オーバーロード 災厄の槍使い   作:三元新

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いや〜、気づけばお気に入り件数が90台に入っていたことに驚きを隠せない三元新でございますよ。はい。

さて、今回も頑張って書いていきますよー!


それでは、ゆっくりしていってね!


7話

――一方その頃、モモンガとイズナがペロロンチーノに呆れている時、デス・ナイトは創造主のモモンガの言葉を忠実に守っていた。

 

 そう、そこはエンリ姉妹を含めた村人が住んでいた集落。そこでは狩る側と狩られる側が逆転していた。

 

 

 

「オオオオァァァアアアア!!」

 

 ビリビリと大気が震える。それに合わせ眼前の化け物――デス・ナイトが一歩前進した。

 

我知らずに2歩後退してしまう。

 

 鎧が小刻みに震え、カチャカチャと耳障りな音を立てる。

 両手で構えた剣の先も大きく揺れる。無論1人ではない。デス・ナイトの周りを囲む、18名の騎士のすべてからだ。

 誰1人として逃げ出さない。それは勇気があるからか? 

 それは違う。目の中に入れておかないと怖いのだ。一瞬でも目を離した瞬間持っている剣で切り裂かれる。それが生物が持つ直感でどうしようもなく理解できるのだ。

 

 ガチガチという歯がぶつかり合う音がそこらかしこから聞こえる。

 

 ロンデス・ディ・グランプは己の信仰する神への幾度かになる罵声を呟く。恐らくこの数十秒で一生分以上の罵声を飛ばしただろう。神が本当にいるならまさにいまこそ現れ、邪悪を消去すべきではないか。何故、敬遠なる信徒であるロンデスを無視するのか。

 

 神はいない。

 そんな戯言を囀る無心者を馬鹿にしてきたが、本当に愚かだったのは自分では無いだろうか。

 

「ひぁあああ!」

 

 箍が外れたような甲高い悲鳴が辺りに響く。円陣を形成していた騎士の1人が圧倒的恐怖に耐えかね、声を上げながら後ろを見せて逃げ出す。

 何かの線が切れれば、ギリギリと音が鳴るほどまで引き絞られた緊張感は、一気に崩壊へと流れるだろう。普通ならそうだ。だが円陣を構成する騎士の中に1人も共に逃げようとする者はいなかった。

 

 黒い風がロンデスの視界の隅で巻き起こった。 

 逃げ出した騎士は元いた場所より遠くに逃げようとしたが、瞬間、おぞましい音を立てた後2つに分かれる。

 

 右半身と左半身に別れ、大地に転がった。噴きあがった血が騎士を切り裂いた存在を濡らす。臓物の酸っぱいような臭いが周囲に広がり、ピンク色の内臓がどろりと断面からこぼれ落ちた。そして、その地面を赤い血で染め上げ、血の水溜りを作り出した。

 

「クゥウウウ」

 

 フランベルジェを振り下ろした姿勢で、血を浴びたデス・ナイトの目が細まり、高く唸った。

 

それは、まさしく歓喜の声。

 

 腐り落ちかけた人の顔でもそれぐらいは読み取れる。

 

――そう、デス・ナイトは楽しんでいるのだ。殺しというものを……。

 

奴は、楽しんでいる。まるで、自らをこの様な姿にした者達への復讐と、その者達を殺して自らと同じ姿(運命)にするために。

 

 目の前には、自分達よりも絶対的上位者――殺戮者がそこにいた。

 

 ロンデスは救いを求め、視線をわずかに動かす。

 そこは村の中央。広場として使われるその場所の周りに、ロンデスたちが集めた40人弱の村人たちがおびえた表情でこちらを伺っていた。何かあったときに使用される、ちょっとだけ高くなった木でできた質素な台座の後ろに子供達を隠し。

 子供たちの幾人かは棒を持っているが構えてはいない。あまりの怯えのため、握っているのが精一杯なのだ。 

 

 

