「ブラックブレット」 赤い瞳と黒の剣   作:花奏

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第八話 神を目指した者たち

蒼太は自分のイニシエーター、茉里亜と伊熊将監のイニシエーター、夏世と影胤と蓮太郎達の闘いの援助をしに街まで出ていた。

夏世は闘いよりも自分のプロモーター、将監の安否の方が気になっていた。

少し進むと見慣れた大剣が地面に刺さっていた。

違う。大切な人———伊熊将監の身体に突き刺さっていた。

 

「将監さんッ」

 

夏世は直ぐに彼の元へ駆け寄る。蒼太達もついて行く。

 

「しょ、しょ.......将監.....さ.....ん.......」

 

夏世は膝から崩れ落ちた。目を手で押さえる。押さえても、押さえても涙は溢れ続けた。

 

「夏世......」

 

蒼太は自分の大切な人を失くすことの哀しさ、寂しさ、辛さを知っていた。

 

『お、おにいちゃぁんッ』

 

思い出したくないことが脳内にフラッシュバックする。

茉里亜は辛そうな夏世を見て、蒼太のブレザーの裾を掴む。

 

「里見さんの嘘つき.....任せろって言ったじゃないですか......」

 

蒼太は夏世を自分の方へ向かせ抱きつく。

 

「蓮太郎君のことを責めれば伊熊将監は生き返るの?違うよね。

蓮太郎君は今、影胤と闘っている。それなら、彼等に託すんだ。夏世が嘆いても、何をしても自分の辛さは無くなる訳じゃない」

 

「それなら、私は何をすれば良いんですかッ」

 

「僕たちにできるのは———ガストレアをこの地球上から消すことだ。彼が死んだ事はなかったんだ。今は蓮太郎君達を信じるんだ」

 

「........はい」

 

蒼太は立ち上がり、夏世を立たせる。

 

「さてと、今は夏世の方が大切だ。きっと勝ってくれる。僕達はちょっと向こうに行って休もう」

 

「蒼太、そんなことして、良いんですか?」

 

「さあね。ま、良いんじゃない?」

 

蒼太達三人は歩き始めた。

 

「何処か休めるところはないかなぁ〜」

 

「滝沢さんって良い人だと思ったんですが....今のでその気持ちは無くなりました。残念です」

 

「蒼太は不真面目です。いつもです」

 

「僕は不真面目......じゃないッ」

 

 

 

「そんな........もう、終わりなのか?」

 

蓮太郎の声を聞いた沙耶達も心配になる。

 

『いいえ、まだ終わってないわ。その答えは———天の梯子』

 

「木更さんッ?いいのか?」

 

『ええ。もう聖天子様には伝えたわ。滝沢蒼太、流星茉里亜、千寿夏世も向かっているわ。

でも里見君達も行って』

 

そこで木更からの電話は切れた。

沙耶達は不安そうに蓮太郎の近くに歩み寄る。

 

「蓮太郎......妾達はどうなるのだ?」

 

「天の梯子を使うそうだ」

 

「天の梯子?」

 

杏は首を傾げる。沙耶が説明する。

 

「天の梯子———ガストレアの脅威に対抗すべく作られた超巨大兵器。ガストレア大戦末期に完成を見たが、ガストレアの侵攻により施設か らの撤退を余儀なくされ、試運転すら行われることなく終戦を迎えた。1.5キロもの全長を誇る線形超電磁投射装置——レールガンモジュールで、直径800ミリ以下の金属飛翔体を亜光速まで加速して撃ち出すことが可能。バラニウム徹甲弾を飛翔体とすることで、『ゾディアック』ガストレアに対する有力な対抗手段となる」

 

 

 

「蒼太。私達は何をすれば良いんです?」

 

茉里亜は心配そうに蒼太を見上げる。それと同時に、夏世も見上げる。

先程、休んでいた三人に聖天子から連絡を貰ったのだ。

 

「滝沢さん。ゾディアックは姿を現したと聞いています。だとすれば、私達の出る幕はありません。何も——出来ません」

 

まだ将監の死を引きずっているのだろう。表情が暗い。

 

「蓮太郎君が天の梯子で倒すんだって。僕達はその邪魔をするガストレアの駆除をするんだ」

 

「滝沢さん、まさかその為に....?」

 

夏世は蒼太の方を見る。

 

「ん?そうだね。なんとなくその気はしてたからね」

 

「それでは、Let's go です‼︎」

 

 

 

沙耶達四人は天の梯子に着いた。

 

「沙耶、此処が......」

 

杏は天の梯子を見上げる。

 

「うん。天の梯子だね」

 

沙耶も同じように見上げる。

 

「私達で出来るのかなぁ」

 

杏はとても心配している様子だ。

そこへ延珠が杏の手を握って、

 

「杏、妾達には誰がついてると思っておるのだ?

