女好きボーダー隊員   作:ベリアル

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第6話

「ハロー、三上ちゃん。結婚を前提に付き合わない?」

 

「付き合いません」

 

朝9時40分、加古に言われた通りボーダー本部に訪れ、最初に見かけた那須に愛の告白を挨拶するようにする。三上は九条のこのお決まりの挨拶に慣れたのかプイとそっぽを向き、申し出を当然のように断る。

 

「え、えぇ、そんな」

 

「ダメージ受けすぎでしょ」

 

毎度のことながらフラれる度に、ショックを受けましたと言わんばかりに落ち込む。三上は穏やかな性格をしているので普段ならフォローもするのだが、生憎彼女もこの後予定が入っているのだ。

 

「あら、三上ちゃんもいたのね」

 

ハイヒールの足音と共に加古が来ると、三上は九条には見せない明るい笑顔を見せる。

 

「加古さん。今から行くところです」

 

「私もよ。あなたも来なさい」

 

「なにするか聞いてないんだけど」

 

三上に振られて猫背になるほど落ち込む。ぼさぼさの髪の所為で目は見えないが、生気は感じられないだろう。

 

ポケットに手を突っ込んで加古についていくと、そこには見知った顔がある。

 

「出水。これなんの集まり?」

 

同級生の出水、米屋。鈴鳴第一の村上、東隊の東、加古隊の加古と黒江、荒船隊の荒船。二宮隊の二宮。風間隊の風間。嵐山隊の佐鳥。柿崎隊の柿崎。諏訪隊の諏訪。合計12人の隊員がいる。会話したこともない隊員もいるが、顔と名前は一致している。

 

三上は何人かに挨拶をして、どこかへ去っていく。

 

「聞いてねえのか?混成部隊でチーム戦やんだよ。加古さんがお前に話しとくって言ってたんだけどな。てか知り合いだったのな」

 

「来いとは聞いても、なにをするかまでは聞いてねえな。混成部隊ってあれだろ、普段の部隊と違って色んな奴が部隊として集まってバトルんだろ?チームは決まってんの?」

 

「それはこれから決める」

 

スーツのポケットに手を突っ込んだ男が出水と九条に近づく。

 

「初めまして、B級フリーの九条辰馬です」

 

B級1位の隊長を勤めながらも、ソロ総合2位に位置する男を九条が知らないはずがなく、軽く頭を下げながら自己紹介をする。

 

「二宮隊の二宮だ」

 

お互い挨拶をして、九条は二宮のにこりともしない目線に違和感に気付く。

 

(品定めか)

 

二宮だけでなく、隊長を務める者たちは皆、二宮同様の視線を九条に向けている。

 

13人中8人が隊長であることはそういうことなのだろう。

 

(望じゃねえな。誰が企画したかはわからんけども、部隊で戦った場合の俺の戦力はどの程度のものなのか測る気か。確かに俺、部隊で戦った事ねえもんな)

 

九条は証拠はなく、推測でこの状況を読み取った。ここでそれを問いただしてもよかったが、

 

(でも、これで違ったら俺相当痛い人になっちゃうから黙っとこっと)

 

自身の保険の為に、口を閉じることにした。

 

「太刀川さんは?こういうの来てそうなんだけど」

 

「参加したがってても、隊長はレポートの危機で不参加」

 

「あそ。ま、丁度トリガーいじったところなんだ。いい機会だから試させてもらうぜ」

 

「っし、全員揃ったところだ。クジ始めんぞ」

 

諏訪は割り箸を持ち、各々割り箸を引いていく。

 

東隊(仮)東、黒江、出水、村上。

 

風間隊(仮)風間、二宮、諏訪、荒船。

 

柿崎隊(仮)柿崎、米屋、九条、佐鳥。

 

「A級がいい感じにばらけたって言いたいけど、風間隊(仮)やべえな。総合順位上位が2人いんぞ」

 

九条は頬を引きつらせて、チーム分けされた部隊を見て頬を引きつらせていた。

 

「と思うじゃん。東隊(仮)も全員曲者だらけだぜ」

 

「俺、東隊(仮)の面子に1対1でかち合っても勝てる気しねえぞ。女子にいいとこ見せらんねえ」

 

「そうならないためにも作戦を考えるんだ」

 

