武炎
「どこだ、どこにある…!」
夜。
不動遊星はあの後、かつてジャッカル岬の薬を取りに行った時と同じ要領で、難なく管理局にしに忍び込むと、そのまま長官室に入り情報収集を始めた。
彼は部屋に会ったパソコンに電源を入れ、雑賀から教えてもらった解除方法でロックを解いていく。
そして現在、必死に山崎恵一に関する情報を調べていた。
「くっ、複雑にファイリングしてある。 機密情報の保管はできているわけか…」
しかし、解除した後は怒涛のファイルの嵐。
何十万もあるであろうファイルが広がっており、ダミーとして空のファイルが多数存在する。
それだけならまだいい。
ファイルによっては、パソコンのデータがクラッシュしてしまうような危険なウイルスが入っているものも確認できた。
寸前に気付いてどうにか止めることができたが、次に同じことができるか怪しい。
念に念を入れ、何度も確かめなくては正しい道が分からないのである。
「…プログラムのプロに対する対抗策か…。 確かにこれならば泥臭い作業が必須になる」
下手をすれば全てが取り越し苦労になってしまう。
それも、知りたい情報を目の前にしてだ。
だがゆっくりもしていられない。
焦りながらも冷静さを欠かず、不動は地道にプログラムを開いていった…。
そして数十分後。
いつ誰が来るか分からない状況の中で、不動は遂に見つけることができた。
『次回の大会に関する調査表』と偽られているデータには、目当ての情報が入っていたのである。
「…! これか…!!」
不動はすぐに自分のパソコンにデータをコピーし、一目散にその場を出ていく。
帰り際に何人かに見つかってしまったが、あらかじめ決めていたルートをたどり、容易く脱出した。
(この中に、アイツの情報が…。 待っていろ、恵一…)
不動は山崎に関するデータを大事にしまい、彼が眠る双子の家に向かっていった…。
しかし、家の前に着くと不動は愕然とした。
まず入り口。
シンプルでセンスの感じる綺麗な扉は存在せず、入り口の隅が黒く焦げている。
恐らく何か爆発が生じたのだろう。
「…!? これは…! 龍亞! 龍可! 恵一!!」
嫌な予感が頭をよぎり、不動はその中に家の中に走っていった。
辺りには所々見覚えのある黒が付着しており、さらに不動の心を穏やかでなくしていく。
(この黒は、あの時の…!? まさか、三人に何か…!?)
不動は祈った。
三人の無事を。
ただ祈り、必死に探した。
そして、自分と恵一が眠っていた部屋。
そこを見た時、双子を発見することができた。
二人はなぜか抱き合っており、互いの肩に顔を埋めて泣いているように見えた。
「っ! 龍亞! 龍可! ここにいたのか! いったい、一体何があったんだ!?」
不動は二人のそばにより、話を聞こうとした。
この状況は明らかに異様だ。
辺りには十六夜アキの控室にあった闇が散らばっており、ドアがない。
何かが起きたのだ。
不動は、言いようもない焦燥感に駆られていた。
少しでも、何があったか知りたい。
その一言であった。
「返事をしろ! しっかりするんだ、二人とも! どうしたっていうんだ!?」
「う…あ…、ゆう、せい…」
不動の言葉に、双子の一人がようやく反応した。
彼は顔を上げ、不動を見る。
その眼は、赤く腫れている。
「龍亜、どうしたんだ。 この部屋は、何があった?」
「う…く…、ゴメン、遊星…。 俺たち…、止められなかった…。 あの怪物が…、おっさんを連れて行くのを、見ることしか、できなかった…」
涙を流し続け、龍亞は懺悔の言葉を言った。
「怪物…? 怪物とはなんなんだ?」
「分からないわ…。 ただ、恵一さんの眼が真っ黒になって…、体中から黒い煙を出してたの…」
次の質問に答えたのは龍可であった。
彼女もまた目を赤くしており、震えている。
だが、その眼の奥には強い決意の兆しが見えた。
不動はそんな彼女を見て違和感を覚えたが、それ以上にとある単語が気になった。
「…黒い…煙…? 龍可、もしかして恵一のまわりは、緑色でおかしな形をした腕がなかったか?」
「緑色…? ううん、そんなの見なかったわ」
「そうか…」
彼女の話を聞くと、どうやら犯人はドレッド・ルートではないようだ。
ならば、犯人は他の邪神か…。
そう考えると、不動は二人を落ち着かせるために抱き寄せ、労いの言葉をかけようとしたた。
