女好きボーダー隊員   作:ベリアル

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第17話

「ずばりギャップよ」

 

「は?」

 

 

面接を終えて一週間が経過した頃、九条はボーダー本部の食堂でデミグラスソースとホワイトソースのかかったオムライスを食べていた。

 

ついさきほどまで、相席していた古寺が座っていた席に、どかりと向かいの席に座ると来馬隊の(コン)が堂々と宣言する。

 

「女なんてギャップに弱いのよ」

 

「急にどうしたの?(コン)ちゃん。あと付き合わない?」

 

「ほら、ワンパなのよ。会うなり、告白宣言で飽きがくるの。最初は頭のおかしい男だなって思ってたけど、今じゃ可哀想な男に思えてくるの。目も当てられない」

 

「たった数秒間でボロクソに傷つけられたんですけども」

 

「パターンを増やしなさいよ。アピールポイントを見せたりとか。その上でギャップをつけるの」

 

「ギャップたって、(コン)ちゃん。あれっしょ?道端の段ボールに不良が捨てられてて、子犬が傘を差してあげるみたいな。で、子犬がお前も一人ぼっちなんだなって」

 

「逆!捨てられてんの子犬の方!子犬人語話してるし!?」

 

裁判沙汰になりうるファンタジー的な想像に(コン)が修正をかけた。九条はそうだっけとうろ覚えの記憶を探る。しかし、食後ということもあってか、眠気に妨げられる。前髪で目が隠れているので、今は知らないでいる。

 

(コン)は呆れながら、本来の用件を伝える。

 

「ようするにただでさえ女子からの評価が底辺なんだから、少しかっこいいところ見せれば口説きやすくなるんじゃないの?」

 

「今ちゃん……。俺のために?実は俺のこと好きなの?付き合う?」

 

「なわけないでしょ。そのパターン飽きたって」

 

「じゃあどうしろと?」

 

「例えば、逆のことやってみるとか」

 

「逆のことねぇ。オッケ、やってるわ」

 

「?」

 

九条が言うやいなや歩きだした先には、A級1位オペレーター国近が歩いていた。その歩調は少しばかり早く、肩に力が入っている。

 

(コン)は助言を一つ告げただけで、即実行する九条のお手並みを拝見することにした。

 

「国近さんのことなんて別に好きじゃないんですから。勘違いしないでくださいね!」

 

「なんでツンデレ風なのよ!?」

 

国近が九条に首をかしげたところで今の飛び蹴りによって、一瞬で視界から消え去った。

 

 

 

 

「なるほどなるほど~そういうわけですか。それなら恋愛ゲームをこなしてきたわたしにむぅあかせなさ~い」

 

「二次元と三次元を一緒にしていいの?」

 

今のツッコミを聞き流して国近がどんと胸を張る。

 

その胸と(コン)の胸を比較して、(コン)に九条は困り笑いをする他なかった。九条の顔面にオラオラをするだけに留まると、国近から提案が生まれた。

 

「これは九条くんにこそ相応しい秘策なのだよ」

 

「本当ですか、先生!わたくしめにご教示ください!」

 

「ふぉっふぉっ。焦りなさるな若人よ」

 

九条の下手っぷりに国近は気分を良くする。

 

「九条くんは控え目に言って、見た目も言動もスペランカー並みに酷いから、そこを修正だよね」

 

「先生!控え目という峰打ちのつもりかもしれませんが、鉄の棒でガンガン叩いてるようなものです!」

 

「せめてたけのこよね」

 

「たけみつ!」

 

「九条くんは何度も打ちのめされてきたから平気だよ。で、九条くんがやることはイメチェンだよ。特に髪型」

 

「このボサ頭だものね。不潔感あるし。でもこれ、くせっ毛でしょ。難しいんじゃないの?」

 

九条の髪は目が隠れるほど長い。それでいて、くせっ毛なのだから、引っ張ったら唇まで届いてしまう。本人はそれを気にしないし、髪を切るのを時間の無駄だと感じている。

 

加古も国近のイメチェン案同様、九条のくせっ毛に思うところがあり、櫛で梳かそうしていた。しかし、くせが強すぎて櫛が髪に絡みつき、強く引っ張っれば髪が抜けてしまう。

 

その後も工夫を凝らしながら髪型を整え、服選び含めて上手くはいったが、加古はある理由でこれをやめてしまった。

 

当時の九条はその事を告げられず、遊び始めたな程度にしか考えていないので、国近のイメチェン案を初めてだと思い込んでいる。

 

「そこは今ちゃん、ネット見ながらやっていこうよ~。じゃ、早速やっていこっか~」

 

