才人君に転生しました。   作:じゃんくやーど

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第2話

 学園内に入り、オスマンのところへ向かう。部屋へ近づくにつれてドタンバタンと音がするのは多分ロングビルもといフーケがオスマンにセクハラを受け、それに対し折檻でも行っているのだろう。

 

「ようこそトリスティン魔法学院へ。ワシが学院長のオスマンじゃ。みなからはオールド・オスマンと呼ばれておるよ」

 

 威厳と親しみの匙加減の絶妙な按配で自己紹介してくれているが、せめて頬のもみじをなんとかしてから言って貰いたい。

 

「はじめまして。自分の名前はサイト・ヒラガ。ミス・ヴァリエールからどうやら召喚されてここにやってきました」

 

 無難な紹介で返す。ここまではテンプレに若干アレンジやアドリブを混ぜるだけなので簡単だ。しかし、ここから「ただの平民で使い魔」と評価されるか「異国からやってきた魔法は使えないが丁重に扱わねばならない客人」になるかの分岐点である。

 

「老人の長話で時間を潰すのもアレじゃろう。ここは単刀直入に用件を済ませよう。実は、ミスタ・ヒラガにはそこに居るミス・ヴァリエールの使い魔になって欲しいのじゃ」

 

 本当に説明抜きで用件だけ持ってきたよこのジジイ、と顔には出さず内心毒を吐きつつ、こちらからも知らない振りをしながら説明、そしてここに連れて来られた、いや、拉致されたと言う事実を含ませ交渉に移る。

 

「お言葉ですがオールド・オスマン。私はこの国とは違った国から任意ではない状態で呼び出された身。明日も学校がありますし、両親や友人などもなんの前触れも無く消息を絶った息子を心配しないはずがありません。それに、使い魔と言う響きが先ほど私に対しあてがわれた『平民』と言う立場より下、つまりペットか何かのような響きがあるのですが」

 

 と、ただ魔法が使えない(ここがハルケギニアでは重要)平民ではなく、学校へ通える身分を持った、ある程度身分の高い存在だと言うことをアピール。もし、これがどこかの貴族(例えばゲルマニア)の子女ならば国際問題に発展するし、使い魔と言うもの自体が不本意だと言う態度を取る。

 

「ただの平民が何を言ってるのよ。貴族の使い魔になれるなんて名誉な事そんなに無いんだからね!」

 

 頭のちょっと軽そうな発言をしている、もといルイズはそんな感情にものを言わせた。まさにそれそのものの言葉を放つ。彼女はこの歳になってもこれが事件になるか、それとも合意の上で使い魔になるのかと言う瀬戸際という状態だと理解していないらしい。いや、ようやく成功した魔法の成果を手放したくない故に焦っているというのが正しいのかもしれない。

 

「ミス・ヴァリエール。今回の問題はそこまで単純なものでは済まなさそうなのじゃ。ここに居るミスタ・ヒラガがゲルマニアのように『魔法が使えずとも貴族になれる国』から来た可能性が出てきておる。もしそれが本当だったらワシの首だけではなく、ミス・ヴァリエールにも責任が及びかねないんじゃよ」

 

 軽く嗜めるように言い聞かせるオスマン老。それを聞いたルイズは本当に不本意だと言う表情を隠しきれず、しかも相手がゲルマニアのような『成り上がり』貴族かもしれないと言うことに不快だと言う態度まで取る。キュルケとその家が嫌いだからって流石にその態度はどうよ?と思うが、仕込みは上々なのでこちらの表情も崩さずにだまっておく。これで性格が良ければ……いや、やっぱり洗脳怖いので使い魔は勘弁。

 

「ミスタ・ヒラガ。気を悪くしたのならば謝罪する。じゃが、ミス・ヴァリエールの留年もかかっておるのじゃ。どうか使い魔になってくれんかの」

 

「謝罪ならばお気になさらず、ですが、留年と言えば私も学校がある身分です。期間次第では退学の可能性も含まれる問題に易々と了承とは言えないのですよ。ちなみに期間はどれくらいなのでしょうか?」

 

 ここら辺はかなり重要だといわんばかりの態度を取り、『留年』より重い『退学』をカードとして扱う。期間云々に関しても『魔法が使えないのならば使い魔と言うものも詳しくない』と言う意味を持たせておけば、改めてオスマン老自身から説明してくれるはず。

 

