九校戦五日目、新人戦二日目の朝。
男女ともピラーズの二回戦まで今日は行われる。今年から男女別になったため俺は深雪の試合をモニターでしか見ることが出来ない。二回戦目も同様だ。
「ついにこの日が来た。ここで俺は力を示す……一条悪いが俺の踏み台になってもらう……って似合わないか」
俺は着替えて準備中の試合会場へと足を運んぶと達也と深雪を見つけた。
「おはよ、二人とも早いんだね」
「おはよう、翔一。それはお前にも言えることだがな」
「おはようございます。翔一」
「まあ、今日は大事な日だしそれと……見ておきたくてね」
後半を口ごもりながら俺は言った。もちろん大事な日だからというのもあるがだからこそ深雪を一目見ておきたかったというのが一番の理由である。
「何を見ておきたかったんですか?」
小首をかしげながら深雪が聞いてくるけど答えられるわけがない!……ヘタレとか思わないでよ?チキンなだけだ!!
「そうだね……俺のこの世界での本当の第一歩を踏む場所をかな?」
間違ってはないはず、ピラーズで一条に勝つことにより四葉翔一という存在を示しまた俺の正体を悟った者に対しての牽制ともなる。
「その第一歩とは何だ」
達也が視線を鋭くして俺に問う。
「前にも言ったがこの九校戦で四葉の力を示すこと、いや、四葉翔一の存在を示すことだ。……今の十師族は一枚岩とは言いがたい。現に四葉の力を衰退させようとする者達もいる」
「だが強すぎる力はまた争いを呼ぶぞ。……俺たちがこれを言ってもしょうがないがな」
溜息をつきながら達也は言う。……俺たちはこの世界のイレギュラーだ。常に波乱が待ち受ける運命にある、だからこそ……
「そうだね。俺たちが言っても説得力がないな……だからこそ振り返る火の粉は払ってみせるさ」
「そうだな」
達也が深く頷いた。
「深雪、ピラーズがんばってね!モニターでしか見れないけど絶対見るから!」
俺の言葉に頬を染めながら弾んだ声音で
「がんばります!必ず見てくださいね?翔一の試合は私は見れますから」
「必ず見るよ……なら気合い入れないとね。じゃあまた後でね」
微笑を浮かべこの場を後にした。
時が幾分か過ぎて俺は今控え室にいる。俺の見るモニターには一回戦の最終ゲームが開始されるところが映し出されていた。……俺は深雪を見て息を飲んでしまった。似合いすぎだよ、まったく。相手の選手は可哀想だが呑まれてしまっていた。
そしてスタートの合図とともに強烈なサイオンの輝きが、自陣・敵陣関係なくフィールドの全面を覆った。
そしてフィールドには──二つの季節に分かたれる。深雪の陣地には極寒の冷気が覆われ、熱波に陽炎が揺らぐのは敵の陣地。既に相手の氷柱は溶け始め、深雪が空気と圧縮の解放の魔法に切り替えた瞬間相手の氷柱が全て崩れ落ちた。
「流石深雪だ。あれを見せられて俺が下手なことはできないな」
「四葉翔一君位置について下さい」
「わかりました、今行きます」
スタッフの方に名前を呼ばれ俺は位置にくとステージが上がり観客の前に俺の姿が映し出された。
深雪side
「深雪こっちこっち!もうみんな集まってるよ!」
エリカの明るい声が響く。彼女が座る席の周りにもいつものメンバーとなりつつある者達が集まっていた。
私は自分の試合を終えた後すぐさま翔一の会場へと足を運んだ。
私の試合は見ていただけたでしょうか。褒めてくれるでしょうか。さっきから同じことばっかりが頭に浮かぶ。
そんなことを考えているとステージに翔一が現れて目が合う。翔一はキョトンとした後下を向きその後もう1度目を合わせ笑みを浮かべそして……その言葉がわかった時私は目を見張ってしまいました。
深雪sideout
俺の姿に観客は値踏みをするような視線を向けてきた。
そりゃそうだ。俺は四葉の次期当主候補で現当主の息子だから。皆気になるのだろう。そんな視線の中見知った気配の方向に顔を向けると達也達の集団を見つけてた。その中に深雪がいたのは別に言わなくてもいい事なのだが、ふいに深雪と目が合って何となく恥ずかしくなって顔を伏せてしまった。
……もうそろそろちゃんと伝えてもいいのかな?一応身分的なものも問題は無い。母さんに相談してみれば何とかなるかもしれない。深雪は俺のことどう思ってるのかな。
「もう試合は始まるのに何考えてんだか」
ぼそりと下を向きながら呟いた。……えぇい今日でチキンは卒業だ!当たって砕けろだ!!
俺は深雪の再度視線を合わせて言った。
「好きです」
声は聞こえるはずがないけどわかってくれたかな?……いや待て待て聞こえないなら意味がないんじゃ。やばい、やってしまった。内心頭を抱え再度深雪を見ると口元を抑えて見とれるような笑みを浮かべていた。
「一応は届いたみたいだ。上手く笑えていたかな?……告白した手前負けることなんてかっこ悪い真似できない。とっおきを使うか」
俺は目をとじ合図を待つ……そしてスタートの合図がなった!
相手が魔法を放ち俺の陣地の氷柱を破壊しようとしてくるがそんなのお構い無しに印を結ぶ。そして
「火遁・劫火滅失」
劫火滅却よりも上の沖縄海戦の際に使用した術を使った。
瞬く間に相手の氷柱が溶けていく。だけどこれだけじゃパフォーマンスにはならない。俺は右目を閉じた。
「まだだ、まだ足りない。……天照!!」
閉じていた右目を開いた。万華鏡へと変わった右目から発生された黒炎は劫火滅失の炎を喰らった。そして相手の氷柱が、全て破壊され俺の勝利が表示された。
その後、俺が決勝進出を決めるのは当然の話であった。
結果としてパフォーマンスは成功だった。それもそうだ俺の試合を見ていた人は黒炎が炎を燃やすという奇妙な現象を目撃したのだから
またいつ投稿できるかわかりませんがお付き合いのほどよろしくお願いしますm(_ _)m