 ロンデスたちはこの村を襲撃した際、四方からこの村の中央に集まるように村人を駆り立てた。

誰ひとりとして残さないと、家々を荒らし焼き払い、逃げ惑う村人達を老若男女問わず、殺していった。逃げ惑う人間を殺し、泣き叫ぶ子供を殺し、抵抗する男達を殺した。

 虐殺は多少手間取ったりもしたが順調に進み、村人の生き残りを順調に一箇所に集めつつあった。

 

 集めたら後はまとめて適度に殺し、幾人か逃がして終わり――そのはずだった。

 

そして騎士の一人が村人を切ろうと剣を振り上げた瞬間

 

ブシュゥゥゥゥ―――……

 

その騎士の上半身が消え、鮮血が降り注いだ。そして死んだ騎士の代わりに後ろには、黒い鎧を身に着けた巨大な騎士と両手には騎士を切り殺したとされる刃を持っていた異形な生き物がいた。

 

「な、なんだこいつは!?」

 

騎士の一人が叫ぶと、まるで合図だったかのように黒い鎧の騎士が

 

「オオォォォオオアアアーーー!!」

 

と叫び騎士たちに攻撃を始めた。そしてさっきまでいた両手が刃の生き物も騎士に攻撃し始めた。

 

 ロンデスはその瞬間を覚えている。

 強烈な印象を与えたあの光景。

 

 遅れて広場に逃げ込もうとした村人の1人を、後ろから切りつけようとした仲間の騎士が、彼が突然中空に舞ったのだ。何が起こったのか、あまりに非常識すぎて理解できなかった。

 全身鎧の騎士が、何10キロも重さがある大の大人の騎士が、いとも簡単に吹き飛び、地面に落ち、それからピクリとも動かない。

 

 そしてその騎士がいた場所に黒く巨大なものがいた。自分たちの仲間を吹き飛ばした巨大な盾をゆっくりと下ろしながら。

 

――それが絶望の始まりだった。

 

 最初は巨体から発せられる死の声と、圧倒的な強さに怯えながらも切りつけた。

 しかしその身をまとう鎧には、相手の攻撃や盾の防御を幸運にも抜けて切り付けても、傷一つ付かない。

 それに対しデス・ナイトは剣を使わずに、盾で遊ぶように――いや事実遊びながら騎士たちを吹き飛ばした。死なない程度の強さでだ。

 そのためか、変に生きながらえて、壮絶な痛みに苦しんでいる仲間達が、そこにはいた。

 

 あのデス・ナイトが本気を出せば、全員で四方に散っても追いつかれ殺されると。

 

 死ぬしかない。

 兜の下に隠れて見えないが、皆が皆同じことを考えているだろう。

 

 辺りに響くすすり泣く声。成人した男達があまりの恐怖に子供のように泣いているのだ。

 

「神よ、お助けください……」

「神よ……」

 

 幾人から嗚咽に混じって呟くように聞こえてくる。ロンデスも気を抜くと、跪き、神へ祈りとも罵声ともしれないものを送ってしまいそうになる。

 

「き、きさまら! あの化け物を抑えよ!!」

 

 引きつるような声がした。音程の狂った賛美歌のような耳障りな声。

 それは真っ二つにされた騎士の――デス・ナイトの直ぐ傍にいた騎士が上げたものだ。あまりの声質の変化にそれが誰か分からなかったが、あんな口調で喋る男は1人しかいない。

 

 ……ベリュース隊長。

 ロンデスは眉を潜めた。

 

 性質は1言で表すならカスだ。

 娘が逃げていくところを下種な欲望を感じ追いかけてみたら、父親だろう村人ともみ合って、助けを求める。引き離してみれば、八つ当たりの感情で村人に何度も剣を突き立て、その生き娘を捕まえ、父親の前で見せ付けるように強姦して遊ぶような――そんな男だ。

 だが、国ではある程度の資産家で、この部隊にも箔を付ける為に参加した、隊長なんて言葉はこいつのためにあるんじゃない。それぐらい隊でも嫌われている。

 

「俺は、逃げるぞ! こんなところで死んでいい人間じゃない! おまえら、俺の盾になれ!そして時間を稼げ! 俺が逃げる時間を稼ぐんだ!」

 

