??? side
夢を見た。しかし夢の内容は忘れてしまった。
楽しくあって、切なくて、とても懐かしい夢だったと思う。なぜなら俺は今、凄く気分が良いんだ。
だけど本当に俺は夢を見ていたのかと疑ってしまう。なぜなら、その見たはずの夢の中身を、憶えてないからだ。綺麗サッパリ、何も覚えてはいない。
しかし、気分が良いのは確かだ。今日から良い事があるかもしれないと、根拠はないがそう思えてしまう。
一眠りする前は海と空の青に染まっていた窓に切り取られていた景色が、今は空の青と山の緑が混じり合った景色が広がっていた。
もうそろそろ着くのか。夢を諦めた俺の新天地であり、出生地である磐城市に近づいてきた。
だが飛行機を降りたとしても、地元のバスや電車に乗り継ぎ、今日の目的地である磐城市の中心街にある『たんぽぽ荘』まで2時間余りかかる。しかし土地勘のない俺がたんぽぽ荘に着くまで、最高1時間プラスが妥当だろう。
まだまだ時間がある。俺は忘れてしまった夢を再び見ようと、もう一度視界を暗闇に染めた。
Free side
「貴方の夢は何?」
一人の少女が問う。
「貴方が求めている夢は何?」
日本人形のような美しく艶やかな黒髪を腰まで伸ばした少女が問う。
「貴方の失った夢は何?」
美しく肌理細やかな白い肌の少女は問う。巨大な鏡に映る、黒の学ランを着た高校生くらいの男性に。
「夢があるのなら聞きましょう。夢があるのなら言いましょう。夢があるのなら願いましょう。
貴方のその夢を叶えることが出来ないのなら、
代わりに、貴方のその夢を、私が叶えましょう」
幼きながらも美しい少女は宣言する。夢を叶えたいと願う男性の、非現実で到底実現不可能な夢を叶えると。
男性はそれを願った。いや、願ってしまった。誰と契約をするのか知らずに。
「怖がるな。恐れるな。慄くな。これは貴方の分身、もう一人の貴方、貴方の影、そして、貴方自身である『ペルソナ』です」
鏡に映っていたはずの男性の姿が、大きな影となって存在していた。まるで、物語に出てくる悪魔のような影が。
「さあ。始めましょう。貴方は夢の為に、どこまで自分を捨てられる?」
アリスは無邪気な笑みを浮かべる。
そして、始まった。いや、始まってしまった。
この世の全てが逆転する。
そして、叶うはずが無い男性の夢が、叶う瞬間だった。
「人の夢は儚い。しかし、儚いからこその人の夢。だから私は叶えよう。貴方達の夢を。
そして、叶ってください。私の夢よ……」