「ブラックブレット」 赤い瞳と黒の剣   作:花奏

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第七話 決戦の時

辺りは少し暗く、赤い瞳が一段とよく分かる。

見渡す限りの赤い光。その中央に蒼太達はいる。

 

「滝沢さん。やりましょう」

 

傍にいる少女、千寿夏世。伊熊将監のイニシエーターだ。

 

「蒼太。どれだけかかるのです?」

 

蒼太のイニシエーター、流星茉里亜。少しとは言えないほど間違っている日本語を訂正する気にもならない。

 

「うーん。わかんないなぁ」

 

「蒼太さん。来ます」

 

「よし。戦闘開始ッ」

 

夏世と茉里亜の瞳が赤く染まり、三人は一気に駆け出す。

 

「神代式抜刀術三の型十番直往邁進(ちょくおうまいしん)

 

一瞬にして剣閃を無数に走らせることによって、対象を無数に切り裂いていく。

 

「はぁぁぁぁぁッ」

 

茉里亜は靴底にバラニウムが付いているスニーカーでガストレアを蹴っていく。カンガルー因子の彼女は蹴り技が得意で、その破壊力は凄まじい。

 

夏世は大宇AS12を持ちバラニウムの銃弾でガストレアを撃っていく。

高序列の三人が集まれば、周りにいるガストレアを倒し終わるのは少し早い。

茉里亜は辺りを見渡した。

 

「蒼太。もういない?」

 

蒼太も見渡してみる。

 

「そうだなぁ。いないっぽいね」

 

夏世は茉里亜の頭に生えている耳をずっと見ている。

 

「せ、千寿さん。なにですか?」

 

「いえ。ただ耳が生えているのは珍しいなと」

 

蒼太がそっと茉里亜の頭に手を乗せる。

 

「ガストレア因子の影響なんだよ。カンガルーの耳だ」

 

夏世は右手を口元に当てると、

 

「噂には聞いていましたが、実物を見るのは初めでで...」

 

と、不思議そうに言った。

 

「さてと。ガストレアも片付いたし、沙耶の援助に行こうか」

 

二人の少女は頷くと、蒼太の後を追い、沙耶達のところへ向かった。

 

 

 

司令室にいる一同はモニターに釘付けになる。序列の低い二ペアが高序列の影胤と接触。このままでは絶対に負けてしまう。

 

「近くの民警ペアは何処にいますか」

 

「近くにいる滝沢ペア、イニシエーター千寿夏世が向かっています。しかし、到着には2.30分程かかります」

 

その時、司令室のドアが開き、黒セーラーの美少女、天童木更が入ってきた。

 

「木更」

 

聖天子様の傍にいる木更の祖父であり、聖天子補佐官、天童菊之丞だ。

 

「私がお呼びしました」

 

菊之丞の傍の聖天子が口を開く。流石に聖天子には口が出せず、菊之丞は黙り込む。

 

「天童社長。里見ペア、神代ペアの勝率はいかがでしょうか」

 

「私の期待を加えても良いのならば、

勝ちます。絶対に」

 

木更の言葉に司令室は静まり返る。

 

「自分の社員に勝って欲しいという気持ちがあるのも分かる。しかし、相手は新人類創造計画の生き残りだぞ」

 

「十年前、里見君が天童家に引き取られた頃、私の家に野良ガストレアが迷い込み、私の両親を喰い殺しました。私はその時のストレスで腎臓の機能がほぼ停止しています」

 

辺りはざわめき始める。木更の近くにいた一人が口を開く。

 

「それは不幸な話だが...」

 

「里見君はその時私を庇って、左眼と右手足をガストレアに喰われました」

 

「神代さんは天童家に野良ガストレアが迷い込んだ頃、ガストレアに襲われていた柊千代を庇い、右眼、左手足を喰われました」

 

「彼等が運び込まれたのはセクション22、執刀医は室戸菫」

 

「室戸...菫?まさか、彼等も...?」

 

 

 

「君達はケースを取り返せない。何故なら私達が立ちはだかっているからだッ」

 

月を背景に蛭子影胤は手をおもむろに広げる。

 

「そんなの分かるわけ無い。今まで負けてきたけど、今日は勝つからッ」

 

