女好きボーダー隊員   作:ベリアル

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第11話

『ってな感じでよろしく。奈良坂』

 

『了解。だが、上手くいくのか?』

 

『四の五言っても始まんねえよ。若村んとこも生駒さんと那須ちゃん相手に余裕あるわけじゃねえ。生駒さんほどじゃないにせよ、俺にも技ってもんがあんだ。ちゃちゃっと、決めんぞ』

 

九条から出された案は、なるほどと思いながら、中々に強力な戦術だった。同じことが出来るのは、ボーダー全体を見てもいないだろう。

 

(ここまで攻撃的にサイドエフェクトを使うとはな)

 

ボーダーには、九条のようなサイドエフェクトをもった隊員がおり、いずれも個人、部隊に大きな恩恵を与えている。連携、成長、防御力。各々の能力を駆使して、高い実力に位置する。

 

今回の戦いは、九条を成長させるには十分だった。

 

A級に匹敵するような戦術をだ。

 

一方で、相対する緑川は緑川で九条を攻めあぐねていた。

 

(ほんっとに硬いなあ)

 

緑川は持ち前の速さと背の小ささを活かして、九条を攻めているが、かすりはしても決定打にはならない。

 

グラスホッパーを利用し、跳び跳ねて多角的な攻撃をしてもシールドかスコーピオンで防がれてしまう。

 

現在、九条のスコーピオンの形状はシラットナイフと呼ばれるナイフを模している。実物よりは多少長めだが、一般的に使われるスコーピオンのスタンダードタイプよりも遥かに短い。

 

(九条先輩のスコーピオンにはいくつかパターンがある。攻撃よりかは防御に重きを置いている九条先輩のスタイルの一つだ)

 

スコーピオンはどこからでも好きな形状を出せる利点がある。

 

緑川は九条と対戦した記憶から、このパターンの厄介ぶりを身に染みている。

 

緑川のような小さく素早い敵に作られた戦法だ。

 

獲物を短くすることによって受けやすくし、攻撃を通らせない。イラついてより近づけば、シラットナイフの餌食になる。あくまで防御よりなだけで、攻撃が出来ないわけではない。

 

攻撃してはカウンターを受ける。このパターンで10本勝負、10本負けた苦い過去がある。

 

「どうしたよ、軽いぜ?」

 

緑川を煽る九条。これも攻めさせるパターンに込められているので、下手に攻めるわけにはいかない。

 

ゆったりと歩いて、面積のある瓦礫の上に立つ。

 

このパターンの対策として、緑川に出来るのはヒット&アウェイ。ダメージは軽いが、やらないよりかはマシだ。

 

我慢比べという、この方法を用いても、九条と緑川の戦績は似たり寄ったりだ。

 

「そんな安い挑発には乗らないよ。攻撃を当ててるのはこっちなんだ」

 

緑川は足を止めて、九条に返す。

 

緑川の言うとおり、九条に攻撃を当ててるのは緑川だ。反対に九条の攻撃は緑川に当たっていない。

 

地形の差だ。二人の足場は生駒の旋空弧月の影響で、建物だった瓦礫の上で戦っている。まともな足場でない以上、グラスホッパーのように縦横無尽に移動出来るのは緑川の方が有利だ。

 

「そろそろ、生駒さんの助けに行かなくっちゃね」

 

ニヤリと、笑う緑川は再び動き出そうとしたとき、九条もまた笑ったのだ。

 

緑川が攻めた瞬間、九条のシラットナイフの状態からスタンダードタイプに変化したスコーピオンを目にすると、自身のスコーピオンを交差させて、顔面への攻撃を防ぐ。

 

スコーピオンを持つ左手と左足を同時に出した突きは、緑川を反対側へ吹き飛ばす。

 

緑川は飛びこそはしたものの、スコーピオンに亀裂が入ったわけでもなく、ダメージが通ったわけでもない。

 

が、どういうわけか九条は2つのスコーピオンを消し去り、突撃銃を太刀川と風間が戦っている方角へ向けていた。

 

どういう意図かは分からないが、攻撃しなくてはならない状況なのは、頭がそんなによくない緑川でもわかることだ。

 

頭が良くても、結果は変わりないが。

 

