コレに関しては本当にすいません!!!!
文字数何て気にすんなよーって優しい方はコメントにて励ましてください。
今回の話も、どうかご愛読お願いします。
私の生まれた家は、その地では名の知れた、俗に言う名家というような家だった。
人脈は広く、しかしそれに頼らずとも輝ける実績。これが私の家を名家たらしめる要因だ。
けれど、私の家の本当の生業は、対闇部用闇部という物騒で、暗くて、常に危険と隣り合わせなもので、それを表だって言うにはあまりにも受け入れ難い生業だ。そんな闇家業を行っている賊や団は多くいる中で、私の家はその中でもトップレベル。国などから指名されて依頼されることもあるほどの裏の実績を誇っていた。
そんなにも裏で有名であれば、それは僅かばかりでも表でも名が知れてしまう。
だからそれに感付かれない為に、私の家は人脈と表向きな実績を伸ばし、その地の名家という肩書を使ってその存在が表に知られないように、覆い隠した。
対闇部用闇部だなんて物騒な物が本職だ。故にその血筋の物には、暗殺に対する知識と、それに対する戦闘術と、それを実践できるだけの肉体練度が求められる。
しかし、名家として有名になっている以上、それだけが必要とされる訳では無い。
名家として疑われないように、武だけではなく、学力、知力、品性なども求められる。
私には姉が一人いる。
姉は、私よりも遥かに、その全てが優れていた。
学力では通う学校でトップから落ちたことは無く、世界中の様々な武術を習得し、スポーツではどの種目でもエース扱い。人柄も良く、また美貌も兼ね備えていて、人を惹きつけては離さず、誰からも嫌われる様子は無く、そしてそれを率いるだけのカリスマ性もあった。
正に完全無欠。
そんな家族が一人でもいれば、行く先々で比較されるのは火を見るよりも明らかで。
そんな状況でも、私に話しかけてくる人はいた。けれど、その誰もが姉と関わりを持ちたいがために近付いてきた者ばかりで、正しい意味で親しい友人と呼べるような者はいなかった。
そして私と接しても姉に近付けないことを知ると、人々は掌を返して私を罵倒する。
「貴女のお姉ちゃんならもっとうまくできてたわよ!!」
「どうしてお姉ちゃんと同じことができないの!!」
「同じ家族とは思えないわね」
やめて。やめて。違う。私は違う。お姉ちゃんじゃない。
なんていえるだけの勇気も無く、私はただ臆病にその罵声の濁流に耐え続けていた。
死にたくなる。
それでも私は、お姉ちゃんのように人よりも多くの努力をした。
誰からも話しかけられない休み時間は全て勉強の復習にあてて、苦手な運動にも積極的に参加し、薙刀を習ったりもした。
けれど、それでも。
姉には遠く及ばず、止むことの無い罵声が私の心を傷付け続けた。
私には憧れがあった。
それはまだ私が幼い時。画面の向こうで、正義の味方を具現化したような英雄が、華麗に悪の体現者を倒していった、そんな男性向けなアニメーション作品。
そのシーンは今でも忘れない。
その光景は、まるで私の家のやっていることと重なって見えたからだ。戦い方は違えど、正義が悪を倒す。明確な共通点があった。
だから私は、その憧れに何度も支えられて、他留まることをしなかった。
努力を続ければ、遥か遠い未来でも、必ず。あんな風に、ヒーローみたいになれると信じて。
優秀過ぎた姉は、まるで英雄のように見られるようになっていて。私には『比較することすら烏滸がましい出来損ないの妹』という負の烙印を押されていた。
それを心配した人達が心配そうに声をかけてくることもあった。
でもそれさえも私へ向けられた言葉ではないように聞こえて、かけられる声全てを無視するようになった。
渡される成績表には全て好成績が記されてはいるものの、どれだけの賞を貰えど、その度に姉と比較される。
「少しお姉ちゃんに近付いてきましたが、まだまだですね」
「才能に恵まれてないのに、よくここまでがんばったね」
「さあ、ここからもっともっと頑張ってお姉ちゃんに少しでも近づこうね」
しかしその時私はもう走れない程に心身共に疲弊しきって、もう傷付く場所が無いほどに傷付いて。
