宮城県
そこに我が家はある。
ここは地方都市として栄える千代駅周辺からも程近く、比較的栄えている。
だというのに、今この街は閑散としている。普段は活気のある商店街やデパートもそのほとんどがシャッターを閉じており、ひっきりなしに道路を行き交う人も車も、今はほとんど見当たらない。数時間前に政府から出された外出制限の影響だろう。
その変わりに目に飛び込んできたのは、言うまでもなく、ポケモンたちだ。
空を飛び、電線や家の屋根で羽根を休めるとりポケモン。そのとりポケモンに襲われ、時には反撃しているむしポケモン。空き地で日向ぼっこをしているくさポケモン。きっと川や海にでも出向けば、みずポケモンたちにも出会えるのだろう。
こうして彼らを実際に目の当たりにしてようやく、日常が変わってしまったのだと実感する。
今やこの街だけではなく、日本中が、いや世界中がこんな状況なのかもしれない。
たまに警察官の姿も見かける。外出制限にも関わらず出歩いている人に、帰宅もしくは公共施設への避難を促しているようで、俺もさっき家に帰りなさいって注意された。仕事増やしてごめんねジュンサーさん。自分もポケモンに襲われるかもで危険だってのに、公務員は大変ダナー(棒)
しかし、あれだなー、意外と野生のポケモン襲って来ないもんだな。ゲームでも街の中ではエンカウントしないし、やっぱり草むらとかダンジョンにでも行かないと襲ってこないのかな?
…あ、もしかして、スカンプーの特性か?通常、スカンプーの特性は【
うーん、試しに野生のポケモンと戦ってみたかったんだけどなー。
よし、こうなったらこっちから飛び込むスタイルや!
お、手頃なポケモン発見!おーいコラッター、バトルしようぜー!
コラッタ、ねずみポケモン。
その長い前歯は鋭く、一生伸び続ける為、硬いものをかじって削っているらしい。食べ物がある所ならどこにでも生息しており、一日中餌を探し求めているとか。
『コラッタァッ!』
お、コラッタがこっちに気付いたな。よし、行けスカンプー!君に決めた!
腰のベルトに装着していたモンスターボールを手に取ると、小型化していたものが掌大に戻る。モンスターボールをこのベルトに装着すると、小型化して収納されるようだ。かがくのちからって(ry
モンスターボールのボタンを押すとパカリとボールが開き、中から光の粒子が溢れだす。粒子の奔流は地面に集束し、即座に本来の姿を取り戻す。
『スッカンプァ!』
おおおお!本当に出た!うっひょおおおうぃ!テンション上がってきたぜええぇぇぇぃ!スカンプーもすでにやる気十分だな、よっしゃ、初バトル開始だ!
まずは使える技の把握だ。スカンプー、とりあえず自由に戦え!
スカンプーは『プァ!』と一声上げてコラッタに向かって走り出す。コラッタはそれを迎え撃つようにその小さな身体で突っ込んでくるが、スカンプーはそれをいなすようにひょいっとかわす。
【
まずは【ひっかく】か。爪を持つポケモンたちの基本的な技の一つだな。
背中を引っ掻かれたコラッタは、急いで距離をとってそのチャーミングな尻尾を振りだした。なるほど、【しっぽをふる】でスカンプーの警戒心を下げてきたか!
構うな、スカンプー!確かこの技を使えたよな、お前の本領発揮だ、いけ【どくガス】!
………………
………………
………………ん?
え、なに困った顔でこっち見てんのこの子?
もしかしてまだ【どくガス】使えないの?
いやいや、スカンク的に基本的な技だろう。
それともあれ?倫理的に、どくガス、あかん!とかそういうこと?リアルだと結構まずいことになる技なの?大人の配慮なの?
ええい、じゃあ【ひっかく】が出来るなら【みだれひっかき】はどうなのスカンプーくん!?
『スカンプ!』
スカンプーはコクリと一つ頷き、飛び出していった。良かった、それはいけるんだね!
