インフィニット・ストラトス 天才の息子は   作:双盾

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ワシもう疲れた………
小説書くのやめてもいい?
いいと思う方はコメントを。やめちゃやだぁ!!って人もコメントを。

それでは、どうぞお楽しみください。


3 心身共に疲れた日中

戦闘の後に、俺はISスーツの上からYシャツに腕を通して、新品の制服を着る。小学生の頃にプールのある日に下着代わりに海水パンツをはいて行ったことを思い出す。

新品独特な匂いだが、そこまで強いという訳でも無いので、特に気にすることなくズボンを履き終えて更衣室を後にする。

外には、先程まで観客席にいた織斑先生が戻ってきていた。その手には紙袋が握られている。

 

「お疲れ様だ。よくやった」

 

あの世界最強から慰労と称賛の言葉を貰い、少し心が躍った。

 

「ありがとうございます」

 

それでも、もう少しまともな、というか。正々堂々とした男らしい戦い方はできないものだろうか。騎士のようと言われたところで俺の戦い方は守りに徹し、狡猾な搦め手で追い詰めていくようなもので、とても騎士と言えるようなものではない。ALOでだって、耐久重視のノームにエクストラ武具である手甲で防御に重きを置いているクセして、武器には麻痺や毒の状態異常を付与された物を使用しているのだから。

 

「さて、これは今日必要な教科書とノートだ。筆記用具は持参したものを使いたまえ」

 

紙袋を手渡され、疑っているわけでは無く、本能的に、好奇心にちかい感情で袋の中身を確認すると、やはり中身にはその言葉の通りの物があった。

が、それの何とまぁ分厚いこと。これは新手の装備ではないのか?銃弾位なら防げそうだし、包丁程度なら防御できそうだ。それにこの重量と硬度。最早鈍器だ。

 

「では行こうか。君の、そして私の担当する教室へ」

 

「はい」

 

先行する先生の後ろを、数歩離れた場所からついて行く。

ここには窓が幾つかあるが、壁の色や装飾などはほぼ同じものが延々と続いており、しばらくは迷子になってしまいそうなものだなと一抹の不安を抱えるが、今は大丈夫だとその思考を掻き消す。

 

「…………っと、そういえば」

 

ふと、先生が立ち止る。

こちらに振り返りながら言葉を零したので、どうしましたかと問う。

 

「今学園は昼休み、昼食の時間だが、食事となると移動時間を考えて少し厳しいな」

 

「お気になさらず。一食抜いた所で死にはしませんから」

 

「む………それはそうなのだが………」

 

ううむと思案顔の先生。もう一押し必要か?

こちらが先に口を開こうとしたが、それよりも早く、先生が決断した。

 

「しかし到着が遅れた理由が理由だ。特別に時間外の食堂の使用を許可する」

 

確かに理由が理由なだけに、今のご時世に染められた者でもなければ俺を責めはしないだろう。逃げ出す直前くらいには銃弾が飛び交い、下手をすれば入学前に死んでいたかもしれないのだから。

いやしかしと反論しようとするが、先生はそれを手で遮る。

 

「いや、こちらの落ち度でもある。護衛にISを付けろと申請したのだが、通らなかったのだ。せめてこれぐらいのことはさせてくれ」

 

そういう先生の目には、鋭さを失い、後悔に伏していた。

俺は反論するのをやめて、先生の言うことに従うことにした。これ以上話していても、平行線を辿るだけなのだろうと思ったからだ。

 

「わかりました」

 

「食堂の者には、私が許可を出したと言ってくれればいい」

 

「はい」

 

「私は職員室に立ち寄った後に教室に向かう。君も後からきたまえ」

 

そう告げると足早に立ち去る先生に一礼し、俺は紙袋の中を漁る。

見間違いでなければ教科書やプリント数枚があったはず。学園の地図くらいあってくれよ。こんだけデカいんだから。

ガサゴソと紙袋の中のプリントを捲っていく。するとその中に一枚、色のついた迷路のような紙を見つけた。中から出すと、それはこの学園の地図だった。

 