「あー、その期間なんじゃが、どちらかが死ぬまで、つまり一生なのじゃ。だから、ミスタが了承してくれなくば彼女は留年してしまう、じゃが、ミスタの退学も問題じゃのう」

 

 ここら辺は魔法主義のハルキゲニアに珍しいこちらよりの意見で返してくる。実際国際問題とルイズの留年を秤にかければ不憫ではあるが国際問題の方が重要だとも理解しているようである。さすが通称300歳。だがヴァリエール家の子女を留年させたとしても問題になる。こういうとき学園長と言う立場が辛いね。

 

「つまり私が『自主退学』の形を取り、使い魔として合意して欲しいということですか?」

 

「要約するとそうじゃの。もちろんミスタの立場を考えるに使い魔ではなく客人として扱わせてもらうし、部屋もあてがおう。これでもミスタの生活を壊してしまう対価では足りないくらいじゃから、こちらでもある程度ではあるが出来る限りのことはするつもりじゃ」

 

 よっし言質ゲット!顔が緩みそうになるも、どちらかと言うと少しほっとしたという表情でごまかし、交渉が上手く行ったことに内心喜ぶ。

 

「オールドのおっしゃることは分かりました。ですが、まず確認を。私はここよりずっと遠い場所から拉t、ゲフンゲフン召喚されたようなので、魔法とは何か分かりません。よって、召喚と同じ要領で元居た場所に戻る事が出来れば、退学する必要もなくなりますよね?」

 

 ちょっとわざとらしかったかもしれないが、魔法が使えない平民が魔法学園などで学べるはずも無く、よって、召喚の儀式自体分からないのも無理はない。そういう状況なので怪しむことが出来ないのである。

 

「済まないがミスタ・ヒラガ。召喚の儀は一方通行、つまり呼び出すことは出来ても送り返すことは不可能なんだ」

 

 今まで口を挟まなかったコルベール師が説明する。流石に国際問題に発展するかもしれない話題に必要以上に首を突っ込んでかき乱すという行為は出来なかったようだ。最低限の説明だけでもしておこうと口を挟んだのかもしれない。

 

「そうですか。それは残念ですが、ここで喚いても状況が良くなるとも言えません。そして、学校の件ですが、この文字を読んで頂きたいのです。こちらの国は共通語があるのかもしれませんが、私の居た国々ではそれぞれ違った言葉を使っていたので、私が文字が読めない可能性に、『学生と偽ってた』と言う虚偽を潰しておきたいのです」

 

 そう言って召喚される前にコンビニでよったときに買い物したレシートを渡す。自分で書くより感熱紙でプリントアウトされていたものの方が説得力があるかと思ったからだ。あとコルベール師の反応が見たかったのもある。

 

「これは……!ううむ、今までに見たことのない文字だのぅ。コルベット君はどうじゃ?」

 

「コルベールです。私も見たことがありません。……それにしても、この文字はインクを使ってないのですか?それに羊皮紙では無いようですが、そこまでミスタ・ヒラガの国では紙が普及しているのでしょうか?」

 

「私もそれ自体使っているだけで詳しくは無いのですが、それは熱によって文字を印刷しているものだったと思います。使ってないように思えたのはおそらく、単に羊皮紙等にインクで文字を書くものと感じが違うからではないかと。それと紙は一般的に洋紙皮に代わるくらいには普及してると思いますよ。もしよろしければ進呈します」

 

 この言葉に目を丸くしながらも、喜色の面でこちらを見るコルベール師、そして文字を見て若干眉間に皺を寄せ、多分いまだに見たことが無い文字に困惑しているオスマン。

 

「学生の件については分かった。よって、もしよければ図書館の使用を認めよう」

 

「ありがとうございます」

 

「この件については使い魔の件は了承とみてよろしいかの?」

 

「はい、それならばこちらの通貨の都合と、後の不都合が生じた場合にお願いします。私もお金を持っていますが、こちらの世界では使えないでしょうしね」私は財布の中から諭吉さんを取り出す。日本のお金って世界では結構凝った作りになっているのよね。

 

「ほう、これは……これだけでも好事家にならば美術品として売れそうだの」

 

「真ん中を透かしてみてください」

 

「ほう、透かし絵も入っているとはますます興味深いですな」これは横から覗き込んでるコルベール師の言。

 

「では改めてよろしくお願いします」二人の私に対するイメージを良くするために諭吉さんには犠牲になってもらう。

 

「任されたわい。それにしても、本当にミスタ・ヒラガは遠くの地から来たようじゃの」

 