 誰も動くわけが無い。当たり前だ、今はどうすればあのデス・ナイトが自分を目標にしないか、頭を下げて嵐が通り過ぎるのを待つような状況。特に好かれてもいない男のために命を懸けるものか。

 

「ひぃいいい!」

 

 デス・ナイトがゆっくりとベリュースに向き直る。

 あんな近くで叫べただけ大したものだ。意外に肝っ玉が据わっていたのか? ロンデスはあまりにも暢気なことを考えてしまう。

 

「かね、かねをやる。200金貨! いや、500金貨だ!」

 

 たしかに、普通なら飛びつくような大金だ。だが、それは、いまの状況では誰ひとりとして食いつかない。

なぜかって?簡単な事だ。いまの状況を例えるなら、500メートルの高さの絶壁から飛び降りて助かったら金をやるといっているのと同意語だ。

 誰も動こうとはしない。

 いや、たった1人。半分だけ動いたものがいた。

 

「オボボオオォォオオ……」

 

 左右に分かれた騎士の右半身だけが動き出し、口から血の塊を吐き出しながら、ベリュースの足首を掴んだのだ。

 

「――おぎゃああああ!!」

 

 ベリュースの絶叫。周囲を取り囲む騎士、その光景が見えていた村人達の体が引きつる。

 

 だが、これはモモンガたちユグドラシルのプレイヤーなら何でもない事だった。

 

従者の動死体<スクワイア・ゾンビ>。

 

 デス・ナイトの剣による死を迎えたものは永遠の従者になるという。ユグドラシルでは、デス・ナイトがモンスターを殺した瞬間、同じ場所に殺したモンスターと同レベルのアンデッドが出現するようシステム上設定されている。

 ユグドラシルというゲームを知っているものなら何でもない光景だが、何も知らないものからすれば悪魔の所業だ。

 

だが、もちろんだが、そんな事を知らない彼らにとってソレは、恐怖の何者でもなかった。

 

 ベリュースの絶叫が止み、糸が切れたように仰向けに崩れ落ちる。気を失ったのだろう。デス・ナイトは無造作にベリュースの横に立つと、その漆黒の具足をベリュースの胸に下ろした。

 その足にすさまじい力が掛かっていくのがはたから見て理解できた。留め金がはじけとび、金属の鎧がミシミシと悲鳴を上げる。

 

「――お、おおぁぁあああああ!」

 

 苦痛で意識を取り戻したベリュースの絶叫――。

 

「たじぇ、たじゅけて! おねがいします! なんでもじまじゅ!」

 

 両手で必死にデス・ナイトの具足を除こうとするが、胸から生えたかのごとくピクリとも動いていない。

 

「おかね、おあああ、おかねあげまじゅ、おええええ、おだじゅけて――」

 

悲痛な叫び声を上げるがそれでもなお剣をその身に突き立てるデスナイト。

 

「いだいいだおがおがねあげまずおげねあげまおがねおがねぇぇ」

 

 金属の悲鳴が止み、木の枝をへし折るような軽い音がいくつも響き、それから周囲に血が飛び散った。刺されてもなおお金を叫んでいたベリュースの声は無論、途切れた――。

 

「……ひ、ひぃ!?」

「かみさまぁぁ!!」

 

 その光景に錯乱したように悲鳴が騎士の間からいくつも上がった。逃げたいがその瞬間殺される。でもここにいたら死より惨いはめになる。思考は回転し、体は動かない。

 

「――落ち着け!!!」

 

 ロンデスの咆哮が悲鳴を切り裂いた。時が止まったような静けさが生まれる。

 

「――撤退だ! 合図を出して馬と弓騎兵を呼べ! 残りの人間は笛を吹くまでの時間を稼ぐ! あんな死に方はごめんだ! 行動開始!」

 

 騎士は一斉に行動を開始した。白紙になった頭に命令が入ったことによって、それだけを考える脳になったがゆえの完璧な行動だ。これほどの一糸乱れぬ動きは二度と出来ないだろう。