「さっき通ったのがこの通りなら…………食堂はここを……………」

 

俺は大体の現在地を探し、この後通ればいいルートを探る。

少しして俺は地図を4つ折りにしてポケットに突っ込んで再び足を動かし始める。

確か次を左で……と、通ればいいと思われる道を歩いていく。

やがて少し大きな空間に、多数の机と椅子が並ぶ場所に来た。入ったすぐ横に食券販売機を見たので、ここが食堂で間違いは無いだろう。

昼休みも残り1分も無く、生徒達は教室へと帰ったのか誰もおらず、俺だけが無人の空間に立ち入った。空間を支配しているみたいだな。なんて中二なんてことを考えながら。

とりあえず適当にラーメンを注文し食堂の職員に渡すと、俺を怪しげな眼で見てきたので、事情を説明した。

 

「ああ、なるほどね!あいよ!ラーメン一丁!!」

 

すると今度は一転、豪快に笑って厨房の方へと歩きながら食券の表記を復唱する。

すこしして、盆の上にラーメン(味噌)と箸が乗せられ、盆ごと俺に手渡される。大きさは標準的。箸は割り箸ではない。少し量が多めなのは職員のおばちゃんの気遣いだろうか。本来、女学校であるこの学園の料理はどれも量が少ない。それは壁に欠けられたメニュー表から見て取れる。こういう増量はとてもありがたい。

 

「いただきます」

 

両手を合わせて箸を取って麺を啜った。うむ、万人受けしそうな標準そのものな味だ。

俺の好みをいうならばもう少し辛めで麺はもう少し太く硬い方が好きなんだがなぁ。これは味噌ラーメンに限った話である。ちなみに一番好きなラーメンは豚骨で、麺は細めの固め。豚骨とは言っても、油でギトギトしたやつではなく、クリーミーでマイルドなやつであるが。

最後の麺を飲み込み、スープを啜って空になった器を返却口に置く。

 

「ごちそうさまでした」

 

「じゃ、速く行ってきな!」

 

豪快なおばちゃんは器を片づけながら歯を見せて笑う。

俺は小さく一礼すると、速足で食堂を後にする。

再び地図を確認して教室の場所を確認し、歩きながら地図を仕舞う。

クラスの表記が見えたが、その前に1-4~1ー2までの別のクラスがあり、廊下と教室を隔てる壁には窓があり、廊下を歩く俺の姿が見られることだろう。

変に騒ぎになりませんようにと小さく唱えて俺は廊下を歩いた。

 

「ねぇ、あれって………」

 

「もしかして噂の………」

 

「えっ!?二人目の?」

 

「そこの三人!!」

 

「「「うがっ!?」」」

 

残念なことに、廊下をただ一人。それも男性が悠々と歩いていると注目されてしまう。

俺の姿を見つけた女子が、その周囲の女子に俺の情報を伝達していく。ヒソヒソと小さな声なのだが、人数が多くなればそれだけ声量もおおきくなる。

教師に感付かれ、どこに隠していたのか輪ゴムによって額を射撃されてしまった。

可哀そうにと思うが自業自得である。

そんなことは1-3、1-2でも起きたが、額を射撃されたのは1-4だけだった。

そんなこんなで漸く、1-1教室の前へと辿り着く。

とりあえずノックを2回。はいれ、と中から先生の声がして。俺は教室の扉を開いた。

ざわめく生徒。それを静かにの一声で押さえてしまった先生…………ん?織斑先生以外にも先生っぽい人がいるな。担任補助か?副担任か?似たような物か。

 

「早かったな。それでは、自己紹介をしろ」

 

そう俺に言うのは先程までの優しい織斑千冬さんではなく、教師として凛と鋭く指導する織斑先生の姿だった。

その姿は実に凛々しくカッコいい。先生マジかっけぇ!!!