対人戦とかだったら今の隙に確実にやられてたわ(汗)
スカンプーが再びコラッタに前肢の爪で攻撃を仕掛ける。後肢で立ち上がっての不安定な攻撃の為か一撃一撃の威力は軽く、その命中も下がる。
4回程度引っ掻いた所でコラッタは何とか抜け出したが、すでにふらついている。どうやら結構なダメージを与えたようだ。
『コ…ラタァ!』
と、追い詰められたコラッタが体勢を整え、スカンプーに飛び掛かる。
早っ…!【
避けろと命令する隙もなく、コラッタの素早い当て身がスカンプーにヒットする。後肢で立っていたスカンプーは体勢を崩して突き飛ばされ、地面を転がる。
油断した…追い詰められた
転がったスカンプーに目を遣る。
ーーーえ。
すると、何故かそこにスカンプーの姿はなく、代わりにあったのは。
全身が黒い体毛に覆われ、頭頂部だけが炎の様に真っ赤な、小さな子狐の姿だった。
◇◇◇
沈みかけの太陽が空を赤く染め、街全体に夜の帳が下り始めている。
依然としてニュースは謎の生物による被害の報道一色だ。ただ、外出制限や警察官、役所の職員たちによる見回りのかいもあってか、人的被害は最小限に抑えられているようだ。
ただし、外出制限もいつまでその効き目があるか分からない。水やガスなどのインフラは現状では問題ないし、各家庭にもある程度の食料や日用品の蓄えはあるだろうが、それが尽きてしまえば、必需品や嗜好品を求めて外出せざるをえない。
それにだ、朝のニュースを見ずに外出してしまった人や、夜通し外に出ていた人は、会社や公共施設から出ることが出来ずにいる。
そしてつい先程、そんな人たちに帰宅許可が出た。うちの母さんも役立たずオヤジもそこに含まれており、これから帰る旨のメッセージがさっき来た。
母さんが無事に帰って来れるかは心配だが、さっき出歩いてみて、ここらのポケモンたちは比較的大人しいと感じた。人的被害のニュースを見ていても、こちらから近付いたり手を出したりしたことでの反撃がほとんどだった。おそらくこちらからちょっかいをかけなければ大丈夫だろう。警察官による誘導もあるみたいだし、大人しく帰りを待とう。
不謹慎かもしれないが、ポケモンを知っている俺にとってはむしろテンションが上がり過ぎて嬉しくなってしまったくらいだ。でも、その存在を知らない、もしくは覚えていない人間にとっては、やはり未知の脅威なんだろうな。
そして今、この部屋にもそのポケモンの姿がある。
部屋の隅で縮こまり、こちらの様子を伺っている、黒い子狐。
ゾロアだ。
ゾロア、わるぎつねポケモン。
その固有の特性である【イリュージョン】でもって、人や他のポケモンに化けて相手を驚かしたり、その隙に逃げ出すなどし、危険から身を守っているのだとか。
そう、俺の最初のパートナーであるスカンプーは、このゾロアが化けた姿だった。
どうしてそんなことになっていたのかは分からないが、さっきのコラッタとのバトルで【どくガス】を使えなかったことにも合点がいった。
アニメや映画ではどうだったか知らないが、ゲーム内でのゾロアの特性【イリュージョン】は、他のポケモンの姿かたちに化けることは出来るが、そのポケモンの特性や技までは真似することが出来ない。
使い手を選ぶトリッキーなポケモンだ。
ちなみにさっきのバトルは、スカンプーからゾロアの姿になったのを見て驚いたコラッタが、一目散に逃げ出したことで終了した。
バトル後、ゾロアをモンスターボールに戻そうとしたんだけど、何故だか戻ろうとしない。
それどころか、俺から距離をとって近付こうとすらしなかった。人見知りなの?
仕方ないから外に出したまま歩き出すと、チョコチョコ付いてくる。立ち止まってバッと振り返ると、ゾロアもビクッと立ち止まり、こちらの様子を伺う。
そんなこんなで家に帰ってくると、キョロキョロと周りを伺いながらも、部屋までちゃんと付いてきた。
で、今は部屋の隅で小さくなっている、というわけだ。
モンスターボールを見せて、入るか?と聞くと、必死に首をぶんぶんと振って拒否を示す。
何このかわいい生き物。
モンスターボールの中って居心地が良いって設定だった気がするんだけど、そうでもないのかもなー。
ふと、スマホを取り出して『TSS』を起動する。
これもさっき家に帰ってきて分かったんだけど、TSSには便利なシステムが盛り沢山だった。外に出る前に確認しろよとか言わないの。
まずは『ポケモンチェッカー』。
手持ちポケモンの状態やタイプ、特性、使用できる技なんかが確認が出来る。ただし、レベルやHP、性格などは確認出来ないようだ。それを把握するのがトレーナーの力量ってことなんだろう。
次に『ポケモンセンター』。
ベルトに収まった状態のモンスターボールを一括転送して、体力や状態異常を回復出来る。ただしゲームでは一瞬で回復するが、このアプリではポケモンたちの状態の重さによって時間はまちまちのようだ。
『フレンドリィショップ』。
これには驚いた。キズぐすりやモンスターボールと言ったお馴染みのアイテムを購入することが出来る。これを利用するにはBP(バトルポイント)が必要らしく、端末には2,000BPが補填されていた。
さらにトレーナーにはランクなるものがあるらしく、そのランク次第で品揃えが増えるらしい!