妾達には、蓮太郎という、お方がいるではないか?」

 

「撃つのは木更さんがやるみたいだから、俺たちは何もしねぇよ」

 

沙耶達は天の梯子の内部へと足を運ばせた。

 

 

 

『里見君。大丈夫、問題はないわ。此方から撃つことが出来る』

 

木更からの連絡を受け、安心する四人。

天の梯子は起動を始めていく。

 

『まずいわ、里見君。チャンバー部に異常を伝える表示が出てるわ』

 

「どういう事だよッ」

 

「異常.......もしかしたらバラニウム徹甲弾が装填されてないのかも」

 

「嘘.....」

 

「蓮太郎君。行ってみ.....うッ」

 

沙耶が蓮太郎にもたれ掛かる。

 

「沙耶....?」

 

沙耶は脳裏で菫が言っていたことを思い出す。

 

『君の命に関わるかもしれないんだぞッ』

「体内侵食率が、上がったかもしれない。でも、蓮太郎君?私のことはいいから、早く行こう」

 

「ああ」

 

沙耶は蓮太郎に肩を借りながら進んで行った。

 

 

 

「くそッ弾がないッ」

 

「どうする、蓮太郎?」

 

『里見君。遠隔操作を受け付けないの』

 

「磁場の影響....」

 

『里見君......沙耶ちゃん』

 

「超バラニウムなら....いいんだよね?」

 

沙耶は自分の左腕の本来なら上腕二頭筋がある辺りを探る。

しかしその手を蓮太郎が止めた。

 

「駄目だ。沙耶の状態は悪い。バラニウムの義手を付け替えたら沙耶の状態は悪化する」

 

「でもッ」

 

「大丈夫なのだ、沙耶ッ蓮太郎が成し遂げてくれる」

 

「延珠ちゃん.....」

 

「お姉ちゃんの言う通り。沙耶は自分の方を大切にして?」

 

「杏....」

 

「沙耶は死なせねぇ。お前はやる事はまだ沢山あるんだ」

 

「やる事?」

 

「俺が撃つ。沙耶は指示を出してくれ」

 

「.......え?」

 

「この状態だったら撃つ事は出来ない。...........やってくれるか?」

 

「うん」

 

蓮太郎が自分の上腕二頭筋がある辺りを探り、義手を自分から外す。

 

「ぐあッ」

 

いくら義手で有ろうとも自身の一部。流石に痛い。

 

適合検査にかける。

 

「蓮太郎さん、適合です」

 

『艦船室から以外は受け付けませんッ』

 

『聞いた?里見君』

 

蓮太郎達は艦船室へ移動する。

 

『お願い。君がやって』

 

「蓮太郎さん....」

 

『おね...........みくん......世界.......救って....』

 

そこで通話が切れた。

 

「木更さんッ?おいッ木更さんッ」

 

延珠達が心配そうに蓮太郎を見つめる。

 

「蓮太郎......」

 

蓮太郎は操縦席に座る。

すると左手が固定された。

 

「利き手ではない手に極度の緊張.....

コンディションは最悪です....」

 

杏は心配そうだ。

沙耶は全神経を脳に集中させる。

 

「距離50キロ。 あっちは動いてる。つまり相手の動きを予測していけば.....」

 

スコーピオンは動き続けたままで、一向に止まる気がしない。

 

「無理だッ。俺には....俺には出来ないッ」

 

延珠が蓮太郎に歩み寄る。

 

「蓮太郎には出来る」

 

「もしも外したら大惨事になる.....」

 

延珠の手が蓮太郎の左手にのる。

 

「蓮太郎が世界を救える。

他の誰でもない。蓮太郎が」

 

杏の手も蓮太郎の腕に置かれる。

 

「蓮太郎さんなら、必ず出来ます」

 

沙耶は蓮太郎の肩にのせる。

 

「蓮太郎君。行くよ。

私が“今”って言った直後に撃って」

 

「ああ」

 

蓮太郎はそれぞれの顔を見る。

 

「俺は延珠を.....杏を、沙耶を失いたくない」

 

延珠がほっぺを膨らませる。

 

「むぅ〜 一つはっきりしようじゃないか。

ふぃあんせの妾はlove で、杏と沙耶はlike だよな?」

 

三人は微笑む。

 

「ばぁーか。10歳のガキが愛を語るんじゃねえよ」

 

「延珠ちゃんらしいね」

 

「ほんとです。お姉ちゃんらしくてほっとします」

 

もう一度それぞれの顔を見る。

 

「ありがとう。みんな」

 

沙耶はモニターのスコーピオンを見る。

 

この角度....この動き.....

 

「今ッ」

 

四人が引き金に手をかける。

 

「「「「行っけ—————」」」」

 

蓮太郎の義手、超バラニウムはスコーピオンに向かって物凄い勢いで一直線にレールガンモジュールから放たれる。

 

辺り一面が真っ白の光に覆われる。

 

威力も強く、その反動は大きい。

 

「うわッ」

 

眩しいが四人は弾の先———スコーピオンを見る。

 

超バラニウム弾は、スコーピオンに命中。

 

 

 

ステージVガストレア、“天蠍宮”(スコーピオン)は里見蓮太郎、藍原延珠ペアと神代沙耶、藍原杏ペアによって撃破された。




こんにちは。いや、こんばんは。ん?おはようございます。(笑)
お久しぶりです。クルミです。前回よりも少し早い更新だった気がします。
蛭子影胤vs天童民間警備会社、終わりました‼︎
スコーピオンまで撃破してもらい、上機嫌です^ ^
次回は第一章『神を目指した者』の最終話です。
それでは、今後ともご愛読、お願いします。
御意見、感想など待っています。
少しでも良いので是非是非お願いします。

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