今後は7000文字以上を目指したいです。
それでは、今話もどうぞご愛読お願いします。
「父と知り合いだったとは………しかもそれなりに親密………」
「なに、明彦さんにはこちらもお世話になった。関連した繋がりだけの関係だったがね」
それでも、だ。
「父と関わりを持つ、それも名前呼びを許されているんですから」
謙遜する彼女に俺は言う。
俺の父、茅場明彦は孤独の人だと言われていた。
それは、息子の俺ですら、感情の有無を疑ったり、ロボットではないのかと思ってしまう程だ。
父は仕事・職業関連で多くの人間と関連を持っていた。
しかしそんな父は名前で呼ばれることと、博士と呼ばれることを嫌っていた。
『自分はそんな大層な者ではない。未だに愛が何であるかも理解できていないのだから』
『ただそれを知るために必死になっているだけ』
自ら口にしたその言葉に、人々は父を悲しみの目で見た。
愛を知らない哀しき男。人間に近いロボットなどと呼ばれたが、本人は気にする様子を見せなかった。もしかすれば、その視線の意味さえ理解できていなかったかもしれない。
「そうだといいのだがな…………さて、到着した」
そこは来た時に見たアリーナだ。特徴的な形だったのを覚えている。
織斑先生は首から下がる職員カードをかざす。するとアリーナの扉が開き、中には複数の教員らしき人物と、緑色の機体が鎮座しているのが見えた。
(あれは量産機【ラファール・リヴァイヴ】………)
フランス製の量産機ラファールは、機動する武器庫と呼ばれることもあり、その持ち味は豊富に武器を装備できることと、機動力の高さであり、第二世代機でありながら第三世代並みの戦闘力を発揮できる機体だ。
世界3位のシェアを誇り、汎用性の高さからIS学園の警護にも使われている。
「ここが最終試験会場だ。とはいっても、失敗したところで入学は絶対なんだがな」
たははと笑う織斑先生は右手で壁にある扉と、その次に教員の群れを指差す。
「まずお前には更衣室で着替えてきてもらう。ISスーツ机の上に包装されているはずだ。着替えたらあそこで待機している教員と協力して最適化をして、その後模擬戦をしてもらう」
「この初心者に教師と戦えと?」
「一応準備運動のような時間は与えられる。機体の故障の有無も兼ねてな。まあ勝てなくて当然だ。初心者がいきなり戦うなど馬鹿げているが、規則だからな」
諦めてくれと言うジェスチャーをする織斑先生に、これ以上反論する気力も失せてしまい、俺はおとなしく更衣室と指差された部屋に足を向けた。
その時、織斑先生に呼び止められる。
「応援しているぞ」
「……あざっす」
少し照れ臭くなり、更衣室に向かって小走りで入った。
ったく、俺は年上趣味はあるかもしれないが、相手が高嶺の花すぎんぞオイ。
不覚にもときめいてしまった自分を叱咤して部屋の中央にある机を見る。
そこにはダンボールが一箱あり、ビリりと乱雑にガムテープを破って中を見ると、ビニール袋に包まれた制服があり、その下に同じくビニール袋に包まれたISスーツ(?)があった。
「………これはボディスーツというやつか?最早水着でいいんじゃないの?」
まあ文句を言っても仕方がないのでさっさと着替える。元々来ていた服は、未開封の制服と一緒にダンボールの中に畳んで入れておく。
そしてガチャリとノブを捻って外に出ると、アリーナ中央の教員達の元へと駆けていく。
俺が到着すると、その代表者らしい女性がこちらへと歩み寄り、一礼した。
「こんにちは。ルカ・フロイライト、今回貴方と模擬戦をすることになった者よ」
ちなみに担当は2-3よっと付け足してきたがどうでもよかったのだがちゃんと聞いておく。
「それじゃ、まずは貴方のISを展開してちょうだい。こちらでフィッティングを行うわ」
「了解です」
俺は左手の中指の指輪に手を触れ、意識を集中させる。
<――――覚醒せよ――――>
刹那、光が瞬く間に全身を覆い、徐々に形を作っていく。
そして光が収束すると、俺は紅白の鎧を纏っていた。
空中に浮遊する5枚の盾は、十字の形をしており、表面には紅で十字の装飾が施されており、裏側には剣が収納されているのが見て取れる。
全身を覆う鎧は、紅色が多く、肩と胸部のは盾と同じく、紅の十字が描かれていた。
