蒼太は自分のイニシエーター、茉里亜と伊熊将監のイニシエーター、夏世と影胤と蓮太郎達の闘いの援助をしに街まで出ていた。
夏世は闘いよりも自分のプロモーター、将監の安否の方が気になっていた。
少し進むと見慣れた大剣が地面に刺さっていた。
違う。大切な人———伊熊将監の身体に突き刺さっていた。
「将監さんッ」
夏世は直ぐに彼の元へ駆け寄る。蒼太達もついて行く。
「しょ、しょ.......将監.....さ.....ん.......」
夏世は膝から崩れ落ちた。目を手で押さえる。押さえても、押さえても涙は溢れ続けた。
「夏世......」
蒼太は自分の大切な人を失くすことの哀しさ、寂しさ、辛さを知っていた。
『お、おにいちゃぁんッ』
思い出したくないことが脳内にフラッシュバックする。
茉里亜は辛そうな夏世を見て、蒼太のブレザーの裾を掴む。
「里見さんの嘘つき.....任せろって言ったじゃないですか......」
蒼太は夏世を自分の方へ向かせ抱きつく。
「蓮太郎君のことを責めれば伊熊将監は生き返るの?違うよね。
蓮太郎君は今、影胤と闘っている。それなら、彼等に託すんだ。夏世が嘆いても、何をしても自分の辛さは無くなる訳じゃない」
「それなら、私は何をすれば良いんですかッ」
「僕たちにできるのは———ガストレアをこの地球上から消すことだ。彼が死んだ事はなかったんだ。今は蓮太郎君達を信じるんだ」
「........はい」
蒼太は立ち上がり、夏世を立たせる。
「さてと、今は夏世の方が大切だ。きっと勝ってくれる。僕達はちょっと向こうに行って休もう」
「蒼太、そんなことして、良いんですか?」
「さあね。ま、良いんじゃない?」
蒼太達三人は歩き始めた。
「何処か休めるところはないかなぁ〜」
「滝沢さんって良い人だと思ったんですが....今のでその気持ちは無くなりました。残念です」
「蒼太は不真面目です。いつもです」
「僕は不真面目......じゃないッ」
「そんな........もう、終わりなのか?」
蓮太郎の声を聞いた沙耶達も心配になる。
『いいえ、まだ終わってないわ。その答えは———天の梯子』
「木更さんッ?いいのか?」
『ええ。もう聖天子様には伝えたわ。滝沢蒼太、流星茉里亜、千寿夏世も向かっているわ。
でも里見君達も行って』
そこで木更からの電話は切れた。
沙耶達は不安そうに蓮太郎の近くに歩み寄る。
「蓮太郎......妾達はどうなるのだ?」
「天の梯子を使うそうだ」
「天の梯子?」
杏は首を傾げる。沙耶が説明する。
「天の梯子———ガストレアの脅威に対抗すべく作られた超巨大兵器。ガストレア大戦末期に完成を見たが、ガストレアの侵攻により施設か らの撤退を余儀なくされ、試運転すら行われることなく終戦を迎えた。1.5キロもの全長を誇る線形超電磁投射装置——レールガンモジュールで、直径800ミリ以下の金属飛翔体を亜光速まで加速して撃ち出すことが可能。バラニウム徹甲弾を飛翔体とすることで、『ゾディアック』ガストレアに対する有力な対抗手段となる」
「蒼太。私達は何をすれば良いんです?」
茉里亜は心配そうに蒼太を見上げる。それと同時に、夏世も見上げる。
先程、休んでいた三人に聖天子から連絡を貰ったのだ。
「滝沢さん。ゾディアックは姿を現したと聞いています。だとすれば、私達の出る幕はありません。何も——出来ません」
まだ将監の死を引きずっているのだろう。表情が暗い。
「蓮太郎君が天の梯子で倒すんだって。僕達はその邪魔をするガストレアの駆除をするんだ」
「滝沢さん、まさかその為に....?」
夏世は蒼太の方を見る。
「ん?そうだね。なんとなくその気はしてたからね」
「それでは、Let's go です‼︎」
沙耶達四人は天の梯子に着いた。
「沙耶、此処が......」
杏は天の梯子を見上げる。
「うん。天の梯子だね」
沙耶も同じように見上げる。
「私達で出来るのかなぁ」
杏はとても心配している様子だ。
そこへ延珠が杏の手を握って、
「杏、妾達には誰がついてると思っておるのだ?