「二人とも、怖かっただろう。 よく言ってくれた。 あとは俺に任せろ、恵一は必ず救ってみせ…」
「…、待って、遊星」
それを止めたのは龍可だった。
彼女は先程まで泣いていたとは思えないほど強い目をして、遊星を見て言い放った。
「私も…、戦いたい…。 あの竜を…、どうしても知りたいの…」
「龍可…?」
彼女は不動から離れると、ゆっくりと口を開く。
「貴方とのデュエル時に召喚された邪神イレイザー…。 実はね、私、前にあの竜と出会ったの…」
「…なに?」
「フォーチュンカップの時…。 皆が貴方のデュエルを見ていた時、あの竜はいきなり目の前に現れて、十六夜アキって人の居場所を聞いてきたの…」
不動と龍亞が困惑している中さらに彼女は続ける。
自分が秘めていた思いを彼らに告げる。
「あの竜は最初はとても怖かったけど、最後はとても優しそうだった…。 口調も穏やかだったし…。 私は、あの竜が本当に悪い竜とは思えないの」
「龍可! 何言ってんだよ! あの竜は邪神なんだぞ! それにあのおっさんだって邪神に操られて変になってたじゃん!」
「龍亜の言うとおりだ、龍可。 あの竜は、邪神は恵一を操り、何かをしようとしている。 それに大会中に出たというのなら、あの事件の犯人である可能性もある」
「…十六夜アキの関係者が何人か死んでた、って事件でしょ?」
「…知っているのか?」
「うん。 でも、私はそれも何か理由があるからって思うの。 もしかしたら邪神は、恵一さんを利用しているんじゃなくて…、守ろうとしているんじゃないかしら…?」
その言葉に、不動と龍亞はさらに驚いた。
彼女は何を言っているんだ。
あの化け物が…、恵一を守っている…?
二人は混乱に混乱を重ねていた。
「龍可、残念だがそれはありえない。 あのデュエルの時にも見ただろう。 アイツらは恵一の精神を操り、我が物にしている。 許されることじゃない…」
「でも! 本当に邪神が何かをするんだったら、恵一さんを使う必要なんてないじゃない! 恵一さんがいなくても、邪神達は勝手に動いている。 だったら、邪神は別の目的があるんじゃないの?」
「! それは…でも…」
龍亞は言葉を詰まらせて困惑したが、不動は逆に思うところがあるのか、彼女の言葉を聞いて考え始めた。
「…確かに、龍可の言うとおりだ。 邪神が起こしたと思われる事件には、必ず恵一は関与していない。 別の目的があると考えるべきなのか…?」
「私は、その目的を知りたいの。 そして、あの竜がクリボンの言うとおり悪い存在なのか、それを確かめたいのよ」
龍可は自分が思っていたことを言い切り、もう一度自分の決意を述べた。
その瞳は先程以上に強い意志を持っており、折ることなどできないだろう。
不動はそんな彼女を見てついに観念し、一人で見ようと思っていた山崎に関する情報を見せることにした。
「…分かった。 お前がそこまで言うのなら、俺が持ってきたデータを一緒に見よう。 そこに何が書かれていても、後悔するなよ?」
「…えぇ、もう戻る事なんてできないわ。 私は…「ちょっと待てよ、龍可!」」
二人の会話にいきなり龍亜が入ってきた。
彼もまた、決意をした一人であった。
「俺にも、俺にも見せてくれ! あの邪神とかいう奴がどんなもんなのか知りたいんだ! 大丈夫、危険なのは百も承知だぜ」
「龍亞…でも…」
「…頼むよ、確かに俺には龍可のように精霊ってのが見えるわけでもないし、遊星のようにデュエルがすごく強いわけでもないけど…、それでも一人だけ何も知らないってのは嫌なんだ…」
「…遊星…」
「あぁ。 龍亞、お前の覚悟は分かった。 これを見たらもう後戻りはできないだろう。 それでもいいんだな?」
その言葉に、龍亞は大きく首を振った。
「言っただろ、百も承知だって! ほら、皆で見ようぜ。 時間もないんだろ?」
「よし…、二人ともこっちに来てくれ。 データを立ち上げる」
そうして、三人の決意は固まった。
身を寄せ合うようにパソコンの前に集まると、ディスクを入れてデータを開ける。
遊星はその中にあるデータを開き、山崎の情報を開示させた。
その中には…。
「い、痛い痛い! 痛いってキミ! もうちょっと優しく持ってよ!」
同時刻。
真っ暗な夜の中、山崎恵一は不思議な少女が出したモンスター侍に担がれて宙を舞っていた。
しかし文字通り担がれているために、体のへンなところに血が偏ってしまっているので痛かったり麻痺していたりしてキツイ状態であった。
