??? の大冒険
『はぁっ…はぁっ…はぁっ…』
灼熱の太陽がそびえ立つ、生き物を焼き殺すほどの強烈な日光が降り注ぐ砂漠。
その中心に、とある男がいた。
日に輝く綺麗な鎧。
全身に纏っているそれは、あらゆる攻撃を防ぐだろう。
さりとて豪奢であるわけではない。
装飾品は全くない。
素材も特別なものではない。
機能だけに特化した鎧。
ただ守るため。
ただ防ぐため。
誇り高き信念の下でなくては、この鎧を使うことなどできないだろう。
騎士。
その男を言い表すならば、これが一番合う。
そんな男が灼熱の大地を、剣を腰に携えてただ歩いていた。
『あと…、少し…。 あと少しで…、あの力が…。 待っていて…ください…王よ…』
息も絶え絶えに歩く。
全ては、かつて生をともにした王のために。
かつて、騎士には忠誠を誓った王がいた。
しかし、とある事情で共にいることができなくなり、離れてしまったのである。
騎士は、それが自分の力不足が原因の一つだと考え、新たな力を探し続けていた。
そして今、あと少しでその力を得られるまでに至っていた。
『ぐ、あぁ…』
だが、騎士の力は底を尽きかけていた。
無理もない。
彼は砂漠に至ってから一か月間、休みなく歩き続けていた。
砂漠とは暑いだけではない。
昼間はどこまでも暑くなるが、夜になると凍えるほどに寒くなる。
気温の上下がとてつもなく激しい。
それが砂漠である。
その砂漠を、一か月。
普通の人間ならば生きられるはずがない。
いくら信念があろうとも、体力には限界がある。
そして、遂に男はその場に倒れ伏してしまった。
『はぁっ、はぁっ…。 クッ、こんな、とこ、ろで…』
男は必死に体を動かそうとするが、まるで動かない。
まるで体が鉛になったようだった。
空を見ると、雲が一つもない。
影ができることすらないだろう。
もう、動く体力はない。
(王よ…、申し、訳…ありま…せん…)
そう思って、男は目を閉じてしまった。
私では、到達できなかった。
王への忠誠を、守り通せなかった。
その悔しさを胸に抱き、男は静かに息を引き取った…
…はずだった。
『ヴェーイ…』
薄れゆこうとしていた意識の中、男は何か奇怪な声を聴いた。
(なんだ、これは。 少なくとも人間ではない…)
最後の力を振り絞って首を動かし、声の聞こえた方を向くと…
そこには、真っ黒なゴムボールが転がっていた。
『…は?』
『…ヴェーイ………』
コロコロコロコロ…、ガッ
グイーン…、コロコロ…、ポテッ
コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ…
ボールは男の前まで転がると、そのまま男の腹の上まで転がり、反対側に落ちてまた転がって行った。
『なん…だ…、お前、は…』
分からない、その一言だった。
しかし、嬉しいことがあった。
(!? 体の、疲れが無くなっている…!!?)
先程まであった男のダメージが、全くなくなっていた。
どういうことだ?
まさか、このボールが助けてくれたのか?
『あ、貴方が助けてくれたのか?』
『…ヴェーイ』
ボールはただ鳴くだけで、そのまま転がり続ける。
その方向は、自分が行こうとしていた場所の方向だった。
(導こうとしているのか? 私を…)
『ま、待って下され、ゴムボール殿!』
男は即座に立ち上がると、急いでボールを追っていった。
その心に、先程までのあきらめは微塵も残ってなかった。
ただまっすぐに、自らの王のために…。
すまん。