「え?」

 

吹き飛んでいる最中に、グラスホッパーを出現させた瞬間、視界の端の壁が突如壊れ、一筋の光が緑川を貫く。

 

緑川が最後に見たのは、九条が突撃銃の引き金を引いた所だった。

 

嵐山隊(仮)嵐山、若村、九条、奈良坂

風間隊員(仮)風間、那須

太刀川達(仮)太刀川、生駒、当真

 

残りのメンバーは上記のようになる。

 

勝負はクライマックスにかかっている。

 

嵐山はテレポーターを使い、太刀川と風間の頭上に出現した。

 

瞬間移動のトリガーでトップアタッカーの戦いに介入する。嵐山、九条の2方向からの銃撃が飛ぶ。

 

2名は素早く回避して、太刀川は嵐山を、風間は九条を。

 

「チッ、こっちか」

 

風間の後方から若村のアステロイドが飛んでくる。が、若村の攻撃は那須のシールドによって防がれ、近くにいた生駒に首をはねられてしまう。

 

そこから更に、生駒の後方から壁を突き破って、光が生駒を貫く。

 

これによって、太刀川隊は実質太刀川1人。

 

「お前の仕業か」

 

「さあて、なんのことやら」

 

九条と風間がぶつかり合うも、風間の方が遥かに強い。

 

そこから嵐山のベイルアウトが宣言される。

 

「腹立たしいが、お前達の勝ちだ」

 

「どうも」

 

九条のベイルアウトが決まった。

 

 

太刀川隊(仮) 3p 若村 嵐山 那須

風間隊(仮) 2p 九条 太刀川

嵐山隊(仮) 4p 木虎 隠岐 緑川 生駒

 

九条を討った後、風間は那須と連携して太刀川を倒したものの、その過程で那須を当真に500m先から狙撃されてしまう。

 

結果、生き残った各部隊1人ずつ戦うことなく、タイムアップという決着になった。

 

『試合終了!時間切れにより、生存得点はありません。』

 

『マジか!?九条んとこ勝ちやがった!』

 

『ありえねえ!』

 

『正直勝つとは思いませんでした』

 

『3人とも酷いですよ。さて、混成チーム戦はどうだっでしょうか?』

 

『今度から九条のことは銃バカと呼びます』

 

『槍バカ、無理して喋らなくていいんだぞ。これはともかく、最初に戦闘不能になった木虎。これは運が悪かったとしか言えないな』

 

『突撃銃にギムレットをセットしたのは、予測出来るものじゃありません。トリオン量に余裕があること、二つ目の弾をセット出来ないデメリットがあるので、誰でもやれるわけではありませんからね。これは出水の案か?』

 

『弾トリガーの練習に付き合っている内に、九条がこれやってみたいって言い出したってだけです。最近硬くなったシールドを簡単に撃ち破れるのは大きいですね』

 

『シールドの破壊。もし、防ぐとしたらエスクードか固定したシールド、レイガストしかありませんね。しかし、エスクードやレイガストを使う人は少ないですし、固定シールドは動けなくなるリスクがある』

 

東が分かりやすく、解説してるところに米屋は口を挟む。

 

『だったら、銃バカが出る試合はエスクード装備すれば良くないですか?』

 

『あいつが毎度毎度同じトリガーセットすることが前提ならな。裏をかいてバイパーだったら、どうするよ』

 

『あー』

 

出水は米屋の質問をあっさりと否定する。

 

トリガーのセットは慣れると基本的には、代えたりしないので米屋の思い込みは、無理はなかったりする。

 

『フルガードしたとしても、仲間がいれば多角的な攻撃がしやすくなる。連携を考えた戦い方だな。今後のことを考えるなら、嫌な印象をすり付けた点もある』

 

『確かに合成弾には驚かされました。しかし、奈良坂隊員の2連続壁抜きはどういうことでしょうか?やはりスナイパートップクラスがなせる技術なんですか?』

 

緑川。生駒。両名を戦闘不能に陥れたのは、奈良坂 透。

 

『アイビスを使用したスナイパーの技。通称、壁抜き。複数の隊員とオペレーターの技術。マップ選択をしたチーム。あらゆる条件が成立しなくてはならないはずですが』

 