それでも少しでも近づいたという彼らの言葉は、動けない私の身体を突き動かした。
そこから私は死にもの狂いで、その言葉を体現したように努力を重ね続けた。
睡眠時間を削って教科書に噛り付いては、一心不乱に紙の上に鉛の筆を走らせ、食事の時間さえも惜しいと切捨てて武術の鍛錬に励んだ。
狂ったように学びに沈み行く私の心身は、更に多くの傷を受けたが、それ以上に私の行動が、自傷ともいえるほどに自らの身を削っていった。
身体は痩せ細り、廃人の様になっていたらしい。
そこら辺から家族や学校の先生は本格的に心配し、学校の早退や休養を進めてくるようになったけれど、その時の私に対してその対応は、もう手遅れで、その程度で私はもう、私自身でも自分を止められなくなっていた。
段々体調不良になることが多くなって来て、怪我や病気も多くなった。
それでも私は止まらなかった。
私はまだ止まらない。まだ進める。周囲の評価が全てのこの世界で、少しでも、目に見えた進歩があったのなら、私はそれだけで進み続けることができた。
きっとこれが病んでいるということなんだろうなと、思い返して分かった。
しかし、しばらくして成績の伸びが悪くなってきた。
それを見た周囲の人々は、それでも努力を続ける私に言う。
「無駄な努力は止めなさい。自分が苦しいだけだ」
「貴女はよく頑張ったわ。けどお姉さんほどじゃなかったのよ」
「才能が無かったのよ。無理なことを知る。これも一つの進歩よ」
うるさい。五月蝿い五月蝿い!!!
私はそれでも止まらない。
そんな時だった。
世間にISが広まっていったのは、そんな時だった。
それから数年の内に、姉は世界最年少で国家代表に選出された。
また一つ、姉が遠くなった。
この程度の努力では足りない。もっと、もっと多くの努力が必要だったんだ。
私は従来の努力に加えて、ISに関しての勉強も付け足した。
もう本当に走れなくなりそうだった。走れなくなる寸前だった。
そんな時、私は、姉の手によって遂に走れなくなった。最後の支えが折れたのだ。
『簪。あなたは何にもしなくていいの。私が全部してあげるから。
だからあなたは、無能なままで、いなさいな』
それから私は、自分の部屋に籠って、自分の殻に籠って、今までの努力が夢だったかのように、一切の努力をやめて、ただ時間を浪費し続けた。
ただ、それが一概に悪いことであったとは言えない。
食事を取るようになって、やせ細っていた体は人並みな肉付きに戻り、悪かった顔色も元通りに、病気がちだった体調も健康へと快復していった。
けれど、姉がつけた心の傷は、心を真っ二つに切り裂かんばかりの傷をつけた。
努力は報われない。
もう全てが何でも、どうでも良くなっていた。
このまま家の負担になるくらいなら死んでしまえば――――――
その時、私に差し込んだ最後の光があった。
日本IS委員会の目に私が止まり、過去の実績やISへの適正から、私はIS日本代表候補生に選出された。
これさえ逃さなければきっとお姉ちゃんにも届く――――!!!
折れた最後の支えと、傷だらけで走れなくなった心。そこに舞い込んだこの希望を、逃してなるものかと私は、消えかけた努力の灯に希望と言うガソリンをぶちまけた。
燃え上がった炎は私を囲んで、逃げ場を塞ぎ、これを逃せば最後に焼け死ぬのは私だと言うように私を未来へと駆り立てた。
そうして、私はIS学園入学と代表候補生としての学生生活に向けて着々と準備を進めていった。
入学が近くなったと感じる頃に、私の専用機は完成した。
機体が完成し、次の武装の作成に入った時だった。
『――――の受験会場で、世界で初めての男性IS操縦者が発見されました!!』
ニュース番組の速報で入った一報。その報道は、全世界を驚愕に騒がせる。
織斑一夏。その動かしたという少年の名前だ。それに続く形で、二人目も発見された。
二人は、保護という形でIS学園に入学が決定し、織斑一夏の方には護身の為という形で専用機の緊急作成が決まった。
そして、その依頼を受けたのは、私の専用機を開発していた企業、倉持だった。
ほぼ全ての人員はその希少性、重要度から織斑一夏の専用機開発に回され、実質的に私の専用機の開発は打ち止めということになってしまった。
