ、オッチャン。さっきは色々と親身になってくれたじゃねぇか」
「それはお前がまだ客だと思ってたからだよ。最初から文無しって分かってりゃとっとと追っ払ったに決まってんだろ。今みたいにな」
「おいおい、いいのかよ、そんな態度で。さっきの俺と違うことに、気づかないのかい?」
「あにぃ?」
スバルにそう言われ、困惑顔の店主。
横に一歩ずれ、サテラを両手で示す。
「どうだ、連れだぜ、連れ!途中で無一文が発覚した俺には掌返してくれたけど、こうしてもう一人、お得意様候補を連れてきた今はどうよ!」
「あの、スバル……変に期待してくれてるんだけど、私もお金、持ってないわよ?」
「え、あれ、マジで!?じゃあなに、素寒貧と無一文で大都市歩いてたの!?」
サテラも無一文なのか。
「つっくんは持ってたり……する?」
「俺もお前と同じ状況だったんだぞ?まあ、少しなら持ってるが」
「やっぱり持ってないかー。……って、マジで!?どうやって!?」
「内緒だ」
まあ、あの三人組のチンピラからスッたんだけどな。
「んで、おっさん。質問なんだがいいか?」
「まあ、客なら話は聞くが」
「盗品をさばくのに適してる場所ってわかるか?ついでにこいつ、見なかったか?」
「それなら貧民街だな。それと、そいつなら貧民街の方にいくのを見たぜ」
「そうか、助かったぜ。ついでに、その果物を三つほど買いたいんだが……これで足りるか?あと、情報ありがとな」
「おう。いいってことよ」
さて、情報も手に入ったしさっさと行くか。
◆◆◆
貧民街で聞き込みをしたところ、盗品蔵という建物に入っていった事がわかった。
ついでに、盗んだ少女の名前はフェルトという名前らしい。
道中パックが、顕現の限界でいなくなったが。
さて、盗品蔵と呼ばれる場所についたわけだが。
「思った以上にでかいな」
「ああ、盗人猛々しいにもほどがあんぞ」
「小屋じゃなくて蔵、って呼び方の理由がわかるわね。この中、全部が盗んだものばっかりだったら……いくらなんでも救えないけど」
まあ、定期的に処分してるだろうからそんなことはないだろ。
「さて、噂通りなら中に盗品まとめてる蔵主ってのがいると思うけど……こっちの立場としてはどんな感じで行く感じ?」
「正直に行くわよ。盗まれたものがあるから、中を探して見つけたら返してって」
「あー、わかった。じゃあ、ここは俺に任せてくれ」
「わかった。スバルに任せてみる」
「俺もスバルに任せてもいいぜ」
「そりゃ簡単に頷けないと思うよ。ここまでの俺が信頼を勝ち取れてると思うほど馬鹿じゃないから。でも、考えがあるから信じてって……えええ!?」
「な、なんでそんなに驚いてるの?」
「だって今の流れは完全に一回もめるパターンじゃん?『ここまで役立たずだった二酸化炭素発生装置に任せる?へそで茶がわいて鼻が大爆笑しちゃう。犬の方がずっとマシだわ』的な発言に傷つき、つっくんにいたっては『今まで全く役に立たなかったやつが何言ってんだ?寝言は寝て言えよ』なんて言われつつも決意を新たにする展開を夢想してたぜ!?」
「そんなひどいこと私言わないわよっ」
流石に俺もそこまでは言わねえよ。
「まあ、スバルの被害妄想はいいとして。俺も問題ない。スバルにも何か考えがあるんだろ?」
「……ああ」
「まあだいたい予想はつくが。頑張れよ」
「スバル、頑張ってね」
「――ん、頑張る」
そう言ってスバルは建物の中に入っていく。
「そういえばサテラ。ちょっと聞きたいことがあるんだがいいか?」
「別に良いけど、何?」
「お前の本名、教えてくれないか?」
「え?」
気づいてないとでも思ったのか?
「サテラって名前、本名じゃねえだろ。まあ、スバルは気づいてないみたいだけどな。それでお前の名前は――」
ん?何の音だ?
……嫌な予感がするな。
「ちょ、ちょっと!どこ行くのよ!」
「建物から物音が聞こえてな。たぶんスバルに何かあったんだろ。お前はここにいろ」
「それなら私もいくわ。それにあなた、魔法使えないでしょ」
使えない訳じゃないんだが……。
「……後ろにいろよ」
それなら何かあっても大丈夫だろ。
……前にも似たようなことがあったな。
「それじゃ、入るぞ」
明かりが消えてるな。やっぱり何かあったか?
「スバル?」
「あら、二人追加とはついてないわ。私は別に弱いものを殺すのが趣味ではないのだけれど」
「!?」
咄嗟にサテラを後ろに突き飛ばす。
くそっ、服が切れたじゃねえか。
「刃が通らない?あなたの体、いったいどうなっているのかしら」
「に……逃げ、ろ……」
声がした方を見ると、腹から血を流したスバルが倒れていた。
状況的にはあのときとおんなじだな。
どうやってサテラとスバルを連れて逃げるか考えていると、
「は?」
気がつけば、俺は噴水に腰かけていた。
ちなみに、盗まれたものが何かは聞き込み中にサテラに聞いてます。