『トレード』
他のトレーナーたちと、ポケモンやアイテムの交換が可能だ。無償でプレゼントなんてことも出来るようだ。
『フリーマーケット』
自分の持っているアイテムを言い値で出品したり、出品されているアイテムを設定BPで購入すことが出来る。まぁ、まんまフリマだな。
そして、『トレーナーズチャット』
トレーナーたちとチャットが出来る。グループチャットや個人チャットはもちろん、日本やアメリカといった国別掲示板や、都道府県別掲示板なんてものもあった。ちなみに、ここで発言するとトレーナーナンバーが開示される仕組みだ。
その他にも、手持ちのポケモンを預けることが出来る『ポケモン預かりシステム』なんてのもあった。手持ちは六体まで、というのはゲームと同じ仕様だな。
概ねこんな所だろう。外に出る前に確認しろよ!
とにかく『トレーナーズチャット』の存在はでかい。ネットに潜って情報を取捨選択するよりも、有用な情報を集めやすく、遥かに効率が良いだろう。
とりあえず宮城県板でも覗いてみるか。
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219 宮城県民さん(No.59)
あぁ、見た見たw小澤さんっすよね?プリンにはたかれてたw
220 宮城県民さん(No.286)
あのぴんくのぷりんってゆうんだ?かわいかったー +゚d(≧ω≦*)。+゚
221 宮城県民さん(No.209)
門馬アナの寝顔ハァハァ///
222 宮城県民さん(No.401)
>>219 No.59さんはポケモンに詳しいのかい?
223 宮城県民さん(No.59)
>>222 一番最近のはプレイしましたけど、正直そこまで詳しくないっすw
224 宮城県民さん(No.1099)
少しでも構わないので情報をいただけないでしょうか?
225 宮城県民さん(No.286)
おしえておしえてー φ(・ω・`。)
226 宮城県民さん(No.401)
>>223 No.59さんは外に出たかい?
227 宮城県民さん(No.59)
>>226 実はちょっと出たっすw
228 宮城県民さん(No.286)
こらー外出せえげん中だぞっ(メ`・д・´)ノ゙
229 宮城県民さん(No.209)
>>228 No.286タソはもしかしてJK?
230 宮城県民さん(No.401)
>>227 外のポケモンとは戦ったかい?
231 宮城県民さん(No.59)
>>228 すんませんっすw
>>230 バトルはさすがに怖くてまだっすよー…。あ、でもコラッタとバトルしてる人は見たっすw
232 宮城県民さん(No.401)
>>231 すごいな、この状況にすでに順応している人がいるのか…
233 宮城県民さん(No.1099)
まだその方はここの掲示板を見ていらっしゃらないんでしょうか?
234 宮城県民さん(No.286)
こわがらずにでておいでー ((ヾ(*ゝω・*)ノ☆゚
235 宮城県民さん(No.59)
遠目だったし、途中で交番の人に注意されちゃって最後まで見れなかったんすけど、何か表情がなくて怖そうな人だったっすw
236 宮城県民さん(No.401)
>>235 その人はどんなポケモンを使っていたんだい?
237 宮城県民さん(No.59)
>>236 あれはスカンプーっすね!スカンクポケモンっす!タイプは確か『どく』と『あく』っすね
238 宮城県民さん(No.1099)
タイプとは何でしょうか?
239 宮城県民さん(No.59)
>>238 タイプっていうのはポケモンの属性?みたいなやつっす!それによってバトルの相性が決まるっす!
240 宮城県民さん(No.1099)
相性…ですか?
241 宮城県民さん(No.401)
今確認したら僕のエレキッドは『でんき』タイプだったよ。
242 宮城県民さん(No.59)
>>241 401さんはエレキッドっすか!
『でんき』タイプなら確か、『ひこう』『はがね』、あと『でんき』タイプの技には強いんすけど、『じめん』タイプの技にはめっちゃ弱いんすよ!
243 宮城県民さん(No.286)
むづかしくてぜんぜんわかんない ・゚・(。>ω<)・゚・
244 宮城県民さん(No.1099)
そういったポケモンのタイプをしっかりと把握しないとうまく戦えないってことですね…
245 宮城県民さん(No.401)
へぇ、子供向けのゲームだとばかり思っていたんだけど、なかなか奥が深いんだね。
246 宮城県民さん(No.59)
むしろバトルなんかは大人の方がはまるんじゃないっすかねーw
247 宮城県民さん(No.1099)
No.59さん、お時間があるときで構いませんので、全タイプの相性を教えていただけませんか?たぶん相性表みたいなのを作った方が分かりやすいと思うので、私が作って皆さんに配付しようかと思うのですが。
248 宮城県民さん(No.401)
そうだね、それは助かるよ。ぜひお願いしてもいいかな?
