女好きボーダー隊員   作:ベリアル

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第7話

天候は晴れ、時間帯は昼間、市街地Bで設定されたステージで金属音に似たぶつかり合いが聴こえる。

 

17合目の斬り合いでも、九条と荒船の均衡は崩れない。お互い集中しているのだろう。戦い始めてから、口を開かずに、民家の屋根で切り結んでいる。2人とも大きなダメージはなく、かすり傷しか負っていないが、僅かに荒船の方が多い。

 

スコーピオンと孤月のスペックの性能が出たのだろう。スコーピオンの方が軽く、孤月は重い。そして、スコーピオンは孤月に比べてかなり脆いのである。

 

九条は舌打ちをする。その原因は左手のスコーピオンに亀裂が入ったからだ。17合まで持ったのは、九条のトリオン量の関係によるものだ。スコーピオンの耐久性としてはかなりもった方だが、荒船相手に亀裂の入ったスコーピオンを1度しまって、新しいスコーピオンにする余裕はない。

 

荒船の実力はA級でも遜色ない。荒船も最初からスコーピオンの破壊を狙っていたのだろう。

 

九条にも切り札はある。それを上手く使えば荒船を倒せるだろうが、荒船以上の実力者がいる中で得策とは言えない。二宮、風間、村上の3人は一人として戦闘開始から落ちていない。

 

(よし、米屋のところに逃げるか)

 

荒船から逃げる方法を思いつき、村上と戦っている米屋の元へ逃げ、2対1または2対1対1の乱戦に持ち込む。

 

左手のスコーピオンが砕けた瞬間に、荒船が笑うのと同時に一気に後ろへ下がる。

 

「逃がすかよ!」

 

そう言いながら荒船は追ってくる。その時、九条は左側にあるマンションに視線だけを送る。荒船はそれを見逃さずにすぐさまシールドを張りながら、民家の屋根から下りる。九条はバックワームを着て、米屋の元へ駆けていく。

 

『風間さんが出水くんと黒江ちゃんと戦闘開始』

 

「了解。俺は米屋んとこ行く」

 

『助かるぜ。何回か死にかけた。よく荒船さんから逃げられたな』

 

「まあな」

 

後方を確認すると荒船の姿は見えないが、微かに足音が聞こえる。しっかりついてきている。

 

九条が行ったのは視線のフェイント。サッカーやバスケの経験者ならば分かるだろうが、自分から見て視線を右に注目させて、左に行くという寸法である。普段の荒船であれば通用するか微妙なところではあるが、九条のサイドエフェクトにより柿崎隊(仮)しかスナイパーの役割を果たせない。

 

荒船は経験上、警戒せざるをえなかった。

 

米屋と村上の姿が見えると、両手のスコーピオンを村上に投擲すると、村上は武器として携えている孤月でスコーピオンを防ぎながらも米屋からの攻撃はレイガストで防御する。

 

「乱戦か」

 

村上が呟くと、米屋、九条、荒船という順に目を移していく。九条の狙い通り、2対1対1になった。が、荒船こそがしてやったりと思っている。

 

「アステロイド」

 

近くからの声に荒船を除く、アタッカーが驚愕した。視線だけを声の方向に向ければ、バックワームを纏うスーツ姿の男が民家の屋根に立っていた。総合2位の二宮だ。

 

二宮と彼らの中間には強力なアステロイドが飛んでいた。村上はレイガストで防ぎ、米屋と九条は2つのシールドでヒビを生みながらもなんとか防ぎきる。二宮のアステロイドの影響で、周囲の建物は崩れ、砂塵が舞う。通常の使い手ならばここまではならないのだが、ボーダーでもトリオン量トップクラスの威力は桁違いである。

 

質が悪いのがこの攻撃は囮でしかない。

 

「九条!」

 

米屋の声が聞こえてくる前に、砂塵の中から荒船の姿が見えた。

 

「終わりだ、ルーキー!」

 

瞬時に右手のスコーピオンを展開させ、防ぎにいく。旋空による攻撃で数メートル離れてからの攻撃だった。それでもものともせず、孤月の刃を防ぎ、攻撃の重さに耐えるべく地に足をつけて踏ん張る。

