オーバーロード 災厄の槍使い   作:三元新

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6話

―第三者 side―

 

村が焼け、家族が殺され、妹と2人で逃げる姉妹。しかし、2人の騎士が姉妹を襲い1人の騎士が剣を振り上げる。妹を庇おうと姉であるエンリは、妹を胸に抱き寄せその振り下ろされる剣を身体で受け止める。

 

いままで、さんざん逃げてきた姉妹の姉の背中を騎士は、自分の手を手こずらせたと言う理不尽な怒りに任せて切り裂く。後ろに目を向ければ剣を再度振り上げる騎士の姿が見える。妹を庇いながらエンリは二つのことを理解した。

 

一つは、あと数秒後には自らの命が確実に失われるだろうこと。そしてもう一つは、単なる村娘でしかない自分には、それに抗う手段が一切ないこと。

 

(……もう、ダメ…でも――)

 

――せめて妹だけでも助けたい。

 

その思いが激痛と諦めの感情の中での希望。何か、何か手段はないのか。妹を助ける手段を思案する。

 

しかし、何も浮かばない。ならば、剣をこの身に受け抜けなくすれば妹を助けられるかもしれない。ならばその可能性に私の全てを賭ける。

 

迫る剣になすすべがないと悟り、くる痛みに耐えよと目を瞑った。

 

―――キィィン!

 

……すると、突然、何か金属同士が重なる音が聞こえた。姉のエンリは来ない痛みと謎の金属音が気になって目を開ける。

 

すると、そこで目に写ったモノは――。

 

「――ふぅ、間に合って良かった」

 

艶のある黒髪に同じ色の瞳。その綺麗な瞳は自分達の方に向いている。そして、その女性は柔らかい優しげな笑顔と、声で姉妹に話しかけていた。

 

「大丈夫? まだ意識はあるかな?」

 

とても綺麗で優しい声と笑顔、そして頭を優しく撫でられ自分の頬が赤く染まっているのを感じる。ふと妹の方を見ると頬を赤く染めて自分と同じ反応をしているのに気がついた。

 

……そんな姉妹は、突然起こった出来事と、その笑顔にみとれて、放心状態だった。

 

その女性――八雲・N・イズナは、彼女たち姉妹が放心状態なのに不思議に思いながら苦笑しつつも、すぐに冷静になり後ろにいた2人組の騎士に体を向けてその2人の男を睨んだ。

 

「……おい、そこの雑種ども」

 

まるで心臓を直接掴まれたかのような、底冷える声と憤怒の顔によって、2人組の騎士は冷や汗が流れ恐怖し足が震えだす。

 

「お主ら、よくもまぁ…この様なふざけた事をしでかすのだな。主らはそんなにも人を殺すのが好きなの?このか弱き女子を追いかけ回したのが、そんなに楽しかったの?

ならば、私が汝らをいま殺しても文句は言えまい。それ程までにお主らは人を殺めすぎた。……理由無き殺しほど、妾の怒りに触れるものなど無いわ。

その身を――その命をもって、悔い改めろ!」

 

ヒュッ―――ブシャァァァァ!

 

…………ドチャッ

 

すると、そこにいたはずの1人の騎士の上半身が飛んでいった。そして、すぐ近くに落ちてきた。……そう、切られたのだ。上半身と下半身が別れた騎士は何が起きたかわからないといった顔で息絶えた。

 

そして、殺したであろう張本人であるイズナの右手に握られた愛槍の刃は、血で赤く染まっていた。

 

「ひっ!?ひぃぃぃ!!!」

 

すると、それを見たもうひとりの騎士が逃げようとするが――

 

「心臓掌握《グラスプ・ハート》!」

 

ドサッ!