「…ここら辺でいいわね、降ろして紫炎」
『…御意』
少女の一言に応じると、侍は近くの駐車場に飛び降り、そこに少女を優しく降ろした。
それに続いて山崎をどさりと降ろすと、当たり所が悪かったのか地面をゴロゴロしながら唸りだした。
「お…おぉ…、顔が…腰が…足が………、痛いうえに動かない…」
「何言ってんのよバカ先生。 ほら、さっさと立ちなさい」
そう言うと、彼女は手を山崎の前に差し出した。
その顔は、若干赤い。
「…優しいのやら荒々しいのやら…。 とりあえずありがとう。 …えっと、キミは…」
「ッ! …」
山崎の一言を聞くと、なぜか少女は悲しそうな顔をして手を引っ込めた。
なぜか涙目になっており、下をむいている。
「え…、どうしたのキミ………!?」
不審に思って彼女に話しかけようとした時、山崎は自分の首元に違和感を覚えた。
見ると、刀が押し付けられている。
持ち主は、先程の侍だった。
『…貴様…、姫がここまで案じてくださっているのに…、それを不意にするつもりか…!』
「や、やめなさい紫炎! ボクが悪いのよ、先生は何も悪くないわ!」
『しかし、姫』
「いいから黙りなさい! 刀を引いて…、ッ!? 紫炎、下がって!!」
彼女のいきなりの叫びに驚きながらも、侍は瞬時に山崎から飛び退いた。
その後山崎を見て、少女の命令の意味を理解する。
『…これは…』
「ようやく現れたわね、化け物…!!」
「は? どういうこと?」
山崎は気づいていない。
自分の後ろから途方もない闇があふれ出ているのを。
その闇は次第に集まっていき、形を作り、その威光を示す。
『…ヴェーイ………』
(ン…? ウオッ!? また勝手に出てきたんかお前! なんだこれ、また機械の故障か? まぁ古物だけどさ…)
「邪神アバター…、お前が先生を…。 ここで決着をつけてやるわ! 勝負よ!!」
そう言うと、少女は腕のデュエルディスクを起動させた。
侍も姿を消し、彼女のデッキに戻っていく。
そしていきなりの行動に、山崎は未だについていけていなかった。
「え? ん? お? どういうこと?」
「アホ面晒してないで、さっさとディスクを起動させなさいよ。 アンタがどれだけボクを嫌っていても、アンタを一人にはさせないわよ!」
『…うりゅー、うりゅりゅ…』
「大丈夫、怖がらないで。 貴方も、あのバカもボクが守る。 化け物なんかに渡さないわ」
山崎は完全に理解したわけではないが、とにかく彼女がデュエルをしたいということは理解できた。
きっと遊び足りない血気盛んな子なのだろう。
しかし、今は午後の十時。
高校生が遊んでいてはならない時間だ。
ならば、さっさと終わらせて彼女を帰らせよう。
そう判断した。
「…うい、じゃあちゃっちゃとやりましょう。 逝きますよ…」
「「デュエル!!」」
山崎恵一 LP4000
???? LP4000
(はぁー、とりあえず手札に奴らは無し…と)
僕は手札を確認し、戦略を練った。
「いくわよ、ボクのターン!」
あ、先行取られた。
あかんな、長考はこれから控えないと。
「ボクは魔法カード、紫炎の狼煙を発動。 デッキより真六武衆カゲキを手札に加える! さらに六武の門、六武衆の結束を発動!」
紫炎の狼煙
自分のデッキからレベル3以下の「六武衆」と名のついたモンスター1体を手札に加える。
六武の門
「六武衆」と名のついたモンスターが召喚・特殊召喚される度に、このカードに武士道カウンターを2つ置く。
自分フィールド上の武士道カウンターを任意の個数取り除く事で、以下の効果を適用する。
●2つ:フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」または「紫炎」と名のついた効果モンスター1体の攻撃力は、このターンのエンドフェイズ時まで500ポイントアップする。
●4つ:自分のデッキ・墓地から「六武衆」と名のついたモンスター1体を手札に加える。
●6つ:自分の墓地から「紫炎」と名のついた効果モンスター1体を特殊召喚する。
六武衆の結束
「六武衆」と名のついたモンスターが召喚・特殊召喚される度に、このカードに武士道カウンターを1つ置く(最大2つまで)。
また、武士道カウンターが乗っているこのカードを墓地へ送る事で、このカードに乗っていた武士道カウンターの数だけデッキからカードをドローする。
ふぉお!?