ああ………またこうなるのか…………
でも、私は――――――、一人でもこのISを、打鉄弐式を完成させてみせる。
姉は一人でISを組み立てたと聞いた。それも、大企業などのサポート無しで。
なら、企業にサポートがあり機体は完成していて、尚且つ専門的知識がある私なら完成まで持っていけるのではないか?姉にできた。姉だって人間だ。人間にできたのなら私にできない道理はない。
入学直前になって、政府から通達があった。
部屋の用意が間に合わない。少しの期間、同棲という形を取ってもらうことになるが、いいか?大雑把に言ってしまえば、そんな内容の書類だった。
私は、条件として織斑一夏ではない方と付け足して、政府へと送り返す。その後は了解の趣旨が書かれた書類が返ってきただけで、他には何の連絡も無く、私はIS学園に入学した。
そうして私は、学園に入学した今も開発を一人で進めていた。
最初は、驚いたが。その時は自分にとって邪魔でなければいいと、そう思っただけだった。
けれど彼は、今までのどの人間とも違った。
そこそこ有名だと思っていた私の家の事を知らなかったし、姉の事も知らなかった。
ただ純粋に、私に興味を持って近付いてきた人間は、初めてだった。
だから私は、彼に興味を持った。
彼は私と同じように、優秀過ぎる家族を持った、同じような境遇の持ち主だった。
彼は私に優しかった。
私は、そんな彼により一層魅かれた。
彼なら、私を理解してくれる。正しく私を見てくれる。そう信じている。
だから私は、こうして私の過去を話した。
Side 茅場 守流
「そうか………」
俺は、ベッドに腰掛けて。簪の過去について聞いていた。
そして、それを聞き終えての第一声が、それだった。
「よく、耐えてこられたな」
壮絶すぎる。予想を大きく上回る程の苦痛の嵐。自殺だって考えられるほどの苦しさの中、彼女は耐え抜き、ここまで生き抜いてきたんだ。俺に似た境遇はあるものの、その実は、彼女の方がずっとずっと強かであったことに、俺は自分の幸福さと彼女を見てきた数日間の自分を浅ましく思い、ただ後悔した。
俺なんかでは、彼女を癒せやしない。
想像を絶するとはまさにこのこと。自分の知らない痛みを、理解することはできない。それは想像上の痛みであって、実際に味わう苦痛とは比べられない程に軽いものでしかないのだから。
「辛かっただろう」
「可哀そう……とか、思ったでしょ」
「そんなことはない」
可哀そう、は俺の好きではない言葉だ。
その言葉は、相手を憐れむ物だ。自分を裕福であったと認め、相手が哀れな存在であると口に出して認める言葉だ。俺はどんな人間であれ、長所短所はあれど、哀れむ生き方をする人を見る目だけはちゃんとしてきたつもりだ。
「嘘だ……」
「嘘じゃない」
彼女の過去に、哀れむ要素は何一つとして無かった。
例え苦しみの嵐の中で生きてきたんだとしても、それは取り巻く環境が、彼女を正しく理解しようとしなかったものだ。
「俺は君を尊敬してるつもりだ。簪は俺よりずっと強い」
「嘘だ」
「嘘なんかじゃない」
「嘘だっ!!!!」
叫ぶようにして俺の胸ぐらを掴み、ベッドに押し倒して馬乗りになった。
普段の簪からは想像もできないような、感情的で暴力的なその行動に、俺は驚いて言葉を作ることができず、そのまま簪を眺めていた。
「茅場さん、だって…本当は…思ってる、んでしょう?私……か、可哀そう……だって」
「そんなことはない」
そう言いながら状態を起こそうとベッドに手を付いて起き上がろうとしたが、簪が制服の胸元を握ったまま押し付け、起き上がりかけた上半身がまたベッドに沈む。
「こんな…暴力的な私に…驚いてます、よね?……私の、本質…は、こんなもの……なんです」
だから何だと反論しながら押さえつけようとする簪の腕を払うことなく、起き上がる力を強めて上体を布団から離す。
「貴方も!!そうやって私に優しくして!!
私が心を許すような素振りを見せたら便利な道具扱いして棄てるんでしょう!!!
どうせ私なんて!!誰からも好かれない!!
便利な道具程度にしか思われてない!!!!」
「いや、違う」
「違わない!!嘘なら誰だって吐ける!!!
