享年25にしてオレは交通事故で死んだ。
もう少し詳しくすると、バイクに乗ったオレが対向車線のフラッシュライトに目が眩み、トラックとオフセット衝突するという、ヘルメットを被っていてもまず死ぬ目にあった。
ただし、即死と言うわけではなく、文字通り「死ぬほど痛い」目に遭いながらも痛みと混乱で這いずりながら死んだ。多分失血死だろう。
薄れいく意識の中で思考などまとめることなんてできる訳もなく、痛みが引き、眠気のようなものに対する誘惑に勝てずに、かろうじて聴こえる人のざわめきをそのまま聞き流しながら意識を失った。
と、オレの事故当時の状態なんぞこれ以上振り返る必要は無いだろう。今は重要ではない。
オレは気がついたら「ヒラガサイト」という名前の赤ん坊になっていたと言うことの方がよほど重要な事柄だった。
嗚呼、最近よくある憑依とか転生とか見かけるが、まさか当事者になるとは思わなかった。
転生して、名前が「ヒラガサイト」だったらもうあの作品しかないだろう。間違って普通の現代でも通じる生き方すればいいし。
ともかく、本来のサイト君には主人公申し訳ないが、おそらく平行世界とかどこかでルート分岐したとかそんななものでは無いとは思う、もっと想像することすら難しい何かによって「ヒラガサイト」として第二の生を得たと言う事だ。
ただし、この時点で0歳。歩くことはおろか喋ることも出来ないし、目の前もぼんやりとしか見えないせいで、五感のうち使えるのは触覚、聴覚、嗅覚だった。
と言っても、首すら座ってない状態で何かするのはとても危険だと思う。座るまでの間何かの本に書いてあった気がするが、3~4ヶ月かかったはずだ。それまで激流に身を任せ同化することにしよう。
3ヶ月経った。正確にはもう少し経過したが、ようやく首が座るようになってきた。それでも目がまだぼんやりとしか見えない。動体視力が追いついていないようだ。粗相をしたときに感じていた羞恥心は既に麻痺している。
2年が経過した。なんで飛んでるんだって?やることが単調過ぎて飽きてたからだよ。追加された行動と言えば、「あー」だの「うー」だの発音の練習と、重くて持てないおもちゃを持てるようにしたり、それを振り回して筋力の向上を計ってたくらいだ。
3歳になった。俺は歩けるようになってからよく走っている。と言うのも今のうちから鍛錬を日常化して、後々面倒にならないようにと考えた為だ。それと、前世では英語をマスターしていたのだが、この数年ですっかり錆び付いてしまった感じがしたので、親にねだって英語の幼児教室に通わせてもらっている。さっさとアルファベットを覚えたフリをして、小学校に上がる頃までには全盛期まで取り戻したいものだ。
6歳に、周りからは天才かもしれないと囁かれているが、覚えてたものを復習しただけだったので、誇る気にもなれなかった。誕生日に少し早い入学祝いという事で何か欲しいものはあるか?と聞かれたので、空手と体操(マット運動)がしたいと発言したが、どっちかにしなさいという両親の言の元、体操を選んだ。空手も後々どうにかする作戦があるのでここはおとなしく言う事を聞く。
8歳の誕生日に、「空手もしたい」発言と、一日100回の正拳突きや、庭の木に座布団をくくりつけて蹴りの練習をしていたのが功を奏したのか、両方とも投げ出さないという約束の元、空手も出来ることになった。
12歳になり、身長も160cmに届くかと言う頃、近所に剣術(剣道ではない)道場を持ってる爺さんがいると言う噂を聞いて、爺さんに弟子入りを志願した。この爺さんは息子夫婦が東京に居を構えており、年金生活をしながらたまに来る孫を楽しみに待っているのだそうだ。そんな爺さんの孫より若干幼いらしい俺だが、手慰みに弟子を取ってみるのもいいかという事で了承をもらった。現在の俺の1週間のスケジュールを簡単にまとめてみると、火曜日と木曜日が空手、土曜日が体操、日曜日が爺さんと剣術の鍛錬となっている。何もない日は軽く自主トレをしたり、友達と童心に帰って遊んだりといった具合だ。
15歳、ついに計画を実行に移す時が来た。と、言うのも、アメリカにいる親戚の家にホームステイし、銃器を手に入れる計画を練っていたからだ。ここが「ゼロの使い魔」の世界ならば現地調達出来る弓矢に軍杯が上がるが、そちらは高校に入ってから部活に入るとして、片手で連射出来る武器が欲しい。と言う訳で、銃器を所望したのだ。弾数制限と言う縛りがあるが、ハルケギニアにも鉛と黒色火薬があるし、オートマチック銃のためにガンパウダーなども持っていく為そこまで気にしてはいない。場合によってはコルベール師に錬金と言う反則魔法で作ってもらうので問題はない。問題と言えばコルベール師自身が争いごとが嫌いと言う点に関してだが、これは何故銃まで必要になるかと言う観点にまで遡る。