九条のテンションの低さをどうにかしようと、柿崎は手を叩きながら気持ちを切り替えさせる。初めてのチーム戦に九条はこういった動揺をする一方で、参加する他のメンバーは何度も経験していることなので今更なにかを感じることはない。

 

加古の名前がないのは参加しないからで、彼女は今回観戦に回ることにしたらしい。

 

「こっちには九条がいるんだ。相手チームの東さんと荒船の遠距離射撃を封じることが出来る。逆にこっちは佐鳥がいる。遠距離戦ではこっちが有利だ」

 

「俺が主役ですか!?」

 

A級嵐山隊スナイパーの佐鳥は柿崎の言葉に目を輝かせて立ち上がる。柿崎は元チームメイトとして佐鳥の性格をよく分かっている。待っていましたと言わんばかりに、佐鳥の肩に手を置く。

 

「ああ、この勝負お前の力が必要だ。だから、佐鳥を除いて開始直後すぐに集合だ」

 

自分の部隊でも行っている戦法をここでも活用する。

 

「逃げられなかった場合はどうするんですか?村上さんと黒江。特に出水やら二宮さんからは逃げられる気がしないんですけど」

 

ボーダーのチーム戦は開始直後は全員が集まっている状態からは始まらない。ランダムでばらけている状態で開始する。当然、集合する際に相手チームに接触する可能性は高い。

 

相手チームで九条が勝てそうな相手は諏訪くらいしかいない。周知の事実として、九条の”銃探知機”は銃と銃から放たれた弾丸を感知するものであって、銃を介さずに放つことのできるシューターの弾丸は感知できなものである。

 

実際、出水と那須と戦った際に幾度となく蜂の巣にされた。

 

「頑張れ」

 

「ですよね」

 

柿崎の一言に、九条は納得する他ない。

 

バックワームは装備はしているから、敵に見つかる心配はない。更に言えば、加古との待ち合わせ前に一つ装備を付け加えているので、格上でも一泡吹かせることができるかもしれないのである。

 

「この佐鳥めを頼っちゃっていいですよ」

 

「ういー、頼りにしてるぜ。ツインスナイプよろしく」

 

はしゃいでいる佐鳥の横を通り過ぎ、今回サポートをしてくれるオペレーターの綾辻にひざまづく。

 

「綾辻ちゃん、今日はよろしく。そして、好きです。結婚してください」

 

「しっかりサポートさせてもうらうね。頼りにしてるよ」

 

「君の声を聴ける俺は幸せ者だ。まるで天使のようだ。いや、違うな。君こそが天使だったんだ。そうだ、この試合で勝ったらプロポーズしよう。イケる。イケる気がする。勝利の女神は俺に微笑んでいる」

 

恍惚な表情で綾辻に見惚れる変態を柿崎が引き戻し、各々トリガーの中身を確認し合う。

 

「あれ、そんなもんいれてたっけ?」

 

米屋の疑問は九条を除く全員が同意見であった。米屋を含めた九条の知人が知る限りでは九条のトリガーには6つしか埋まっていないはず。今のトリガーには7つ目が存在するのだ。

 

「なにごとも変化が大事なのだよ。ほんとは太刀川さんにとっておく手なんだけど、チーム戦で使わない手はないからな。練習なしのぶっつけ本番になるけど、成功したら最っ高だな」

 

得意げに笑うが、全員が九条の意図を理解できずにいた。この場に東か二宮がいれば九条の考えを察していたかもしれない。

 

「客観的に見てもこの試合、良くも悪くも俺で決まる。他のチームは俺を優先的に狙うね」

 

九条の意見は正しい。九条はいるだけでも、スナイパーからすれば腹立たしい存在なのだ。全チームにスナイパーがいる中で、スナイパーという駒を有効活用できるのは、柿崎隊(仮)のみである。

 

サイドエフェクト一つで敵部隊の戦力を減少させる。柿崎は改めて、サイドエフェクトの脅威を知る。同時に味方になれば、これだけ頼もしく思えることに喜びを感じた。

 

柿崎は九条の言葉に頷く。

 

「だな。今回は九条を中心に集まろう。九条がいる限り、遠距離戦はこっちが有利。この勝負、勝つぞ」

 

