インフィニット・ストラトス 天才の息子は   作:双盾

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くっ、殺(以下自主規制
文字数めぇっ!!よくも私に8000文字以下の話を書かせたなっ!!!
すいません、私の努力不足です。

そんな話ですが、どうか楽しそうに読んでください。
コメント待ってマース!!


4 顔の赤い二人

「ねぇ」

 

「うん?」

 

荷解きをしながら俺は、簪の質問を聞く。

 

「貴方はISのプログラミングができるの?」

 

「まぁ、できる」

 

「何で?」

 

何で?と来たか。そんなこと聞かれたってなぁ。親父を手伝ってたからプログラミングはある程度できるし、ISの方も専門用語多くて辛いが、知識の応用がある程度効くし。自由研究で物質の強度とかやったから製作の方もある程度はできる。

どういうことか尋ねると、簪は少しの間を置いて言った。

 

「貴方は男性だし、ISとは、関わりが無かった、はず。なのに、何でできるのか。少し、気になった」

 

「ああ、そう言われるとそうだなぁ」

 

確かに男はISに乗れない。だからISの動かし方などを学ぶ必要は無い。

こう簪はいいたいのだろう。

けれど、そうとは限らない。俺以外にも、ISに関わっている男子はいた。

 

「俺は親父の手伝いとか自由研究で、機械方面に強くなったってだけだが。別に男だからってISに関わってない訳じゃないんだぞ?」

 

「えっ?」

 

「IS乗りにはなれなくても、整備や開発は男でもできる」

 

「あっ!」

 

まあ男でISに乗れるからといっても、いいことはあまりない。

周囲に敵を増やし、安全のために自由を制限されるだけ。未来の選択肢が広がるとか言っても、スポーツ選手になるつもりは無いし、だからといって軍人になるつもりもない。

 

しかしまあ、IS学園という肩書はかなり有用だと聞く。男でも同じかどうかは知らんが、企業への面接とかでは有効に働いてくれるだろう。

利点なんて、そんくらいなものだ。

 

「さて、俺は食堂にでも行くかな。簪も目を休めた方がいい」

 

「それは………」

 

何でそこを言い澱む?

そこまで急がなければならない理由があるのか?研究発表とか、企業からの設計要請とか?

まさかな。企業が個人一人、しかも女子学生に頼むわけがない。あったらそこは、ブラックもブラック、ダークネスだ。

 

「いや、無理にやめさせるつもりは無いよ!?ただ、簪の身体は、特に目は疲れてるはずだ。あの様子じゃぁ、休憩無しのぶっ続けだっただろうしね」

 

「………………」

 

「急ぎの理由でもあるのかい?」

 

そこまできくと、簪は完全に沈黙し、顔を俯けてしまった。

俺は様々な弁解をしたが、どれも言い訳のように感じられて、これが浮気を問い詰められる夫の気持ちかと痛感した。いや多分違うと思うけど。

すると簪は、小さく口を開く。

 

「…………ったから」

 

「え?」

 

「早く…完成…させて…あげたかった……から」

 

途切れ途切れに言葉を紡ぎ、その声は俺の耳に届いた。

 

「―――――あっ!!!」

 

その瞬間、俺の脳裏に走馬灯のように、ある光景が映し流れた。

とある日にコンビニに立ち寄った時、ふと新聞に書いてあった記事。

 

『日本IS委員会、代表候補を決定!!』

 

そこには顔写真と、その少女の名前『更識簪』と書いてあって―――――――

 

「簪………君は日本代表候補の………いやでも……………まさか………その機体は!?」

 

「そう……これは…私の専用機。打鉄弐式……」

 

「何でだよ!?専用機の製作なら、企業が付いてるはずだろ!?なのに……なんで!?」

 

この学園には、現在のところでいうと、イギリス代表候補のセシリア・オルコットがいたはず。彼女にだって、国が正式に決定した企業の協力及びバックアップがあった。専用機だって、完成していた。

 

では何故、簪の機体は完成していない?

いや、見た所は機体は完成していた。彼女が組み立てていたのは別のものだった。

機体ではない…………武装か!!!確かに最優先で機体、武装は後に回されるが………それだと企業が武装の開発を放棄したみたいじゃないか!!どうして!?