『いや、無理ですね。特に緑川や生駒のように動き回るアタッカーには』

 

『え、東さん?』

 

武富は戸惑い、東の様子を見る。何故、壁抜きを実行出来たのかを、聞いたつもりだった武富をおいて、東は察しているかのように、解説を続ける。

 

『ここまでにしておきます』

 

『『『ええ~!!』』』

 

米屋、出水、武富は声を揃える。

 

東がこれ以上言わないのは、フェアではないと思ったからだ。解説者だが、一から十までするわけにはいかない。

 

各々で探し出すことこそが重要だ。それよりなにより、これを見ていたスナイパーは奈良坂のタネが分かったのだ。

 

『スナイパーなら誰でも気付きますから。結果を見れば、九条が終始、試合を動かしていた印象が残ります。遠中近、3つの射程を持つ九条を倒すのは至難でしょう。はっきり言いますが、総合力はボーダーでもトップクラスですね』

 

元A級1位であり、現在でも上層部、隊員から信頼の厚い東の言葉は称賛だった。

 

それを聞いた九条はといえば、

 

「あーうん。あざす」

 

口に手を当て、普通に照れていた。

 

「実際、仮とはいえ太刀川さんと風間さんに勝ったんだよな。すげえよ、九条」

 

「やめろお!」

 

顔を赤くして、若村の肩を掴んで揺さぶる。誉められる行為に慣れていないからか、必要以上に迫る。

 

「奈良坂も凄かったぞ」

 

「九条のおかげですが」

 

奈良坂の壁抜きのタネは、難しいものではない。

 

武富の言ったように、通常の壁抜きであれば難易度は遥かに高いものだ。

 

しかし、九条のサイドエフェクトを使えば、難易度は下がる。

 

九条が奈良坂に指示したのは、狙撃銃の向きと撃つタイミング。それだけだ。

 

奈良坂は九条の言葉に従い、引き金を引いた。ただし、緑川の時は何度も修正しては撃つタイミングを逃していた。

 

最終的には、軽い挑発で足を止めさせる。

 

生駒の時は、若村を犠牲にした。九条の指示はもちろん、オペレーターとの連携が含められていた。難易度が下がっても、簡単とはいかない。

 

それを差し引いても、アタッカー上位を2名落とせたのは大きい。障害物をものともしない戦術は、九条自身だけでなく、スナイパーにも恩恵が与えられる。

 

「太刀川さん達に勝って、東さんに褒められてすっげえ嬉しいわ。弱点にも気付けたで最高だわ」

 

試合が終わっても細井に告白しない辺り、本当に高揚しているのだろう。

 

「弱点って、なんかあったか?」

 

若村は九条の引っかかる一言に眉をひそめた。

 

「ああ、隠岐の攻撃だよ」

 

隠岐孝二は緑川の攻撃から那須を守るため、狙撃したが失敗に終わった。九条は九条で隙を見逃さず、障害物をものともしないで、壁抜きで隠岐をベイルアウトさせた。

 

「今回はなんとかなったけど、リスクリターンを天秤にかけて、撃つという選択も可能なわけだ」

 

「もち、美味しくいただくけどな」

 

若村の疑問には奈良坂が答える。スナイパーとして、今回の経験は奈良坂の成長も促す。

 

若村は若村で、九条を香取隊に引き入れたいと願うのだが、口にするだけ無駄だと知っていた。

 

九条と香取の仲が険悪なのは、香取隊全員承知している。それこそ、いつもいがみ合っている若村以上にだ。

 

九条が活躍すればするほど、香取の機嫌を損ねるので、人間的相性の悪さに諦めざるをえなかった。

 

ただし、香取以外の面子とは仲がいいので悪しからず。

 

流れ解散した後は、鼻息を荒くした荒船から逃げまわっていた。それが終わると、嵐山家にいつぞやのお礼にお呼ばれして、晩御飯をいただいて、その日は終わる。

 

なお、弟妹には滅茶苦茶なつかれた。

 

(女の子にはモテないのに)

 

九条は涙をこらえた。でも、犬がいたので癒されてから帰った。

 

 





あけましておめでとうございます。





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