……さて。あれから私はこちらへ向かってくる人物を、アインズさんに報告しました。すると、アインズさんはこの村にくる人物を知っていました。何故かと聞くと、村人の村長さんが教えてきたそうです。そんな理由で私とアインズさん。あと先程まで幼女をお持ち帰りしようとしていたアホ鳥一匹を捕獲し、その"お客さん"を待っています。
すると、村に白い鎧を付けた騎士たちがやって来ました。
「……アインズさん。なんだか彼ら、みんな各装備がバラバラですね。さっき殺した騎士たちとは違う感じです。」
「……そうだな。武装に統一性が無く、各自なりのアレンジを施している……。正規軍じゃないのか?」
騎兵たちを観察していた私達は彼らの装備に違和感を覚えた。
なぜなら、先ほどの帝国の騎士達は、それぞれの鎧に紋章を入れており、その鎧も完全に統一された重装備であった。しかし、それに対して今度来た騎兵たちは、確かに鎧を来てはいるが、各自使いやすいように何らかのアレンジが施されている。
……これをみる限り、パッと見れば先ほどの帝国の騎士ではなさそうに見えるが、所詮は見た目だけ。身に付ける鎧なんて変えればバレないし、そもそも先程まで帝国の兵士が暴れ惨敗したのに、またノコノコと同じ格好では奇襲をする前に殲滅させられる。ましてやまだ日も出ているし、そんな所に来るはずもない。だが、鎧を変えれば見ただけではわからないし、堂々と奇襲もできる。
……そうならなければいいのですが。はたして吉と出るか凶と出るか…。運次第ですかね?
そんなことを考えていると、騎士の中で一番ガタイが大きい人が馬から降りてこちらに挨拶をしてくる。
「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフだ、この近隣を荒らし回っている帝国の騎士達を討伐するために王のご命令を受け、村々を回っているものである」
「王国戦士長……」
そう村長が呟き、私は彼が誰なのか聞いてみると
「商人達の話では、かつて王国の御前試合で優勝を果たした人物で、王直属の精鋭騎士達を指揮する方だとか。私も噂話でしか聞いたことがないですが……」
そうこう話していると
「この村の村長だな?横にいるのは一体誰なのか教えてもらいたい」
「それには及びません。どうも、王国戦士長さん。私の名はアインズ・ウール・ゴウン、魔法詠唱者(マジック・キャスター)です。そして私の隣にいるのが友人のイズナ。その後ろにいる者たちは私の部下と、あとそこで縄で締め上げられている鳥人間は一応私の友人です。使い魔でもありますが」
アインズさんは、まず自己紹介を次に私とアルベドを紹介し、縄(鎖)で簀巻きにされているペロロンチーノは適当に紹介する。
紹介が終わると、戦士長は頭を下げながら
「この村を救っていただき、感謝の言葉も無い」
私はその姿を見ておもわず感心してしまった。見た目は一匹だけ化け物だが、それでもおかしな姿の怪しさ満点の人達の集まりのような者たちに見下しもせず、対等の立場として見てくれている。この男はいいやつなんだなと直感的に感じていたのだ。
その後、アインズさんの仮面を外して欲しいと頼まれたが、魔法詠唱者(マジック・キャスター)としての効力が弱まり、死の騎士が暴れだすかもしれないから無理だと適当な理由を言っていた。
しばらくアインズさんとガゼフさんが会話していると、ガゼフさんの騎士の一人が焦ったように
「戦士長!周囲に複数の人影。村を囲むような形で接近しつつあります!」
私たちは村長の家に隠れて様子を窺っていた。彼らの周囲に浮いているのはどうやら天使のようだ。
「なるほど……確かにいるな」
「あの鎧、それに天使を使役している所を見ると、奴らは恐らくスレイン法国。それもあれだけの魔法詠唱者(マジック・キャスター)を揃えられるところをみるとあれは特殊工作部隊群。おそらく六色聖典かと……」
「その六色聖典とは?」
「スレイン法国が誇る最強の戦闘集団のことだ……目の前にいる部隊はその一つだ」
ふーん、最強の戦闘集団ねぇ。でも、あの天使共はユグドラシルにもいた「炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)」。なるほどなるほど……これは、この世界に私たち以外のプレイヤーがいる可能性がありますね。
「彼等は何者で狙いは一体、何処にあるのでしょうね? 私はこの村にそこまでの価値があるとは思えませんが」
「ゴウン殿に心当たりが無いとすれば狙いは……一つしか思い浮かばないな」
「成程…どうやら、あなたは憎まれている様だな」