「延珠〜杏〜会いたかったぁ〜斬り合おう〜」

 

「小比奈さん、絶対に斬られませんッ」

 

「二度の敗北、味方の全滅.....願っても無い状況だクソ野郎ッ」

 

「影胤...貴方を排除するッ」

 

蓮太郎は右手、沙耶は左手を影胤に向かって突き出す。

それと同時に影胤も指を鳴らして、イマジナリー・ギミックを繰り出した。

 

「「天童式戦闘術一の型八番、焰火扇ッ」」

 

影胤に向かって二人は駆け出していく。が、低序列の二人がかなうわけがない。相手は新人類創造計画の生き残り、蛭子影胤。しかもイマジナリー・ギミックで守られている。

 

「「はぁぁぁぁぁッ」」

 

しかし二人はいつもの二人ではなかった。

イマジナリー・ギミックを破った手は、影胤の仮面に当たる。影胤はバランスを崩し、勢いよく後ろへ飛ばされる。

影胤は仮面を押さえている。衝撃を隠せない様子だ。

 

「イマジナリー・ギミックを破った…だと?」

 

蓮太郎の右手脚、沙耶の左手脚の皮膚がなくなり、超バラニウムの義肢に、蓮太郎の左眼、沙耶の右眼が義眼に替わる。

 

「まさか.....君達もッ」

「俺らも名乗るぜ、影胤。

元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊、新人類創造計画、里見蓮太郎ッ」

 

「同じく、元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊、新人類創造計画、神代沙耶」

 

ふと沙耶は菫の言葉を思い出す。

 

『君の命に関わるかもしれないんだぞッ』

 

あの時の室戸先生はやけに焦っていたな、と思う。

 

室戸先生、御免なさい。

 

「私は痛い。私は生きている。素晴らしきかな世界、hallelujah(ハレルーヤ)ッ」

 

影胤は手をおもむろに広げ、小比奈はこちらへ向かってくる。

 

「パパを虐めるなぁ」

小比奈の小太刀を蓮太郎と沙耶の義肢で止め、延珠と杏は影胤に蹴りを入れる。

六人は船の上に移動。

 

「新人類創造計画は殺す為に作られたッ!モノリスが崩壊し、ガストレア戦争が再開されれば、我々の存在意義は証明される。憎しみは消えない。戦争は終わらない。私たちは必要とされるッ!わからないのかい?里見君、神代さん。ガストレア戦争が継続している世界こそが、我々の勝利なんだよ」

 

「ふざけんなッまさかその為だけに七星の遺産を...」

 

「だとしたら何なのだよ。私と小比菜は選ばれた。もちろん君や延珠さん。神代さん、杏さんもだ。他の人間など取るに足りない。さあ、君達ッ私のところへ来いッ」

 

「貴様の語る未来、断じて所用できねぇッ」

 

「室戸先生から貰った私と蓮太郎君の手脚はそんな事の為に作られたんじゃない。誰かを繋ぐ為にある。貴方は間違ってるッ」

 

沙耶はウエストバッグから小刀二本を出し、それぞれ鞘を取る。そして二本の小刀の柄に付いている小さなボタンを押す。すると一瞬にして小太刀に変わった。

 

「神代式双剣術迅雷風烈(じんらいふうれつ)ッ」

 

素早い動きで相手の目を眩ませ、一気に相手へ詰め寄る。その間にも対象の人物———蛭子小比奈に向かって刀を振りかざす。

沙耶に目を取られているうちに杏は二丁拳銃を撃つ。

 

「神代式戦闘術天真爛漫(てんしんらんまん)ッ」

 

自分の思った通りに振りかざしていく。しかし小比奈も負けていない。沙耶の刀を全て受け止めている。

今のうちに蓮太郎と延珠は影胤に攻撃。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ」

 

延珠は影胤に蹴りを入れようとする。しかし影胤はイマジナリー・ギミックで守られている。

 

「あぁッ」

 

延珠の蹴りは跳ね返され、自分の脚へ衝撃が走り、空中へ投げ出される。その隙に影胤は延珠を撃とうとする。いくら彼女がイニシエーターであるとはいえ、バラニウムで攻撃されれば普通の人間と変わらない。

 

「延珠ッ」

 