「これが俺の機体【ヒースクリフ】です」
「ふぅん、西洋の騎士ってところかしら。円卓の騎士に居そうね」
円卓の騎士ってほどでもないだろう。恐らくこれは、SAO内での親父の装備と同じ形なのだろうから。アスナさんもキリトさんも、ジンさんも円卓の騎士って感じじゃないからなぁ。一番近いのはアスナさんだけど。
けれど強いて円卓の騎士に準えるのであれば、この機体はガラハット(ギャラハット等とも呼ばれている)になるのだろう。盾が特徴的だし。
「とりあえずフィッティングしておくわ」
カモンとフロイライト教官が手招きすると、機材を抱えて待機していた職員たちが配線を専用の機器に繋げ、調整を施していく。
が。
その手が慌しく動き出すことは無かった。
「ルカさん。この機体、既に調整終了しています」
「なんですって!?……まさか貴方一人で?」
「そりゃ自分の機体ですし、調整や整備くらい自分でできないと」
「…………流石『電脳の大天才』茅場明彦の息子ね」
呆れたように溜息を吐く職員とフロイライト教官。
確かにIS、しかも専用機ともなればそのプログラムや回線は複雑だ。しかし幼いころから父を見て。成長した頃にはプログラミングの手伝いやサーバーの修理などをやったことのある俺にとっては、少し複雑だが手応えがあって面白い玩具くらいの感覚で、自分好みにアレンジするのにそう時間はかからなかった。
職員たちは機材を回収して撤収していくが、専用の機材はどれも大きく重く、それでいて繊細だ。
撤収に時間がかかると判断した俺は、その間に左手を縦に振る。
すると手元にこの機体の状態や装備、エネルギー残量が表示された。SAOやALOと同じ仕様だ。
『 状態
・エネルギー 900/900
・損傷 無し
装備
・重力操作式十字盾×5
・対超硬質装甲用片手直剣×2
・紅牙―聖十字―×1
・対バリア用片手剣×2
・腰部小型ワイヤーブレード投射装置×2』
遠距離手段少なっ。遠距離高機動が主流のご時世なのに近距離系統の機体とか、ふざけてんのかと言いたいが。これが作られたのはかなり昔のこと。最新の機体ではない。そしてSAOでの親父の化身のようなものだ。遠距離攻撃手段が全くない親父らしい機体だ。
とりあえず装備を手に取って感覚を確かめる。
「ふぅむ、若干硬質剣の方が重たいな」
まあキリトさんの剣よりかは軽いが。
ジャンプしたり後方に飛び退いたり、サイドステップを刻んだりして動きを確かめる。ALOと違ってこっちの方がリアルな感覚があるし、装甲の所為で若干重いな。重力操作のおかげで重量は軽減されているとはいえ。
一通りの動作を終えると、俺はここまででいいですと準備運動の時間を打ち切る。
「あらそう。じゃ、5、カウウントしたら勝負開始。時間は10分。いいわね?」
「了解です」
両者距離を取ってカウントが始まる。
5、俺は気持ちを切り替える。
4、ここはSAOと同義であると。
3、一寸先は死の世界だと。
2、目の前に立つは敵だと。
1、敵に殺されまいと。
0。盾を構えて加速した。
瞬間降り注ぐ鉛玉の雨霰。けれど威力は無い。恐らく敵の両手にあるのは連射銃。
前方への加速をやめることなく銃弾の中を掻い潜っていく。
しかし相手とぶつかる時には相手は別の場所に移動してしまい、状況は一方的だ。
「なんて使いにくい機体だ」
「機体に文句言う前に、自分の腕を恨むのね!」
俺の発言が気に食わなかったのか、攻撃は更に激化。時折ショットガンの銃撃までもが混じり、俺の近接は困難を極めた。
けれど俺だってただでやられてやるつもりはない。
盾を敵方面へと放ち、俺の姿を映させないように次々と教官との視界の間に向けて5枚の盾を放つ。
そして最後の一つを回避しきれずに鈍い打撃音が響く。
「うあっ、やってくれたわね!!――――――っ!?」
盾を蹴り飛ばして銃口をこちらに向ける。しかしその時には、俺の剣先が機体の装甲を切り飛ばし、銃を持つ腕の向く先がずれてしまった。
すぐさま後退して距離を取って銃口を再び俺に向けようとするのだが、背後から迫っていた盾が後頭部を打ち付ける。その衝撃で地面へと撃墜される教官。
完全に体勢が崩れた所で教官に向かって加速し、無防備な背中を切り裂こうと剣を振りかぶる。
「くっ!!」
