女好きボーダー隊員   作:ベリアル

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第13話

絶句。

 

玉狛に所属する全員が目の前の結果に目と口を開かせていた。

 

しかし、言葉を発せなかった。モニターに映る勝者は、両手の拳銃をクルクルと指で回していた。

 

支部長の林藤は煙草に火をつけようとしたところで止まっている。ポーカーフェイスが売りの木崎と烏丸の師弟も、信じられないような様子だった。

 

あり得ないことだった。

 

起きてはいけないことだった。

 

玉狛支部のエンジニア、ミカエル・クローニンは、手を口に置いていた。

 

「嘘でしょ」

 

小南桐絵が一言目を発して、全員が我に帰った。

 

「サイドエフェクトとトリガーの相性がかみ合えばこれほど強力なんすね」

 

「強力、では済ませられないな。戦う相性もあったと言えど、結果が結果だ」

 

木崎と烏丸は、冷静を装うが内心動揺しっぱなしだった。

 

「彼の要望通り作ったとはいえ、ここまで使いこなすとは」

 

「嘘でしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!??」

 

小南はソファーから立ち上がって絶叫する。

 

「嘘よ嘘よ嘘よ絶ぇっ対嘘ぉおおお!」

 

「ちょっと小南落ち着いて。信じられないかもだけど」

 

「落ち着けるわけないでしょ!あたしだって勝てなかったのに、あんな奴があんな奴があああああ!」

 

「小南先輩よく気づきましたね」

 

「え?」

 

「実はこれ演技なんです」

 

「え、そうなの!?」

 

「すいません。嘘です。正真正銘あの人負けました」

 

「騙されたあああああああ!」

 

トリガーには技術者が作ったノーマルトリガーとは別に、ブラックトリガーと呼ばれる代物がある。

 

ブラックトリガーは極めて強力で特殊なトリガーだ。

 

人間の命と引き換えに産み出されたブラックトリガーは、兵器と言っても過言ではない。現在のボーダーでも、数は少なく、内一本は玉狛支部の迅が所有者となっている。

 

S級隊員迅 悠一。未来視のサイドエフェクト。

 

ブラックトリガー“風刃”

 

迅以上に迅の持つブラックトリガー風刃を使いこなせる隊員は後にも先にもいない。

 

事実、ブラックトリガーはA級隊員数人分の戦力を秘めている。そこに迅のサイドエフェクトが加われば、鬼に金棒。

 

予知によって相手の数手先も読める能力は個人、組織においても重宝すべきサイドエフェクトだ。

 

迅自身の経歴も凄まじいものだ。旧ボーダー時代からの隊員で太刀川としのぎを削る実力者。風刃を巡るバトルロワイアルで、20人以上いた隊員を打ちのめす。

 

その上で、玉狛支部の人間は驚愕せざるをえなかったのだ。

 

 

遡ること1時間前。

 

「よっ、辰馬。晩飯作ってもらっちゃって悪いな」

 

「いや、いいですよ。」

 

玉狛支部と晩ごはんを共にすることになって、後片付けを終えると、居間で迅にソファーに座るよう促される。迅の隣には、ミカエル・クローニンが九条の前にトリガーを置く。

 

ミカエルは名前の通り日本人ではなく、ましてや国外の人間というのにも首を傾げてしまう。

 

ネイバーであり、玉狛支部のエンジニア。

 

ボーダーでもかなり特殊な立ち位置にいる。

 

「出来たよ。細かい調整は必要かもしれないけど、それはおいおいやっていこう」

 

ミカエルに主語はなくとも、ミカエルが九条の前にトリガーホルダーを置いたのでなんであるかを察した。

 

「おお!そういうことか!」

 

以前より、玉狛特有の専用トリガーを九条ように造られていた。制作までに九条の要望、戦闘スタイル、トリオン能力を話し合い続けた結果、玉狛支部に新たな専用トリガーが生まれた。

 

そもそもこの話を持ち出した迅の意図は誰にもわからなかったが、九条は自分の新たな可能性を知りたく、疑問に気づかないフリをして、承諾する。

 

玉狛の面々もなにか考えがあるのだろうとしつこくは追求しなかった。

 

最も新しく与えられたトリガーは迅の許可なしには使えず、玉狛支部の仮想空間及び緊急事態以外では使用を禁じられている。

 

このことはボーダー本部でも城戸司令、忍田本部長しか知らない。この2名の許可なくしては、トリガーは使用できない仕組みになっている。

 

九条はすっと立ち上がり、壁際にいた烏丸に目を向ける。新トリガーを器用に回して、烏丸に向けて宣言した。

 

「ルウゥゥゥイベンッッッヅィ!」

 

「なんて?」

 

「リベンジって言ってます」

 

小南は九条の言葉が聞き取れず、烏丸が翻訳した。

 

リベンジを申し込みながら、その手には新トリガーが握られていた。

 

烏丸もその申し出に応えようとすると、迅が手で制す。

 

「いや、俺とやろう」

 

「へ?」

 

迅は言いつつ、黒いトリガー、風刃をひらひらと横に振る。

 

「もちろん本気で行く」

 

九条の返事は、笑顔だった。

 

「オーケィ。迅さん」

 

九条と迅の問答にここにいるメンバーは驚きを隠せずにいる。実際、玉狛のメンバーは迅へ疑問を投げ掛けている。主に小南が騒ぎ立てている。

 

そんな彼らを尻目に二人は準備に入る。

 

仮想空間の用意もしなくてはならないので、宇佐美は動揺しながら、プログラムを起動させる。

 

「黒トリがどんなもんなのか、見てみたかったんですよ」

 

「なーに、見るどころか体験させてやるよ」

 

九条と迅が立つのは、仮想空間によって構成された市街地。

 

迅の右手には鍔のない光る刀。そして、8本の淡く光るなにか。風に煽られているビニール紐のように見えなくもない。

 

一方で、九条の両手には拳銃が握られていた。

 

ロングスライドの拳銃は深い青色をしている。九条は両手に拳銃が握られた時に、自分の要望通りに制作されているのに、喜びを感じていた。

 

宇佐美によって、ゴングがなった瞬間、二人は同時に動いた。

 

 

 

 

「大勝利」

 

結果は、ピースを掲げるアホ。いや、ボーダー最強の銃使いだった。

 

 

 




とりあえず、九条の玉狛トリガーはまだ出さないでおきます。

次回は、日常的な話を書きたい。

どうでもいいですが、九条に新トリガーを渡した迅にも意図があります。



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