249 宮城県民さん(No.59)
>>247 了解っす!これから晩メシなんで、9時過ぎくらいにまた来るっす!ちゃんと覚えてるか自信ないっすけどw
250 宮城県民さん(No.1099)
ありがとうございます。では私も一旦失礼します。また後程。
251 宮城県民さん(No.286)
うちもフロリダー ヾ(・ω・●)
252 宮城県民さん(No.209)
>>251 JKの入浴ハァハァ///
253 宮城県民さん(No.286)
きもいしね
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表情がないスカンプー使い…一体どこの誰なんだ(すっとぼけ)
まさか見られていたとは。何かすごく出ていき辛い。
しかも怖そうな人だったとか言われてるし…違うんだよ?無表情な人っていうのは表情筋が発達してないだけで、心は純粋で穏やかなんだよ!いい加減にしろ!
うーん、とりあえず今日は参加するのやめておこう。質問攻めにあいそうだし。明日だ明日!明日から本気だそう!
それよりも、この中じゃNo.1099が一番新しいトレーナーさんだな。俺がNo.151だから、半日で最低でも千人近くがトレーナーとして登録されたってことか。まだ不審がって登録していない人や、スルーしている人なんかも含めたらまだまだ増えるだろうな。
てことは、すでにポケモンの情報がメディアや政府にも伝わっていると見て間違いない。それはつまり、ポケモンたちに対抗出来るポケモントレーナーの存在が公になるということに他ならない。
そうなれば、きっとトレーナーたちは、その身の振り方を考えなければいけなくなる。
いや、トレーナーたちが自由に選択出来るならまだ良い。もしかしたら、強制的に選択を迫られ、下手すれば何らかの義務が発生するなんてこともありえるだろう。
…まぁいいか、なるようになるだろう。
『…ゾロォ』
ん?あらら、いつの間にかゾロアが足元で寝てた。頑なに近寄って来なかったのに、眠くなって温もりが恋しくなったか?
よっ…と、おお、もふもふだなこの体毛。うはー…あったけー。このまま抱えて寝たい。
とりあえずベッドに寝かせて、と。
『コンコン、ガチャ』
「お兄ちゃん、ご飯出来たよー」
心結がガチャリとドアを開け、晩御飯の刻を告げる。分かったけど、ノックしてすぐ開けるのはお兄ちゃんどうかと思うぞ?
「って…え、お兄ちゃん、なにその子?犬でも拾ってきたの?」
心結がベッドで寝ているゾロアを見て問いかけてくる。犬じゃなくて狐だし、厳密に言えばポケモンなんだけど、まぁいいか。犬っころみたいなもんだし。
「へぇ、可愛いねー!ねね、ちょっとだっこして良い?良いよね?」
俺の許諾を得る前に、すでにゾロアを腕に抱えて、優しく頭を撫でている。ゾロアも目を覚ますことなく、どこか気持ちよさげに眠っている。
「ふあぁ、もふもふだー。癒されるー」
心結もゾロアのもふり具合を堪能しているようだ。とりあえず拒否反応を示さなくて良かった。そういえば昔から犬か猫を飼いたいって言ってたっけ。
「はぁ、余は満足じゃー…っと、ごめんね、ゆっくりお休み」
再びゾロアをそっとベッドに寝かせ、一撫でする。そんな様子を見て、心結がトレーナーだったらきっとポケモンと良い関係を築けるんだろうなー、なんて思う。
「お兄ちゃん、この子飼うの?ママの許可取った?」
飼うと言うか、もはやパートナーなんだけど。説明が難しい所だな。母さんも動物好きだし、たぶん問題はないだろう。万が一ダメでも、モンスターボールがあれば何とかなるだろ。
しかしあれだな、パパの許可って言わない辺り、心結も中三にしてすでに、我が家のヒエラルキー構造を理解しておる。残念なオヤジだ。
「あたしもお兄ちゃんの味方するよ!一緒に説得しよー、おー!」
ノリノリだなー。一人で、おー、とか拳を突き上げてる。我が生涯に一片の悔いなしスタイル。うぬはラオウなの?
「じゃ、とりあえず早くご飯食べちゃお?」
そうだな、今日はひとまずゆっくり休んで、明日また行動しよう。どうせ明日も学校は休みだろうし。そうだなぁ、ちょっと遠出してポケモンを捕まえてみるのもいいかもしれない。
うん、こんな日常もあり、だよな。
「あれ、そう言えばこの子って何食べるの?」
……ゾロア氏、空腹でふて寝の可能性が微レ存?
いや、マジごめん。