 

「織斑一夏…その専用機…白式」

 

「!!同じ企業に織斑の専用機を依頼したってのか!?」

 

もしも代表候補と、世界に二人だけの者の機体が依頼されたとしたら………確実に後者を優先するだろう。

つまり。簪の機体開発中に織斑の依頼が来た。その所為で人員が奪われ、満足な開発ができない状況になっているということか。

国は何をやってやがる!!片方に人員が奪われることは想定できただろうに!!

 

「倉持は…国内最大手…だから……」

 

「………そういうことかよ」

 

ふざけた話だ。最大手以外の企業に依頼すれば万事解決だったところを、無理を通したってことか。国としては代表候補生一人の犠牲で織斑を手に入れられればいいとでも考えてるんだろう。

人の努力を踏みにじってくスタイルね……嫌いじゃないが、腹が立つ。

 

「あの……」

 

「ん?」

 

簪が不思議そうに俺に問いかけてきた。

 

「どう…して……そんなに……真剣、に……怒ってくれる、の?」

 

「どうしてって……君の努力は凄いものだ。才能も有ったんだろうけど。

 いや、無かったとしたらそれこそ『努力する才能』があったんだろう。

 君の腕は俺が少し見ただけで分かる程に凄い。一流、プロを名乗っていいレベルだ。

 そうして代表候補生まで上り詰めた。

 それが国の、たかだか少年一人を引き入れる為に無視される。

 それは決してやってはいけないことだ」

 

国がしっかり簪の機体開発を別の企業に委託すればよかったものを、横着したがために一人の少女の努力が掻き消されてしまう。そんな理不尽があってたまるか。

 

親父だってそんなことはしなかった。正体を見抜いたキリトさんに対して、チャンスを与えた。

 

織斑も、俺も、IS乗りになりたくて、そのために努力したことは無い。

そんな者のために努力した者が潰されてしまうくらいなら、俺は声を高らかに上げて訴えよう。『貴様は間違っている』と。

 

「まあそれだけじゃないけど」

 

「え?」

 

「言わせんなよ。恥ずかしい……」

 

そう簪に言う。

だが俺は、あえて自分から恥ずかしさに突っ込んでいくスタイルの人間である。それで何度黒歴史を見たことか。いや、作ってきたことか。

 

「理由?そんなもん、美少女が悲しそうにしてたからだ!!」

 

「っ!!!!!!!!!!」

 

どやぁっ!!!(キメ顔。

で胸を張り、声高らかにして言い放った俺の顔は、もちろん赤い。だがそれ以上に簪の顔は赤くなっていた。それこそボン!!という爆発音が聞こえたような気がするほどに、まるで熱したやかんみたいに真っ赤になった簪。

 

「まあさ、きっと簪が美少女でなかったとしても、ルームメイトが困ってたら何かしてあげたくもなる。そんな人間だからさ」

 

俺じゃ解決できそうもない問題だったとしても、きっと俺は怒るくらいはするのだろう。

同情や憐れみの目で見るくらいなら、きっと、助けになりたいと叫ぶんだろう。

 

「うんまあそういう訳で俺は先に夕食くってくるから!」

 

「え…あ――――」

 

簪が何か言う前に、俺は赤い顔のまま部屋を飛び出した。

ズカズカと廊下を歩き去っていく。

新たに作られた黒歴史を、床に擦り付けようとするかのごとく、強く踏みしめながら。

 

(なんて恥ずかしいことヲォ俺は言ってしまったんだァァァァァ!!!!)

 

小指を角にぶつけ、痛みに悶絶するかのように全身を壁に打ち付け、終いにはゴスッゴスッと額を壁に打ち付けるまでであった。

一連の行為によって、熱は薄れ、羞恥心は吹き飛んだ。

マモルはれいせいさをとりもどした。

ふぅと一息ついて、俺は再び食堂へと歩き出そうとしたその時だった。

 

―――――――っ!!!