きっと私なんて!!死んだって誰も気にしない!!!その程度でしかな――――」
簪のその発しようとする言葉を遮るように。俺は胸元を掴む腕を振り払い、左腕で簪の制服の胸元を掴んで、今度は簪をベッドに押し倒した。
突然の衝撃に苦悶の声を上げて呻く。俺はそのままの状態で簪に問う。
「本当にそう思っているのか!!!」
簪が息を飲むのが分かる。
俺は深呼吸して、もう一度尋ねた。
「本当に………そう、思ってるのか?」
「そ、そうです!さっきのも、全部本心で―――――」
「なら、何で泣いてるんだ?」
「えっ―――――」
そっと指先を自分の頬に当てて、自分が泣いていることに気付いた簪は、流れ出る涙を拭おうとする。その涙を拭おうとするのだが、瞳から流れ続ける雫は止まることを知らず、拭えど拭えど、その涙を塗り広げるだけ。
「こ、これはっ…………ちがっ…………」
「本当は違うんだろ?見て欲しかったんだろ?正しい自分を。
その姉ちゃんと比べられ続けて悔しかったんだろ?
努力したのに、報われなかったのが悲しかったんだろ?」
ボロボロと、溢れる涙が勢いを増し、拭いきれなくなった雫がベッドのシーツを濡らしていく。
簪を押さえつける俺の左腕をどかそうと、簪は抵抗していたのだが、段々とその力も弱まっていく。
やがて、簪は俺の腕から自分の腕を離して、俺の背中へと両腕を回し、俺の胸にしがみつくようにして、堪えていた涙と嗚咽を大きくしていった。
「ほんっ…とう、は………見て………欲しかった………」
少しずつ、嗚咽混じりにくぐもった声が聞こえてきた。声がくぐもっているのは、俺の制服に顔を、体を押し付けているからだ。
胸ぐらを掴んでいた手はとうの昔に手放しており、俺はその手を簪の背に回して抱き寄せる。
「み、んな………が………お姉ちゃん……ばっかり………見て………
正しく……見て欲し…かった…………比べないで…………私を………見て欲しかった…………」
「大丈夫……分かってる。悔しかったよな………悲しかったよな………辛かったよな………」
か細い簪の身体を抱きしめる力を少し強める。それだけで簪の身体が軋みを上げて折れてしまいそうなほどに華奢なその身体に、どれだけの苦しさを背負ったんだろうか。
それを考えただけで、俺の瞳もまた潤みを帯び、抱きしめる力が強くなってしまい、簪が苦しそうな声を上げて、俺はそこで無意識に力を込めてしまったことに気付き、腕の力を緩めようとするのだが、それを簪が制止した。
「やめないで……もっと……強く………逃がさないように………逃げられないように…………」
そう言って簪も抱きしめる力を強めた。俺は力を更に強めることを望まれた。だがこれ以上力を込めれば、本当に簪の身体が折れてしまいそうで、今でさえ少し苦しそうなのに………と躊躇ってしまう。
だが、簪からの願いを断るのも気が引けて、これを断れば、簪はまた心を閉ざしてしまうのではないかとも考え、俺は少し、ほんの少しだけ、抱きしめる力を強くした。
「ぅ………っ………んっ…………ありがと……」
苦しそうに呻くけれど、簪は幸せそうな笑みを浮かべて、そんな言葉を口にした。
その言葉を聞いて、俺は……簪の苦しさを少しでも軽減できただろうかと考えて、抱きしめる腕の力を少し緩めた。
それから長針が2の時を刻むまでの間、抱きしめ続けた。
抱きしめあっている内に、今日の日の疲れが滲み、微睡みに視界がぼやける。肌の感覚も鈍くなっていき、まるで簪と溶け合ってしまったかのような、温もりの一体感が、眠りの沼に半分沈みかかっている俺の意識をさらに鈍化させる。
けれどもそれは簪にも言えたことで、彼女の瞳も少し瞼が重たげに垂れており、呼吸も浅くなっていく。
このままでは、簪を抱きしめたまま、制服から着替えもしないままに眠ってしまう。そう思うのだが、俺はこの温もりを手放したくなかった。
それは簪も同じなようで、背に回された細腕を更に伸ばし離そうとしない。
(ああ……もう………このまま………でもいい、か……………)
段々と視界が暗くぼやけていく。
そんな微睡みの中、先に夢の沼へと沈んだのは簪だった。
意識が肉体を離れる寸前、簪は寝言のように言った。
「茅場……さん…………すき………です………………」
そんなことを言って簪は、幸せそうに眠りについた。
だが、一方で俺も意識の限界で、簪に意識が残っているかも確認することなく、腕の中で幸せそうな眠り姫に、俺も一言。
「簪………おれ、も……………すき……だ…………」
それだけを言い残し、俺も意識を微睡みの濁流の流れに委ねた。