女好きボーダー隊員   作:ベリアル

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第16話

「うちの柿崎隊の長所は、バランスです。撃ってよし、斬ってよし。全員銃トリガー。弧月を装備しています。そこに九条さんの対応力の中にある狙撃があれば、より高い順位にいけるはずです。更に私の場合、元A級嵐山隊に所属していたので、似た編成なれば、すぐに戦略が建てられます」

 

遠くから柿崎隊の仲間たちが腕を振って、口パクで応援を送ってくれている。それだけで、柿崎から勇気が湧き上がってくる。今まで戦ってきた、その自信が柿崎の背中を押してくれる。

 

「バランスが取れてるたって、あなた。低いレベルで安定しているだけでしょ。その結果がこの順位ですよ。あなたは山本稔選手ですか?まさに踏んだり蹴ったりじゃないですか」

 

「………」

 

早くも心が折れそうになる。

 

「大体A級にいた、はなんの魅力にもなりませんからね。二宮隊・影浦隊・東隊。元A級が上位をしめてるんですよ。そんな中で、B級中位下位をうろついている方に言われても説得力が欠けるんですよ。不良が正論吐いたところで、だから何?としか思えないでしょ?それと同じですよ。実績がともってないんですよ、柿崎さん」

 

「はい。すいませんでした」

 

蚊の鳴くような声で、謝罪を述べる。嵐山隊は逃げるように辞めて、A級になるどころかうだつの上がらないB級部隊になっている。柿崎が気にしていることを綺麗に抉りにくる。この時点で最初の勢いはどこかへ行き、柿崎の頭の中は真っ白になっていた。

 

「あとこれ、……いえ、失礼。なんでもありません。まあ、嵐山隊の戦略は少々魅力的です」

 

「ありがとうございます!」

 

九条が言いかけたのは「あとこれ。来馬隊にも言えるんですけど、エースがいなくても強いチームは強いんですよ。俺が入っても少し戦力上がるだけにしかならないんじゃないですか?」というセリフだった。最も、これを言ってしまえば、話が飛んでしまうので、口を閉じることにした。ただ、課題でもあるのは、間違いなかった。

 

「それで隊長であるあなたは、隊員たちを上手く活かせていると感じでいますか?」

 

「いえ、情けない話、この順位にいるのは俺の所為です」

 

「でしょうね。まあ、それは来馬さんも一緒でしょうが。厳しいこと言うようですけど、傍から見て、隊長が悪い。隊長はその部隊の色といっても過言じゃない。ただ戦う駒の一つじゃない。決断する立場にある隊長が戸惑えば、チーム全体に影響する」

 

九条は間を一つ置いて、最低な言葉を来馬と柿崎にぶつける。

 

「来馬隊、柿崎隊の順位はクソどうしようもねえ隊長がいかに落ちぶれているかの証明他ならない」

 

九条の言葉は来馬と柿崎にガツンと打ち付けられる。

 

確認するが、この会話は野次馬はおろか席についている部隊の隊員たちも聞いている。

 

当然、何度も訓練し、防衛任務について絆がある仲間たちは激怒する。村上をはじめとする照屋、巴たちは九条へと近づいていく。九条も分かっていて、彼らの逆鱗に触れたのだ。

 

村上が九条の襟を後ろから掴みかかろうとした瞬間、九条は再び口を開いた。

 

「そして、それは各隊長が誰よりも自覚している」

 

村上は九条の襟をつかむ直前で止めた。すでに各部隊の隊員達が九条の背後に立っていた。全員憤っているが、九条の言葉に耳を傾けていた。

 

「アタッカー4位村上鋼。小学生でB級入りした巴小太郎。奈良坂、歌川に並んで新人王候補にまでなった照屋文香。こんな面子が揃っていて、この順位にいて気にしない隊長がいるわけがない。もっとやれる、そう思ってるはずだ。だから、俺を引き入れたくてしょうがない。逆になにも感じない隊長なら、こっちから願い下げだ。この落ち込みようなら、そうではないようですがね」

 

見事に己の心情を言い当てられた来馬と柿崎は、返す言葉もなく黙っているしかなかった。

 

九条があえて歯に衣着せない言い方をしたのは、単に指摘だけでなく、その後の心情を測るためにあった。

 