「ええ、どうやらそのようです。右も左も分からぬ身。よろしくお願いします」

 

 このやりとりで召喚の儀についての大まかな問題は解決した。しかし、後はコントラクト・サーヴァントが残っていた。ってこっちがメインじゃん。大まかな問題解決してないじゃん。

 

「ではミスタ・ヒラガ。コントラクト・サーヴァントを行って欲しいのだが」

 

 そうオスマン老が促す。だが、そうはいかんざき。

 

「え?使い魔ってこれで契約終了じゃないんですか?もしかしてまだ続きが?場合によっては前言を撤回させて頂きたく思うのですが」

 

「使い魔の契約とはサモン・サーヴァントとコントラクト・サーヴァントのセットとなっておる。何か不都合があるのかの?」

 

 いけしゃあしゃあと……コントラクト・サーヴァントしたら洗脳効果が出るから不都合あるに決まってるだろ!

 

「お言葉ですがオールドオスマン。私は先ほど野外にて大量の動物、幻獣がおとなしくしているのを目撃しました。もしかしてコントラクト・サーヴァントには獣をおとなしくさせる効果があるのでは?」

 

「うむ、そうじゃが」

 

 ここで俺は畳み掛ける。

 

「では推測を述べさせて頂きます。コントラクト・サーヴァントにはギアス、つまり洗脳のような効果が含まれているのではないのでしょうか?仮にそうだとしたら人間にそれをかけると言う事はこの国ではどうなっているのですか?」

 

「しかし使い魔の儀は神聖な」

 

 とコルベール師が口を挟んでくる。この人エンジン作れるくらい頭が柔らかいと思ったのに頭が硬いな。

 

「この国ではどうなっていると聞いています」

 

 渋々オスマン老は白状した。

 

「……犯罪となっておる」

 

「ではコントラクト・サーヴァントをした瞬間から、ミス・ヴァリエールは犯罪者と言う事になってしまいますよね?」

 

 今までおとなしく話を聞いていた(?)ルイズは流石に成果が逃げるのを嫌がったのか、よこからまくし立ててくる。

 

「使い魔の儀は神聖なものなのよ!それにあんたみたいな平民が使い魔になれるなんて名誉、謹んで受けるべきでしょう!」

 

 ここで一言反論してもいいのだが、話が長くなりそうだから無視。あくまでオスマン老と話を続ける。

 

「ではコントラクト・サーヴァントはしない方向で。ラ・ヴァリエールの家から犯罪者を出すわけにもいかないでしょうし、ここは契約したが、少々恥ずかしいところにルーンがあると言うことでよろしいですね?それならばわざわざ私を剥いてまで見るようなもの好きもいないでしょうし」

 

「……仕方あるまい」

 

「ご理解頂きありがとうございます。それと待遇の件ですが、先ほど話した通りにお願いします。仮に使い魔と言えども人間にして男。主人が同性ならば同室でも構わないと思いますが、何か間違いでも起こったら大変ですので部屋を一室貸して頂きたい」

 

「分かった。部屋は現在平民用の宿舎しか余っていないがそれでもいいかの?」

 

「ええ、十分です」

 

 よっしゃあ!これでルイズの雑用の半分以上からも解放されるし(主に洗濯とか)、ルイズがこちらを男として認識すれば不意打ちコントラクト・サーヴァントもしにくくなるはず。しかも、したら犯罪者だと言う事はオスマン老から言質を取っている。デメリットは仕事が無いから飯以外は自分でなんとかしなければならないが、亜人討伐とかすれば収入は入ってくる。デルフリンガーだが、見た目はともかく頑丈、ボケている状態でも魔法威力軽減(さもなくばワルドのライトニングクラウドでやけどじゃ済まない怪我になっているはず)ついでに交渉次第では新金貨100枚より値切ってもいいと来たものだ。

 

「では、この件はこれにて解決とする。宿舎へはコルベール君、案内してやっておくれ」

 

「はい、オールドオスマン」

 

 これで衣食住のうち食と住は手に入った。ルイズは相変わらず不満そうな顔をしているが、こちらも憎くてやっているわけではない。思考をロボトミーみたいにいじられるのが怖いだけなんだ。それ以外は使い魔と言うか従者もどきとして働くから勘弁しておいてくれ。




うん、もう文字数を安定させようとするのは諦めました。気分の赴くままに書いていきたいと思います。次の課題は出来るだけこまめに更新することかな?
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