 

その騎士は、突然地面にうつ伏せになるように、前乗りに倒れた。

 

エンリは女性は別の男性の声が聞こえてきたので後ろを振り向いた。すると、そこには大きな巨体に豪華なローブを付けた、顔が骸骨のモンスターがいたのだ。

 

姉妹はその人物から発せられる黒いオーラに畏怖していた。

 

まさにそのオーラを一言で表すなら『死』だ。絶対的で濃密な『死』がそこにいた。あまりにもの恐怖に姉のエンリは妹を助けるべくいままでよりも強く抱きしめる。妹も同じ思いなのか、姉を強く抱きしめ返した。

 

それと、《心臓掌握》とは、モモンガが好んで使う魔法の一つだ。

 対象を即死させる第九位階魔法。それは仮に抵抗されても意識を朦朧させるという副次効果がある。初手にそれを選んだのは、モモンガが一番得意な戦法だと、本人とイズナ、ここにはいないペロロンチーノとぶくぶく茶釜のギルドメンバーがよく知っているからだ。もしもそれがこの騎士に利かなければ、本気で逃走する方針に切り替えなければならなかった。

 しかし、騎士はその魔法に対して抵抗することができず、心臓を握りつぶされ、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちたのだった。

 

 そして、それと同時にある事も2人は感じていた。

 

人が死んだ、いや、殺したにも関わらず、モモンガは何とも思っていないようだった。そしてそれはイズナも同じである。目の前で殺人が起きたというのに、心に動揺が一切生まれない。非道な行為をしていた彼らに怒りを抱いていると言っても、異常なことだった。

 しかし2人はあえていまはそのことを考えないようにする。

『……モモンガさん、一言いいですか?』

 

『はい、何でしょうか? イズナさん』

 

『はい。では……モモンガさん、さっきから絶望のオーラが出ちゃっています。それにモモンガさんの顔はアンデット、それも骨だけのオーバーロードなのですから正直いって、初対面の人間からしたら普通に怖いでしょうに。現にそこの姉妹がびびっちゃってますよ?――と言うよりも恐怖のあまりに失禁しちゃっていますし。解いてくれますか?』

 

『……え? ああ、ほんとだ。どうもすみません』

 

『まぁ、いいですよ。今回は仕方がないですし。次からは気をつけてくださいね?特に、いまから村の方へと行くのですし』

 

『確かにそうですね。はい』

 

そう、メッセージで話しながらオーラをしまった。

 

そんな2人がやり取りを秘密裏にやっている中、モモンガが解除したことにより、姉妹は謎の重圧から逃れられたものの、命の危険が完全に無くなったわけでわなく、むしろさらに危険になったかと思いエンリはよりいっそう、未だ胸の中で震えている妹を強く抱きしめた。

 

『どうやら、完全に怯えられているみたいですね。……どうしますか?モモンガさん』

 

『どうするって言われても……どうしましょうか?』

 

『……なら、私に任せてもらえますか? 子供の相手はリアルで実家が別荘に孤児院をしていたのでなれますし、"白面金剛九尾"は特殊で異形種だけど人形を常にとれて、さらに狐種特有のスキルに『変化』という変身能力があるので、いまの"イズナ"の姿になれてます。なのでここは、任せてくださいね』

 

『あ、それなら任せますね。お願いします』

 

『はい、任されました』

 

 そんなイズナはふと姉妹へと視線を向けたが、未だ怯え警戒している姉妹を見て、やれやれ、とはため息を吐いて、モモンガの方へと歩み寄った。

 

「……まぁ、そんなことよりも、これからの事を話ましょうか。

まずは、いま戦ってみて思ったことは、他の方の防御はわかりませんが、攻撃に関しては問題なさそうです。しかし、あれだけのスキルを使う必要はなかったですね。基礎戦闘能力だけでも十分なんとかなりそうですよ?……現に、私は一撃で殺していますし。多分、この程度の相手なら武器使わなくても素手でも殺せます」

 

「みたいですね。でも、もう少し確かめてみましょう。――中位アンデッド作成、死の騎士(デス•ナイト)」

 

 そういってモモンガがアンデッド作成という特殊技術を持ちいると、黒い靄のようなものが溢れ、騎士の死体にとりついた。死体がゆらりと立ち上がり、その体の中からしみ出した黒いタール状の何かが巨大な体を形作っていく。