 

「荒船さんよぉ、やってくると思ったぜ」

 

「なら、これはどうだ?」

 

背後から村上が孤月を振りかぶっている。

 

九条のおかげで風間隊(仮)と東隊(仮)はスナイパーの行動が制限されているので、正直に言えば苛立たしい存在。実力的に言えば米屋の方も潰しておきたいが、やはり九条は邪魔でしかないのだ。

 

ようやく遠距離攻撃が出来る、荒船と村上がそう思った直後、九条は目じりを下げ、白い歯を見せて笑っていた。

 

砂塵の中から光が走り、2人に腹部へ衝撃が襲い掛かる。荒船と村上は砂塵の中からの正体に2人は気づいた。

 

「アステロイドだと?」

 

「クソ、そういうことかよ!」

 

両者の胴体は、幾つもの光線によって蜂の巣になる。光線の正体は銃を介さずに放ったアステロイド。

 

まともにアステロイドを受けた2人はベイルアウトを余儀なくされた。これにより、柿崎隊(仮)は2p獲得する。

 

何故、荒船と村上程の実力者にアステロイドが通じたのか?

 

これは米屋など他の隊員にはできないだろう。結論から言ってしまえば、先入観の問題である。

 

九条にサイドエフェクト”銃探知機”は銃にしか意味がなく、シューターには通用しない。これは出水や那須で実証済みで、他の隊員も知っている。故に、シューターに九条は通用しない。加えて、九条はシューターとしての適正は低かったのだ。

 

銃あってこそのサイドエフェクト。そんな結論が出ていた。

 

それを九条はあえて利用した。九条はシューターとして弾丸のみは使わないだろう、という先入観を。実際に二宮の起こした砂塵を利用して、左手からのアステロイドに成功した。

 

もし仮に、直前でシールドを張られても、九条は二宮レベルのトリオンを有しているので、レイガストを装備している村上はともかく、荒船では防ぎようがない。

 

九条のブラフも功を成した。

 

ただし、成功したのは2人が比較的近くにいて、初見だったからであり、牽制には十分でも2度目はそうは通用しない。

 

現状も喜んでいられる余裕はなく、二宮からのフルのアステロイドが迫ってきていた。

 

村上の攻撃が成功するか否かに関わらず、二宮は荒船ごと3人のアタッカーを攻撃するつもりだったのだろう。

 

再びフルガードした矢先、敵の援軍が来ていた。銃の気配を感じ取りながら、その方向に目を向ける。

 

「吹っ飛べぇ!」

 

「いやっべ」

 

シールドを張りながら倒れるように横からの銃弾の回避に成功。

 

「メテオラ」

 

「っそだろ?」

 

二宮から聞こえた単語が耳に届くと、倒れた体勢から転がり、民家と民家の間に逃げ込む。

 

九条がいた場所は爆発し、九条の逃げ込んだ場所にまで及ぶ。爆破に直撃こそしないもの不安定な体勢だったため、爆風で奥へと吹き飛ばされる。

 

そんなパニックの中でも銃の気配は確かに感じていた。

 

標的は米屋。

 

『米屋ぁ!7時の方向から諏訪さんが狙ってるぞ!』

 

爆発の影響により、砂塵は先程よりも酷いが、一瞬米屋の姿が見えたため、すぐに警告を出せた。が、九条の努力も虚しく終わり、柿崎隊(仮)の最初の脱落者は米屋になる。

 

九条は米屋の返事も待たず、全壊されていない民家の屋根に跳ぶと、待ち構えていたかのように、二宮が九条へ体を向けていた。

 

青い空には流星が流れるが、見向きもしなかった。

 

アステロイドは既に展開され、一瞬でも目を離せば撃たれる。

 

「ふっ」

 

暫しの沈黙の後、九条は先に動く。

 

諏訪に地面から銃口を向けられているのも、分かっていながら、諏訪への警戒を解いていた。

 

クロスファイア。

 