なんかいきなり出てきた!?
ていうかあの子六武衆使いか。
やだなー、嫌な思い出しかないし…。
ていうか、こっちじゃ「あの子」以外使ってなかったから嬉しかったのに。
「さらに、ボクはさっき手札に加えたカゲキを召喚するわ、出てきなさいカゲキ!!」
真六武衆-カゲキ
ATK200 DEF2000
このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下の「六武衆」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
自分フィールド上に「真六武衆-カゲキ」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが表側表示で存在する限り、このカードの攻撃力は1500ポイントアップする。
『はっはぁ!! 久しぶりの喧嘩だキバるぜぇ!』
「真面目にやりなさいよ、相手はあの邪神なんだから」
『分かってるさ姫様! 奴さんは最強の最強! 俺は今日さいっこうに盛りあがってるぜぇぇ!!』
「…はぁ」
おぉ、あのカード喋るのか。
珍しいエフェクトだ。
確か武藤や遊城たちも似たようなカード持ってたな。
僕のカードは唸ったり吠えたりするくらいだからうらやましい。
「カゲキの効果を発動! 手札より六武衆と名の付いたディレ家の従者を一人呼び出すわ。 出てきなさい、影武者!」
六武衆の影武者
ATK400 DEF1800
自分フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」と名のついたモンスター1体が魔法・罠・効果モンスターの効果の対象になった時、その効果の対象をフィールド上に表側表示で存在するこのカードに移し替える事ができる。
『推参…』
「分かってると思うけど、今回は遊びじゃないわよ。 気を引き締めなさい」
『…おおせのままに』
ほー、カゲキ君がはっちゃけキャラなら、影武者は静かなキャラなんだ。
これは面白いね。
いやいや、感心してる場合じゃない。
これは不味いぞ、あれは確かチューナーだ。
ていうか今、ディレ家って言った?
なんだっけ、どっかで聞いたような…。
まぁ、いいか。
「ボクは二人の召喚でカウンターが貯まった六武衆の結束の効果を発動。 このカードを破壊して、カードを二枚ドロー」
『…うりゅー』
ん?
またなんか聞こえたな。
「よし、来てくれたわね。 大丈夫、怖がらなくてもいいわ。 …行くわよバカ教師! レベル3のカゲキにレベル2の影武者をチューニング!」
いかん、やっぱりだ!