「隊長を侮辱した言葉に怒りもせず、敬意を払えないクソともごめんですがね」

 

村上は掴みかかろうとした手を下げて、九条の背中をじっと見つめる。

 

「俺はA級になにがなんでも行く。これだけは譲れない。協力も惜しまない。練習が必要ならいくらでもついていく。A級に行ける可能性がないなら、この席に呼び出したりしない。なら、A級に入ればいいって言われるかもしれない。確かにそうだ。でも、A級じゃだめだ。箔もあるけど、それだけじゃない。一緒にやっていけるかだ」

 

九条の声に、席についている4人だけでなく、村上達はおろか野次馬たちも静かに耳を澄まさせていた。不思議と九条の言葉は、聞き耳を立てている隊員たちの意識を引き寄せた。

 

ゆったりと落ち着いた口調に先ほどまでの威圧感はない。九条は背筋を伸ばして、前腕を広げて、来馬と柿崎の意識をより強く引き込んでいく。言葉に合わせて、腕を揺らす。

 

「効率だけみれば、B級にもいいチームはある。弓場隊とか王子隊とか。チームに所属したこともなければ、年下のガキに好き勝手言われてムカつくだろう。その通りだ。それでも俺の居場所になるチームは、ちゃんと考えたい。あとで思ってたのと違うとか言って辞めるって言わないためにも妥協は許されない」

 

九条は白い歯を見せて笑う。

 

「だから同じチームに所属することになったら、あなたたちのことを、仲間だと胸を張って呼ばれるよう全力を尽くすことを誓わせていただきます」

 

「きみを、入れてA級になれるのかい?」

 

来馬は、九条に質問した。

 

「なります。対影浦隊。対二宮隊については俺自身考えがあります。でも、俺一人じゃ無理だし、チームに入ったら、今みたいにガンガン口を出す。チームに亀裂も生まれる。それでも、俺をチームに入れたいんですか?」

 

「「当然」」

 

来馬と柿崎は口を揃える。折れた心は、再び構築されて、より強固な心を宿す。

 

「隊員たちをまとめるのも隊長の役目だ」

 

「ククク。んじゃ、面接はここまでしときますか。後ろの皆さんも納得したか?」

 

来馬隊、柿崎隊の面々は不安が残っている。

 

九条は女にだらしなく、すぐ落ち込む。有能なサイドエフェクトとマスタークラスのスコーピオン。その程度しか知らなかった。

 

今回のように、腹の中を垣間見たのは、初めてのことだった。

 

「なにも言わないっていうのは、OKって受け取らせてもらうぜ」

 

それでも、隊員たちは隊長を信じた。自分たちが隊長についていっているように、九条も隊長についていけると。

 

「あのー」

 

解散となったところで、小荒井が挙手する。

 

「俺たちはどうなるんですか?」

 

途中から空気になっていた東隊。

 

「自信あるなら、今やってもいいぞ。この後、他のチームの面接もあんだよ」

 

「あんだけのこと言っといて!!?」

「信じらんねえコイツ!!!」

 

湧き出た出水と米屋が九条を批判しだす。他の面々も呆れた視線を九条に送る。

 

「そりゃねえだろ!ボロクソ言っときながら、まだ選り好みかよ!」

 

出水の痛烈な指摘に、九条は反論する。

 

「うるせえ!世の中は売り手市場なんだよ!選り好みしてなにが悪いんだよ!?」

 

「俺も九条の立場なら同じことするがな」

 

「マジで!!?」

 

三輪の発言に驚く者と同意する者で二分している。就職を意識しているかいないかの差だろうか、同意している者は、風間や二宮など大学生に多かった。

 

「2人で相談して、どんな風に自分のチーム紹介するか決めとけ。その間に俺は次の人と、話し合っとく。終わったら、連絡入れる」

 

時間が惜しいからか、小荒井と奥寺は小走りで、隊室にいる東に相談することにした。

 

「次の犠牲者だれ?」

 

「犠牲者言うな。ああ、もう来たわ。こっちです」

 

九条の視線の先に、全員が目を向ける。

 

 

!?

 

 

「待たせたな、九条ォ」

 

 

 

 

 

 

 




いったい誰だ?

この「!?」が似合いそうな人は!?

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