何故銃が必要なのか。それは、桃色爆発娘ことルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールから契約をしないという事だ。となると、必然的に自活出来るだけの生活力が必要になってくるから、当然お金が必要だ。だが、契約しないから面倒を見ないと言う事になりかねない。だったらば、近くの亜人を狩って生活の足しにしようと考えたのだ。コントラクト・サーヴァントを断る理由は、それに付随する洗脳効果が怖いからだ。コルベール師やオスマン老が神聖な云々と言ってきたら、これを盾にコントラクト・サーヴァントを回避しようと思う。洗脳などの魔法はハルケギニア社会において犯罪だからだ。それを理性無き動物(一部例外有り)ならともかく、人間に付与しようものならモノを教える教師と言う職業において推奨したらアウトだろう。まあ平民の命はメイジより軽いだろうが、もし強制してこようものならコルベール師のトラウマを刺激せざるを得ない。
それに、この説得方法で行けば亜人退治と言う大義名分が立ち、コルベール師への錬金の依頼を通しやすくなる。安定した収入が入るならばタバサに38口径のリボルバーくらいあげて、好感度を上げる事も出来るかもしれない。キュルケは後々コルベール師とくっつくかもしれないから武勲の方で気を引けばいいだろう。
ん?話がズレたな。別にハーレムとか狙ってるわけじゃないが、ルイズに関してはコントラクト・サーヴァントしないと好感度初期値は低いのがさらに低いままだろうし、タバサは任務で危険がマッハでifによっては死んでしまうかもしれないからと言う同情心から。キュルケは……まあ、嫌いになられるより好きでいてくれた方がいいだろう(アルビオン脱出の時とか)。
そっちはそういう訳でいいとして、銃器とルイズ達の好感度に関する話は以上だ。だが、好感度に関するコントラクト・サーヴァントだが、もしもの時の切り札に取っておきたい。諸刃の刃だが、ルイズが虚無として覚醒したあと、姫様のわがままで戦争に参加して、挙句撤退戦をやる羽目になる時は、その場合ためらわず契約しよう。勝てたらテファのところに行ってルーンの洗脳効果を解除してもらえばいいし。
ともかく、中3になった俺は近くの公立高校を推薦で合格し、余った時間をホームステイに使った。早速行動したのだが、ステイ先で良い意味で裏切られた。
何故か。それは、旦那さんとその息子が銃器を所持していて、週末に射撃に出かけたりしていたからだ。
ついでに旦那さんは収集癖があるらしく、小さいのはデリンジャーから大きいのはフェイファー・ツェリザカと言う化物銃を所持していた。
俺はすっかり旦那さんと意気投合して、週末には一緒にクレー射撃やシューティングレンジ、狩りに繰り出すこととなった。息子の方とも仲良くなったが、息子曰く「親父とお前の話にはついて行けない」と言われてしまった。
俺が帰国する頃には、旦那さんが「今度来たときには俺のコレクションの中から欲しいのをやる。ツェリザカはダメだけどな」と嬉しい言葉をもらい、叔母さんからは「甥と言うより旦那の友達が訪ねてきたようだった」と、息子からは「銃だけじゃなくてゲームもしようぜ」と割と真顔で言われた。
さて、帰国したあとは卒業式と入学式を終え、本格的に高校生活が始まった。俺は成績を落としたくないと言う建前で空いた時間に弓道部に入れることとなり、月・水・金曜日のどれか、もちろん暇なときは週3回行って弓を引いていた。
ここで報告なのだが、空手は初段、体操は180度開脚はもちろん助走なしのバック宙、剣術の修練は何とか斬鉄が出来るようになった。空手は頑張れば二段までいけそうなのだが、俺自身が多対一を想定しているため型より一撃に重きを置いているためもうちょっとのところで足踏みしている。体操はマット運動がメインで何故か空間把握が上手くなった。剣術については一番驚いている。まさか漫画やアニメみたいに斬鉄が出来るとは。ってここはアニメの世界(?)だったな。ともかく、爺さんから手ほどきを受けているとは言え、刀で斬鉄が出来るようになるとは思わなかった。ちなみに自然石割りは既に出来る。ついでにヨガのトレーニングと鍼治療の勉強もしてて、これがカトレア治療のために役に立つのではと思っている。麻酔の無いハルケギニアでは鍼での麻酔効果でも随分と助けになるだろうし。
何とか弓術も八節が出来るようになり、誰も見ていないところでは18キロ位の弓を速射や曲射の練習もするようになった。いつもは14キロの弓を使っている。ちなみに目標としている人物は某弓兵ではなく与一だったりする。
そんなこんなで駆け足一年。あっという間に過ぎてしまった。猶予はあと1年も残されていない。そこで俺は考えた。
召喚されるのは17歳。某所にてパソコンの修理の帰りに奇妙な鏡に引き寄せられて召喚されると言うのが俺が覚えている「ゼロの使い魔」の知識だ。もしこの鏡を回避したら?寝てる間に吸い込まれるかもしれない。そんな恐ろしい事になるくらいなら万全の準備をしてから突入したい。
なので俺は2度目の渡米を決意。ついでにこれまで貯めていた貯金も使い装備を整えることにした。
だがその前に親しい人たちに別れを告げなければならない。