うわー、どうしよう。
「戦火に刃泣きし時、猛る炎が舞い降りる。 高らかにその名を鳴らせ! シンクロ召喚!現れなさい、真六武衆シエン!!」
真六武衆-シエン
ATK2500 DEF1400
戦士族チューナー+チューナー以外の「六武衆」と名のついたモンスター1体以上
1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動した時に発動する事ができる。
その発動を無効にし破壊する。
また、フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する「六武衆」と名のついたモンスター1体を破壊する事ができる。
人を覆いそうなほどの火柱が上がったかと思うと、その中から真っ赤な鎧を纏った侍さんが出てきた。
…お久しぶりです、シエンさん。
『姫、早き謁見の再、幸の至り』
「挨拶はいいわ、それよりも分かってるわね?」
『是、彼奴の体は微塵も残しませぬ』
「…、邪神の事よね?」
『………当然』
おや、すごい殺気を感じる。
あの侍さんすごく怒ってるな、なぜだ。
「さらにボクは六武の門を発動。 デッキより真六武衆キザンを呼び出すわ」
いかん、やっぱり来たか。
あのカードはホントに厄介だったと思う。
「キザンはフィールド上に六武衆がいる場合、特殊召喚ができるわ。 出てきなさい、キザン!」
真六武衆-キザン
ATK1800 DEF500
自分フィールド上に「真六武衆-キザン」以外の「六武衆」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
自分フィールド上にこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターが表側表示で2体以上存在する場合、このカードの攻撃力・守備力は300ポイントアップする。
『…あ奴が姫様を泣かせる外道か…。 殿、共にあの不届き者に裁きを』
『あぁ、あの男生かしては返さん』
「ちょ、ちょっと二人とも! ちゃんということ聞きなさいよ!?」
…、なんとも不思議な光景だ。
モンスターの会話に、持ち主が割って入るとは。
ここまで進化したのか、海馬。
「何見てるのよ…。 私はカードを二枚伏せ、ターンエンドよ」
…、あら、これで終わりか。
確か前の世界じゃ、もっとブンブンしてたと思うんだけど…、いいか。
「では僕のターン、ドロー…」
…、いけるか…?
このターンは無理か…。
「…、僕はまず手札より手札抹殺を発動します」
手札抹殺
お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする。
「…シエンの効果を発動するわ。 行きなさいシエン、頭首一括!」
彼女の命令のもと、シエンは僕が発動した手札抹殺のカードを切り裂いた。
よし、これでシエンはもう効果はない。
「僕は魔法カード、愚かな埋葬を発動。 対象は馬頭鬼。 さらにゾンビマスターを召喚」
おろかな埋葬
自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。
ゾンビ・マスター
ATK1800 DEF0
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、手札のモンスター1体を墓地へ送る事で、自分または相手の墓地のレベル4以下のアンデット族モンスター1体を選択して特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
あとは…、コイツらいっとくか。
「僕はカードを三枚伏せ、ここで天よりの宝札を発動してターンエンドです。 どうぞ」
天よりの宝札(漫画オリジナル効果)
お互いのプレーヤーは手札が六枚になるようにカードを引く。
「…邪神は手札に来てないようね、先生。 ボクのターン…」
彼女は引いたカードを見て目を見開くと、ニヤリと笑ってこちらを見た。
なんだろう、嫌な予感がする。
「フフ…、どうやらアンタは闇には縁がないようね…。 いくわよ、ボクは六武衆の露払いを召喚!」
六武衆の露払い
ATK1600 DEF1000
自分フィールド上にこのカード以外の「六武衆」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合に発動する事ができる。
自分フィールド上に存在する「六武衆」と名のついたモンスター1体をリリースする事で、フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。
『おや、お久しぶりです姫様。 …あの邪気を放つ青年は、件の?』
「ええ、そうよ。 久しぶりに会って早々に悪いけど、ちょっと手伝ってもらうわよ」
『…なるほど、あれをするのですか』
…なにするんだ?
「行くわよ、魔法カード六武式三段衝を発動! その伏せてあるカードを全滅させてもらうわよ!」
六武式三段衝
自分フィールド上に「六武衆」と名のついたモンスターが表側表示で3体以上存在する場合、以下の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て破壊する。
●相手フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カードを全て破壊する。
●相手フィールド上にセットされた魔法・罠カードを全て破壊する
げっ!?
あのカードは、不味い!
「僕はトラップカード威嚇する咆哮を発動!」
威嚇する咆哮
このターン相手は攻撃宣言をする事ができない。
「残念だけど、シエンで破壊するわよ。 行きなさいシエン、頭首一括」
「ふははぁ、残念! 二枚目ダァ!」
「! そんな!?」
そう、彼女が何かアクションを起こした場合に対応できるように二枚このカードを伏せておいたのだ。
こうすればとりあえずあの子は攻撃できない。
「で、でも最後のカードは破壊させてもらうわよ! 行きなさい、皆!」
『『『ハッ』』』
三人のモンスターは僕の伏せカードの前に来ると、各々の武器で切り裂いてしまった。
だが残念、そのカードはただのトラップじゃない!