 

特に気に留めていなかった曲がり角。そこを通り過ぎた俺に、身を潜めていた何者かが腕を振りかざす。そこから鋭い手刀がくりだされようとしているのは明白。

その気配の消し方、身のこなし方、手刀の鋭さは中々の精度で、暗殺慣れしたような生々しい殺気を纏っており、ゾワリと背筋が凍てつく。

 

「んな!?」

 

それを間一髪で躱し切ると、敵は焦ったような声を漏らす。けれど即座に空いている腕をひゅぅっと鳴らして次なる一閃を入れようとして来る。これは間違いない。その手の企業、あるいは団体に属した、所謂『暗部』の人間だ。それもかなりの手練れだ。

 

危険だ。

 

脳内で警笛が鳴り響く。

体勢を立て直させない。俺が視界に捉えようとしても入るのは風を切る腕の残像だけ。顔を見せない。布のような何かを振るって身と顔を隠し、技の出と顔を隠す。相当な手練れ。プロフェッショナル。

 

「っち」

 

そんなものを相手に生き残る自信は無いので、俺は撤退しながら人通りの多い通りに向かうように退いていく。

俺は防御しつつ、撤退する。敵は攻勢ではあるが、後一歩詰め切れないことに驚愕と苛立ちを感じていると思う。

やがて攻撃を諦めて角を曲がって姿を眩ました。

 

「こんなとこにそんなもんがいる。しかも俺が狙われるとなるといい迷惑どころではないな」

 

何とか対策を練らねばと、織斑先生に相談することを決め、速く夕食を済ませようと歩く速度を速めた。

 

 

 

 

 

 

「何?暗殺者?」

 

夕食を済ませて俺は細心の注意を払いながら職員室へと到着した。

そこでここまでの経緯を説明したが、やはり信じてもらえそうにない。いや当たり前だな。俺だって信じたくないし、聞かされたって信じないだろうし。

 

「いや、疑っている訳では無い。ただアイツがなぜそのような――――――」

 

と、そこまで言った時、織斑先生は言葉を切って、しまったという表情を浮かべた。

その口ぶりからして、先生はその存在を知っているようだ。

 

「どういうことです?」

 

「…………場所を変えるぞ」

 

そういう目の前の存在の表情は、教師でもなければ千冬さんでもなく、戦士の面持ちであった。

そこから一般には秘密にしておきたかった何かがあることは火を見るより明らかであった。

俺は生徒指導室に移動させられ、椅子に座ると先生の言葉を待った。

 

「この学園は、安全のために、護衛として対暗部用暗部の一族を雇っている。その長が今ここに通っているのだ。学生として」

 

それは驚きだった。対暗部用暗部なんてものがあることも、その長が生徒として通っていることも。

しかし何故俺が狙われることになったのか。それが疑問として残った。

すると先生は、戦士の面持ちではなく、家族を思うような柔らかい表情を浮かべてふっと笑う。

 

「狙われた理由は簡単だ。幼い嫉妬心。動機はそれだけだろう」

 

どういうことだ?ますます分からなくなってきた。というか、そんな幼稚な理由で殺されかけたの俺!?何この学園、常識通用しねぇなぁ……悪い意味で。

混乱する俺を見た先生は、説明を続けた。

 

「何、簡単なことだ。ここにその長の妹がいるだけさ。自分を避ける妹が自分以外の人に興味を示した。その事実に嫉妬してるだけさ」

 

「つまり重度のシスコンであると。ええ……面倒すぎる……誰か分からないから対策取れない……」

 

「対策の方はしなくていい。私が厳重に注意しておこう」

 

「おお、それはありがたい」

 

織斑先生直々のお怒りをくらってなおも反抗しようなんて奴はいないだろう。いたとしたらそいつは相当なSAN値、あるいは精神力の持ち主であると俺が褒め称えよう。

 

「さて、時間も遅い。帰りなさい」

 

「今回はどうもありがとうございます。それではおやすみなさい」

 

「ああ、おやすみ」

 

先生と……ああ、さっきのは千冬さんか。それだけ交わして俺は部屋へと戻った。今回は遠回りすることなく最短ルートで行ったが。

 

 

 

 

 

さて問題だ。

目の前には黒い霧(俺の黒歴史が具現化したもの<俺の幻覚>)が扉の隙間から漏れ出しているわけだが、俺はここに寝泊まりするように言われている。さて、このいいつけに叛逆すべきか、そうでないか。叛逆ならアッセイの人がいると頼もしいが今はいない(というか現在は既に死んでいる)。

 

簡単に言ってしまえば、簪と会うのが恥ずかしいんだが、どうすればいい?という実に恋愛脳な乙女が知恵袋に投稿してそうな内容だ。いや実際クラインから「乙女かっ!?」とツッコまれたこともあるが。いや『初めてのキスは恋人とがいい』なんて普通だろうに。……普通だよな?