 

「げっ、アンデッド作成の特殊技術はこんな風になるんだ……」

 

「この世界では色々と効果が変わっているようですね。……私も今度、モンスター造りを試してみようかな」

 

 数秒後、そこに現れたのは身長二メートルを超える巨大な死霊騎士だった。デスナイトというそのアンデッドに対し、モモンガは命令を下す。

 

「デスナイトよ。この村を襲っている、そこの鎧と同じものを着た者を殺せ」

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 生者すべてを憎むというような雄叫びをあげ、デスナイトが駆け出していく。

 

……守るべき対象モモンガを置いて。

 

 あまりに自然に駆けだされたため、止めるタイミングを逃した手をひらひらと揺らしながら、モモンガは唖然とした声をあげた。

 

「えー……盾になるモンスターが、守る対象をおいていってどうするよ……命じたのは俺だけどさ……」

 

 その言葉と仕草、半開きになった口が必要以上にシュールで、イズナは思わず吹き出してしまいそうになる。だが、モモンガの顔が自分の方を向くのを見て、イズナは慌てて咳払いをして誤魔化す。

 

「さてと、これからどうしましょうか?」

 

「そうですね…実験しなければならないことはたくさんありそうですが…………」

 

 そういって二人で話し合っていると、開きっぱなしになっていた〈転移門〉から黒い全身鎧に身を包んだアルベドが現れた。

 

「モモンガ様、イズナ様。準備に時間がかかってしまい、申し訳ありません」

 

「いや、いいタイミングだ。アルベド」

 

とっさに、魔王モードになったモモンガ。そんなモモンガとアルベドの話を隣でじっと見ているイズナ

 

「すべての伝達は済んでおります。ご指示を」

 

「うむ。いま生み出したデスナイトがどうなるかも踏まえ、実験を行う。と、その前に……怪我をしているようだな。イズナさん、お願いしますね」

 

「はい。わかりました」

 

 そう言ってモモンガは言って、イズナにポーションを差し出した。

 

 モモンガからポーションを受け取りつつ、イズナは姉妹に近づいた。びくり、と二人が体を震わせるが、イズナはあえて気にしないようにする。

 

 両膝をついて、正座をするように座り、視線の高さを可能な限り揃える。子供を相手にする際には当たり前の配慮で、子供好きで孤児院も開いていたツバサにとってはいつもの当たり前の事だった。

 

「ほら、もう大丈夫よ。安心しなさい。これは治癒のポーション。傷が治るから、さぁ、飲みなさい」

 

 イズナの種族は異形種ではあるが、モモンガとは違い、全身を白い甲冑に身を包み、艶のある濡れ羽の様な色の髪をポニーテールにして一つにまとめている。そして、母性あふれる優しげな笑顔を姉妹に向けていた。果たして姉妹がどう思ったかは不明だが、なんとか安心させ、信じてもらうことはできたようだった。

 

イズナからポーションを恐る恐ると受け取りながらも一気に飲み干す。

 

「えっ、嘘……」

 

 ポーションを飲みほして傷が癒えた村娘は、信じられない奇跡を見たとばかりに驚いている。その元気そうな様子に満足し、イズナは離れた。……すこし、名残惜しそうにしながら。

 

「怪我は治りましたね。では、モモンガさん、後はよろしくお願いしますね」

 

「わかりました。《矢守りの障壁(ウォール・オブ・プロテクションフロムアローズ)》」

 

そう言うと、モモンガは姉妹に防御魔法をかけた。

 

「それとこれもやろう。」

 

さらにモモンガは角笛を姉妹に投げる。

 

「それは《子鬼将軍(ゴブリン・ジェネナル)の角笛》と言いまして、吹けばゴブリンが出てきて、お前の言う事を聞くはずだ。それを持っておくんだな」

 

 そこに、モモンガが防御用の魔法を張り、さらには小鬼将軍の角笛というゴブリンを召喚して戦わせることができるアイテムまで与えられた姉妹は驚きと感謝でいっぱいいっぱいだった。