とりあえず俺は生徒に向かうと、自己紹介を始めた。

 

「登校が遅れましたが、今日よりこのクラスに所属します。茅場守流です。知っての通り、茅場明彦の息子です。嫌って、恨んでくれて構いません」

 

「……………」

 

俺の自己紹介に、皆は口を噤む。

このクラスに入った時に気付いたが、この中には俺に対して良い印象を持っていない者がいて、その中でもランク的にかなり重い、憎しみの目でみていた者もいた。恐らくSAO事件で肉親を亡くしたか、近しい人が無くなったのだろう。

この発言に、織斑先生は悲しげに目を閉じた。

 

「で、ではあの空いている席に移動してくださいね」

 

「山田先生、自己紹介を忘れているぞ」

 

「そ、そうでしたっ!?副担任の山田真耶です」

 

「どもっす」

 

席について、小さく会釈する。しかし山田先生ホントに教師か?かなり若く見えるが………

その間に黒板と周囲の生徒の状況を見て、やっている授業の科目と必要な教科書を紙袋から引っ張り出す。

それを見た織斑先生は、うむ。流石だなと言って授業を再開した。

今回の授業では、合計で6回もの織斑先生の喝が飛んだ。

 

 

 

 

 

 

さて授業が終わり、放課後。入学初日には誰一人として部活に入っておらず、部活でこの教室から出ていくものはいない。

チャイムが鳴った刹那で、俺ともう一人の男子学生、織斑一夏は女子の包囲網にかかってしまう。むしろ雪崩に巻き込まれた感じだ。そのくせして他のクラスから女子が押しかけるから大人数のおしくらまんじゅうやってる気分だ。

さりげなくボディタッチをしてるつもりなんだろうけど、これだけ人数多いとさりげなくも露骨も関係ない。全身をくまなく撫でられるような気分になり、満員電車で痴漢にあった人の気持ちが分かるぜ。

 

「ええい!!さっさと部活の体験入学なり明日の支度なり!!この教室から散らんか!!!」

 

織斑先生の喝が入る。

途端、肉に群がるハイエナみたいな女子共は蜘蛛の子を散らすように教室の外へと逃げ出していく。ここは女学校じゃなくて、軍事学校だったのかな?

そして最後に残ったのは3人。

二人は俺と織斑で、残る一人は長く綺麗な金髪をくるりと巻いた上品な美少女。青のカチューシャにドレス(ワンピースって感じじゃないしな)タイプの制服をたなびかせると、俺達を一瞥したのちにフンと鼻を鳴らして教室を後にした。

やっぱ俺嫌われてんなぁ。織斑も嫌われてるところを見ると、世間に染まった女性って感じだが。

 

「大変だったな」

 

「お互い様だろう」

 

だな、と笑う残っていた少年。

男子学生は、手を差し出しながら、言った。

 

「俺は織斑一夏だ。二人しかいない男子学生だ。仲良くしようぜ」

 

「茅場守流だ。お前、変わってんな」

 

「どこがっ!?」

 

「俺の親父の事は知っているだろう。大抵人は俺に、恐怖か、警戒か、憎しみを向けてくるが。

 お前はそういうのが無かった」

 

俺の親父のしたことはテロリストもびっくりな大量虐殺だ。それに直接関係は無いが、利用される形で非人道的な人体実験まである。

その元凶の息子であるだけあって、親父と同じように人を殺すのではないかと恐怖する者、殺人者の息子だと警戒する者、家族を殺され憎しみを向ける者。基本的にその三種類だった。

こんな純度100%の善意の塊みたいな人間と関わったことが無かった俺は、こいつを異質だと思わざるを得なかった。

そんな彼は言った。

 

「別に家族が何かしたからといって、お前もそうとは限らないだろ」

 