 

「さて、行かざるを得ないんだよな」

 

覚悟を決めよう。………よし、決めた!!

さあ逝くぞっ!!

ノブを回して扉を開ける。そーっと。

軟弱者だの臆病者だのヘタレだのと罵るがいい!!!実際そうだからな!!!俺は誰に向かって行っているんだ………?

 

「た、ただいまー……」

 

「お、おかえり……なさい」

 

「お、おう」

 

簪がベッドの上で体育座りをしていたが、俺が入ると焦って布団から降り、おかえりと

(少々どもっているが、そこがまた可愛らしい)言ってくれた。

先程まで健康的だったはずの俺の肌の色は、簪と同じように赤く染まり、何か気まずい雰囲気を作り出してしまっていた。

 

「え、えーっと…………」

 

会話を探さねば……間がもたん!!コミュ障こんな所で発揮してんじゃねぇよ!!お前物欲センサーみたいに肝心な所で仕事しすぎだから!!

部屋をぐるりと見回し、そして簪を見た。

彼女の髪は、少し湿り気を帯びていて、どこかしっとりとした印象を受けた。恐らく風呂にでも入ったのだろう。

 

「あ、風呂入ったんだな!」

 

「え、あ…はい」

 

「そうか!じゃ、俺も風呂に入ってくるから!」

 

気まず過ぎる空気に、俺はたまらず風呂という逃げ場所へと逃走しようとした。実に姑息だ。風呂から出ればこの空気に逆戻りだっていうのに。

足早に風呂場へと続く扉を開けようとした。

 

「あ、あのっ!!」

 

「は、はいっ!?」

 

「えと…その……」

 

「え、あ。ご、ごめんな?簪が入った後の風呂に男が入るとかキモいよな!?ごめんな!?」

 

すぐさま扉を閉めて自分の荷物があるベッドの横へと移動して入っていた着替えを手に握ろうとした時、声のちいさな簪の、大きな声が俺の動きを止めた。

 

「茅場守流さん!!」

 

「は、はいっ!!」

 

俺は簪の方を向いて、直立不動の状態になった。

簪の顔は、先程以上に赤くなり、その瞳は若干潤い、泣き出しそうにも見える。

けど、今彼女は覚悟を決めて何かを言おうとしている。なら俺は、それを邪魔せず聞こう。

 

「さ、さっきの……言葉………」

 

さっき、とは。恐らくそれは、夕食前の会話の事だろう。

そのことを思い出したのか、簪は顔を赤くし、それにつられて俺も赤くなる。

簪は言葉を続けた。

 

「そ、そのっ……!!と、とても………う、嬉しかったですっ!!!」

 

叫ぶように言った彼女の言葉は確かに、俺の耳に聞こえていた。

その言葉を聞いて、羞恥が無かった訳では無いが、しかしそれ以上に―――――

 

「それは……とても……嬉しい…です」

 

「ふふっ………何で……敬語?」

 

「くっ」

 

謎に緊張して意味不明な敬語になってしまい、それを楽しそうに笑う簪の表情に、不覚にもとてもかわいいと思い、顔が赤くなる前に顔を逸らした。

 

「茅場さんは…面白い人…ですね」

 

「悪い印象が無くてよかったぜ」

 

そう言って、俺もククッと笑った。

そこらを境に、気まずさは無くなり、いつの間にか俺達は笑い合いながら会話し合っていた。

話が一段落すると、俺は着替えを手に持って、風呂場に歩き出した。

 

「そんじゃ、風呂に入ってくる」

 

「あ、はい。……いってらっしゃい、です」

 

「いってらっしゃいって……ただ風呂はいるだけだぞ?」

 

「そうでした」

 

また笑顔の華を咲かせた簪を見て、俺は風呂場と部屋を繋ぐ扉を閉めた。

 

………………………

 

……………………………………よかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

 

あのまま気まずい状態のまま明日を迎えるなんてことになってたらもう毎日が黒歴史だったよ!?

