「あんた誰?」
召喚の門をくぐり、着地に気をつけてまず一歩。そこから徐行でエンジン特有の重低音を出しつつ、ゆっくりと門をくぐる。
そして対面するは召喚フラグの元凶。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢である。
出てきたのは見た目ただの人間。しかもマントを着けてないので平民と判断し、「何度も失敗してようやく成功したと思ったらとんだハズレを引いた」と言わんばかりの表情で、落胆3、八つ当たりによる逆上が7と言った感じがオーラとなって見えそうである。
しかしこのまま何も返さないと爆発魔法を喰らうハメになるので、出だしが肝心だし表情を引き締めて言葉を返した。
「ここはどこだ?」
「ミスタ・コルベール。やり直しを要求します!」
うん、テンプレ通りの反応をありがとう。そしてこれ以上口を挟むと爆発ですね。分かります。
そう予測した私はホルスターからレイジングブルカスタムをゆっくりと取り出す。ホルスターから得体の知れないものを取り出そうとしているオレに、露骨に警戒するコルベール師と視界の端っこにいるタバサ。だが、下手に刺激しては逆効果になる可能性も考えているのか、こちらに聴こえにくいように詠唱している。
その間ルイズはコルベール師の反応が(俺のせいで)乏しいせいか徐々にボルテージを上げ、なんとかやり直しをさせてもらおうと先生に食って掛かっている。が、しかし、「召喚の儀式に例外は無いんだ。ミス・ヴァリエール」とこちらを警戒しながら最低限の言葉を返すコルベール師。可哀想だが今後がかかっているのでね。ルイズの妨害に対応していて下さい。
そしてレイジングブルを出し終わったオレは、そこでルイズとコルベール師のやりとりを表情を引き締め、不意打ちに警戒しつつ終わるのを待つ。
しばらくして、ようやくやり直しが出来ないと悟ったルイズはこちらを向き、言葉を口にするが、それに割り込みをかけて言論を封殺する。
「感謝しなさ「動くな」え?」
貴族の言葉が遮られるとは思ってないルイズは一瞬放心するが、その間に畳み掛ける。
「こんなところに俺を拉致してどういうつもりだ?俺はこれから叔父さんと狩りの予定が入ってるんだ。さっさと帰せ」
当然この言葉にルイズは怒り心頭。失敗の末に出てきたわけの分からない平民に尊大な態度で自分の言葉を無視され、「動くな」と言われ、(なら爆殺しても事故よね)と考えながらファイヤーボールの詠唱に移る。
このままぼけっとしていては一発でKOされるので、まずは2発、足元に撃ち込む。轟く轟音。ここで驚いて集中を途切れさせてしまった詠唱していた一同は、いきなりの出来事に驚愕し、コルベール師だけ「あれは……銃?しかし2発も撃てる銃など聞いたことがない」とブツブツ考察に入る。
「動くなと言った。そして付け加えるならそこでぼそぼそやってる中年。返事以外でしゃべるな」とあおりつつも、足元の土が爆発したかのように舞い上がったさまを見、驚いて詠唱を中断してしまった。おそらく集中も乱されたのでもう一度やり直しだろう。
そこでとうとうコルベール師が割って入る。
「失礼しました。異国の方。彼女も召喚が成功してからの対応に焦っているのです。どうか召喚の儀式を受けてもらえませんか?」とちゃっかりこちらが提示した条件を無視しようとする始末。おまけに返事以外で喋ってるし。嗚呼、先生、貴方も貴族主義に囚われているんですね。
そんなツルベール先生にはちょっとトラウマを想起してもらいましょうか。
「拉致した挙句訳の分からん儀式に付き合えと?もしそれが本当だとして俺にはメリットが無いな。それに周りを見るからに猛獣まで居るこの状況。その召喚の儀式とやらで大人しくさせているのならギアス・・・洗脳系のものが含まれているんだろ?それともなにか?どこぞの得体の知れないとは言え平民とやらの命はそこら辺の獣と同じ程の重さ。いや、それより軽いものだと考えているのだろう?」
「違っ・・・!」
「どこが違うんだ?それにあんた、背中に何人か乗せてるな。これは……焼死体?」ほんとはそんなの見えないんだけどねー。
「っ!?」
今度こそ言葉に詰まるコルベール師。そして言葉の意味が理解できたのか、戦慄するタバサ。彼女は幽霊の類が苦手なのである。
「このままでは埒が明かんな。俺の名前は平賀才人、ああ失礼。おそらくこちらではサイト・ヒラガだ。ヒラガが家名」と紹介し、「まずここらの地名と何故俺がここにいるのかを説明して頂きたい」とわざとらしく取り繕い交渉に入る。
コルベール師はこちら側から害を及ぼさないのならば話し合いは可能と判断し(まだ顔が青いが)、「……私はここ、トリステイン魔法学院の教師、ジャン・コルベールです」と返してきた。
「では、もう遅いですし、使い魔の儀は終了です。ミス・ヴァリエールは私とそこの方と一緒に残るように」
コルベール師の判断により周りの生徒がフライを詠唱したりし、「ゼロのルイズは後で歩いて来いよ」「そこの平民に逃げられるなよ」などと野次を飛ばしながら飛んでいった。おそらく最初のはマルコリヌ辺りだろう。
「ミス・ヴァリエールとミスタ・ヒラガ。これからオールド・オスマンに指示を仰ぎますので、私に着いて来てください」と若干警戒レベルを和らげながら先頭に立つ。(それでも完全に信用したわけではなく、肩の力が抜け切っていない)。
「その前にまず、このバイクをどこに置いておけばいいんだ?」と訊ね、建物の脇の部分に駐輪することにした。そして オレは、列の一番後ろから着いていきながら、これからの交渉のタネをまとめることにした。
短い。だがきりのいいところで止めるとなるとこれくらいが妥当か。