二つの方向から弾丸を放ち、十字の線が出来るから、日本語では十字砲火と呼ばれる。諏訪も二宮もそれを狙っていた。

 

如何に九条と言えど、2方向からの攻撃を回避するのは厳しい上に、二宮のアステロイドに諏訪のショットガンの高火力を防御するのは、シールドで防ぎようにも破壊されてしまう。

 

民家から民家へ移る瞬間が、勝負の鍵。

 

九条が視界に映る瞬間まで、諏訪は引き金に指をかけ、期を伺う。

 

ここが天王山の分け目。

 

九条も承知の上で、疾走している。

 

民家から民家へ移ろうとしたその時、二宮と諏訪は九条にフルアタックを仕掛けた。

 

『狙撃注意!』

 

オペレーターからの一言が二宮と諏訪に届く。時は既に遅く、諏訪の胸部に風穴が開く。

 

結果、引き金を引くことは敵わず、そのままリタイアとなる。

 

『んナイス、佐鳥』

 

『ツインスナイプ失敗したああああ!』

 

ツインスナイプとは、2丁の狙撃銃を使用したボーダーでも佐鳥しかできない狙撃である。

 

今回の的は、諏訪と二宮。

 

諏訪はリタイア。

 

二宮は直前でシールドを張り、無傷であるが、九条への対応が一手遅れる、かのように見えた。

 

右斜め下から複数の弾丸が九条に飛来する。一発一発の威力は高くないモノの、蜂の巣にするには十分な弾数だった。

 

「ハ…ウンドォ……だと!」

 

「終わりだ」

 

二宮は指を銃の形にして、皮肉を込めたアステロイドが九条を貫く。

 

 

 

 

 

チーム戦が終わり、ブースに移動していた柿崎隊(仮)。

 

「初めてにしちゃ上々だろ。荒船さんと村上さんからポイント獲れてるんだから大金星だぞ」

 

「ぬぉ~!」

 

ひざまづいている九条にいつもの如く米屋がフォローを入れる。

 

九条を倒した二宮は、佐鳥を見つけ出しベイルアウトさせる。

 

風間と戦っていた黒江と出水は黒江が風間と相打ちになった直後、出水は東との連携で二宮をスナイプでベイルアウト。

 

この後は柿崎が東と出水前に姿を現さなかったのでタイムアップ。

 

東隊(仮):2P 風間隊(仮):3P 柿崎隊(仮):2P

 

以上の結果により風間隊(仮)の勝利となった。終わってみれば、全滅したチームが、勝利したというのも不思議な話だ。

 

「綾辻ちゃんにオペレートしてもらいながらなんちゅう無様な……。なんかこう、死にたくなってきた」

 

「いや、隊長として指示も戦ってもいなかった俺が悪い。悪かったな」

 

柿崎は言いながら頭を下げる。今回の戦いでダメージが一番大きいのは、戦いもしなかった柿崎だろう。

 

最初に配置された場所も一番遠く、近くても風間たちが戦っていた場所で割り込みづらかった。結果的に柿崎が生き残って、無駄にポイントは獲られなかった。

 

言い方を変えれば何もしていない。その事実が柿崎に無力であるという意識を与える。

 

「そういうときもあるでしょ。普段のチームならともかく、混成部隊ですよ。気にしなくていいんじゃないすか。次に活かせりゃいいでしょ。それに俺も1Pも獲れてませんし」

 

米屋も柿崎ほどではないにせよ、長くチームで戦った経験があるから出来るフォローを送る。柿崎も後輩からの言葉を素直に受け止めておく。

 

「そうだな。負けたけど、九条が予想以上の結果残してくれたもんな」

 

「俺的には村上さんだけじゃなくて、二宮さんと風間さんの総合上位のどちらかを倒したかったんですよね」

 

「九条先輩、欲張り過ぎでしょ。村上さんと荒船さんを同時にやれたんだから十分じゃないですか。二人ともA級でも申し分ないんですよ」

 

「初めてのチーム戦だから勝ちたかったんだよ」

 

「あーそういう」

 