 連絡を取りあうための笛を持ってきている騎士の数は3人。現在、この場に来ているのは1人。この1人を守らなくてはならない。

 数歩下がった騎士が剣を放り捨て、背負い袋から笛を取り出し始める。

 

「オオオオァァァアアアア!!」

 

 それに反応するようにデス・ナイトが駆け出す。――目標は笛を持った騎士。何をしようとしているのか理解している、それは充分な知能があって行動だ。

 

 漆黒の弾丸は飛ぶかのごとく肉薄する。何人もその前に立ちふさがれば弾き殺されるだけだ。それは誰の目から見ても当然のごとく映る。しかしながら騎士達はその前に壁となって立ち塞がろうとした。恐怖をより強い恐怖が塗りつぶして動いているのだ。

 

 盾が振るわれ、騎士の1人が吹き飛んだ。

 剣がきらめき、騎士の1人の上半身と下半身が分かれる。

 

「ひぁ――」ドサッ

 

「たすけ――」ブシャァァァ

 

 再びまた盾が振るわれ、騎士の1人が吹き飛び、上段から振るわれた剣が受けた剣ごと騎士の体を2つにした。

 ロンデスは漆黒の暴風が眼の前に駆けてくるのを殉教者の心で待ち構える。

 

「おおおお!!!」

 

 そしてフランベルジェが振るわれ、ロンデスの視界がくるくると回る――。

 眼下に頭を失い、崩れ落ちる自らの体があった――。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

そんな、一方的な虐殺が起きている村があるすぐ側の森の中で四つの人影があった。

 

そう、モモンガ改めアインズと八雲イズナ、そしてお付きのアルベド(フル装備)+何故か付いてきたペロロンチーノだったのだ。

 

「うむ。デス・ナイトは正常に動いているようだな。(うわぁ〜、可哀想なぐらい一方的に殺られてますね。まぁ、誰が死のうが関係ありませんが)」

 

「そうですね、モモンガさん。どうやら、私達が手を出さなくてもよろしいそうですね。(仕方がありませんよ。それ程までに弱い人達だったということです。この世界に神がいるなら、同じ人を殺しすぎた報い――天罰ってやつでしょうかね。)」

 

「ふむ、そうだな。(それよりも、この村に攻めてきている奴らが特別弱いのかどうかはわかりませんが、いまのところ脅威になりそうな敵は確認できませんね。防御力が低い代わりに攻撃力が高いのかと思えば、まったくそんなことはありませんでしたし。と、言うよりもデス・ナイトごときに一方的に殺られているほどですし、攻撃力もたいしてないのでしょう)」

 

「(まぁ、確かに派手に暴れているデスナイト程度がいまだに破壊されていないということはそうなのでしょうね。)さて……モモンガさん」

 

「どうかしたか?」

 

「このままの姿では、村人はあの姉妹の様に余計警戒すると思うので、姿を変えなくてはいけません。モモンガさんの場合は最低でも顔だけでも隠さなければ……」

 

「……うむ、確かにそうだな。」

 

 そう言ったモモンガは、アイテムボックスの中から無骨なガントレットを取り出した。それを両手にはめて骨の体を隠す。

 

『やれやれ。スケルトンのようなアンデッドを選択するプレイヤーは、ユグドラシルじゃ珍しくなかったんだけどなぁ』

 

『仕方がありませんよ。ここは少なくてもユグドラシルの世界ではないのですから。』

 

普通に喋りつつも、メッセージで密かにやり取りをするモモンガとイズナ。

 

 モモンガの言う通り、ユグドラシルでは見目はともかく、自然と付与される様々な状態異常を無効する能力はゲーム的に魅力で、選ぶプレイヤーは比較的多かった。だからいままで気にしていなかったのだが、こちらの世界に住む者が怯えるというのなら、対策をしなければならない。

 

『私も顔を隠さなければいけないでしょうか?あと、この鎧も……』

 

イズナはメッセージ内で、そんな事をつぶやくと……

 