まず、体操の先生。180度開脚が出来ない時は何度も半べそをかいたが、根気強く指導してくれ、習い事の中で一番長い付き合いの先生となった。
先生には、「もし俺が行方不明になっても元気でやっていくから心配しないで欲しい」と言った。
そしたら先生は、「出来れば行方不明にならずに元気にやっていけ」と軽い調子で返された。
次に空手の師範。厳しい中にも風邪を引いた時、本気で心配してくれてとてもうれしかった。
師範には「またちょっとアメリカ行ってきます。場合によっては長くなるかもしれないけど心配しないでください」と答えた。
師範は「あっちでは物騒な事もある。お前の事だから余計な事に首を突っ込むことは無いだろうが、元気でやれよ」と忠告してくれた。
そして剣術を教えてくれた爺さん。本当に孫のように可愛がってくれて遠慮なく甘えることができた。
爺さんには「ちょっと長い旅に出てきます。少し物騒なところもありますが、頑張るのでおじいちゃんもどうか元気で」と少ししんみりした感じになってしまった。
そうすると爺さんは、練習用とはまた違う刀を持ってきて、「鍛錬は欠かさぬように。この刀はお前に貸すから戻ってきたときにちゃんと返すように」と立派なこしらえの刀を渡してくれた。
俺は18歳未満なんだけどなぁと思いつつ、名目上「爺さんの知り合いの家に刀を郵送することになった」と言う建前を作り、爺さんから親戚の家に送ってくれるように頼んだ。
部活の先生なのだが、俺が速射や曲射で的を射る様を密かに知っていたらしくて、「お前なら危ない目にあっても平気そうだから心配はしない」と呆れ半分にこぼしていた。
そんなこんなで和弓一式と矢を5ダースほど、ついでに修理用具を業者に頼んでおいてもらえた。あっちに行ったら改めて作るか購入するかだったのでこれは嬉しかった。予定外の出費は痛かったけど。
最後に両親「また行ってくるよ。俺筆不精だから便りがないのが元気だって思ってくれ」とそっけなく言ってしまった。
と、言うのも最後に育ててくれた両親に何を言っていいのか分からなくなって後半涙声になってしまったからだ。
母は、「そんな大げさに」と苦笑し、父は、「姉さんに迷惑かけないようにな」といつもの調子で言ってくれた。ごめん、父さん、これから行方不明になるから盛大に迷惑かけると思うんだ。
旅立ち。多分日本の土はもう二度と踏めないのかもしれないと思うと寂寥感があったが、こうしないと人生ハードモードなのでそれを振り払って空港のロビーから飛行機へ乗る。
アメリカに着いた俺は、早速叔父さんと抱擁を交わして叔母さんに挨拶した。
これからコレクションをくれるって言う叔父さんと、息子のためにパフォーマンスとして鉄板を一文字に叩き切ったりなんかした。そうしたら叔父さんが「お前フォースが使えるのか!?」と言ってきたが、技術的なものなので「んーオーラかな」と適当にはぐらかしておいた。
パフォーマンスにとても気を良くした叔父さんは「この中から好きなのを持って行ってくれ」と言ってくれたので、まずソーコムピストル、サイレンサー付きが一丁。キャリコМ900マシンガンを一丁、レミントンM700ライフルを一丁、タバサ用にS&W M60リボルバー、レイジングブルリボルバーを一丁に追加で左手用を注文した。これを見ていた叔父さんは「戦争にでも行くのか?」とこぼしていたが、最悪戦争の真っ只中に突入する羽目になりそうなんです。取りすぎてごめんなさいと心中で謝っておいた。
あとは、45口径弾50発、9mmパラベラム弾が200発、7.62mm弾が36発、.357マグナム弾が6発、.454カスール弾が120発。あとはリロードツールとガンパウダー、マガジンやスピードローダーに雷管などを、ついでに排莢受けと各種弾頭用鋳造の母型も購入した。
あと、各種ホルスターなのだが、これも一応叔父さんのコレクションの中にあった。しかしキャリコのホルスターがショルダーの吊り下げ式だったので後腰に装備出来るように型紙から切り抜いて新しく作った。タバサ用のM60も後腰に装備出来るように新しく買い直した。
これであと必要なのは対コルベール師用の物理の本。馬鹿貴族がオイタしないように電子ロック付きキャリーバッグが3つにV‐TWIN MAGNA、修理工具一式、ガソリン用金属タンク2つ、アウトドアセットにボディアーマー。服は出来るだけ丈夫なやつと上等に見えるやつを選んだ。あっちでは「マントを着けてなければ平民」だが、平民でも「貧乏そうな平民」と「裕福そうな平民」では扱いが変わる。
他にもコンバットレーション3日分と水6リッターも持っていくことにした。
これで準備は完了。本当はもっと持って行きたかったけど、金銭の関係で断念。そして、いつでもゲートに突入出来るようにガレージで寝泊りすることにした。
さあ、待っていろハルケギニア。原作では哀れにも振り回されすぎたが、俺はそう易々とはいってやらないぞ?
なんとか4000字くらいで安定させたいな。気分で書いてるので安定しないのが常だけど。