これには全員が同意した。確かに自分たちもデビュー戦の勝ちたいという気持ちは普段の戦いにはない気持ちであった。それだけに柿崎は余計に勝てなかったことを悔やむ。

 

「でも、かっこよかったよ九条くん」

 

「んっでしょう!」

 

ひざまづいていた状態から流れるように立ち上がり、左手を腰に、右手は額に置く。さっきまで悔しさはどこへやら、一気に元気百倍。男たちのけなげのフォローなど彼の前では塵に等しいのだろう。

 

「でも、お前が諏訪さんの銃の気配に気づかなかったのかよ?何のためにお前がいたんだよ?」

 

「人をサイドエフェクトだけの人間だと思うなよ!?」

 

米屋からの辛口に九条は半泣きになってしまう。九条が気付けなかったのも無理はない。

 

諏訪は直前までショットガンを出さずに、チャンスになるまで勝負の行方を伺っていた。

 

それも二宮の指示で、ほとんどが二宮の思惑通りとなったが、二宮としては、九条が米屋と合流せずに、荒船が九条を倒してくれれば、米屋と村上の2人分のポイントも得られたし、荒船のポイントも奪われずに済んでいた。

 

これは米屋と合流する事や九条の銃なしアステロイドが二宮の予想を上回る結果になった九条の功績。ではなく、二宮が九条の実力を見誤ったミスが招いた結果である。

 

「マスタークラスとはいえ、ブランクのある荒船さんに真正面から勝てなかったのはショックだけどな」

 

「自惚れんじゃねえ!」

 

「うぉッ!」

 

後ろからヘッドロックを掛けられる。その正体は九条に負かされた荒船である。

 

「九条ォ。意外と頭使ってくれるじゃねえか」

 

「デデデデデ!タップタップ荒船さん!あと意外は余計ですよ!」

 

荒船だけでなく、戦った隊員も集まりつつある。

 

「よっしゃ!九条、うちの部隊来い!可愛いオペレーターがお前を待っている!」

 

「や、諏訪さん。どこの部隊のオペレーターもかわいいんで、プラスにはなりませんよ。それにまだスコーピオン、マスタークラスじゃないんで」

 

「前も聞いたぞそれ。スコーピオンがマスタークラスになったらつってたけど、今ポイントどんぐらいなんだよ?あと、パーフェクトオールラウンダーにしてやっからよ、荒船隊来い。」

 

「行きませんて。6987でしたね。てか、荒船さんは孤月じゃないですか。俺のスコーピンじゃ、アタッカーとして畑違いっしょ?」

 

「こまけーこたぁいいんだよ。スコーピオンのデータも欲しいしよ」

 

パーフェクトオールラウンダーという、遠中近の3つ戦闘用トリガーを、マスタークラスにすることを目指す荒船にとって、九条はいい実験体だ。

 

口にこそ出さないもの、九条は自分の目指すスタイルが見えつつある。というよりは、密かに練習している。

 

今回、それを使わなかったのは未だスコーピオンがマスタークラスでないことを差し引いても、実戦に投入出来るものではないからだ。

 

ヒントは海外の映画で、マネと修正を繰り返していたら予想以上にかみ合っていた。

 

「んじゃ、俺はこれで失礼させて貰いますわ」

 

「用事あんのか?」

 

「未来の伴侶を探しに」

 

ナンパか、と誰かが全員の心の声を代弁した。

 

 

 

 

 

 

 

 





ども、ベリアルです。

以前の投稿から約1年。忙しくて、書く暇がなく、内容が吹っ飛んでいました。

しかし、エタりたくない一心で投稿できました。内容は多分めちゃくちゃですが。

さて、1年ぶりに投稿出来た”女好きボーダー隊員 ”についてですが、これヒロインどうしようか迷っています。というよりも、ラブコメ事態得意ではないので、ヒロインとどう繫げるかわかりません。もう、ヒロインいなくてもいいんじゃね、と思うのですがそうはいきません。他小説の練習にもなるので。

ヒロインに関する意見、感想がありましたらお願いします。

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