『う〜ん。それはどうでしょう。イズナさんも私と同じ上位道具創造《クリエイト•グレーター•アイテム》があるじゃないですか。それで仮面でも服でも着ればよろしいのですが、元々、人間の顔を持ったイズナさんなので、顔を隠さず装備もそのままでいいと思いますが……それに、イズナさんは仮面やお面系統なら、ほとんどの種類を持っていませんでしたっけ? 顔を隠すだけならそれで充分だと思いますよ?』

 

『あぁ〜なるほど…その手がありましたか。ありがとうございます、モモンガさん』

 

『いえいえ、どういたしまして』

 

『ではさっそく……』

 

イズナが空間に手を突っ込みゴソゴソと何かを探る仕草をしたあと、一つの仮面を取り出した。それは狐のお面だ。

 

この狐のお面は普通は何も無いが、狐種の異型種のプレイヤーが付けると"ある特殊効果"が付属される、種族限定で使える特殊アイテムなのだ。

 

『さすがは、化かすのに特化した狐種最強のイズナさん。とても似合ってますよ、それ』

 

 モモンガはそう言いつつ、アイテムボックスの中から一枚の仮面を取り出す。顔を隠すためのアイテムだろう。イズナは見たことのない仮面だった。

 

『ありがとうございます、モモンガさん。このお面はお気に入りアイテムの一つなんですよ。……ところで聞いてもいいですか? それ、見たことのない仮面ですね。モモンガさん、その仮面はどういう効果が……あっ』

 

 聞きかけてから、イズナは思い出す。ある時ユグドラシルで、いつだったか強制的に配られた呪いのアイテムの噂を。クリスマスイブの夜に既定の時間以上ログインしていると強制的に入手してしまうという、呪われたアイテム。

 

 その名も"嫉妬マスク"。

 

 モモンガは無言のまま、その怒っているとも笑っているとも泣いているとも判断のつかない不思議な仮面を装着する。そして、じっとイズナを見つめる。その奥にはそもそも眼球すらないはずなのに、イズナはその仮面の奥からはっきりとした嫉妬の視線が自分に向けられているのを感じていた。

 

「……本当に、ごめんなさい」

 

 その視線に耐えきれず思わずメッセージを忘れ声を出し、深々とイズナが頭を下げる。

 

『……いえ……いいんですよ。たしかにいままでクリスマスイブの時はイズナさんは必ずいませんでしたから。持ってるわけないですよね』

 

モモンガはイズナにたいし、嫌味のような嫉妬の様な声でそう言った。

 

すると、モモンガの言葉に気まずそうにツバキが答えた。

 

『あ、あははは。これは私が言っていなかったのもありますが、実は、私の両親が死んだ日が……クリスマスだったのです。ですので、クリスマスイブとクリスマスのこの2日間だけは、仕事もゲームも何もかも忘れて、唯一の血の繋がった家族である2人の兄と7人の姉妹達と、家で大人しく仲良く過ごすのが日課になってまして……本当にすみません』

 

そんな、突然すぎる重いカミングアウトにモモンガは自分の中で少し前の自分に怒りをぶつけたくなった。

 

『す、すみません。なんにも知らないでそんな事を言ってしまって……本当にすみませんでした!』

 

モモンガも、思わずメッセージを忘れて声を出し、土下座しそうになるが、なんとか内で抑えて、心の中で土下座をしながら無茶苦茶謝った。

 

『いや、いいんですよ。そもそもギルドメンバー全員には、何も言わなかった私が悪いんですから……そう。私が悪いんです…』

 

 どんどんと暗くなっていくイズナにモモンガはそっと目を逸らした。何故なら、自分たちのギルド、アインズ・ウール・ゴウンの中でも最年少でなおかつ、見た目によらず豆腐メンタルなのだ。誰よりも自分のキャラクター愛も強いが、本当に豆腐メンタルなので、実際にモモンガが一番心配しているのがソレだったりする。

 

モモンガは、帰ったらメイドや階層守護者たち、それにイズナと1番関わり深いペロロンチーノとぶくぶく茶釜も合わせて、イズナの帰還パーティーでもして元気を取り戻させてもらおう……そう思うのだった。

 