「…、キミが破壊したのは黄金の邪神像。 破壊されたために特殊召喚するよ」
黄金の邪神像
セットされたこのカードが破壊され墓地へ送られた時、自分フィールド上に「邪神トークン」(悪魔族・闇・星4・攻/守1000)1体を特殊召喚する。
「!? くっ、こうも裏目に…。 ボクはカードを一枚伏せ、ターンエンドよ!」
…よし、これでこのターンは防げた…。
次は僕のターン。
頼むから来てくれ…ん?
「あれ? こんなカード入れてたっけ?」
「!? 先生、その腕は…!?」
「え?」
見ると、僕の腕が赤く光っていた。
なんだこれ、どういうこと?
袖をまくってみると、謎の光る痣ができていた。
これは…?
「…くっ、痣が…」
「痛い…」
「遊星!? 龍可!? いったいどうしたんだよ!」
「…いきなり…、赤き龍の痣が光り出した…。 きっと、誰かがデュエルをしているんだ。 ジャックか…違う奴か…」
「もしかしたら、別の人かも…」
「分からない、だが戦っている相手も相当の手練れだ。 くっ、恵一の事は一先ず後だ。すぐに向かわなくては…、行くぞ龍亞、龍可!」
「「うん!」」
「くっ!? 腕…が…」
「だ、大丈夫なのジャック!?」
「女、俺の心配などするな! 早くそのモンスターを召喚するんだ!」
「は、はいっ。 えーとえーと、これね」
「!? 違う! その隣だ馬鹿者!」
「ひ、ひえぇぇ!?」
「ッ…腕が…」
「アキ、どうかしたのか?」
「…痣が…痛むのです…」
「…もしかしたら、誰かが力を使っているのかもしれないな…」
「ディヴァイン、一度外へ行ってもよろしいでしょうか? 何か…、胸騒ぎがするんです…」
「そうだな…、…分かった。 キミがそう言うのなら、外出を許可しよう。 だが、すぐに帰ってくるんだぞ?」
「感謝します、ディヴァイン」
「…シグナーの、痣…」
『姫、なぜ彼の者が赤龍の痣を…?』
シグナーって…、この前ゴドウィンが言っていた…?
この子もアイツと面識があるのかな。
「あの子が言っていた…、赤き龍の従者の証…。 でも、邪神を持つ先生が…なんで…?」
…よく分からんが、これがあるといかんのか?
まぁ、光る痣って見たことないけど。
ていうか…、また吐き気が…。
「う…ぐ…あぁ…」
「!? 先生、大丈夫!?」
なんか心配してくれているけど、大丈夫とすらいえない。
吐くのを抑えるので精いっぱいだ。
「げぇ…うぷ…」
『姫、おそらく邪神が赤き龍の力を…』
「取り込もうと、しているの…!?」
はい?
何言ってるのよ、この子ら。
邪神さんはまだ手札にすら来てないし…、ていうかこれが来てもシンクロなんて…。
…あったわ、三枚。
なんで?
あれ、入れてたっけか?
…、まぁ使えるし、やるか。
「僕は手札よりゾンビキャリアを召喚します!」
ゾンビキャリア
ATK400 DEF200
手札を1枚デッキの一番上に戻して発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。
『ウグ…ガ…ゴギャアァァアア!!』
うおぉ!?
気持ちワル!!
予想以上に気持ち悪い鳴き声を上げて出てきたのは、相当便利なチューナーモンスターであるゾンビキャリアだった。
闇から這い出るように現れたそれは、エフェクトも相まって相当キモかった。
「さらにゾンビマスターの効果発動。 手札よりモンスターを捨て、墓地の馬頭鬼を特殊召喚! 行きますよ、レベル4の馬頭鬼にレベル2のゾンビキャリアをチューニング!」
ゾンビキャリアは二つの輝く星となって馬頭鬼の周りを飛び交っていく。
その時、頭の中に妙な文が流れてきた。
こんな文が普通に出てくるとか、自分は結構アレな頭みたいだ、しょげる。
まぁ、別にいいか。
邪神出す時も似たことやってるし。
「今ここに、盛者必衰の果てを成す。 さらなる高みに堕ちて逝け! シンクロ召喚! 堕翔せよ、デスカイザードラゴン!!」
デスカイザー・ドラゴン
ATK2400 DEF1500
「ゾンビキャリア」+チューナー以外のアンデット族モンスター1体以上
このカードが特殊召喚に成功した時、相手の墓地のアンデット族モンスター1体を選択し、自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚できる。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
広がる闇の中から、おどろおどろしい竜が現れた。
その姿は禍々しく、不動のスターダストと比べると雲泥の差であった。
「それが…、アンタの竜なのね…!」
え、違うよ?