「お願っシャァッス!これで彼女とか出来たら焼き肉奢りやぁす!」

 

「気合いの入りかたが野球部みたい……。いい加減、彼女でも作って落ち着いて貰わないとね」

 

そうして、国近と(コン)の九条のイメチェンを始めた。

 

髪を濡らしてドライヤーをかけたり、試行錯誤の末に国近と(コン)は九条の姿に納得がいくまで頑張った。というか、翌日までかかった。

 

「いやー、苦労しましたな~」

 

「くせっ毛の呪いでかかってんのかしら」

 

ソファーにもたれ掛かり、ぐったりした。もっとも天上を見上げているのは、九条から目線を逸らすためだ。

 

「はは、ありがとね」

 

「「どういたしまして」」

 

九条はカジュアルスーツを来ており、白シャツからは鎖骨が見えかくれしている。天パはくせっ毛を僅かに残したセンター分けの髪をしている。その結果、隠れていた目が露になって、優しげな瞳が国近と今を捉えている。

 

((隠れイケメンかよ……))

 

この状態の九条を直視しないよう、天上を見つめるしかなかった。

 

「んじゃあ、九条くんにはやって貰いたいことがありまーす」

 

「押忍師匠ッ!」

 

「うむ、この試練は厳し、ぃぞ」

 

師匠呼びに舞い上がって、一瞬だけ九条と視線を合わせてしまったが、すぐに体勢を戻す。自分でも顔が赤くなっているのが、分かっているからだ。

 

九条は国近師匠からの試練内容を聞いて、早速諏訪隊の小佐野の元へ用事も兼ねて歩き出す。

 

その試練内容は、告白せずに異性と会話するというものだった。他にも幾つかの条件はあるが、メインはこれである。

 

また、その様子を胸ポケットにあるボーダー産のペン型カメラで九条の試練を国近と(コン)が窺う。2人は完全に自分達が作り上げた男にボーダー女子がどういう反応するか面白がる気でいた。

 

九条が諏訪隊の部屋に行こうとしてると、ちょうど目当てのオペレーターが反対側から歩いてきた。向こうも九条を目にすると、目を見開き、足を止めてしまう。

 

「く、じょう?」

 

「九条だよ?」

 

「だよね……」

 

「どうしたの、小佐野ちゃん?」

 

「あ、いや、国近先輩からイメチェンしたって聞いてたけどさ、印象変わるなって」

 

「そう?でも、小佐野ちゃんにかっこいいって思われたなら大成功だね」

 

「………うん」

 

「お世辞でも嬉しいよ。これありがと」

 

九条から小佐野に借りていた本を渡す。九条は諏訪隊の隊員と本の貸し借りをする仲で、今回は九条が借りていた側だ。

 

「じゃまた今度ね」

 

「えっ!?」

 

去ろうとした九条に小佐野は思わず、声を上げてしまう。どうしたのかと、九条は足を止めて小佐野の元へ戻る。

 

「小佐野ちゃん?」

 

「な、なに?」

 

「なにはこっちの台詞だよ。なんか今日変だよ。困ってるなら話聞かせて?俺が力になるからさ」

 

(こ、こいつッ!)

 

用件だけ済ませて去ろうとしたところ、急に親身になってくる。その普段髪で隠れていた瞳は本気で彼女を心配していた。それを感じ取った小佐野のペースはどんどん狂わされていく。

 

小佐野は認めたくはなかったが、顔がよろしくなっている上に普段の奇行もないので、今の九条にどう対応していいかわからないでいた。

 

ぶっちゃけ心配されて嬉しい気持ちで一杯だった。

 

「なんでもない。ただ今日はいつもみたいに告ってこないんだなってだけ」

 

言ってて恥ずかしくなったのか、耐えきれず目線を九条から外してそっぽを向いてしまう。が、九条はわざわざ小佐野の目線を合わさるために一歩近づく。

 

「もしかして好きって言われたかった?」

 

少し悪戯めいた顔で、冗談を言う。

 

「ッ!??」

 

小佐野は九条を蹴り飛ばし、隊室に駆け足で飛び込む。

 

「ええー……」

 

九条は嫌われたのではないかと、ショックを受けた。小佐野にもこれまで、告白ラッシュをかましてきたが、暴力をうけたことはなかった。涙が零れそうになるのをグッと堪える。

 

「さーて、次はと」

 

 

 

 

 

「乙女の顔してたわね」

 

「ね~」

 

スナック菓子を食べながら、小佐野の様子を見ていた2人。

 

「次、誰にする?」

 

「次はね~」

 

 

 

 





約2年半ぶりの投稿

ハンターハンターの作者はこれより間があるから平気かな。



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