制限時間を過ぎると、全てのチームが仮想ステージへに転送される。

 

『それでは戦闘開始です』

 

(この可愛らしい声は国近先輩かな)

 

戦闘開始の合図が届くも、全員ランダムで転送されているのだ。すぐに戦闘が始まるわけではない。

 

「愛しい愛しい綾辻ちゃ~ん。聞こえる~?」

 

『はい、愛しい綾辻ですよ』

 

まさか、自分のノリに乗ってくれるとは思わず、嬉しい気持ちを大声で表したいところである。しかしながら、戦闘中で、そんな余裕はない。

 

「全員バッグワームしてるでしょ。あってる?」

 

『はい、その通り。なんでわかったの?バッグワーム持ってるからって使うとは限らないのに?』

 

「馬鹿じゃなきゃそうするでしょ。布石うったし、綾辻ちゃんはあの場にいなかったから知らないのも無理はないよ」

 

『布石?』

 

九条はチーム決めが始まる前に出水と話してる際に《丁度トリガーいじったところなんだ。いい機会だから試させてもらうぜ》と喋った。これを聞いていた周囲の人間は当然九条の”銃探知機”を知っている。

 

今回の状況で最も警戒しなければならないのは狙撃である。故に作戦タイムでは狙撃用トリガーを追加したのではないか、と。九条は今まで狙撃用トリガーを封印してきた。実際には銃手用トリガーなのかもしれないが、警戒しておく価値はある。

 

ましてや、柿崎隊(仮)には佐鳥がいる。何時狙撃されるか分かったものではない。

 

であれば、必然的にバックワームで姿を消しつつ、全チーム合流するだろう。

 

この試合の序盤は全チーム合流は決まっている。

 

九条はそう考えながら、綾辻に指示された場所へ移動していく。距離的に最初に合流しそうなのは米屋である。

 

味方では。

 

「ごめん、綾辻ちゃん。目が合っちゃった」

 

『え、相手は?』

 

「くそったれめ」

 

綾辻の質問に答えることもなく、悪態を吐く。質問に答えなかったのは、相手がバックワームを取り去り、孤月を構えたからである。

 

九条も両手にスコーピオンを片刃のスタンダードタイプで展開させる。体勢を低くして、何時でも迎え撃てる体勢に入る。

 

「会いたかったぜ。その首ぶった斬ってやるよ」

 

「荒船さん、お手柔らかにお願いします」

 

相手は完璧万能手を目指すアクション派スナイパー荒船哲次。イーグレットと共に孤月のポイントは8000越えの猛者。接近戦においては九条の格上であることは間違いなく、ソロのランク戦では勝ち越せたのは片手で数える程度しかない。

 

柿崎隊(仮)は他の部隊に比べ、いくらか見劣りする。お世辞にも柿崎はA級の実力はないし、九条もサイドエフェクトを抜けば、B級中位程度の実力でしかない。相手が相手なだけに一人でも落ちれば、巻き返すのは厳しい。

 

ここは近くにいる米屋を待つのがベストなのであるが、

 

『米屋君、村上さんと交戦開始』

 

希望は断たれる。

 

九条は苦笑いを顔から消して、気持ちを切り替えながら荒船を見据える。

 

九条と荒船が共通していることはただ一つ。

 

自分の勝利を疑わないことだ。

 

 

 




お気づきの方もいるかもしれませんが、九条のモデルはエンバンメイズの烏丸徨です。

本当は前話で烏丸徨の決め台詞や特有の擬音を使いたかったのですが、流石にどうかなと思いやめときました。というか、モデルどころか烏丸徨そのものを主人公にしようと思ったものの扱いきれる自信がありませんでした。

主人公のモデルは烏丸徨だけでなく、他にも候補となるモデルがいました。

絹守 一馬
空山 蒼治
華原 清六
志道 都
瀬戸 真悟

特に空山と真悟の信念がいい具合だったので、迷いました。

空山だったらレーダーに引っかからないサイドエフェクトだったり、真悟だったら才能もサイドエフェクトもない凡人として。志道 都であれば、勝利への貪欲さを。

オリキャラとして出そうにも烏丸徨同様扱い切れる自信がなく、読み手もごちゃごちゃして分かりづらいだろうと判断しました。


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