どっちかっていうとイレイザーの方がしっくりくるんだけど…。
ていうか、ここでデスカイザー出しても効果使えないな。
せめて丸藤先輩から貰ったあのカードが来てからにすればよかったか…。
「でも、そのモンスターの攻撃力は2400。 ボクのシエンには及ばないわよ?」
うん、確かにそうだ。
でもね、僕のデッキにはあるカードが存在する。
神すらも強化する装備カードがね。
でも、まずは…。
「まだまだ、僕はデビルズサンクチュアリを発動。 どうする? シエンで無効化する?」
デビルズ・サンクチュアリ
「メタルデビル・トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を自分のフィールド上に1体特殊召喚する。
このトークンは攻撃をする事ができない。
「メタルデビル・トークン」の戦闘によるコントローラーへの超過ダメージは、かわりに相手プレイヤーが受ける。
自分のスタンバイフェイズ毎に1000ライフポイントを払う。
払わなければ、「メタルデビル・トークン」を破壊する。
「………発動するわ」
よし、引っかかった!
これならいける!
「よっしゃあ! 本命はこっちだよ! 装備魔法カード神の進化!」
神の進化(漫画オリジナル改訂)
全ての効果によって、このカードは無効にならない。
装備モンスターの攻撃力・守備力は1000ポイントアップする。
ATK 3400
「か、神の進化ですって!? なんでアンタがそのカードを!?」
「え、知ってるのこのカード? いやね、とある人が作ってくれたカードなんだけど、邪神にも効くから重宝してるんだよねー」
まぁ、その人はペガサスさんなんだけどね。
デュエルキングダムから帰ってから数日後に持ってきてくれたんだよねー…。
そういや、数年前にペガサスさんが養子を貰ったって噂で聞いたけど、どんな子なんだろう。
いや、まったく関係ないね。
デスカイザーは神の進化の効果によってさらに強力になっていく。
ただれていた外皮は強靭な鎧になり、その眼に光が宿る。
「よし、これで侍も倒せる。 …っと」
そうだ、そういや露払いさんの効果を忘れてた。
まずはあれだな。
「露払いを攻撃、デスゲイズ ヘルバースト!」
「っ! きゃあぁ!!」
????LP2200
露払いさんは何の抵抗もできずにデスカイザーの攻撃を受け、灰になってしまった。
とりあえず目先の脅威は去った。
シエンさんは倒しても復活するし、まずはこっちでよかっただろう。
「僕はそのまま、ターンエンドだよ」
「………」
あれ?
何の反応もない。
どうしたんだろう。
「えっと、キミー? 大丈夫…?」
「…先生…、アンタは…どこまでバカなのよ…」
え、なんだい?
なんで怒ってるの?
「邪神に操られて、人を傷つけようとして、ダークシグナーなんかと手を組もうとして、赤き龍も服従させて…グスッ…」
え、泣いてる。
なぜだよ。
僕なんかした?
確かに使ってるモンスターはグロいのばっかだし、子供ならなくかもしれないけど…、なんでや?
「…やっぱりこの子の力を借りるしかないみたいね…。 ボクはまず、トラップカード針虫の巣窟を発動」
針虫の巣窟
自分のデッキの上からカードを5枚墓地へ送る。
え、このタイミングで?
しかも六武デッキでか…。
どういうことだ?