妾達には、蓮太郎という、お方がいるではないか?」
「撃つのは木更さんがやるみたいだから、俺たちは何もしねぇよ」
沙耶達は天の梯子の内部へと足を運ばせた。
『里見君。大丈夫、問題はないわ。此方から撃つことが出来る』
木更からの連絡を受け、安心する四人。
天の梯子は起動を始めていく。
『まずいわ、里見君。チャンバー部に異常を伝える表示が出てるわ』
「どういう事だよッ」
「異常.......もしかしたらバラニウム徹甲弾が装填されてないのかも」
「嘘.....」
「蓮太郎君。行ってみ.....うッ」
沙耶が蓮太郎にもたれ掛かる。
「沙耶....?」
沙耶は脳裏で菫が言っていたことを思い出す。
『君の命に関わるかもしれないんだぞッ』
「体内侵食率が、上がったかもしれない。でも、蓮太郎君?私のことはいいから、早く行こう」
「ああ」
沙耶は蓮太郎に肩を借りながら進んで行った。
「くそッ弾がないッ」
「どうする、蓮太郎?」
『里見君。遠隔操作を受け付けないの』
「磁場の影響....」
『里見君......沙耶ちゃん』
「超バラニウムなら....いいんだよね?」
沙耶は自分の左腕の本来なら上腕二頭筋がある辺りを探る。
しかしその手を蓮太郎が止めた。
「駄目だ。沙耶の状態は悪い。バラニウムの義手を付け替えたら沙耶の状態は悪化する」
「でもッ」
「大丈夫なのだ、沙耶ッ蓮太郎が成し遂げてくれる」
「延珠ちゃん.....」
「お姉ちゃんの言う通り。沙耶は自分の方を大切にして?」
「杏....」
「沙耶は死なせねぇ。お前はやる事はまだ沢山あるんだ」
「やる事?」
「俺が撃つ。沙耶は指示を出してくれ」
「.......え?」
「この状態だったら撃つ事は出来ない。...........やってくれるか?」
「うん」
蓮太郎が自分の上腕二頭筋がある辺りを探り、義手を自分から外す。
「ぐあッ」
いくら義手で有ろうとも自身の一部。流石に痛い。
適合検査にかける。
「蓮太郎さん、適合です」
『艦船室から以外は受け付けませんッ』
『聞いた?里見君』
蓮太郎達は艦船室へ移動する。
『お願い。君がやって』
「蓮太郎さん....」
『おね...........みくん......世界.......救って....』
そこで通話が切れた。
「木更さんッ?おいッ木更さんッ」
延珠達が心配そうに蓮太郎を見つめる。
「蓮太郎......」
蓮太郎は操縦席に座る。
すると左手が固定された。
「利き手ではない手に極度の緊張.....
コンディションは最悪です....」
杏は心配そうだ。
沙耶は全神経を脳に集中させる。
「距離50キロ。 あっちは動いてる。つまり相手の動きを予測していけば.....」
スコーピオンは動き続けたままで、一向に止まる気がしない。
「無理だッ。俺には....俺には出来ないッ」
延珠が蓮太郎に歩み寄る。
「蓮太郎には出来る」
「もしも外したら大惨事になる.....」
延珠の手が蓮太郎の左手にのる。
「蓮太郎が世界を救える。
他の誰でもない。蓮太郎が」
杏の手も蓮太郎の腕に置かれる。
「蓮太郎さんなら、必ず出来ます」
沙耶は蓮太郎の肩にのせる。
「蓮太郎君。行くよ。
私が“今”って言った直後に撃って」
「ああ」
蓮太郎はそれぞれの顔を見る。
「俺は延珠を.....杏を、沙耶を失いたくない」
延珠がほっぺを膨らませる。
「むぅ〜 一つはっきりしようじゃないか。
ふぃあんせの妾はlove で、杏と沙耶はlike だよな?」
三人は微笑む。
「ばぁーか。10歳のガキが愛を語るんじゃねえよ」
「延珠ちゃんらしいね」
「ほんとです。お姉ちゃんらしくてほっとします」
もう一度それぞれの顔を見る。
「ありがとう。みんな」
沙耶はモニターのスコーピオンを見る。
この角度....この動き.....
「今ッ」
四人が引き金に手をかける。
「「「「行っけ—————」」」」
蓮太郎の義手、超バラニウムはスコーピオンに向かって物凄い勢いで一直線にレールガンモジュールから放たれる。
辺り一面が真っ白の光に覆われる。
威力も強く、その反動は大きい。
「うわッ」
眩しいが四人は弾の先———スコーピオンを見る。
超バラニウム弾は、スコーピオンに命中。
ステージVガストレア、
こんにちは。いや、こんばんは。ん?おはようございます。(笑)
お久しぶりです。クルミです。前回よりも少し早い更新だった気がします。
蛭子影胤vs天童民間警備会社、終わりました‼︎
スコーピオンまで撃破してもらい、上機嫌です^ ^
次回は第一章『神を目指した者』の最終話です。
それでは、今後ともご愛読、お願いします。
御意見、感想など待っています。
少しでも良いので是非是非お願いします。