その言葉は、酷く実感が籠められていて。

その表情は、自嘲するような笑みを浮かべていた。

俺は感じた。

ああ、こいつはそういう思いをしたことのある人間なんだなと。

そう言えば、こいつの姉は織斑先生だったか。

天賦の才を体現したような武に精通した人間。それは武そのもののようで、あれが何かを極めたその終形なんだなと本能的に理解させられるほどの美と能。美しく、それでいて勝利という概念が約束されているかのような身の熟し、武具の捌き。人域を超えた存在。

そんな存在を姉に持てば、同じような才を期待されることを、俺は知っている。

 

「こいつホントに茅場の息子か?」

 

「お前の親ならもっと―――――!!!!」

 

「どうしてお前にはできないんだ!!??」

 

(黙れ。お前らに何が分かる)

 

過去。俺を貶し、罵った人々の顔を思い出し、ギリィッと歯を食いしばる。

だからこそ、織斑のその言葉は俺にとって、親しさを感じさせた。

 

「そうか。まあいいさ、そんなことは」

 

「いいのかよ!?」

 

どうせそんなものは人の価値観の食い違いだと切り捨ててきた俺にとっては、ただ胃痛の元でしかない。その程度の事だ。

 

「さっさと部屋に戻ろうぜ」

 

「え?お前と俺って同じ部屋なのか?」

 

まぁ、ここまでバカだと姉と比べられても仕方ないか。

 

「ここは9割9分9厘が女子。通学制ではない俺達の部屋割りは必然的に同じになる」

 

「なんでさ?」

 

「ここは基本的に2人部屋。俺以外と一緒の部屋だと職員でもない限り女子と同衾することになるんだぞ?そうなれば風呂だのトイレだので騒動問答になるだろうが」

 

「そういえば男って俺達くらいなもんだったな」

 

大事なとこ忘れんなよ。数学で足し算引き算を忘れるくらいの大ボケだぞおい。

まったく。しかしまあどうせ行き先は同じなんだ。さっさと行けと織斑の背を押して催促する。

 

「そうだな。なんかもう疲れた……」

 

「俺もだよ………」

 

歩き出した織斑の後ろについて行く俺。イスを奥に押し込んで俺は先に出る織斑に速足で追いつくと、彼は誰かと話していた。

それは彼の姉でクラスの担任、織斑先生だった。

俺はどうしたんですかと簡潔に問う。

 

「ああ、お前に部屋の鍵を渡すのを忘れていたと思ってな。これが鍵だ。そこに書いているのがお前の部屋番号だ」

 

「あ、どもっす」

 

「…………ん?」

 

織斑が疑問の声を上げて自分のポケットの中をゴソゴソと探り、俺が今渡された鍵と同じ形の鍵を取り出した。どこにも変形や傷は無く、疑問に思う所は無いように見える。あるいはこいつの目がおかしいのか。

 

「なぁ千冬姉?」

 

「学校では織斑先生だ馬鹿者」

 

織斑先生は出席簿を振り上げ、織斑の脳天に向け振り下ろした。その動きに無駄は無く、しかしそれでいて動き自体が早く、出席簿の動きを目で追うことができなかった。

そんな高速で出席簿(出席簿に限らないが、この学園の教科書であればなお一層恐ろしい)が振り下ろされればその威力は察していただけるだそう。

 

メキゴシャァッ!!!

 

織斑の頭はトマトのように潰れてしまった。おおーぅ、死んでしまうとは情けなーい。

なんてことにはならなかったが、ゴスッという鈍い音が聞こえる程度には威力があった。

その痛みに悶絶しつつも、生き残った織斑は質問を続けた。

 

「お、俺と茅場の番号が違うんだが………いつつ」

 

抜けきらぬ痛みに頭部を摩る織斑の発言を聞いて、俺は鍵番号を確認する。

俺の部屋番号は1134番、対して織斑の番号は1025番。明らかに数字が違う。渡し間違えたのではと尋ねたが、先生は首を横に振って否定の意を示す。

 

「部屋の手配が間に合わなくてな、一時的に一人部屋の者の部屋に寝泊まりしてもらうことになる」

 