蓮太郎は駆け出し、延珠を庇い、バラニウムの右腕で銃弾を跳ね返す。

 

「従わないなら、死ねぇッ」

 

手のひらから斥力フィールドを巨大な槍状に変化させる。

 

「エンドレススクリームッ」

 

「グァッ」

 

蓮太郎の腹が空き、大量の血が流れていく。

 

「蓮太郎君ッ」

 

今すぐ蓮太郎の所へ行きたい沙耶と杏だが、小比奈はそんな事、御構い無しに攻撃してくる。

 

「俺は....死ぬ...のか.......?」

 

延珠が蓮太郎の前で涙を流しながら何か言っている。しかし、何を言っているのかは分からない。

延珠と出会ってからの出来事がフラッシュバックする。

 

「......たろぉ」

 

「れんたろぉ」

 

「妾を....妾を一人にしないでくれ」

 

蓮太郎は制服の裏ポケットから菫に渡された注射器———AGV試験薬を取り出す。

 

『AGV試験薬はガストレアウイルスによって生成された。ガストレア並みの再生能力を与えるが20%もの確率でガストレア化させてしまう』

 

『出来れば使うなよ』

 

五本ある試験薬を一気に傷口へとさす。

 

「う......ぐぁッ」

 

蓮太郎の傷口からガストレア化の兆候が。

 

「れ、蓮太郎?」

 

「ぐ、ぐぁぁぁぁッ」

 

蓮太郎の傷口が再生していくが、一瞬、瞳が赤くなるが元に戻る。

 

「蓮太郎君......」

 

「賭けに.....勝ったぞ....」

 

「里見君....君は....ッ」

 

「天童式戦闘術一の型十五番雲嶺毘湖鯉鲋(うねびこりゅう)ッ」

 

下から突き上げるような鋭いアッパーカットを繰り出す。影胤はイマジナリー・ギミックを繰り出す。蓮太郎は右腕の義肢に内蔵されている カートリッジを炸裂させる。

 

「天童式戦闘術一の型三番轆轤鹿伏鬼(ろくろかぶと)ッ」

 

捻りを加え、カードリッチを炸裂した事により威力がました左拳を小比奈の小太刀に向かって繰り出す。小太刀は折れ、小比奈も威力が強すぎて壁に思いっきり当たり、戦闘不能になる。

 

「天童式戦闘術二の型十一番隠禅・哭汀・全弾撃発(アンリミテツド・バースト)ッ」

 

蓮太郎は空中に飛び上がってオーバーヘッドキックのような蹴りを繰り出す。カードリッチを炸裂させた右脚が影胤の仮面へと当たる。

 

「私は.....負けたのか......?」

 

影胤の身体は空へと舞い、そのまま海底へ沈んでいった。

 

「パパぁ。いやよ。いやよ、パパぁ」

 

正気に戻った小比奈は海に身を乗り出し、手を伸ばしている。

 

「小比奈ちゃんは、もう、敵じゃない」

 

その時、蓮太郎のスマートフォンがなる。

 

「もしもし....あッ、木更さん」

 

『見たわよ、里見君。でもね、伝えないといけないことがあるの』

 

「えッ?」

 

『ステージVガストレア、ゾディアックが、姿を現したわ』




お久しぶりです‼︎クルミです。「赤い瞳と黒の剣」を見て頂き、ありがとうございます^ ^
第六話から一ヶ月以上経っての更新です。お待ちしていた方、本当に申し訳ありません。
さて、第七話は蛭子影胤、小比奈ペアvs里見蓮太郎、藍原延珠ペア&神代沙耶、藍原杏ペアの決戦です。又、蒼太、茉里亜、夏世による、ガストレアの駆除もありましたね。私はアニメの此処の蓮太郎のシーンが特に好きです♡格好良いですよね〜
次回は迫り来るゾディアックから東京エリアを守ります‼︎あそこの延珠ちゃんも好きです。ラノベやアニメよりも少しばかり人が増えた状態で、どのように話が進んでいくのか、楽しみにしてて下さい‼︎
それでは、ご閲覧いただいた方、是非是非、感想を宜しくお願い致します。些細な気づきでも構いませんし、この文章や表現は分かりにくいなどのご意見でも構いません。では、また第八話でお会いしましょう‼︎(更新、頑張ります)

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