「さて、準備はできたか?二人とも」

 

モモンガはいったん頭の中を整理し、なんとか精神作用無効が発動する前に気持ちを落ち着かせた。

 

「はい。いつでもいけますわ。モモンガ様」

 

「アルベドと同じく、私もいつでもいいぞ。モモンガさん」

 

「そうか、ならそろそろ村人達の前に、姿を表せるとしよう」

 

モモンガはデス・ナイトが兵士達3人ほど残した所で、人間達が気づく所まで降りていくのだった。

 

「―――ってちょっと待って!? え? 俺ってこのまま? このまま木に逆さまに吊るされたままなの!? ちょ! イズナちゃん! アインズさん! このヒモ解いてくれ! そして無視をしないでくれーーー!!」

 

……と、ペロロンチーノの叫び声に足を止める3人。

 

そう、ペロロンチーノはイズナに吹き飛ばされたあと、吹き飛ばした張本人であるイズナに回収された後は縄でグルグル巻にされ、大きな木の枝に逆さに吊るされ放置されていたのだ。

 

そんなペロロンチーノへ顔を向けて、嘆息しながら近づいていくイズナ。

 

「それは悪かったです、ええ。……ですが、そもそも貴方が悪いんでしょうに。初対面でいきなり変態発言したんですから。」

 

「い、いや〜、幼女が目の前にいたんで思わず……」

 

腕も縛られてる為使えないが、えへへと照れくさく頭をかいてるような表情をしていた。

 

そんなペロロンチーノをジト目で見ながらも、口を開くイズナ。

 

「………それで、あなたから見た本当の感想は?」

 

「姉妹の聖水の香りは素晴らしかったです」

 

キリッとドヤ顔で言うペロロンチーノ。

 

そんなペロロンチーノを見たイズナは、一つ嘆息して……

 

チャキンッ!

 

「――やはりここで斬りますか」

 

「ちょ!?まままままままって?! それは、それは洒落にならない! 全然洒落にならないよイズナちゃん!?」

 

とても冷めた目をしながらペロロンチーノへ愛槍を向けるイズナ。そんなイズナを見て危機を感じたペロロンチーノは身体を必死に動かし慌てふためく。

 

「ちょっ!? イズナさん! 殺すのだけは…ほんとそれだけは辞めてあげてください! ペロロンチーノさんも謝ってますから!?」

 

ヤバイと思ったモモンガはイズナに近づきペロロンチーノを助けようと庇うが……

 

「大丈夫ですよ、モモンガさん。殺しはしません。とても…そう、とてつもなく残念ですが、これでも大切な幼馴染みの1人なので。―――ただ、男の"アソコ"を切り落とすだけなのです」

 

――ニコっ

 

そんな言葉を笑顔で言いきるイズナ。笑顔といっても、口は笑っているが目が笑っていない笑顔だ。

 

そんな笑顔を見て戦慄する2人。モモンガはすぐに意識を回復させ慌ててイズナを羽交い締めした。

 

「いや! ほんとに落ち着けイズナ! 流石にそれはやばい、うん、本当にヤバイから!?」

 

「うんうん!? ほんと冗談ですからそれだけは!」

 

モモンガとペロロンチーノの必死な態度にイズナは諦め、1つ嘆息しながら2人を交互に見た。

 

「……わかりました。今回は"特別に"赦しましょう。ですが、次はありませんからね? いいですか? ペロロンチーノ」

 

「はい!」

 

「ちなみにモモンガさんもですから。ペロロンチーノ――いえ、この変態を庇ったんです……いいですよね?」

 

「は、はいぃぃ!?」

 

「うん、よろしい。いい返事です。約束を破らないことを祈ります。――さぁ、行きましょうか。村へ」

 

「「は、はい…」」

 

生き生きとした表情で前を進むイズナ。そんなイズナに疲れきった顔をして付いて行くモモンガとペロロンチーノの2人。そしてその後ろを何事も無かったかのように振る舞い黙ってついて行くアルベド。

 

そんなカオスな雰囲気の3人はデスナイトがいるであろう村へとすすものであった。

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