何とかなってよかった………ああいや、良い方向に向かってくれてよかった、だな。

脱衣所で服を脱ぎ、風呂場に入った。

シャワーを頭に浴びながらふと思い返した。

 

(簪の笑顔……可愛かったよなぁ)

 

振り返って、思い出しても、何度でも同じ感想を抱くのだろう。

表情の変化が人より小さい彼女だからこそ、笑った時の華やかさが大きい。

 

人はよく『向日葵のような笑顔』と称すが、簪の笑顔は向日葵のような明るさは無い。いや、悪く言っているわけでは無い。花に例えるなら………そうだな。白百合、みたいな………清楚。それでいて美しさのある、そんな笑顔だ。

 

(この湯船に簪が浸かったんだよな………)

 

シャンプーの泡を流し、ボディソープで身体を泡立てながら湯船を見てそんな邪な考えを思い浮かべ、ブンブンを頭を振るって邪念を吹き飛ばそうとするが、油汚れのようにこびり付いて離れない。

 

(そういえば、さっきの簪は制服じゃなくて、パジャマだったよな………)

 

白を基調に、水色で縁取られた清楚な物で上下を揃えていた簪の姿を思い出す。

人一倍白い簪の肌が風呂上りの所為か少し紅色に染まって、白い生地に水色の縁とのコントラスト………あれは良かったよな………もう見せる凶器だよな………

 

ぼーっとそんなことを考えていると、ポタリポタリと生暖かい水滴が太腿に当たる感覚で、俺の意識は肉体に戻る。

ふと見てみると、水滴が当たった場所は赤く染まり、ふと鼻の下に触れると自分の指が赤く染まった。………鼻血だ。

 

「何っ!?」

 

急いで体の泡を流し、脱衣所に飛び出し、ティッシュを探す。

幸いなことに、備え付けのティッシュがあったので、それを両の鼻に押し詰めて再び風呂場に戻った。

 

「ふぅ、一先ずこれで安心だ」

 

そう言いながら湯船に浸かった。

じんわりと身体に暖かさが染み渡る。あ゛あ゛あ゛あ゛~~~極楽なんじゃあ゛~~~~

 

―――――刹那

 

(この湯船に簪が浸かったんだよな………)

 

その事を思い出す。

簪が浸かった湯……これは簪の体温………簪が包み込んでくれているような…………

 

「ブッ!!!」

 

鼻栓の役割を果たしていたティッシュが銃弾のように勢いよく吹き飛び、鼻から血が流れ出る。それだけでなく、鼻に入りきらなかったのであろう血液が喉から口へと入り込んできて、口に手を当てせき込むと、その手には真っ赤な血が………

 

「ぎゃぁぁぁ!?」

 

すぐさま風呂の栓を抜いて俺の血で少し赤みを帯びている湯船の湯を流した。そしてシャワーで身体に付いた血を流し、再び脱衣所でティッシュを鼻に詰めた。

 

「よく考えてみりゃ、出血してんのに風呂入って血行良くしたらダメだよな」

 

身体に付着する水滴をタオルでそれを拭い取って持ち込んだ寝間着に着替える。

とはいっても、ユ〇クロで買った上下セット(黒)なので、そんな見た目の良さも、上品さも何もないのだが。

 

「今出たぞ」

 

「あ、おかえ………どうしたんですか!?」

 

「ん?ああ。鼻血が出ただけだから。大丈夫。落ち着いたら掃除依頼しておくから」

 

この学園は依頼をすれば学園の経費で清掃業者を呼べるのだ。ホントに金かかってるよなぁ。

 

「そ、そうですか。無視は……しないでください」

 

「おうよ」

 

その後、俺と簪はベッドの上で雑談や世間話に花を咲かせて、そんなこんなで眠りについた。

今日は……色んなことが有り過ぎて疲れた………ただ……後半は……今までで最高にリア充してたなあ………

そんなことを思って、俺は瞳を閉じた。

 

「おやすみ…簪……」

 

「おやすみなさい…茅場さん……」

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