変則デッキなのかな…。
「捨てるカードは…、よしこれならいけるわね…。 さらにボクは六武の門の効果でカウンターを取り除き、六武衆ヤリザを手札に加えるわ…」
『姫…』
『姫様…』
「ごめんなさい、シエン、キザン。 力を貸して」
『『御意。 我らの全ては姫のために』』
よく分からんが話し合っているし。
なんだろう、とりあえず何か飛んでくるのか。
楽しみだ、何が来るんだろうか。
彼女は涙をぬぐってこちらをキッと睨むと、意を決したかのような雰囲気を出した。
おぉ、来るのかい?
「…行くわよ、バカ先生! これだけはやめてあげようと思ってたけど…、もう手加減なんてしないからね…」
彼女は手札からカードを一枚取り出すと天に掲げだした。
その絵は、見覚えがない。
「手札より、幻魔の謁見を発動!」
幻魔の謁見(オリジナル)
自分フィールドに表側表示で存在するカードを三枚まで選択する。
選択した枚数分手札を捨て、以下の効果から一つを適用する。
●選択したカードをモンスターカードとして扱う。
●選択したカードを魔法カードとして扱う。
●選択したカードを罠カードとして扱う。
え、なにあれ。
また知らないカードだ。
不動の時といい、僕もまだまだ勉強不足だな…。
「ボクは手札から三枚墓地に送り、シエン、キザン、そして六武の門をトラップカードとして扱うわ」
んー、効果は分かったけど、どういうことだ?
トラップカードにすることは分かったけど、それでどうする………待てよ?
三枚のトラップカード、それにあの魔法カードの名前…。
おい、まさか…。
「…やっと気づいたようね、バカ先生。 でも遅いわよ、今からボクの城に眠る守護竜を呼び出すわ…」
『うりゅー』
「…ごめんなさい、結局あなたの力が必要になっちゃった…。 守るって言ったのに…、本当にごめんなさい」
『うりゅーりゅ、りゅりゅー!』
「…そう言ってくれるのね、ありがとう。 お願い、力を貸して!」
彼女が叫ぶと、その後ろからシエンが出てきた時とは比べ物にならないほどの火柱が上がり、雲を割って天へと突きぬけて行った。
さらにその炎は広がり、暴風を巻き起こす。
そのエフェクトは、まるで邪神を出す時のソレと似ているように感じた。
(っていうかやっぱりアレか!? なんだこりゃ、影山さんの時よりも激しくなってないかってアツッ!?)
風に乗って火の粉がこちらまでやってきて、周りを焦がしていく。
あ、髪の毛ちょっと焦げた。
「我が軍門に下りし豪炎の化身よ、その魔を持ちて邪を穿て!!」
彼女はかっこいい掛け声を言い放ち、勢いよくそのカードをセットした。
その瞬間炎は一気に散っていき、その中からものっそい見覚えのある竜が出てきた。
「爆炎豪臨、蹂躙せよ! 神炎皇ウリア!!」
神炎皇ウリア
ATK0 DEF0
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上に表側表示で存在する罠カード3枚を墓地に送った場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードの攻撃力は、自分の墓地の永続罠カード1枚につき1000ポイントアップする。
1ターンに1度だけ、相手フィールド上にセットされている魔法・罠カード1枚を破壊する事ができる。
この効果の発動に対して魔法・罠カードを発動する事はできない。
『ウリュウアアアァアアア゛ア゛ア゛!!!』
そして、遂にソレは完全に顕現した。
オシリスの天空竜に似た、炎の竜。
創られた神、ウリアが目の前に現れた。
…あれ、でも彼女の墓地ってそんなにトラップなくね…?
その時、山崎はおろか対戦相手である少女も気づいていなかった。
二人のデュエルが複数の者に見られていたことを。
数は五人。三人、一人、そしてもう一人がそれぞれ違う方向から見ていた。
三人は赤いDホイールを携えて…
「!! 恵一!? まさか、恵一がシグナーなのか!?」
「え、あそこにいるのおっさんかよ! なんだ、誰とデュエルしてんだ?」
「…イレイザーはいない…。 じゃあ恵一さんが出してるあの竜は…?」
一人は真っ赤な服を身に纏って…
「先生…? その女の人…誰なの…?」
そして、もう一方の一人は三体の精霊と共に、狂笑を浮かべて…
「アはッ…、恵一さん…見ーつけたァ…」
それぞれの思いを胸に、彼らは山崎の下へと駆けて行った。
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