 

「では、村を救いにいくとしようか。我が友よ」

 

 姉妹の前だからか、やけに大仰な言葉でモモンガがイズナを促す。イズナは相変わらずの魔王モードのモモンガに苦笑しつつも、頷いてその背後に続いた。

 

「あ、あの! 助けてくださってありがとうございます!」

 

「ありがとうございます!」

 

 そんな二人に、助けられた村娘が声をかけた。

 

「お、お二人のお名前は……なんとおっしゃるんですか?」

 

 その言葉に、すこし考え、視線を交わしたモモンガとイズナは、誇りを持って応える。

 

「我が名を知るがいい。我こそが、アインズ・ウール・ゴウン!」

 

「同じくアインズ・ウール・ゴウンの友にして右腕。天臨の神命主 八雲・N・イズナよ」

 

 去っていく二人の背に、娘たちは羨望に満ちた眼差しを向けていた。

 

…………が

 

「――ん?」

「……あら?」

 

突然、2人が何かに気がついたかのようにこっちを見てくる。突然のことにビックリはしたが視線が自分達を見ていないことに気づき、視線を辿り後ろへと視線を向けた。

 

するとそこには、2人が出てきた黒い渦の様なモノがあった。

 

しばらく監察していると、突然ニュッと腕が伸びてきた。腕の次に、片腕、顔、胴体、足……と、次々と姿を表した。そこにいたのは、全身を茶色のような色をした鳥人間といった感じの生き物だった。

 

彼の名はペロロンチーノ。ギルド、アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーの一人にして、エロに生きエロに死ぬ……と言った感じの変態さんである。とくに、幼女が好きで、あまりの好きすぎさに理想の幼女シャルティアを作った程だった。

 

「幼女が助けを呼んでいる、幼女が怖い思いをしている。そんな幼女を助けるべく参上つかまつった!

我が名はペロロンチーノ! 幼女を守りし守護戦士、ただいま参上!」

 

ババーン!……といった効果音と爆発音が背後で流れていそうなポーズをとって、"きまった"みたいな顔で満足気にしているペロロンチーノ。そんなペロロンチーノを冷めた目で見ているイズナとモモンガの2人。

 

すると、シュバっと音がしたと思えば、先程まで変なポーズをしていたペロロンチーノは姉妹の姉・エンリの片手を優しく持ち、まるで紳士の如く、片膝をついて手を持っていた。

 

「さて、綺麗なお嬢さん。さっそくですが私に、あなたのパンツを見せてもらってもよr――」

 

「――変態退散!!」

 

バキィ!!

 

「ゲフゥ!?」

 

ズドドドドドドドドドォォォン――――……

 

イズナはトンデモナイ発言をしようとしたペロロンチーノを、持っていた愛槍の石突でペロロンチーノの顔めがけてバットの様にフルスイングした。

 

ペロロンチーノは不意打ち気味に放たれた、あまりの衝撃と早さに反応出来ず20mほど吹っ飛んでいった。

 

「……え? えぇ!?」

 

そんなエンリはあまりにも唐突すぎて頭が混乱していた。

 

「……はぁ、まったく。あのド変態は」

 

イズナは物凄く呆れた顔で嘆息しつつも姉妹の方へと近づいた。

 

「ごめんね、怖かったでしょ? もう大丈夫だから。お姉さんが守ってあげる。あの変t―コホン。あのエロ煩悩のド変態には近づいたらダメだよ? 穢れてしまいますから。わかったかな?」

 

「は、はい」

「は〜い!」

 

緊張しながらも返事をする姉と、無垢な笑顔で元気に返事をする妹を見て満足気にするイズナ。

 

そんな様子を見ていたモモンガは、微笑ましくイズナと姉妹を見ながら、今後について頭を悩ませるのだった。




変態ペペロンチーノ参上! ちなみに最後のペペロンチーノのセリフは、ONE PIECEのブルックをイメージしてみました!
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