「本当に困ったものだ。スレイン法国にまで狙われるとはな」
戦士長の地位は恨まれ役、ですか。だとしても一人相手あの人数……よほど戦士長が嫌いなのですね。
―――それよりも
「アインズさん、あの天使たち、ユグドラシルにもいましたよね」
「ええ。確かに『炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)』に酷似していますね」
「もしアレが『炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)』だとしたらきっと私たちの他にも……」
「可能性はありますね」
アインズと私の会話に、戦士長は割って入り
「ゴウン殿、イズナ殿。我々に雇われないか?報酬は約束された額を用意しよう」
戦士長は提案をした。ですが……
「断らせていただきます」
「アインズさんが言うなら、申し訳ありませんが私も」
「そうか……ではゴウン殿、イズナ殿、お元気で。この村を救ってくれた事を感謝する!」
最後にこの村だけは守っていただきたいと言われ、守ることを約束した。
そして戦士長が満足な顔をしてこの村を出ようと扉に向かったところでアインズさんが呼び止め
「……戦士長殿、その前にこれをお持ちください」
アインズさんが戦士長に渡したアイテムって確か……ああ、なるほど。そういう事ですか
ガゼフさんはそれを受け取り騎士たちを連れ村を出た。
「……行きましたね。で、アインズさん、これから私たちはどうしますか?」
「そうですね。では、私たちはここで時が来るのを待つとしようか」
「やっぱりそういうことですか。結構、粋なことをしますね……まぁ、それがアインズさんらしいですが」
「ふっ、そうか?」
――――――――――――――――――――――
モモンガ、アルフ、ペロロンチーノは、遠隔視の鏡でガゼフ達と敵の戦いを覗いていた。
戦いは一方的であり、ガゼフ達には勝ち目がないように見て取れる。
そんな中、ガゼフの戦いは凄まじかった。ユグドラシルにはなかった技を使い、六体の天使を一振りで両断し、続く攻撃で一体、二体と倒していく。
だがしかし、天使は次々と召喚され、ガゼフの体力を減らしていく。
そして、とうとう王国最強の騎士、ガゼフ・ストロノーフは今、絶体絶命にたたされた。
逃がしたと思っていた仲間は、ガゼフと戦うといい戻ってきたが、天使たちの攻撃で瀕死、ガゼフ自体も奮闘したが体力は限界を迎え、1体の天使に横腹を貫かれとうとう倒れてしまった。
だが―――
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
ガゼフは瀕死の重症を負いながらも、血まみれの体を起こし、その足で立ち上がり大声で叫ぶ。
「俺は王国戦士長。この国を愛し、守護する者…王国を汚す貴様らに、負けるわけにいくかぁぁぁぁ!!」
ガゼフはボロボロになった剣を握りしめ相手を睨む。
「ハハッ、そんな夢物語を語るからこそお前はここで死ぬのだ。お前を殺したあとは村人も殺す。ガゼフ・ストロノーフ、その体で何ができる。無駄な足掻きをやめ、そこでおとなしく横になれ。せめてもの情けに苦痛なく殺してやる」
「フッ……クッ…ククク……」
「何が可笑しい。 とうとう痛みと絶望でおかしくなったか? 王国戦士長」
「…お前達は分かっていない。あの村には俺よりも強い御仁達が居る。……お前達は俺には勝っても、あの人達に破れ、絶対に勝てない……ッ!」
「ハッタリか? まったく、瀕死の体で減らず口を……まぁ良い。貴様もあの村もどうせ消えるのだ。―――天使たちよ、ストロノーフを殺せ!」
「ぐっ!」
そして陽光聖典の指揮官ニグン・グリッド・ルーインは部下に指示を下し、天使たちをガゼフに仕向けた。ガゼフが歯を食いしばり折れそうなほどひび割れ傷んだ大剣を握りしめ、その時――
ガゼフの姿が消え、代わりに見たこともない格好をした仮面をかぶった者と、全身を見たことも無い、顔が露出した白い鎧を身に纏った少女と、その少女とは正反対の黒色の顔まで隠す全身鎧(プレートアーマー)を着用した、女性と思われしもの。そして明らかに人間ではない化け物の姿をしたものがそこにいた。
「な、何者だ!?貴様ら!?」
ニグンが叫ぶと……
「はじめましてスレイン法国の皆さん。私の名前はアインズ・ウール・ゴウン。親しみを込めて、アインズ、と呼んでいただければ幸いです……そして隣にいるのが我が友人のイズナとペロロンチーノ、後ろにいるのがアルベド。まずは皆さんと取引をしたいことがあるので、すこしばかりお時間をもらえませんでしょうか?」