「学園側は男女の過ちがあるとは考えなかったんですか?」

 

「部屋には監視カメラがある。何かしでかしたが最後、解剖、実験材料になるぞ」

 

そーゆーことですか。

同棲した部屋の相手に手を出せば、その相手の国の研究者たちの餌食となるのか。世界的に、重要なのは織斑で、俺はスペアのような扱いなのだ。何故男性がISを操作できるのかを研究するための生贄になるのはゴメンだ。

ハニートラップやToL〇VEるみたいな展開に気を付けないといかんのか。頑張ってくれよ理性。

 

「じゃ、俺達の部屋はどれくらいで用意されるんですか?」

 

「早くて1週間、遅くとも半年以内だそうだが。私の読みでは一か月以内には用意されるだろう」

 

結構長いな。まあここは全国不可侵の条約で守られているだけに学園側も慎重にならざるを得ないのは分かるが、最長の半年とかにならないことを祈ろうか。

ここで話していたって何も変わらない。仕方ないと鍵を紙袋に仕舞って分かりましたと返事をする。

 

「とりあえず、部屋の手配を早くと言っておきます。俺も死にたくないんで」

 

「お前が手を出さなければいいだけの話だが………お前が彼女を変えてくれることを願っているぞ」

 

「手を出せって言われてるようにも聞こえるんで、言い方を考えてくださいよ」

 

「おっと、これはすまなかったな。そういった意図は無い」

 

「知ってますよ。それでは、また明日」

 

会釈してその場を離れる。

しかしやはりこの学園はデカい。食堂行く時も思ったが、まるで迷宮。ラビリンスとでも名付けてやろうか。ミノタウロスは出ないし、アリアドネの糸も無いけど。

兎も角。指定された番号の部屋がある場所へと歩く。別に時間制限がある訳でも無いので、焦らずマイペースに歩いて――――――行くわけにはいきそうにないな。

 

「あ、茅場くーん!!ちょっと私と話して――――」

 

「何アンタ抜け駆けしようとしてるの!?一番は私よ!!」

 

「二人とも!!私が一番だったでしょ!?」

 

曲がった先で女子十数名が待ち伏せしていた。おそらく教室から散っていった女子の一部なんだろう。不味いっ!!と思ったが、どうやら仲間割れをしているようなので俺はその隙にその場から離れる。関わったら面倒事にしかならなそうだ。

歩いて移動して十数秒後、仲間割れに集中していた女子の一人が俺がいないことに気付いた。

もうばれたかと俺は走り出そうとしたが、今度は誰の所為だの私じゃないだのと責任のなすりつけあいときた。面倒なうえに怖いイキモンだなと零しつつ、俺は先を急いだ。

やがて番号札の取り付けられた扉が立ち並ぶ通りに出た。そこが恐らく目的の通りで、この中から目的の番号が書かれた扉を探さねばならないと言うのが面倒だったが、番号が並んでいるだけありがたいと思うことにして、俺は奥へと歩く。

 

「なげぇよ」

 

部屋の数の多さの所為なのだが、目的地までが長い。

と、思ったがどうも俺は態々遠回りをしていたようで、各学年、各クラス別に通路があったことを広げた地図を見て気付き、無駄な時間を過ごしてしまったなと後悔したが、こんなところに突っ立っていたって猛獣女子共(失礼)にみつかりかねん。あいつらは飢えたハイエナか何かが先祖にいるんじゃないのか?