けれど教官もただではやられない。立て直せまいと踏んでいた体勢を、見事な平衡感覚で持ち直して、くるりと180度回転し、銃口を俺に向けた。
油断したと俺は思ったが、まだ手が無い訳では無い。むしろ対策は練ってあった。
弧を描くようにして銃口から逃れつつ前進を続け、振りかぶった切先でその銃、手甲諸共切飛ばす。
しかし飛ばしたのは左手だけ。残る右手の銃口が追撃するかのように俺を捉えた。
だが両手に武器があるのはこちらも同じ。
残っていた左手の剣で銃を貫こうとしたのだが、バックステップで距離を取った教官の銃には後一歩届かず、銃弾が剣を弾き飛ばし、続けざまに俺のシールドエネルギーを削った。
『 茅場守流 VS ルカ・フロイライト
711 723 』
電光掲示板に表記された残りエネルギーは俺の方が少ない。残る時間は約3分。チキ〇ラーメ〇ができるななどと考えられただけ、俺には余裕があったのだろう。
すぐさま最も近い場所を浮遊していた盾で教官を打撃し、構えを許さない殴打を繰り返し続ける。
打撃だけでもシールドエネルギーは徐々に減っており、けれど効果は薄い。
「小キックハメ殺しみたいな終わりはゴメンよ!!」
迫りくる盾に体当たりをして強引に俺に近接する教官の手には、グレネードとショットガンが握られており、それを把握する時にはグレネードが投擲されていた。
(っち、盾が間に合わん!!)
これを狙っていたのだろう。俺に向かって飛来するグレネードに対して、ショットガンの銃口を向ける教官。
『逃がしはしない』とでも言いたげな二段構え。さらにグレネードを投げ、空となった左手には、新たにマシンガンが握られている。これが世界を制した三段討ちってやつか?
けれどもここで終われないのは俺だって同じだ。
何故なら、親父が名前呼びを許した相手が見守っているのだから。恥を見せる訳にはいかない。
「こんな所で見せることになるとは………」
自分の未熟さを悔いる。
だが、敗北を見せるよりかはマシな物だ。
隠し技の一つ、とくとご照覧あれ!!
「『我が力に刮目せよ!』」
<音声認識、完了。システムロック、解除>
「羅刹王すら屈した不滅の刃、その身で受けてみよ! 食らえ、『 羅刹を穿つ不滅 』!」
<音声認識、最終ロックの解除を確認。奥義【羅刹を穿つ不滅】発動>
装備欄で最も異彩を放っていたこの剣【紅牙―聖十字―】。5振りある剣の中で最も大きな刃を持つこの剣。柄と刃を繋げる鍔はこの機体を象徴する白で縁取られた紅の十字。その片方に接合された刃は燃え盛る焔の色。
この装備でのみ発動可能な奥義の一つ。
白雷を放ち、高速で回転し、円刃と化した紅牙―聖十字―を、炎撃を秘めた爆弾の奥、銃口向けた、相対する標的に向けて、撃ち放った。
「っく、回避――――――」
瞬時加速で、緊急離脱しようとする教官の移動先には、出せる限りの最高速で接近する十字の盾。
激しく殴打、むしろ激打とでも言うべきか。砲弾と化した盾に弾かれた教官は、その先に迫る白雷と円刃の存在に気付いていた。
けれども弾かれた勢いを殺すだけの術は無く、しかし最後の抵抗だとばかりにショットガンを構え、大きな爆裂を放った。
だがその抵抗も、白雷に砕かれ、円刃に断たれ、それでもなお加速をやめない我が奥義に、あっけなくその防御は毟り取られた。
『 茅場守流 VS ルカ・フロイライト
572 0 』
ブザーが鳴り響き、勝敗は決した。
専用機相手に訓練機でここまで攻めたてた教官は凄いと思った。
しかし最後のはやりすぎたかと少しの反省を孕みつつ、大破した訓練機から教官を引っ張り出して訓練機を持ち上げて、修理用の台車に乗せた。
「やっぱり茅場明彦の息子なだけあって、容赦がないわね」
「変なとこ受け継いですいませんね」
親父は容赦のない人でもあった。それは過去に出版された雑誌にも掲載されている。
中学生の科学コンテストで情け容赦なく短所を突き続け、優勝したはずの少年を泣かせてしまったがそれでも口を閉じなかったほどだ。
まあ今回のは血筋ではなく、偶々だろうけど。
もう少し技量を鍛えておくべきだったなと感じた瞬間でもあった。
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でないと寂しくて死んじゃいますぅ……