しばらく通路を巡り続け、やっと1134番号の部屋に辿り着いた。ちょっとしたウォーキングをしたような気分で、足が少し疲れた。

扉のノブに手をかけて捻ろうとした時。

 

『一時的に一人部屋の者の部屋に寝泊まりしてもらうことになる』

 

「っと」

 

そうだった。この中には女子がいるんだった。変な奴じゃないといいなぁ。容姿の問題じゃなくて生活リズムとか性格的な問題で。

俺だって狂ってると自覚できるような性癖がある訳だから人の事をとやかく言うだけの資格は無いので、俺は思考を放棄してノックの音を部屋に響かせる。

しかし返事はない。早めの夕食として食堂にでも行っているのだろうか。

まあノックしたしいいよなとノブを捻り、中に入る。

 

「お邪魔しますっと」

 

誰もいないようなので声を出す必要は無いが、言った方がいいと思い、小さ目に言って入る。

だがその奥には一心不乱にキーボードを連打乱打し画面に食い入る少女がいた。そのキーボードへの打音は扉を開いただけの俺の耳に聞こえてくるまでに大きく、叩きつける指の強さが分かる。

 

「おっと、これは失礼」

 

俺は謝罪の言葉をかけたが、少女は何も反応を返さない。イヤフォンやヘッドフォンをした様子は無い。

えっ、無視?俺、嫌われてる?

そう思ったのだが、少女の表情を少し見ると、そうではないことが分かった。

 

「―――――――」

 

無言、無表情。だがそこには真剣さがあり、画面の向こうの何かに対する熱意が感じられた。

俺は静かに荷物を置いてキッチンへと向かった。

手を濡らして備え付けの洗剤で手を洗う。泡を流してハンカチで手を拭く。視線をずらすと、そこには食器があり、ポットなどもあった。

レンジも、冷蔵庫もあり、金かかってんなぁと思ったが、俺はそこであることを思いついた。

 

 

 

 

 

 

少ししてキッチンから戻り少女の後ろから、少女が食い入るように見つめる画面を見て、俺は驚いた。

そこにあったのはISの設計、およびAICの設定だった。

ドラムでも叩くかのようにキーボードを叩き続ける少女は、学生とは思えないほどの精密さと速度で設計図を完成へと近付けていた。

もし一人でISを完成させようとしているのなら、それは自傷行為のようなものだ。

ISの構成情報量は、それこそSAO全体の情報量に匹敵する。大手の会社のバックアップがあって漸くできるようなものを、この少女は一人で完成させようとしているのだ。

その熱意と努力は、画面上を見るだけで理解できる。

俺はそっと手に持っていたホットミルク(蜂蜜適量入)を邪魔にならない場所において、画面を指差して指摘した。

 

「ここはもう少し軽くいけるんじゃないか?」

 

「ん、ホントだ―――――――えっ?」

 

「ん?」

 

「――――――――」

 

突然驚いたように振り返り、俺を見る少女。そこで俺は少女の顔を初めて見た。先ほどは盗み見ただけだったが、今は違う。

日本人離れした色白の肌に、家へと跳ねる蒼天の髪。そして紅玉の瞳は、見る者を魅了する。まるで魔石のような美しさがあった。

少女は振り返ると硬直(フリーズ)して動かない。

 

「ひゃっ!?」

 

「はいっ!?」

 

硬直していたと思ったら小さな悲鳴を上げた彼女につられるようにして俺も驚きの声を上げた。

少女は俺から離れようと後ろへ後ずさろうとするが、その先にはPCの乗った机があり、それ以上は下がれない。けども少女は驚きのあまりにそれすらも忘れているようだった。

 

「あ、貴方は……だ、誰!?」

 

「ん?荷物は置いてあるし、俺の存在は知っていると思ったが、改めて。茅場守流だ」

 

少女は体を横にずらしたりしてベッドの横に置かれた俺の荷物が入っているであろう箱を見た後で、俺の説明を聞いて納得したのか、強張らせていた体から力を抜いて椅子にもたれかかるように座った。

 

「そう。ゴメンなさい。気付かなくて。私は、更識簪。簪でいい」

 

「わかった。じゃ、簪。これから短い間だろうけど、よろしく」

 

「ん。よろしく」

 

一先ず事情は理解してもらえたようだった。




ふひっw
8500文字超え達成だぜ!!
この調子で頑張っていくでおじゃるwwwww

なんかすいません………
とにかく、今後も精進してまいりますので、応援よろしくお願いします。
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